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仮面ライダーAP

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北欧編 仮面ライダーRC&レジスタンスガールズ 第10話

 ――世界一不味いと名高い軍用糧食を何とか食べ終えた、鳥海穹哉をはじめとする4人の新世代ライダー達が、作戦会議室を後にした頃。廃ビルの屋内にあるキャンプで身を寄せ合っていたはずの避難民達は、何故か屋外に集まっていた。
 廃ビルの入り口にある「何か」を見に集まっているらしく、彼らはその「不審物」に訝しげな視線を向け、どよめいている。その様子を遠方から目撃した穹哉達も、何事かと顔を見合わせていた。

「なぁ君、一体どうしたんだ? こんなにたくさんの人達が外に集まるなんて、一体何があった?」
「げっ、あんた達まだここに居たのかよ。……まぁいいか。よく分からないけど、いつの間にかこの廃ビルの入り口前に、ヘンテコな『花輪』が置かれてたらしいんだ。しかも、俺達には読めない外国の言葉で何か書かれてるんだってさ」
「は、花輪だぁ……?」

 穹哉が避難民の男性に声を掛けると、男性は忌々しげな視線を向けながらも騒ぎの概要を口にする。その奇妙な内容に忠義が小首を傾げる一方で、視線を交わした正信とジャックは足早に「花輪」があるという屋外に向かっていた。
 ざわめく人混みを掻き分け、入り口前に置かれた場違いな現物を見つけた2人は、眉を顰めてその全体像を見上げる。まるで開店祝いに贈呈される物のような、派手な花輪が入り口の傍に立てかけられていた。

「これが例の花輪か……? キャンプの人達でさえ知らない物が何でここに……?」
「……! おい本田、これは!」
「なにッ……!?」

 すると、花輪に書かれた文字を目にしたジャックが驚きの声を上げる。その声に反応した正信が仰け反るように後ずさった瞬間、花輪に書かれていた文字の全貌が明らかにされる。

 ――仮面ライダー諸君、オーファンズヘブンへようこそ。ノバシェードより。

 花輪にはその文言が、日本語で書かれていたのだ。そのため、花輪を見つけた避難民達には内容が分からなかったのである。
 自分達がここに居ることが、すでに敵にバレている。その事実を意味する花輪の出現に正信とジャックが顔を見合わせたところで、穹哉と忠義もこの場に駆け付けて来た。彼ら2人も花輪の文字を見た瞬間、戦慄の表情を浮かべている。

「ノバシェード……!」
「……この花輪はいつからあった!? おいっ!」
「し、知らねぇよ! 解放戦線の皆があんた達を連れて来た時にはこんなモノ無かった! た、ただ、花輪の近くにこれがっ……!」

 一目見た瞬間に花輪の正体に気付いた忠義は、避難民の肩を掴んで勢いよく問い詰める。その凄みに圧倒される避難民の男性は、たじろぎながらも1枚のハガキを忠義に手渡していた。
 そこに記されていたのは、市長公邸の位置を示す住所。そこからこの避難キャンプにまで花輪を送りつけて来たということは、ノバシェードは早い段階から穹哉達の入国を察知していたことになる。

(……こんなふざけた真似をするクソ野郎には心当たりがある。まさかこの街にあいつが……!?)

 忠義の脳裏を過ぎったのは、かつて一度戦った真紅の馬型怪人(レッドホースマン)の姿だった。忠義に仮面ライダーの力を与えた天才女科学者・一光(にのまえひかる)博士を襲撃し、彼女を死の淵に追いやった因縁の宿敵だ。
 彼女が変身する「仮面ライダーバウル」の力が無ければ、撃退することも叶わなかったほどの強敵。その存在を意識した忠義は静かな憤怒に心を燃やし、ハガキを握り潰してしまう。

