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IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニット・ストラトス

作者:ハト胸
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私をなめるなッ!

 
前書き
相川清香
 15歳、紫色の髪に少し明るめな同色の瞳。
 拓夢との仲はクラス公認?距離が一番近い女子である。
 最近は清香の望みで拓夢からISの操縦技術を教わっている。
 その上達速度は中々のもの。飲み込みも悪くは無かった、が一般レベル。
 良くも悪くも、清香は中間レベルのようだ。



 謎のIS。
  名前不明。よって化け物と表記。
  ISなのか分からないが、使われているのは間違いなくISの装甲。
  モチーフは狼だろう。四足歩行で、空を飛ばずに地面を駆ける。
  耳まで裂けた口や、大きな牙、鋭い爪などはISの装甲を抉り取るほどの力がある。
  襲撃目標も、目的も謎である。 

 
 一夏君対鈴ちゃんの試合。
 一緒に模擬戦をやった仲だし、ウチのクラス代表でもある一夏君を応援していた私は、突然飛び込んできた謎のISの攻撃で負傷してしまった。

 鋭く走る痛み。涙がボロボロこぼれるくらい痛い。我慢できないくらい、痛い。
 でも泣き言を言っている場合じゃなかった。私よりもっとずっと重症な先輩が何人もいたのだ。
 その先輩は皆、下級生を守るために自身の体を盾に使った人たちだ。
 あの一瞬で反応して、そして後輩を守ろうとした実力者である先輩。その人たちが全員重症になってしまっていた。

 「どけっ!」

 拓夢君がドアのほうで怒声を上げている。こんな声聞くのは初めてだ。セッシーの時より、比べ物にならないくらい怒ってる。でも、どこか冷静。不思議な人。
 私はこんなに怖くて震えているのに、拓夢君は強い意志で皆の先頭に立とうとしている。
 それがとても格好良く見えて、憧れて、羨ましくて、妬ましかった。

 私も、あんな風に強くなりたい。そう思ったのがクラス代表決定戦の時。
 それから訓練して貰っているけど、正直言ってどんどん差がつけられている気がする。
 このままじゃ、拓夢君の傍にいられない、不釣合いすぎて悲しい気持ちが膨らむ。
 
 「負傷者から手を貸して出してあげてくれ!!俺もISで救助活動に移る!!」

 拓夢君の指示に、先輩達が何も疑わずに従っている。凄い、冷静な判断だ。
 重症な人は、ベンチの大きめの破片と制服の上着を使って即席担架を作って運んでいる。
 拓夢君もPICを、ISと重症の先輩に同時に使って少しの揺れも許さないという気迫が伝わってくる。

 「悪い清香。先にやばい方の人から運ぶ!ちょっと我慢してくれ」

 切羽詰った声でそう言う拓夢君、焦った顔をしている。

 「う、うん。気をつけて・・」

 本当はもっとちゃんと言いたかった。でも、この差がすごく遠く感じて、声が詰まってしまう。
 もっと近くに居たい。でも、拓夢君は遠すぎる。

 重症の先輩を運んでいる最中、軽症で動ける人は怪我している人の応急手当をしていた。

 「これは、医務室に行かないと無理ね。・・・かなり深くまで刺さっているから、抜いたら大量の血が出るに決まってる。・・・そのまま出来るだけ刺激しないように医務室へ!」

 「は、はい」

 一人の先輩が私の怪我を具合を見てくれた。
 やっぱり危険らしい。今は刺さっているから血が出てないだけ。でも、痛みが引いたのはいいけど感覚が無くなってるのは怖い。このまま腕が動かなくなっちゃうんじゃないかって、怖い。

