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<ポケットモンスター トライアル・パレード>

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1章「新しい旅先」
  4話「バッチ狩り娘マナオ 彼女の約束」

 
前書き
ポケモンの二次小説です。主人公はサトシです。ご興味あれば、1話からお読み下さい。

(注意)
掲載された作品で、文章の変更や文章ミス・誤字脱字などに気付きましたら、過去のも含めて後日改めて修正する可能性もあります。 

 
サトシとピカチュウ、そして旅の仲間に加わったヒョウリは、ミョウコシティを出て、次の街を目指して、西に進んでいった。彼らが、街を出てから、1時間程が経過した。暫く歩いていると、森が見えてきた。彼らは、そのまま森の道へと入って行く。
二人が、森に入ってから暫くして、ヒョウリがサトシに話しかけた。
「ところで、サトシ。お前、地図とか買って用意してるのか?」
「え?いや、持ってないけど」
「そうか」
「・・・もしかして、そっちも?」
「あぁ」
「ピィカ?!」
「えぇぇ!・・・どうしよう、道分からないじゃん」
「いや、俺に文句言うなよ。普通、旅に出るなら用意するもんだろ」
「いや、そうだけど」
「サトシも、今までたくさん旅してたんだろう。地図は、どうしてたんだ」
そう言われて、サトシは少しだけ目を逸らしながら答える。
「今までは、その、仲間に・・・頼ってたからぁ」
「ピカピ」
「・・・ハァー」
サトシは、ピカチュウに、少しだけ目を細められ、ヒョウリからため息をつかれる。
「まぁ、地図は持ってないが、これがあれば」
ヒョウリは、左腕を自分の胸まで上げた。
左手には、金属で出来た腕輪の様なものが嵌めていて、右手でその腕輪のボタンのようなものを押した、すると腕輪から薄い光の線が数本伸びて、それが増えていく。すると、その線が濃くなっていき映像のようなものが出来た。
「おぉ、スゲェ。それって?もしかして、最新のポケナビ?ポケッチとかか?」
それを見たサトシは、驚き、テンションを上げて、腕輪に顔を近づけて聞いてきた。
「ん?あぁ、いや、俺個人の奴だ。既製品を使って、自分なりに改造して作ったんだよ」
ヒョウリは、サトシのリアクションに少し驚いたが、答えた。
「一応、ハルタス地方のマップデータを入れているから、あとは位置座標や距離測定、電波受信等で現在位置を補足しながら、道が分かる。ただ、ここ最近で道が変わり、自然によって通行止めになったりしてるのは、分からないがな」
ヒョウリは、マップを表示しながら、そう説明した。
「もしかして、ヒョウリって科学者、発明家とかなのか?」
「いやいや、ただそういった技術系の知識と腕があるだけでそっちが本業という訳じゃないよ」
「そうか。俺の以前、旅をしていた仲間に、発明好きの奴が居てな」
それからサトシとヒョウリは会話をして、ヒョウリのマップを頼りに、森の中を進んでいった。森に入ってから2時間が経った、次第に森を抜けていき、徐々に視界のいい、草原に挟まれた一本道に出た。
「やっと、森を出た」
「ピカ」
「この先、あと30分程、この道を歩いて行けば、コンビニあるからお昼にそこを寄って行こう」
「あぁ、そうだな」
「ピカピカ」
暫くして、ヒョウリの言った通り、コンビニが見えた。店の看板にPという文字を掲げている。シンオウ地方からホウエン地方まで全国展開しているコンビニストアのチェーンの1つ「Pマート」。その規模は、フレンドリィショップに匹敵するとのこと。駐車場には、車やバイクが止まっていた。コンビニの中には、何人かがコンビニで買い物をしたり、外で飲み物を飲んでいた者も居た。他にも、ポケモンを連れたトレーナーも休憩を取っていた。
サトシ達も、コンビニに入り、昼食や道具などの買い物をした。それから、サトシたちは、買い物を終えて、外に出た。そのまま彼らは、コンビニのすぐ側に、テーブルや椅子などが置かれた休憩所があったので、そこで食事を取ることにした。
「そういえば、サトシって、あちこちのリーグ戦に出場したんだろう。ジムバッチ、結構持ってるのか?」
食事中、ヒョウリから質問をされ、サトシは答える。
「あぁ、カントー地方やジョウト、ホウエン、シンオウとか50個以上はあるかな」
「ほお、ベテランのポケモントレーナーだな」
「そ、そうか。へへ」
二人がそんな、会話をしていると。少し近くの席で座っていた人物が、二人の会話に耳を反応させた。そして、二人の姿を横から睨んだ。


それから二人は、10分程で休憩所を出た。
ヒョウリがマップを使ってナビゲートしながら、彼らは次の街まで歩き続けた。暫くして草原の地帯から、人気のない林の中へと入っていく。サトシは、左右を見渡し、野生のポケモンがいないか見渡した。一方、ヒョウリは、マップと正面を見ながら、サトシと並んで歩いている。その時だ。
「!」
ヒョウリは、正面から何かが来ているのに気が付いた。
「伏せろ!」
咄嗟に、前触れもなくそう叫び、蹲んだ。ヒョウリの声を聞いて、ピカチュウも同様に。
「え?何?」
だが、サトシだけが突然のことに、対応出来ず、正面から飛んできた何かがサトシの顔へと向かった。
「ガァ」
その何かが、サトシの顔に直撃し、彼は倒れた。
「ピカピ」
「いてぇ!」
サトシは、両手でぶつかった場所を押さえた。一方、サトシにぶつかったそれは、白くて細長い、まるでブーメランのように、回転しながら宙を舞い、サトシたちの後方を飛んでいた。が、途中で円を描き、引き換えしてきた。そのまま、立ち上がったサトシの後方から向かった。
「ッ、痛。・・・今のは、なん、ガァ!」
今度は、サトシの後頭部に直撃して、彼は前に倒れた。
「いてぇ!一体、なんだ!」
サトシは、自分の顔と後頭部を両手で抑えながら、そう叫ぶと。
「フフフ」
突然の誰かの笑い声が聞こえた。
「「「!?」」」
その笑い声に反応するサトシ達は、辺りを見渡す。
「誰だ?どこにいる?」
そして、サトシは、正体が分からない相手に問うと、すぐに返事をした。
「ここだよ」
そう答えた相手は、サトシ道の先の林から飛び出してきた。飛び出した相手を、サトシ達は見ると、一人の人間と1体のポケモンだった。
「痛い目に会いたくなければ。・・・バッチ寄越せ」
そう言った人間の方は、フード付でチャック式のパーカーに、ショートパンツの格好をしていた。顔は、フードは被っていた為、はっきり見えないが、先程の声からして、どうやら女の子のようだった。
(女の声か、それと隣のポケモンは)
ヒョウリは、フードの女から、その隣にいるポケモンを見て、正体がすぐに分かった。
「カラッカ」
「カラカラ」
カラカラは、(こどくポケモン)。じめんタイプのポケモン。頭に骨のヘルメットを被っていて、本当の顔を見た者はいない。また、被っている骨の染みは、会えない母親の思って泣いた時の涙のあとと言われている。