「……何にせよ、俺達の存在をすでに奴らが掴んでいることだけは確かだ。黒死兵を配備しているのも、最初から俺達の入国を想定してのことだったのかも知れん」
「このままでは俺達よりも先に、解放戦線の連中が黒死兵達に遭遇することになりかねん。彼女達の装備で奴らを仕留めるのは不可能だ、急がなくては!」
「……待って!」

 忠義の怒りを察しつつ、穹哉達は出動を急ぐべく自身の愛車がある方向へと走り出して行く。そんな彼らの背中に声を掛けたのは、このテロで家族と離れ離れになってしまった、1人の幼気な少女だった。
 思いがけない相手から呼び止められたことにより、4人の男は思わず足を止めてしまう。自分達に敵意すら抱いていた避難民達の1人が、縋るような視線を向けているのだから。

「……せっかく来てくれたのに、いじわるな目で見てごめんなさい。謝るから、だからっ……お姉ちゃん達を助けてっ! お姉ちゃん達だけは、見捨てないであげてっ!」

 廃ビルから走り去ろうとした穹哉達の動きを見て、逃げ出そうとしていると思ったのだろう。
 子供でありながら。否、子供だからこそ。少女は素直な願いを叫び、解放戦線を救って欲しいと訴え掛けて来る。そんな少女の前で片膝を着いた穹哉は、優しく彼女の手を取り、静かに――それでいて力強く誓う。

「……大丈夫。お姉ちゃん達は、お兄ちゃん達が必ず無事に連れて帰って来るよ。だから君も、キャンプの皆と一緒にここを守っていてくれ。お姉ちゃん達が安心して、ここに戻って来られるように」
「うんっ……! 約束だよ、おじちゃん!」
「あぁ、約束だ。……それと、おじちゃんはやめてね」
「うん、おじちゃん!」
「……」

 部分的には伝わらなかったところもあったようだが。ひとまずは安心出来たのか、少女は満面の笑みを咲かせて避難民の方へと帰って行く。
 何とも言えない表情でその背中を見送った穹哉は、生暖かく見守っていた仲間達と共に、愛車に乗り込んで行く。4人の男達を乗せた4台のスーパーマシンが走り出したのは、それから間も無くのことだった。穹哉とジャックが乗る2台のスーパーカー「マシンGドロン」と、忠義と正信が駆る2台のレーサーバイク「マシンGチェイサー」が、同時に急発進して行く。

「すでに解放戦線はノバシェードとの交戦を開始しているかも知れん。急ぐぞ!」
「おうッ!」

 すでに「仮面」と「鎧」を装着している状態で、愛車を走らせているジャックを先頭に。気を取り直した男達は、破壊されたアスファルトの上を猛烈なスピードで疾走していた。
 そのマシンのハンドルを握る穹哉、忠義、正信の3人は――その腰に巻かれた「変身ベルト」を各々の手段で起動させ、徐々に全身を専用の外骨格で覆い尽くして行く。

 ――変身ッ!

 「鎧」の展開を終えた彼ら3人の雄叫びが重なった瞬間。義憤に燃える顔を覆い隠すように、男達の頭部を保護する「仮面」が出現する。
 そのシークエンスを経て「変身」を終えた仮面の戦士達は、爆音を上げるマシンと共にこの街を駆け抜けて行く。目指す先は解放戦線のメンバー達と同じ、この街の市長公邸だ。

「行くぞ……忠義、本田、ジャック!」
「えぇ、行きましょうおじさん!」
「急ぐぞおじさん」
「抜かるなよおじさん」
「その話一旦置いとかない!?」

 人間の自由と平和を守る。その使命を帯びた戦士達はぎゃあぎゃあと騒ぎながらも、弾丸の如く真っ直ぐに戦地を目指して行く。風を切り、エンジンを噴かして爆走する4台のマシンは、すでに最高速度に達していた。

 ――鳥海穹哉、忠義・ウェルフリット、本田正信。彼ら3名はベルトを起動させると、「仮面ライダー」に変身するのだ――。
 
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