 「清香、待たせた!今すぐつれてくから・・・・」

 「それより!」

 拓夢君の言葉を、大声で遮った。
 今は、彼の優しさが辛かった。自分勝手な、私のわがまま。

 「はやく一夏君たちを助けに行って?私は、一人で行けるから・・・」

 「だけど・・・・」

 「いいから!・・・私は、一人でも大丈夫だから」

 「・・・・・・分かった。無理すんな」

 「・・・うん」

 それだけ言うと、拓夢君はISの手を光らせながら隔壁を突き破ってアリーナの中へ入っていった。シールドが直ぐに修復されて、穴は埋まってしまった。

 行かなくちゃ。
 拓夢君にああまで言ってしまったんだから、私がここで力尽きるなんて出来ない。
 震える足に力を込めて、立ち上がる。

 そして、拓夢君が開けた穴を抜けたところで、見つけてしまった。

 「え、・・・うそ、でしょ?」

 余りにもおぞましい、異形の化け物を。
 その装甲は間違いなくISのモノ。でも、人型じゃない。

 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

 耳元まで裂けたクチを限界まで開いて、化け物は叫んだ。
 びりびりと振動が、アリーナを振るわせる。

 アリーナから脱出できた私達を待ち構えていたのは、恐ろしい化け物だった。





 IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニット・ストラトス
                      第32話 私をなめるなッ!





 「ふふ~ん、これは何かな?束さん、こんなの知らないよ・・・」

 音だけが響く。姿は無い。匂いも無い。影も無い。形も無い。だが、存在は有る。
 IS学園の内部。それもアリーナの内部。そこに、篠ノ之束の存在はあった。

 不可視の(かくれんぼ)と言う特種兵装を使用して移動している束は、何者にも捉えられない。それこそ、ISのハイパーセンサーすら看破できない代物。

 もともとの製作者は束だ。インスピレーションで設計しているのもあるが、構造や弱点は完璧に把握している。この不可視の(かくれんぼ)はISは勿論、生き物にも機械にも捕らえられない完璧な隠密行動を可能とする束のお気に入りだ。

 「誰だよ、私の玩具をこんなにしたのは。・・・許さない、許さないよふふふっ。後悔させるだけじゃ駄目だよね・・・」

 不気味な笑いを浮かべた後、束の手が高速で動く。
 空間のディスプレイを叩くと、一つの画面が。写るのは一機のIS。ラファールリヴァイブ。
 現在、IS学園で一機だけ教師が使っていない訓練機だ。

 「こっちへおいで・・・」

 たったその一言で、ISが自動で起動した。そしてガレージから飛び出す。
 束の目にモニター越しに写るリヴァイブは空を駆け、化け物の前に躍り出た。
 単身で、しかも自身の腕にも深い傷を負っているのにも拘らず、周りの皆を逃がそうと囮になった無謀な少女を守るように。

 「ふふっ、知っているよ君の事は。・・・たっくんに一番近い子、束さんより・・・」

 その目は妖しく光る。まるで、モニターに写る少女を射殺さんばかりに。

 「でも、君が居ないとたっくんが泣いちゃうからね。・・・チャンスをあげるよ」

 ラファールリヴァイブは体を開く。少女は一瞬の躊躇いも無く、飛び乗った。
 そして見たことも無い光景が映し出される。

 「・・・・・・へぇ、君も感化されちゃったんだ」

 少女が装備したラファールリヴァイブが輝いた。そして、機体の色が変わったのだ。
 緑から紫へと・・・。

 「ふふっ、君もその子が気に入ったんだ。いいよ、好きにして」

 束さんは首謀者を見つけないと。そういい残して、束はIS学園内部から忽然と姿を消したのだった。





 「これはっ・・・ッ!」

 (最初はただ、拓夢君のマネをしたら少しでも近づけると思っただけだった・・・)
 化け物に足がすくんで、殆どの生徒は行動不能になっていた。
 誰もが確信したのだろう、動けば殺される。この化け物に食い殺されると。
 そんな中、清香は違った。
 一人目の前に躍り出ると、注意を引くように走り出したのだ。少しでも皆から化け物を引き離そうと。そしてその目論見は成功した。

 「あ、あなた・・・っ」
 「あ、あぁ。あああ・・・・」
 「逃げ、ない、と・・・」

 清香の心には皆を助けたいと言うものは無い。ただ、拓夢のように誰かを守るために動けたら、少しでも近づけると思っただけだった。
 化け物が離れたことで、少しだが正気を取り戻した生徒達は移動を開始しようとした。