突然、現れた女とカラカラに警戒するサトシ達。そこで、ヒョウリが問いかける。
「バッチを寄越せと言ったな」
「・・・えぇ、言ったわよ」
「まさか、お前、バッチ狩りか?」
「そうよ」
二人の会話を横で聞いていたサトシは、彼女へ怒った声で話す。
「何!バッチ狩りって、他人のバッチを取るって言うのか」
「そうだけど、それが何か?」
「何かじゃないだろ。何を考えてるんだ!」
「ん!」
女は、サトシの激怒した顔に、少し怯んだ反応を示した。
「ジムバッチは、そのトレーナーがポケモンと一緒に頑張ってバトルして、苦労して勝利した者だけが貰える大切な証なんだぞ。それを奪うなんて、何を考えてるんだ!」
「ピカピカ」
「ッ。渡さないのね」
「当たり前だ」
「そう。・・・なら、力尽くで」
「!」
サトシとピカチュウ、女とカラカラは、互いに向かい合い睨み合い、闘争心が徐々に湧き出て、もうあと1歩でバトルをしようとした瞬間。
「ちょっと、待って」
「「!」」
二人の闘争心は、ヒョウリの言葉で止められた。
「なんだよ、ヒョウリ」
突然、割って入り止めてきたヒョウリに、サトシは文句を言う。一方、女の方は。
「どうしたぁ?ビビって、バッチを渡す気になったのかなぁ?」
彼女は、少しニヤついて、舐めた口で聞いてきた。
「いいや」
「って、ちょい。じゃあ」
「お前は、俺らからバッチを取ることが目的なんだな?」
「・・・そうだけど」
「そうか。・・・なら、残念だな」
彼女は、ヒョウリが一体何を言いたいのか理解出来ないでいたが、次の言葉で理解した。
「俺らは、今・・・バッチ0だ」
ヒョウリが回答してから、暫くその場に沈黙が漂った。
「ハッ?」
彼女は、そう声を漏らし、数秒間黙った。
「・・・ハァ!いやいや、だって、さっきコンビニの側で」
「ん?」
「だって、バッチ50個以上持ってるって、言ってたじゃん」
「あぁ、君もさっきの休憩所に居たのか。なるほど、それで俺らを狙った訳か」
状況を把握したヒョウリは、納得したように話す。一方、女の方は。
「お前、嘘ついたのか?」
サトシに向かって怒りを放つ。それに対して、サトシも反論した。
「嘘じゃない!持ってるさ。ただ、今までの全部家に置いてきただけだ」
「・・・ちなみに、家はどこよ?」
「マサラタウンだ!」
「マサラ、タウン・・・どこかで」
「ジョウト地方より向こうのカントー地方の街だよ」
「カントォー?」
マサラタウンの言葉を聞いた彼女は、場所を思い出せ無かった。その彼女に、ヒョウリが教えると、驚いたリアクションを見せた。
「で、君。どうするの?バッチを持ってない俺たちと、バトルする?」
そう言って、ヒョウリは腰のモンスターボールを1つ取り、見せる。
「くっ、こうなったら」
「カラッカ」
ヒョウリの挑発に、彼女とカラカラは構えた。そして、彼女は、大声で叫んだ。
「撤収!」
「カラカラ!」
彼女の号令と共に、彼女とカラカラの二人は、一目散で奥へと駆けていった。
「あぁ、待てぇ!」
逃げる二人に、サトシは呼び止めるが、すぐに姿が見えなくなってしまった。
「くそ、なんだよ。あいつら」
「ただの地元の不良娘ってところかな」


そんな出来事があったが、サトシ達は、無事に林を抜けることが出来た。そして、ある田舎の村が見えてきた。
「あぁ、やっと外に出られたぁ~」
「ピカァ~」
「やっと村が見えたか」
視界に見えるのは、広い土地で田舎の村だった。
「さて、この先の道は、村を抜けて北西に進むと次の街へ行けるが、その間に森や山を超えないといけない。少し早いが、今日はこの村でキャンプだな」
「え?ここポケモンセンターとか宿屋はないのか?」
「あぁ、ここは、はっきり言って田舎も田舎、ポケモンセンターも宿屋もない。ただ、民家があるだけの村さ。ちなみに、店もないから、買いに行くなら、さっきのコンビニに戻る必要がある」
「そっか。ところで、ここはなんて村なんだ」
サトシの問いに、ヒョウリは口でなく指で示した。サトシは、その指先へ目を向けると、斜めに倒れて、寂れている看板を見た。その看板の書かれている<ノウトミタウン>という文字が微かに読めた。
「さて、ここじゃあ。キャンプは出来ないから、もう少し先へ行こう」
「あぁ」
二人は村の中を進んでいった。周りは、田んぼや畑が僅かにあるが、殆どが、草原だった。
村の家屋は、見える範囲で20件も無い程で、見かける人も数人程度しか見えなかった。
「結構、人も家も少ないんだな。あと、なんか寂しい感じがする」
「ピカ」
「ノウトミタウンは、俺も訪れたことがないが、話で聞いたことはある。20年前まで、広大な田舎で農家が多くて、周囲の街や地方にも農作物を出していたが、年々若者が減って行った上、他の街で農作物の生産が活性化して行き、結果他へ移住する人や農作物を辞めた人が増加したんだ。そして、今の現状は、ここに残った人たちは、自分たちの分だけ食料を確保して生活しているって感じだな」
「そうなことがあったのか」
暫く歩いて行って、二人は開けた土地を見つけた。
「よし、ここをキャンプ地としよう。周囲には建物も畑もない。完全に空き地だな」
ヒョウリが、そう言って荷物を降ろした。サトシとピカチュウは、疲れたのか倒れた大木に、腰を着ける。
「ふぅー、疲れたな」
「ピィカァ~」
それから、二人でキャンプの用意をすることにした。暫くして、夕食や夜に備えて薪集めなどをしていると。
「たく、あの女、絶対許さない」
サトシが、急に愚痴り始めた。それにヒョウリは、問いかけた。
「なんだ、ホネブーメランの2連撃か?」
「違う、いや、それもあるけど、そっちじゃない。バッチのことだよ」
「あぁ、いうことする奴、探せばどんな地方に一人や二人いるもんさ」
「だから、許せないんだよ。他人の努力を奪う行為なんて」
「まぁ、まぁ、良かったじゃねぇか。何も取られる事なかったし。まだ、バッチを1つも取って無いのが功を奏したな」
「なんか嫌だな。それ」
そうやって話していると、二人に近づいて来る人物が居た。
「君たち、他所から来たトレーナーさんかい?」
二人は、話しかけた人物に反応する。その人は、村の人だと思われる中年男性だった。
「あぁ、はい」
「えぇ、今日は一晩だけここでキャンプします」
彼に対して、サトシとヒョウリは答える。
「そうか。私は、この村に住んでいる者だ。いやぁ、この田舎に宿屋が無いから苦労かけるねぇ」
「いえ、俺、キャンプとか好きですから」
「ピカァ」
「そうかい。あぁ、そうそう。もう1つだけど」
「?」
「さっき、バッチを取られた、取られていないとかを話していたが。もしかして、女の子とポケモンのカラカラにバッチをせびられたかい?」
「あ、はい」
「そうです」
男に聞かれて、サトシとヒョウリは答えた。
「あぁ、やっぱりかぁ。大丈夫だったかい?」
