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おぢばにおかえり

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第七十二話 キャンバスライフその三十六

「案内してね」
「そうさせてもらいますね」
「ええ、宜しくね」
「その時も楽しみですね」
「新一君は好きな人は本当に好きね」
 今のこの子の笑顔を見て思いました。
「そうよね」
「はい、好きな人はです」
 実際にと新一君も答えてくれました。
「人以外にもですけれど」
「好きだと徹底的に好きになるのね」
「好き嫌いが激しいってことでしょうか」
「というか好きになり過ぎて嫌いだとね」
 この場合もです。
「嫌い過ぎるってことね」
「そういうことですか」
「新一君はね、真ん中がないってことね」
「自分でもそう思います」
「そのことは気をつけないとね」 
 困った癖性分だからです。
「奥華の人で嫌いな人はいないみたいだけれど」
「いないですね」
 実際にそうだという返事でした。
「僕には」
「そうよね」
「皆いい人達ですから」
 こう私に答えてくれました、キャンバスの中を一緒に歩きながら。
「大好きです」
「それが顔に出てるわね」
 新一君の常で、です。
「新一君詰所でいつもにこにこしてるしね」
「そうですよね」
「いいことだけれどね」 
 このこと自体はです。
「ただ好き嫌いはあまりね」
「出すものじゃないですか」
「好きな感情はいいの」
 こちらは構いません。
「嫌いな感情は出さないでね」
「そのことですね」
「新一君は兎に角お顔に出るから」
 好きな場合だけでなく嫌いな場合もです。 
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