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展覧会の絵

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第十三話 ベアトリーチェ=チェンチその二

「どうなのかな。それは」
「そうじゃないの?それだったらね」
「それだったらどうするのかな」
「また仕掛けるわ。今度はね」
「今度は?」
「彼の家に。私が行くわ」
 他ならぬだ。自分自身がだというのだ。
「そうしてそのうえでね」
「今度は彼をなんだ」
「篭絡するわ。それでその時の映像をね」
「同じことをするんだね」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのだ。
「仕掛けるわ」
「そうするのね。それじゃあね」
「今日にでも仕掛けるんだね」
「ええ。それともう一組の方はどうなってるかしら」
「ああ、空手部の二人だね」
「あの二人もね。ぐちゃぐちゃにしてやらないとね」
 気が済まないとだ。雪子は悪魔の笑みのまま話していく。
「だから。仕掛けましょう」
「またDVDを送るのかな」
「また別だよ」
「別?」
「そう、別の方法でいくわ」
 そうするとだ。こう一郎に話すのだった。
「今回はね」
「別の方法ね」
「同じやり方じゃ面白くないからね」 
 それ故にだ。それはしないというのだ。
「だから。それはしないわ」
「じゃあまた別のやり方なんだ」
「そう、そうするわ」
「そのやり方は楽しみにしていていいかな」
「そうしてもらったら何よりよ。それじゃあね」
 雪子は背中にもたれかけさせているフェンスから離れた。そのうえで兄のところに歩み寄ってだ。その悪魔の笑みで兄に語っていく。
「今日にでもね。行くから」
「それで楽しんだうえで」
「心が壊れた相手程篭絡しやすいからね」
「だからああしたのかな」
「そうよ。けれど壊すのは一人だけじゃなくて」
「二人共だね」
「そしてその絆も」
 どれもだ。壊すというのだ。それが雪子の狙いだった。
 そしてそれは彼等だけでなくだ。もう一組もだった。
「だからね。空手部の二人もね」
「仕掛けていくんだね」
「今度はね」
 そのやり方をだ。雪子は一郎の隣に座ってから話す。そしてそのベンチで次第にお互いの身体をまさぐりだ。そうして話をしていくのだった。
 十字は和典からだ。美術部の部室でこんなことを聞いていた。
「サッカー部の彼は最近なんだ」
「うん、学校に来ていないらしいんだ」
「そうなんだ。学校に」
「インフルエンザじゃないかって言われてるよ」
 和典は彫刻の元になるその白い石を前にしながらだ。希望に話す。
「これまで学校休んだことのない人だったからね」
「その彼が登校してこない」
「おかしいよね、やっぱり」
「そうだね。それだと」
「インフルエンザって怖いからね」 
 和典は真実、おぞましい真実を知らないまま十字に話していく。
「下手をしたら死ぬからね」
「昔はそうだったね。けれどね」
「今は違うよね」
「今も確かに死ぬ危険はあるけれど」
 そうした意味でインフルエンザはまだ人類の脅威と言えた。たかが風邪という訳にはいかないことをだ。十字はよく認識しているのである。
 だがそれでもだ。今はだというのだ。
「しっかりとした治療法もあるからね」
「お薬を飲んでしっかりと寝ていたら」
「怖くはないよ」
 そうした病気になっているというのだ。 
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