「はい、俺達は、何も取られていませんから」
「えぇ、被害と言えば彼の頭に骨が2回当たりましたが」
「ム」
ヒョウリに少し馬鹿にされたような気がして、少し怒るサトシ。
「ピカァ、ピカァ」
「悪い、悪い」
それを宥めるピカチュウ。ヒョウリも、少しからかったことに謝り、男へ質問した。
「それで、その子を知っているのですか?」
「あぁ、この村の子さ。名前は」


同じ頃。先程、サトシ達を襲ったフードの女とカラカラは、ある古い家に向かって居た。家は、古い和風系の木造一軒屋。屋根は瓦で敷かれているが、所々ひび割れた瓦や抜けて木が見えている所があった。壁も木が少し汚れているだけでなく、所々凹んだり、割れているところあった。あとは、穴が空いているのか、釘と木材で補強している箇所も見受けられた。
女は、家の前に着くと。両手で、顔を隠していたフードを下げた。フードの下は、赤色と黒色が混ざったようなマルーン髪色のセミショートに、顔立ちは10歳位の少女だった。
「ふぅ、よし」
家の戸の前で、一息着けると戸を開けた。
「おばあちゃん。ただいま」
「カラカラ」
家の中に、大声で言うと。
「あら、おかえり。マナオ、カラカラ」
家の奥から腰を悪くした高齢の女性が現れた。
「今日も、特訓して来たのかい?」
「あぁ、う、うん。・・・そうだよ、おばあちゃん」
祖母に、聞かれたマナオと呼ばれた少女は、その質問に何かを隠したかのように、嘘をついた。
「あ、そうだ。予備の薪がもう無かったよね。今夜も必要になるし、裏で薪割ってくるねぇ」
「あ、そうかい。すまないねぇ」
「いいよ。お婆さんは、無理しないで。行こう、カラカラ」
「カラァ」
そう言って、マナオはカラカラと共に、家の裏へ行った。


「マナオは、今ではこの村の唯一のポケモントレーナーでねぇ。今年、10歳になったから3ヶ月前に、トレーナーとして旅立ったばかりなんだよ」
「そうですか」
「あの」
「ん?」
「その、マナオは、どうしてバッチ狩りのようなことを?」
サトシの質問に男は、少しだけ間を置いて語り始めた。
「遂1ヶ月程前、旅立ったはずのマナオが突然、村に戻って来たんだよ。理由は、少しの間、ここで修行する為と言って、それ以上のことは言ってくれない。それに、誰も詳しい理由を聞かなかった。あ、隣いいかな」
「あぁ、はい」
男は、サトシが座っていた同じ倒れた大木に座り、話を続けた。
「実は、この村で、幼い子供は、マナオ位しかいなくてね。それで、赤ん坊の頃から村中から可愛がって貰っていた。だけど、彼女が、6歳の頃に両親が事故に遭って亡くなってしまい、祖母と二人暮らしになってしまった。そこからかな。他の村や町の子供とよく喧嘩をするようになって、赤の他人と仲良く出来なくなってしまった。あの子が親しくするのは、よく知っているこの村の人間と、唯一の肉親である祖母とカラカラだけ。日々、カラカラと遊んだり、野生のポケモン相手にバトルして勝ったりと。将来は、いいトレーナーになるんだろうなと村でも思われていた」
「「・・・」」
「そして、10歳になってからポケモントレーナーとなって、カラカラと一緒に旅立ち、戻ってきた。理由は、修行と本人は言ったがねぇ。実は、おじさん。この村の近くにあるハルタス地方のポケモンジムで働くスタッフと知り合いなんだがねぇ。どうやら、そのジムに何度も挑んだけど、全部負けたみたいなんだ」
「「!」」
「おそらく、連敗したことが、相当ショックだったんだろうね。それで、この村に返ってきた」
「けど、それで、なぜバッチ狩りを。自分でバッチを取ろうとしていたのに」
「おそらく、約束だよ」
「約束?」
「以前、あの子に聞いたことがあるのさ。生前の両親と祖母に約束をしたって。ポケモントレーナーになったら、凄いトレーナーになった証を持って家に帰るって見せるって。既に、両親は亡くなっているが、家にある両親の仏壇に見せたいのさ」
「証、それでジムバッチか」
「あいつ、だからバッチを」
「だけど。さっき言った通り、結局バッチを取れなかった。だから、バッチ狩りなんて馬鹿なことを考えちゃったみたいなんだ。この辺りを通るトレーナーに手当たり次第、バッチを賭けてバトルを挑んだりした。時には罠を仕掛けて奪うとしているんだ。今のところ、一度も成功していないみたいで。仮に取ってもすぐに奪い返されたり、バトルで負かされたりで事は済んでいるらしいがね」
「その事、村の人達で、本人に何も言わなかったんですか?」
ヒョウリは、聞いた。
「あぁ、もう既に言ったよ。それと彼女からも事情を聞いた」
「それで詳しい訳ですか」
「村の人間で、このままじゃあ駄目だと思い、あの子に一度言った方がいいと考えた。それで、私が代表して、あの子に言う事にしたよ。けど」
「けど?」
「あの子に頭を下げられて、お願いされたんだよ。バッチ1つだけ、それだけをお婆ちゃんに見せたら、こんな悪いこともう辞める。そして、バッチは本人に返すって」
「「・・・」」
「その後、相手に事情を言って、借りようとしたけど。何度も断られて結局借りることも出来なかったらしい。その結果が、君たちってことになる。本当、すまないねぇ。これは、私の責任でもある」
「なるほど、答えて頂きありがとうございます」
ヒョウリは、男へ礼を言った。
「いや、被害を受けた君たちには、言うべきだと思っただけだよ」
サトシは、話を聞き終え、何かを考えて立ち上がった。
「だけど、やっぱり間違ってる。約束したなら、他人から奪ったものでも借りたものでも駄目だ」
「まぁ、確かにな」
「あの子に、一言言わないと」
「ピカピカ」
サトシは、そう言って、マナオに説教をするつもりになった。そこで、ヒョウリは、男に聞いた。
「その子は、どちらに住んでいるのですか?」
「あぁ。ここから1キロ程、北に歩いた所に小さなボロ屋があるんだけど。そこに、高齢のおばあさんと一緒に、孫娘であるマナオと一緒に住んでいるんだ」
男は、そう言って、指を北へ向けた。


マナオは、薪割りを終えて、家の奥にある自分の部屋に居た。そこで、上張りが破れたり穴が空いたりした襖を開けて、中に上半身を突っ込んで、押し入れの奥で何かを探していた。
「よいしょ」
そして、体を出して何かを取り出した。彼女の手には、錆びついた鍵のかかった金属の箱があった。
「カラカラ、行こぉ」
「カラッカ」
「おばあちゃん、ちょっと出掛けてくる」
「そうかい。晩飯までには、戻るんだよ」
「うん」
マナオとカラカラは、家から出かけて、近くの林へ向かった。林の中に入ると、丁度広いスペースの空き地があり、そこにあった大きな切り株に、彼女とカラカラと座った。マナオは、持ってきた金属箱を開けて、中を見た。そして、中から何かを取り出し、それを見る彼女。
次第に、彼女の両目には涙が溢れてきた。
「私、このままじゃあ」
彼女が、悲しい顔をしているのを、それを見たカラカラが励まそうとする。
