X ーthe another storyー
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第五話 神剣その五
「見るつもりはなくとも」
「見てしまうのね」
「ですから」
「言わないわ」
真面目な顔になってだ、庚は牙暁に返した。
「言わないとね」
「その夢の中でもですね」
「それは本当のことにならないのだから」
「言霊ですね」
牙暁はそれだと返した。
「そちらですね」
「ええ、言葉はね」
これはというと。
「言えばよ」
「そうして出してしまえば」
「夢でもね」
この中でもというのだ。
「それがよ」
「事実となります」
「だからよ」
「今はですね」
「言わないわ」
夢の中でもというのだ。
「決して」
「左様ですね」
「貴方は地の龍の一人よ」
牙暁にこうも言った。
「私にとってかけがえのない仲間だけれど」
「それでもですね」
「言えることがあって」
「言えないこともですね」
「あるわ」
「夢の中でも」
本心が露わになるその中でもとだ、牙暁も言った。そして彼はそのうえでこうしたことも言ったのだった。
「それはです」
「姉さんもかしら」
「同じです、まだです」
「何とかなのね」
「分かれていますが」
それでもというのだ。
「それが何時です」
「より出て来て」
「あの人の表のお心をです」
「支配するかも知れないわね」
「はい」
そうだというのだ。
「そうなってもです」
「不思議じゃないわね」
「そうです」
「わかったわ」
これが庚の返答だった。
「そのことは」
「そうですか」
「言ったわね、言えないこともね」
「僕にもですね」
「あるから」
だからだというのだ。
「今はね」
「言われないですか」
「ええ」
そうするというのだ。
「そうするわ」
「わかりました」
「それでだけれど」
「僕をですか」
「そろそろ迎えたいけれど」
地の龍が集まる場所にというのだ。
「いいかしら」
「僕は眠ったままです」
これが牙暁の返答だった。
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