展覧会の絵
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第十四話 泣く女その六
猛はその雅を見続けていた。だが雅が気を失ったところでだ。
由人がだ。四人に言った。
「では後はだ」
「ええ、こいつ等どうします?」
「これからどうします?」
「この場所が何処かを彼に知られる訳にはいかない」
だからだというのだ。
「薬があるな。それを彼に打ってだ」
「眠らせてからですか」
「何処かに放り出すんですね」
「そうだ。場所がわからなければどうということはない」
警察のこともだ。由人は言った。
「それに私達がやったと彼が幾ら喚いてもな」
「どうということはないですね」
「証拠がないですから」
「それに弱みも握った」
雅も見てだ。由人は言う。当然猛への脅迫でもある。
「彼女のこの姿を公にすればどうなるかだよ」
「困るのはこいつ等ですね」
「そうですね」
「そうだ。私達は何があっても大丈夫だ」
少なくともだ。人の法の世界ではだというのだ。
「安心していい。ではだ」
「ええ、こいつ等放り出しますね」
「眠らせて何処かに」
「さて。もう壊れたな」
由人はまた雅を見た。やはり気を失ったままだ。
「これはもう使いものにならん」
「ですね。ぶっ壊れたみたいですね」
「いかれたみたいですよ」
「ならもういいよ」
まさにだ。ものを見る目だった。
「他の娘で遊ぼう」
「ですね。壊れた奴なんかとやっても面白くないですね」
「壊すまでが楽しいですし」
「それじゃあ」
「この娘は服を着せて何処かに捨ててきなさい」
服を着せたのは証拠隠滅の為だ。決して情けではない。
それでだ。また言うのだった。
「では彼も何処かにやってだ」
「ええ、今日は終わりですね」
「それじゃあ」
こうしてだった。猛に薬が打たれその場から外に出された。雅も服を着せられゴミ捨て場に放り出された。雅は完全に壊れた道具扱いだった。
外で目覚めた猛は最初見たものを夢、悪夢だと思った。だが。
鞄の中に入れられていたDVDを家に帰ってみた。それは。
彼が見た光景、雅の痴態がそのままあった。それを見てだ。
猛もまた崩れ落ちた。彼もこうしてその全てが壊れてしまった。
このことは誰も知らない筈だった。だが。
十字は教会でだ。こう神父に話したのだった。
「彼等は遂にやったよ」
「その悪をですか」
「そう、おぞましい悪をね」
「ではどうされますか」
「動くよ。ただね」
「その前にですか」
「うん、悪の裁きの代行の前にやることがあるよ」
こう神父に話すのだった。教会の一室で二人で向かい合って座ったうえで。
「悪により汚された神の僕達をね」
「神は必ず救われますね」
「うん、そうするからね」
だからこそだというのだ。
「彼等を救う為にね」
「まずはそれからですか」
「悪の裁きの代行はそれからだよ」
まずは救い、それをしなければならないというのだ。
「そうするよ」
「わかりました。それでは」
「僕のやることの順番は決まってるよ。神は既に全てを決めておられる」
「では今度は」
「うん。ただ藤会の最後の残党がまだ神戸に残っていたね」
「確か闇金の」
神父は日本の言葉を出した。こうした存在は世界の何処にでもあるが日本ではそう呼ばれているのでだ。十字に対してもこの言葉を出したのである。
「あの者達ですか」
「彼等にも裁きが下されているから」
だからこそだというのだ。
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