「カラカァ」
「カラカラ。そうだね」
彼女は、両手で涙を拭き取ると、カラカラを抱きしめた。
「泣いても仕方ないよね」
それから暫くして、二人でいろいろと話をしていると。
「よし」
「出来たな」
「完璧にゃ」
林の奥の方から、誰かの話し声が聞こえてきた。
「ん?」
そこへ、マナオとカラカラが近づいていく。
「誰か、そこに居るの?」
林の向こうにいる何かに話しかける。
「ヤバい」
「誰か来るわよ」
「隠れるにゃ」
マナオは、林の奥へとドンドン行くと、林を抜けた向こうが見えた。
「あれ」
しかし、そこには誰も居なかった。
「おかしいな、さっきまで声がしたのに」
「カラァ」
前へ前へと歩いて行くマナオとカラカラ。周りを見ながら、歩いて行くと。突然、ガサッとマナオの足が地面を抜けた。
「・・・え」
「・・・カラァ?」
そのまま、ズルッとなぜか柔らかい地面の中を、体ごと擦り抜けていき、カラカラと共に、地面の中へ落ちていった。
「きゃあぁぁぁ」「カラァァァ」
マナオとカラカラは、悲鳴を上げた。
「いたっ」「カラッ」
二人は、落下後に尻を激しく地面に打って状態で着地した。
「いたたた。・・・一体、何なのよ」
彼女は、打った自分の尻を摩りながら、空を見上げた。そこには、土色で大きな円状の空間に真ん中は、青空と白雲の景色が見えた。彼女は、それを見て状況が理解出来た。
(お、落とし穴?落ちたってこと、私達。)
深さは、10mはあるだろうか。マナオは、落とし穴の周りや上を見た。
(一体誰が、こんな所に落とし穴を)
マナオが、そう考えていた時だ。穴の向こうから、誰かの声が聞こえてきた。
「一体、何なのよと聞かれたら」
「答えてあげるが世の」
「ストップにゃ」
「何だよ、ニャース。俺のセリフの途中だぞ」
「折角、キマって登場してるのに」
「ジャリボーイとは、別の奴が掛かったのにゃ。そんな事、やっている場合じゃないにゃ」
「「あぁ」」
外で話している者達は、マナオが入っている落とし穴に、顔を覗かせた。覗いたのは、大人の男一人と女一人、そしてポケモンのニャースだった。
「あんた誰よ」
覗いた一人の女が、マナオに聞いてきた。
「あんた達こそ、誰よ」
マナオは、面と向かって、そっくりそのまま返した。
「俺たちは、ロケット団だ」
すると、今度は男の方が返してきた。
「チッ、折角ジャリボーイのために掘った穴を」
「だから、落とし穴じゃなくて、ボタン式のネットトラップにしようって言ったのに」
「何?私のせいぇ?」
「ムサシが、言い出したんだぞ。穴の方が確実だって」
「コジロウのは、用意に時間掛かるし、金も掛かるというから、仕方なく提案したんですけど」
「だけど、結局関係ない奴が落ちただろうが。落とし穴は、狙ってやらないと引っ掛けるの、結構難しいだから」
「まぁまぁ、もう仕方ないにゃ。こうなったら、獲物を変更だなにゃ」
マナオは、急に喧嘩する3人を黙って見ていたが、怒鳴った。
「だから、あんた達は、一体何者なのよ!」
「「仕切り直しだ」」
彼女に怒鳴られたムサシとコジロウは、仕切り直しで口上を再度はじめた。
「一体何者なのよと聞かれたら」
「二度目でも答えてあげるが世の情け」
「は?」
突然、何かを始めた彼らに、マナオは気の抜けた声を出した。
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵役」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆ける、ロケット団の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「ニャーんてにゃ!」
「ソーーーナンス!」
彼らにとって、登場で決まって行う口上を終えることが出来て、テンションを上げた。
「よぉし、ちゃんと言えたぜ」
「やっぱ、これやらないと締まらないわね」
「確かに、これはやって起きたい気持ちは分からない訳でもないにゃ」
「ソーナンス」
そんな彼らは、自分たちで話を盛り上げていこうとしていたが、無視した上に、落とし穴に落とされた怒りが上がっていき、マナオは再度怒鳴った。
「あんた達は、ほんとなんなのよ!」
落とし穴からの怒鳴り声に、ロケット団達は、マナオへ振り返る。それに、コジロウが答えた。
「今説明した通り、ロケット団さ」
「ロケット団?どっかで、聞いたような聞いてないような。・・・あ」
マナオは、ロケット団という名前に心当たりがあったのか、少しだけ記憶を整理して、思い出した。
「ほ、やっぱり知っているか」
「そりゃ、私達、ロケット団が有名人だからよ」
自慢気に話すコジロウとムサシ達へ、マナオは自身満々に答えた。
「どっかの漫才トリオでしょ」
「「違うわぁ!」」
ムサシもコジロウも大声で、怒りの声を上げた。
「誰がお笑い芸人だ!」
「ふん、田舎娘には、所詮私達の凄さを知らないのね」
「ニャー達は、悪者にゃ!」
そうマナオへ話していると。
「お、なんだ。この箱」
コジロウが、足元にあった箱を見つけて、持ち上げた。
「あ」
マナオは、それを見て気付いた。彼女が、先程まで持っていない金属の箱だ。落とし穴に落下する際、手から離れて、地上に残して落としてしまった。
「私の宝箱を返しなさいよ」
すぐさま、マナオは文句を言った。
「ほう、宝箱か」
「じゃあ、これはニャー達が貰うにゃ」
「ちょ、何よ。それは、私のなんだから返して」
「あんたのものは私のもの、私のものは私のもの」
「なっ」
話しが通じない上、横暴なロケット団にマナオを言葉が出ない。
「ちなみに、こっちもな」
そんな会話をしていると、コジロウが何かの手のようなものが付いた道具を取り出す。すると、手のようなものがアームハンドとして伸びていき、マナオの隣にいたカラカラを掴んだ。
「カラッカ!」
「あ!」
「よし、ゲットだぜぇ」
アームハンドに捕まったカラカラは、全身を覆われて身動きが出来ない。そんなカラカラを、コジロウが器用に操作して、掴んだまま落とし穴から引き上げる。
「ちょっと、カラカラを返してよ」
「誰が返すもんですか」
「カラカラも宝箱も、2つともニャー達が貰っていくにゃ」
「「じゃあねぇ」」
そう言って、ロケット団は落とし穴から離れていった。
「カラカ、カラカ」
カラカラが、叫びを上げて、マナオを呼ぶ。その声は、落とし穴のマナオにも聞こえた。
「待ってぇ!」
その声を聞いて、マナオは必死に落とし穴を登ろうとする。だが、深い上、土が柔らかくて、手や足を引っ掛けると、崩れていく。
「くっ、返して、返して。ッ、返してぇぇぇ!」
マナオは、大声で何度も叫ぶ。その声は、落とし穴から離れるロケット団の耳にも届く。
「たく、うるさいわねぇ」
「それより、早く気球のところへ戻るにゃ」
「そうだな。行くか」
「ソーナンス」
その時だ。
「ピカチュウ、10マンボルト!」
