| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

展覧会の絵

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十八話 我が子を喰らうサトゥルヌスその四

「何も盗んではいない」
「それもその通りです」
「殺人も窃盗も犯していない。そして傷害もだ」
 犯罪と考えられるものの中で重罪とみなされることはだ。一切していないというのだ。
「そうしたことはしていない。それにだ」
「今度は何でしょうか」
「君が私をこうして拘束していることは絶対に言わない」
 今度は取引だった。それにかかったのだ。
「解放してくれればだ。言わない」
「絶対にですか」
「言う筈がないだろう。勿論君が叔父さんやあの四人を殺したことも言わない」
 一郎は十字、黒いガラスの様な目の輝きを暗いコンクリートの部屋の中で見せる彼に話していく。この状況でも何とか助かろうと必死なのだ。
「藤会のこともだ。それに話してもこんな話は誰も信じない」
「証拠は全く残していません」
「なら大丈夫だ。私は何も言わない」
「いえ、言えないです?」
「言えないだと?」
「貴方はここで死ぬからです」
 感情のない言葉でだ。十字は一郎に告げていく。
「だからです。言えないのです」
「では君はやはり」
「貴方は罪を犯しました」
「私が殺される罪は何だ」
「近親相姦」
 知っていた。このことも。
「神に対する冒涜に他なりません」
「そのことも」
「知っています。神は全てを御覧になられていますから」
 神の僕である彼もだ。それにより知っているというのだ。
「そしてです」
「まだあるのか」
「薬と肉体の快楽に溺れ少女を弄んできましたね」
「彼女のことか」
 春香のことだとだ。一郎は今まさに喉元まで来た死の恐怖に怯えながら十字に返した。
「そのこともまた」
「全部知っています」
 僅かではないというのだった。
「そのこともまた」
「くっ、それも罪なのか」
「そうです。そして最後に」
 裁きの代行を下すに値する罪の最後の一つ、それは。
「彼女と彼の心を殺しました。心を殺す殺人を犯しました」
「しかしあの二人はもう」
「心は甦りますが死ぬのもまた事実」
 無論この中には春香の自殺未遂のことも入っている。今の十字は告発者、糾弾者でもあった。
「だからこそ僕は貴方の肉体と精神を殺す裁きの代行を下します」
「ではどうするつもりだ」
「今からはじめます」  
 こう言ってだ。何処からか。
 万力、小さなそれを出してきた。それを使ってだ。
 まずは一郎の剥き出しになっていた睾丸と棒を挟んだ。そうしてだった。  
 万力をゆっくりと狭めていく。それが狭まるにつれて。
 睾丸と棒はその間に押されていく。ゆっくりと、だが確実に鈍い痛みが迫ってきていた。
 一郎はその痛みに声をあげる。命乞いもする。
「頼む、これ以上は」
「神の裁きは覆りません」
 こう返してだ。その一郎に対して。
 十字は万力を締めていく。棒も睾丸も挟まれた中で押し潰されていく。
「絶対に」
「死ぬ、このままでは・・・・・・」
「安心して下さい。死ぬことはありません」
 このまま睾丸や棒が潰されてもだというのだ。
「この程度で死んでもらっては裁きの代行の意味がありませんので」
「ぐ、ぐぐぐぐぐ・・・・・・」
 一郎はこれまで感じたことのない激痛に身体をのけぞらせようとする。だが。
 あまりにも強く縛られている為にそうなっても逃げられない。痛みは止まることなく彼を攻め苛みそうして。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