 それを見計らって、化け物は清香に大きく跳躍、鋭く光る爪で切り裂こうと振りかぶる。
 もう終わった。そう思った清香の前に、影ができる。目を開けると、そこに居たのはIS。ラファールリヴァイブ。
 そして分かった。この機体は、訓練でいつも使っているモノだと。直感なのだが、外れている氣はしなかった。

 化け物の攻撃を弾いたISは清香を迎え入れるように機体を開いた。
 一瞬の躊躇いも無く、ただその心に拓夢に追いつきたいと言う思いを秘めた清香は飛び乗った。

 そして、世界が変わる。

 (──なに、これっ。今までと全然違う!!)

 機体に乗った瞬間、いつもとは違う一体感を感じた。そして、機体が眩い光に包まれたかと思うと、収まる頃には色が紫に変わっていたのだ。

 自分の瞳と髪と同じ色。まるで専用機みたい。

 「これなら、いける!」

 ラファールリヴァイブでの訓練は沢山やった。模擬戦も何回もやった。だから、絶対大丈夫!
 初めての実践を前に、震える体を抑えるために自分自身に言い聞かせる。
 清香は感じていた。今装備しているらファールリヴァイブは、いつもとは違うと。
 感覚が広がる。先輩達が頑張って距離を取っているのが見える。私のほうを見て、驚いている先輩も居る。そして、目の前の化け物は唸りを上げて、私を敵だと認識している。

 コール。若干左前の半身になりながら、ロングライフルを呼び出す。展開までいつもは1秒。だが、今はその半分で出来た。それが自信に繋がる。ISと一体となっている自信に。

 「勝負よ、化け物。拓夢君に教わった操縦、見せてあげる!!」

 「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 来た──ッ。速いが、回避できない速さじゃない。一夏はもっと速かった。
 清香は中空から爪を振り下ろすように襲い掛かってきた化け物を、左へスライド移動することで回避する。

 (すごくスムーズ!しかも、私の言うことを直ぐに聞いてくれる!!)

 訓練用のISは、考えてから動作に移るまで0コンマ何秒かのラグがあるのだ。それがどうしても気になっていたのだが、今はそれが無い。清香は思い通りに動けることを確信した。

 着地した瞬間を狙った、左前足への射撃。実弾がラファールのライフルから飛び、吸い込まれるように化け物の足首、つまり間接部へヒット。一撃で抉りぬいた。威力が上がっている。

 続けての攻撃は流石に回避された。

 (先輩達のところへは行かせない!)

 素早く、化け物と先輩達の間に割り込んで道を塞ぐ。そして打つ。
 ダンダンダンダダダン!!清香が放つ弾丸は、徐々にその間隔が狭まっていく。
 ダダダダダン!!恐ろしいまでの指の動きだ。トリーガを引いてからもう一度引くまでの速さが尋常ではない。連射型ではないライフルで、清香は物凄い速射を見せていた。

 (指が動く、早く打てる、当てられる!)

 この化け物みたいな敵を倒せれば、拓夢に追いつけるかもしれない。清香はその一心で、紫に染まるラファールリヴァイブを操り、ロングライフルを打ち続ける。

 「私をなめるなッ!」

 間接部を破壊されては動きが制限される。その状態の化け物には、清香の弾丸を回避し続けることなど出来るはずも無かった。

 GYAAAAAAAA・・・・・・。

 二分後。全身を打ち抜かれた化け物は、地面にくずれ落ちた。

 「や・・・った──」

 それを見届けた清香は、ゆっくりと地面に倒れていったのだった・・・・・・。 
 

 
後書き
き、清香マジTUEEEEEEEE!!と言いたいところですが、これには理由が。
まず出てきた四速歩行の狼を模したIS。コイツは擬似コアを搭載されています。その為、出力は低くシールドも張れないのでこのモロさ。だからこそ、一撃で足首を破壊できて勝利に繋がったんですね。
ですが、清香は確実に上手くなってますからご安心を・・・。 
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