「ピィカァヂューーー!」
その声と共に、激しい電撃が、ロケット団を襲った。
「「「ぎゃあぁぁぁ」」」
ロケット団達は、その電撃を受け、悲鳴を上げる。
「!」
「にゃあ、今の声と電撃はまさかにゃ」
「げぇ、ジャリボーイ」
「それに、あの暴力ジャリボーイもいるぞ」
ロケット団が見た先には、サトシとヒョウリが居た。
「ロケット団」
「昨日の奴らか」
二人は、ロケット団を見て構えていると、近くにある大きい穴から大声がした。
「助けて誰かぁ」
その声を聞いたサトシとヒョウリは、すぐさま落とし穴を見る。
「この声、まさか」
「どうやら、あの女らしいな」
「おい、落とし穴にいるのはマナオか?」
サトシは、落とし穴の方へ向かって、大声で問いかける。
「ハッ、そう私です。お願い、誰か分からないけど、助けて」
「分かった、待ってろ!くそっ、ロケット団も相手にしないといけないのに」
サトシが、そう言うと。
「仕方ないな」
ヒョウリは、右手の裾からモンスターボールを出して、それを投げた。
「いけ、ハッサム」
「ハッサム」
ヒョウリは、ハッサムを出した。
「落とし穴の中にいる女を出せ」
「ハッサム」
ハッサムは、指示を受け、落とし穴に入っていた。
「え?」
「ハッサム」
「わ、ちょ」
ハッサムは、マナオを抱えて、羽で飛んで落とし穴から出た。
「あ、ありがとう。って、貴方達は」
「よぉ。バッチ狩り娘、話は後だ。ハッサムご苦労。そこに居て待機。あとで、合図する」
「ハッサム」
ヒョウリは、ハッサムにそう指示を出した。続けてサトシが、ロケット団に問いただす。
「おい、ロケット団。お前たち、ここで何をしてるんだ?そのカラカラを離せ」
「ふん、別に。あんたを待ち構えていたら、余計なそこの邪魔ガールが釣れただけよ」
「まぁ、お陰でカラカラとお宝は手に入ったがな」
コジロウは、そう言って、アームで捕まえたカラカラを見せた。
「返しなさいよ。私のカラカラと宝箱」
マナオにそう言われると、宝箱を持っているニャースが返事をした。
「誰が大人しく返すかにゃあ」
その隣で、カラカラを掴まえているコジロウが話す。
「お前のカラカラは、我々ロケット団で悪のポケモンとして世界征服の仲間となるのだ」
マナオは、コジロウの世界征服という言葉を聞いて、呆れ顔で返した。
「世界征服?馬鹿じゃないの。大人のくせに」
「うっさいわねぇ。あんたみたいな、ガキンチョには分からなくて結構よ」
「そうだ、そうだ」
その言葉を言われて怒るムサシにロケット団。
「お前たち、マナオのカラカラと宝箱を返すんだ!」
「ピカ!」
サトシとピカチュウは、構えてロケット団を迎え撃とうとする。それを見て、ロケット団も構えた。
「くそ、こうなったら。昨日、注文してやっと来た」
「このシークレットボールを使う時がきたぁ」
ムサシとコジロウが手にして向けてくるモンスターボールは、普通のモンスターボールとは違った。
通常のモンスターボールである上部が赤色、下部が白色となっているが、そのボールは全体が紫色だった。更に、上面部のボタンの上には、<?>と書かれていた。それを見たヒョウリとサトシ。
「・・・あれは」
「なんだ、あのボール」
そのボールを見て、それぞれのリアクションを取った彼らに、ニャースは答えた。
「特別に、にゃーが説明してやるにゃ。これは、シークレットボール。我がロケッ、じゃにゃくて、今月からとある凄い大企業が全国へ展開するポケモンレンタルサービスのボールだにゃ」
「ポケモンレンタル?」
サトシの質問にニャースは続ける。
「そうだにゃ。使ったトレーナーの言うことを聞くように訓練を受けたレンタル制のポケモンを貸し出して、レンタル期間が切れると、会社に返さないといけない仕様だにゃ」
ニャースに続けて、今度はムサシが話す。
「そして、特別に特訓させた強いポケモンが入っているというシークレットボール」
今度は、ムサシに変わってコジロウが。
「投げるまで何が出てくるか。分からないワクワク感」
また、ムサシに戻り説明。
「それでも、そこらのポケモンより強いポケモンが入っていると言われている嬉しいボール」
そして、最後にコジロウが泣きながら話す。
「1回借りるだけでもお金を払わないといけないのに、1回投げて出す度に、レンタル会社にカウントされて、俺たちの給料から天引きされるという財布に優しくないボールなんだぞぉ」
「ソーナンス」
「「・・・」」
ロケット団の説明を最後まで聞いた二人は、黙って構えた。そして、その空気で、バトルのゴングが恐らく鳴り響いた。
「「さぁ、行け。シークレットボール!」」
ムサシとコジロウが息を合わせてシークレットボールを投げた。そして、宙を舞う2つのボールはそれぞれ開いた。
ムサシが投げたシークレットボールから出てきたポケモンは。
「グオォォォ」
「やったわ。ニドキングよ」
ニドキングだった。ニドリーノの進化した(ドリルポケモン)で、タイプは(どく・じめん)。
皮膚が、鋼のように硬く、頭部から長く伸びた角が特徴。その角は、ダイヤも突き刺せて、毒がある。また、太い尻尾で、鉄塔をへし折るは改良を誇る。そして、ニドキングは全ての個体がオスなのだ。
一方、コジロウが投げたシークレットボールから出てきたポケモンは。
「マニュ」
「おぉ、俺はマニューラだ」
マニューラだった。ニューラが進化した(かぎづめポケモン)で、タイプは(あく・こおり)。
普段は、雪が多く降る寒い地方に生息している。基本は、4,5匹の群れを成して、獲物を追い込む。爪を使い、石や樹木にサインを描いて仲間とコミュニケーションを図り、時に連携して、敵を追い込む。サインの種類は、500以上と言われている。
ムサシとコジロウが、ポケモンを出し終えると、ポケモンを出したシークレットボールを見始めた。シークレットボールの正面上部には<?>のマークがあるが、下部には長方形上の枠があった。その欄をじっと見ると二人。
「あら、出てきたわね」
ムサシが、シークレットボールの正面下半分に何かが表示されていた。
「お、本当に出た。何々・・・おっ、結構良いわざを覚えているな」
「あいつら、何やってんだ。ボールをジロジロと」
サトシは、彼らの行動を変に思っていると、ニャースが説明をしてきた。
「にゃーが、説明するにゃ。このシークレットボールは、ポケモンを出すと、入っているポケモンが覚えているわざを、ボール正面の下部分の枠内に表示する代物なのにゃあ」
「そうかよ。・・・ニドキングに、マニューラ!」
サトシは、ロケット団が出してきたポケモンを見て、強く警戒した。
「くっ、気をつけろピカチュウ。かなり手強いぞ」
「ピカッチュ!」
「ヒョウリ、お前も頼む」
「・・・あぁ」
ヒョウリは、少し黙ってたが、サトシの頼みに返事をした。
「さて、俺の新しい仲間を紹介しよう」
彼もバトルに参加する為、ポケモンを出そうと、ベルトのモンスターボールの1つを手に取り投げる。
