おぢばにおかえり

「私は新一君と長池先輩が仲良くなって欲しいの」
「僕がこれだけ嫌っていても」
「どうして嫌いかはわかっているから」
　私にしてもです。
「そこをどうにかなくして」
「残酷なところを受け入れろってことですか？」
「誰だって間違えるの」
　人間ならです。
「そのことをわかってね」
「本当はいい人だとですか」
「理解してくれてね」
「そうですか」
「新一君にとって凄く難しいかも知れないけれど」
　嫌いな相手は嫌い抜くこの子にはです。
「出来るだけね」
「あの人とですか」
「理解してくれて」
　先輩のいいところをです。
「そしてその癖性分が治って」
「あの人と普通にお話が出来る様にですか」
「冗談抜きにさっきも睨んでたし」　
　前よりましな感じはしますけれどそれでもです。
「だからね」
「お話してもですね」
「態度に出てるから」
　表情にもです。
「嫌いだって」
「それも大嫌いですね」
「敵対心丸出しから」
　はっきりわかる位にです。
「全く。新一君の困ったところね」
「嫌いな人とお話しない主義なのは」
「お話してもああなのね」
「何とか少しずつでもですね」
「なおしていってね。まあこのお話は終わって」
　今はそれがメインでないからです。
「今からね」
「図書館にですね」
「案内させてもらうわ」
「お願いします、こっちですね」
「ええ、こっちよ」
　大学のキャンバスの中を一緒に歩きつつ言いました。