花の雪
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第一章
花の雪
かつてイベリア半島はムスリム達が治めていた、それでポルトガルの南端にあるアルガルヴェもムーア人のムスリムのオテロ王に治められていた。
王は妻を迎えたいと思いそれで周りに話した。
「この国にはいない様な不思議な者を妻にしたい」
「不思議なですか」
「そうした娘をですか」
「そうだ、この国にいない様な」
こう言うのだった、周りはそれが一体どういった娘か最初はわからなかった。だが宮廷全体で考えてだ。
宮廷の学者の一人がこう言った。
「北の遠い半島の娘はどうでしょうか」
「それはどういった娘か」
王は学者に問うた。
「一体」
「はい、髪は黄金の色で」
学者は王にまずは髪の毛のことから話した。
「そしてさらりとしているそうです」
「縮れてはおらんか」
王は自分のムーア人故に縮れた毛から言った。
「そうなのか」
「そして肌は白く」
「どういった白さか」
「雪の様な白さだとか」
そこまでというのだ。
「何でも」
「雪だと」
「そして目は青いのです」
「ふむ、確かに不思議な姿だ」
王はここまで聞いて強い声で述べた。
「ではな」
「はい、それでは」
「そういった娘をだ」
「お妃様とされますか」
「そうしよう」
王はここでも強い声で述べた、そうしてだった。
その北の半島のある国の姫を妃に迎えた、姫の名はギルダといい学者が言った通りの髪の毛と肌それに目の色であり。
この世のものとは思えぬ整った面長で顎がすっきりした高い鼻を持つ顔と編まれた長い髪の毛を持っていた、王は姫を見るとその瞬間にだった。
心を奪われ彼女を妃にと言い姫も笑顔で頷いた、そうしてだった。
二人は結婚し姫は王妃となり二人は仲睦まじく暮らす様になった、二人で国をmごとに治め宮廷の者達も民も王妃を北の美女と呼んで敬った。
王妃は日々が幸せだといつも心からの笑顔で語った、だが。
毎年冬になると北の方をよく見た、それで王は結婚して何年か経ってから王妃に尋ねた。
「妃よ、聞きたいことがある」
「何でしょうか」
「そなたは冬になるとよく北の方を見るな」
このことを聞くのだった。
「そちらはそなたの故郷の方角だが」
「はい、実は冬になるとです」
王妃は王の問いに答えて述べた。
「雪を思い出しまして」
「雪か」
「ここでは滅多に降らないそうですが」
「うむ、余も雪というものが白く世を覆うものとは聞いている」
王は学問から知ったことを話した。
「そうだが」
「それでもですか」
「見たことがない」
こう王妃に答えた。
「残念だがな。しかしそなたは雪が見たいか」
「そのことだけが満たされません」
この国で幸せの中にあってもというのだ。
「残念ですが」
「そうか、しかしだ」
「それでもですか」
「雪は白い、それならだ」
王はこのことから考え王妃に話した。
「余に考えがある、冬は無理だが春を待ってくれるか」
「春ですか」
「そうだ、春だ」
この季節をというのだ。
「そうしてくれるか」
「王がそう言われるのなら」
自分が愛し自分を愛してくれる彼がというのだ。
「それならば」
「うむ、待っておるのだ」
王は王妃に告げた、そうしてだった。
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