「いけ!」
投げたボールが開き出てきたポケモン。それを見たサトシ、そしてロケット団が驚きた顔をする。
「あ、あれは」
「な」
「あれって」
それは、サトシやロケット団、彼らが過去に数度見た強いポケモンの1体だったからだ。
「「「ルカリオ!」」」
ヒョウリが出したポケモンのルカリオを見て驚いた。
「げっ、あいつも強そうなポケモン出して来たぞ」
「ふん、こっちだって強いポケモンよ」
「そうだにゃ。やってやるにゃ」
「行きなさい!ニドキング」
「ガアァァァ」
「お前も行け、マニューラ!」
「マニュ」
ムサシのニドキングは、サトシのピカチュウへ、コジロウのマニューラは、ヒョウリのルカリオへ向かった。
「ピカチュウ、でんこうせっかだ!」
「ピカ!ピカピカピカ、ピカァ!」
「ニドキング、どくばり攻撃!」
ムサシに指示を受けたニドキングは、口を大きく開くと、口から複数の(どくばり)を、ピカチュウへ放つ。
「躱せ!」
「ピカ」
「ピカチュウ、10マン。あ、駄目だ。ニドキングは確かじめんタイプ。なら、ピカチュウ、近づいてアイアンテールだ」
「ピカ。ピカァー!」
「ふん、そうはいかないわ。ニドキング、だいちのちから」
「ガアァ」
今度は、ニドキングの前の地面が割れ出し、その亀裂がピカチュウへ向かっていく。
「ピカ!」
亀裂は、ピカチュウの真下と周りへ進むと、一気に裂け出し、ピカチュウの足場が崩れていく。
「ピィカ、ピカァ」
ピカチュウは、足がよろけ、亀裂へ落ちそうになる。
「危ない。ピカチュウ、エレキネットだ」
「ピィカァ!」
ピカチュウの尻尾から放たれた(エレキネット)が、広がり(だいちのちから)に向かって、張ると、その上に着した。その御蔭で、足場を取り戻すことが出来た。
一方、ヒョウリとコジロウは、バトルでは。
「よし、マニューラ。メタルクロー」
「マニュ」
コジロウの指示でマニューラは、爪を光らせて(メタルクロー)を仕掛ける。
「ルカリオ、はどうだん!」
「グゥル」
ルカリオは、両手を前に突き出し、光の球体を生み出し、突っ込んでくるマニューラへ放った。
「マニュッ」
「くそ、こうそくいどう」
マニューラは、(メタルクロー)と行いながら、(こうそくいどう)で速く移動し、間一髪で
(はどうだん)を躱す。
「続けて、はどうだん!」
ルカリオは、(こうそくいどう)で動き続けるマニューラへ次々と(はどうだん)を放つ。
「ふっ、そんなもの二度は当たらん!近づいて、リベンジで仕返しだ」
「マニュ!」
マニューラは、(はどうだん)を躱しながら移動し、ルカリオへ近づいて行く。それに、合わせてヒョウリは、ルカリオに指示を出そうとする。
「ルカリオ」
そして、マニューラの(リベンジ)攻撃が目の前に近づいた瞬間に。
「カウンター!」
彼が言ったわざをリベンジが当たる寸前で、ルカリオは実行して、紙一重で殴り飛ばした。
「ヴァル!」
「マニュゥゥゥ」
「あぁ」
マニューラは、カウンターで吹き飛ばされ、宙を舞う。
「そのまま、サイコキネシス」
地面に付く前に、マニューラをルカリオは、(サイコキネシス)を使って空中停止させた。
「ニドキングに投げろ」
「何!」
ヒョウリの指示を聞いたコジロウは、声を上げる。ルカリオは、(サイコキネシス)で浮かせたマニューラをそのまま、ムサシが指示出すニドキングへ向けて投げる。それに、気づかないムサシとニドキングだが、ニドキングの真横からマニューラがぶつかってきた。
「ガァァァ」
「マニュゥゥ」
互いにぶつかって、ぶつかったダメージを受けるニドキングとマニューラ。それを見たムサシは、コジロウへ怒鳴る。
「ちょっと、コジロウ!何してのよぉ」
「いや、悪い。けど、あいつが強すぎて」
「ちょっと、あんた。人のバトル邪魔にしないでくれる?」
ムサシは、ヒョウリに指を差して文句を言うが、ヒョウリは言い返した。
「何言ってんだ。これは、言うなればタッグバトルだろ。なら、俺がどっちを攻撃してもいいはずだぞ。サトシ、俺と変われ、ニドキングが相手じゃあ。ピカチュウには難しい。マニューラをやれ。アイアンテールが一番効く」
「あぁ、そっか。よぉし、ピカチュウ交代するぞ」
「ピカ」
サトシは、ピカチュウへ
「く、ニドキング。どくばり」
ニドキングは、再度ピカチュウへ(どくばり)攻撃を仕掛ける。
「ルカリオ、ファストガード」
「グゥル」
ルカリオは、すぐさまピカチュウの前に出て、腕を前に向ける。すると、半透明の赤い円状の盾が出てきて、ニドキングの(どくばり)を全て防いだ。
「ちょっと、邪魔するじゃないわよ!こうなったら、ニドキング。メガホーンよ」
続けて、ニドキングに指示を出し、ニドキングはルカリオ達へ走り出すと、角が光出し、少し大きくなった。そして、角を、ルカリオ達へ向けた。
「ルカリオ、サイコキネシス」
サイコキネシスで、突っ込んでくるニドキングの動きを止めようするが、今のルカリオが無防備状態となり、隙があることに気付いたコジロウ。
「今だ。マニューラ。れいとうビーム!」
マニューラは、(サイコキネシス)を使って動きが鈍いルカリオ目掛けて、(れいとうビーム)を放つ。あと少しで、ルカリオに当たる瞬間。
「させるか。ピカチュウ、10マンボルト!」
ピカチュウの10マンボルトで相殺した。
「くそぉ、おしい」
ピカチュウに防がれて、悔しがるコジロウ。
「すまんな、サトシ」
「気にすんな。今は、タッグバトルなんだから当然だろ」
「あぁ、このニドキングは任せろ」
「あぁ。ピカチュウ、マニューラに、でんこうせっか」
「ピカピカ」
ピカチュウが、一気に走り込んできた。
「来やがった。マニューラ、躱して。メタルクロー」
「マニュ」
「ピカッ、ピカァァァ」
「あ、ピカチュウ!」
マニューラのわざを受け、突き飛ばされるピカチュウ。一方、(サイコキネシス)でニドキングを動きを止めるルカリオ。それに対して、手も足も出せないニドキング。
ヒョウリとムサシは互いのポケモンの押し合いに目を見張っていた。
「やはり、パワーは向こうが高いなぁ。・・・よし、ルカリオ。そのまま、持ち上げろ!」
「ヴァル」
「えぇい、ニドキング。どくばりよ」
「グォウ」
ニドキングの口から放たれた(どくばり)は、動けないルカリオに目掛けた。
「ウワァルルル」
「くそ、踏ん張れ、ルカリオ。そのまま、持ち上げるんだ!」
「グァルゥゥゥ!」
ルカリオは、何とか持ち堪え、そのまま集中と全身力を一点に集中した。そのまま、(サイコキネシス)で動きが止まったニドキングを、徐々に宙に持ち上げていった。
「グァ、グァル」
「な!持ち上げた。もう一度、どくばり」
ヒョウリのルカリオとムサシのニドキングが戦う隣では、ルカリオと交代したピカチュウがマニューラと戦っていた。
「ピカチュウ、10マンボルト」
「ピィカァヂュー!」
「躱せ」
「よし、ピカチュウ。お前の本気を見せてやれ。でんこうせっかで近づけ!
「ピィカァ!」
10マンボルトを躱したマニューラ目掛けて、一気に(でんこうせっか)で目の前に近づく。
「躱せ」
また、マニューラは躱す。だが、ピカチュウは、側に近づいた寸前で、(でんこうせっか)を辞めた。
「マニュ?!」
その行動を見たマニューラは、不審に思った。
「今だ、アイアンテール!」
「ピィカァ!」
「マニュぅぅぅ」
「マニューラ!」
(アイアンテール)を食らったマニューラは、上へと打ち上げられた。
「よし、もう一度だぁ!」
「ピィカァァァ」
落下してくるマニューラ目掛けて、ピカチュウは、(アイアンテール)に力を貯める。
「チュー!」
「マニュゥゥゥ」
「あぁ」
落下したマニューラへ見事にヒットし、そのままマニューラは吹き飛ばされ、そのままコジロウに目掛けて、突っ込んでいった。
「って、おいおいおいおい。げふぅぅぅ」
コジロウは、吹き飛ばされマニューラに激突し、倒れ込んだ。その際、カラカラを捕まえた装置を話してしまった。そして、見事にマニューラは目を回して、気を失っていた。
「やったぜ」
「ピッカァ~」
コジロウは、シークレットボールにマニューラを戻すと。
「くそ、こうなったらカラカラだけでも持って。って、あれ」
「ハッサム」『ガシャン!』
装置を探すコジロウの背後からハッサムの鳴き声と何かが壊れる音がした為、振り返る。すると、カラカラを捕まえていたアームハンドの本体が壊れ、感じなカラカラはハッサムに抱えられていた。
「あぁ!」
「よくやった。そのまま戻ってこい」
「カラカラ」
「カラカッ」
「良かった。無事で」
「カラカラ」
無事に、カラカラを取り戻して貰ったマナオは、カラカラと共に抱きしめ合った。
「ちょっと、コジロウ。何やってんの」
「す、すまねぇ」
ムサシは、負けた上に、カラカラを取り戻されてコジロウに切れる。その隙を、ヒョウリは見逃さなかった。
「今だ。ルカリオ、サイコキネシスで、持ち上げてそのまま投げ飛ばせ」
「しまっ」
「ヴァルゥゥゥ!」
ルカリオを渾身の力で、(サイコキネシス)で浮かされたニドキングを、投げ飛ばした。そのまま、ニドキングは、近くにあったロケット団の作った落とし穴に落ちていった。
「あぁ、ちょっと」
ムサシは、急いで落とし穴を覗いていくと、そこには目を回したニドキングが穴でひっくり返っていた。
「あぁ、私のニドキングぅ。えぇい」
ムサシは、シークレットボールに戻す。
「どうするんだよ?」
「くぅ、こうなったら」
コジロウとムサシが話していると、サトシがピカチュウへ指示を出した。
「ピカチュウ、あいつらに10マンボルト」
「ピカ、チューーー!」
「くっ、ソーナンス。ガードよ」
「ソーナンス!」
ムサシは、バトルに参加して居なかったソーナンスへ指示を出す。すると、ソーナンスは二人の前に現れ、体が光を帯びはじめた。それからピカチュウの電撃わざ(10マンボルト)を受けると、それを反射した。その電撃は、ピカチュウとサトシに向かっていた。
「うわっ」
「ピカッ」
「くっ、ソーナンスのミラーコートか」
このソーナンスは、ロケット団のムサシの手持ちポケモン。ソーナノが進化した(がまんポケモン)。タイプは、(エスパータイプ)。ポケモンの中では、反射系わざが得意なポケモン。物理反射のカウンターや、特殊反射のミラーコートを持つ。自身から攻撃わざを殆ど持ち合わせずに、完全に防御と後手がバトルスタイルになる。また、ソーナンスは、光やショックを受けるものを嫌う性質で、攻撃を受けると、体を膨らませて反撃が強力になる。
このソーナンスは、正にロケット団最強の盾なのだ。ピカチュウとルカリオ、ソーナンスが構えていると。
「おみゃーら、準備出来たにゃ。早く逃げるにゃ」
近くの林の中からロケット団のニャースが、ムサイとコジロウに何かの合図をして来た。
「くそ、仕方ないわねぇ」
「逃げるぞぉ」
ムサシとコジロウは、急いでニャースのいる林へ走って行く。
「あ、待て!」
サトシは、逃げるロケット団を呼び止めるが、それを無視してロケット団は走って行った。
「急ぐにゃ。宝物だけはゲットしたにゃ」
二人を急がせるニャースは、宝物というワードを言った。その言葉に対して、マナオは反応した。
「あ、しまった!私の宝箱が」
「宝箱?」
マナオの言った言葉に、サトシは彼女へ振り向く。ロケット団の二人は、林の方へ逃げて行き、その林の中から巨大なニャースの顔が現れた。
「あれは」
「昨日の、気球か」
「ピカチュウ、10マン」
「待ってぇ」
ピカチュウへ指示を出すサトシを止めたのは、マナオだった。
「何だよ?」
「あれには、私の宝箱が」
「あっ、くそ。ピカチュウの10マンボルトじゃあ。吹っ飛んでしまうか」
サトシは、ピカチュウでの攻撃を躊躇する。
「お、ピカチュウが攻撃してこないぞ」
「その宝箱があるから手出し出来ないみたいよ」
「なら、早く逃げるにゃ!」
気球はドンドンとサトシ達から距離を離していく。
「待って、私の宝物返しなさい!」
「ふん、やなこった」
「悪いが、これだけでも貰っていく」
そう話していると、ヒョウリがルカリオへ指示を出した。
「ルカリオ、サイコキネシス」
「ファルゥ」
ルカリオは、サイコキネシスで気球の動きを止めた。
「「「え!」」」
「止まったぞ」
「嘘ぉ」
「やっぱ、逃げられないのかにゃ」
ロケット団は、青ざめた声で反応するのだが、ルカリオの顔が優れなかった。
「ッ、グルゥ」
「ルカリオ、限界か?」
「ル、ルゥ」
ヒョウリのルカリオは、先程のバトルで体力が消耗し、(サイコキネシス)を使い過ぎて限界に近づいていた。そのせいか、止まった気球も徐々に、上へ上へと上昇する。
「お、動いてるぞ」
「やったぁ。逃げれるわ」
逃げられることに、喜ぶロケット団。だが、ヒョウリは、待機していたハッサムへ指示を出した。
「ハッサム、行け!」
「ハッサム」
「気球へ、エアスラッシュ」
ハッサムは、両腕のハサミを光らせ、一気に前へ振る。すると、光った腕から、光の刃が飛び出した。両腕から1本ずつ、計2枚の刃である(エアスラッシュ)が、そのままニャース柄の気球へ飛んでいき、布を切り裂いた。
「「あぁ」」
「落ちるにゃ」
気球は、落下し、そのまま地面に不時着。その衝撃で、バスケットは傾き、中に居たロケット団は全員、外へ放り出された。そして、盗んだ宝箱も転がって行き。それを、ハッサムが素早く、取り返した。
「あぁ、宝箱が」
ハッサムは、そのまま宝箱を持って戻っていき、ヒョウリに近づく。
「よし、あの女に渡せ」
ハッサムは、指示通り奪い返した宝箱をマナオに返す。
サトシとヒョウリは、
「よぉし。ピカチュウ、10マンボルトで決めるぞ」
「ルカリオ、はどうだん。いけるか?」
「ピィカ」「ヴァル」
ピカチュウとルカリオは、わざを準備する。それを見たムサシは、ソーナンスを頼る。
「くそ、ソーナンス出番よ」
「ソォ、ナン、スゥ」
「ん?」
ムサシが振り返ると、そこには、目を回しているソーナンスが居た。
「駄目だ。ムサシ」
「不時着のダメージで、目を回しているにゃ」
「なにぃぃぃ」
「ふん、どうやら盾を失ったそうだ」
「あぁ、ピカチュウ。渾身の10マンボルトだ」
「ルカリオ、はどうだん」
「ピィカァ」「ヴァァァ」
ピカチュウの(10マンボルト)、ルカリオの(はどうだん)がロケット団目掛けて放った。
「チュー――!」「ルゥーーー!」
(はどうだん)の周りを(10マンボルト)が多い、2つのわざが次第に重なっていき、電撃を帯びた光の球が、そのまま向かっていった。
「「「あぁ、あぁ、あぁ」」」
そして、ロケット団に当たった。
「「「ぎゃぁぁぁ」」」
激しい爆発が起きた。2つわざの力、側にあった気球のガスに引火したのか、大爆発が起きた。そして、その舞い上がる煙の中を、4つの影が飛び出し、天高く飛んでいく。
「もうぉ、折角金払って強いポケモン借りたって言うのに」
「やっぱ、1年もバトルしまくってるジャリボーイに勝つのは厳しいのかね」
「ニャー達も、1年間バトルや苦労してるはずなんだけどにゃあ」
「ソォーナン、スッ!」
「「「やな感じ〜~~!!!」」」
ロケット団は、そのまま再び彼方先まで飛んでいき、星の如く光った。
「大丈夫か、ピカチュウ」
「ピカァ」
「ルカリオ、ご苦労だった」
「ファルゥ」
「ハッサムもだ」
「ハッサム」
そして、サトシはピカチュウを抱えて、ヒョウリは2体をモンスターボールに戻した。
「ふぅー、疲れたな」
「あぁ、全くだ」
サトシとヒョウリがそう話していると。
「あ、あの」
宝箱を持ったマナオが二人へ話しかけた。
「「ん?」」
「その、あ、ありが・・・とう、ございます」
「カラァ」
マナオは二人へお礼をいい、頭を下げた。その隣に居たカラカラもマナオに続けた。
「あぁ」
「別に気にするな。あいつらを毎回やっつけるのは、慣れてから」
ヒョウリとサトシは、彼女にそう言った。
「その宝箱、大丈夫か」
「あ、はい」
彼女は、持っている宝箱を見る。そして、中身を開けた。そこには、1枚の写真と、小さなおもちゃがいくつか入っていた。その写真には、小さな女の子とポケモンのタマゴ、そして
大人の男性と女性、それに老婆が写っていた。それは、マナオの家族写真だった。
「ッ」
彼女は、その写真を見て、涙を浮かべた。そんなマナオを見たサトシ達は、ただ黙って見ていた。
「「・・・」」
「カラァ」
そんな彼女にカラカラは近寄って手を当てる。


「さて、暗くなるしキャンプ地に戻るぞ」
「あぁ」
早速、サトシ達は自分達のキャンプ地へと戻ることにした。
「あの」
すると、マナオに呼び止められた。
「「ん?」」
二人は、マナオの方へ振り向いた。
「なんだ?まだ用か?」
ヒョウリは、彼女へ聞くと、マナオは少しおどおどしてから話す。
「あの、その、えぇと・・・うちに、来ます?」


あれから、サトシ達は、マナオに誘われて彼女の家に、お邪魔させて貰った。そこで、マナオに紹介されて、祖母に挨拶をした。すると、祖母から温かく持て成しを受けることとなり、
夕食をご馳走して貰う上、1泊させて貰うことになった。家に入ってから、和室に案内されたサトシとヒョウリ。今は、二人で畳の上で胡座をかいて、祖母が用意した和食を彼女たちと共に食べることになり、ポケモン達のピカチュウやカラカラは、用意したポケモンフーズを食べる。
「どうぞ、今日はゆっくりして行って下さいね。ご飯や漬物は、まだありますから」
「はい、ありがとうございます」
「ピカピカ」
「どうも、お構いなく。ご馳走になってしまって」
サトシとヒョウリは、マナオの祖母にお礼を言い、夕食を食べた。用意された夕食は、少し質素な和食で、味の薄い味噌汁やご飯、漬物に、卵焼きだった。サトシ達の事は、マナオに説明して貰った。マナオとカラカラが、変な連中に襲われていた所を、彼らが助けたことで、恩人という立場で、お邪魔させて貰っている。
「そうですか。うちのマナオがお世話になりましたねぇ」
「いえ、こっちこそ娘さんには、お世話になりました。特にサトシくんの頭とか」
「!」
(ギクッ)
ヒョウリがさり気なく、言った言葉にサトシとマナオはそれぞれ反応した。
「おい、ヒョウリ」
サトシは、ヒソヒソ話でヒョウリに注意する。実は、この家に来る前に彼女からバッチ狩りをした件を伏せるようにお願いされていたのだ。
「はいはい、分かってる、分かってるって」
「お前って、たまに意地悪なところあるな」
ヒョウリは、軽い意地悪なつもりでやったみたいだ。そんな、やり取りをしていたのを祖母は変に思った。
「ん?」
「・・・」
そして、マナオが気不味い顔をしてビクビクしていたのに気付いた祖母はサトシ達に訪ねた。
「もしかして、マナオが何か?」
「いえいえ」
「いえ、何でもありません」
サトシとヒョウリは、さり気なく誤魔化した。
「そうですか。どうぞ、今日はゆっくりして行って下さいね」
「はい」
それから、食事を続けているとサトシは、部屋の奥に小さい仏壇がある事に気付いた。
(あの仏壇。もしかして、マナオの)
夕食を終えたサトシ達は、そのまま客間として扱っている部屋を1つ貰い、そこで、一泊することなる。そこで、古い布団を借りて寝ることになった。
「にしても、お前も相当お人好しだな」
「え?何が?」
ヒョウリにお人好しと言われてサトシは、返事をする。
「だって、お前。あのマナオって奴に、一度痛い目合わせたのに」
「あいつを助ける上に、あの三馬鹿吹っ飛ばした後、あいつに文句言わないんだから」
「いや、」
「それに、いいのか?サトシ」
「」
「いや、最初にあいつに説教しようと考えていたんだろう」
「あ、そういえばそうだった」
「忘れてたのかよ」
「ピカピィ」
就寝前に、サトシ達が会話をしていると、部屋の襖をノックされた。
「ねぇ、あの、いいかな」
ドア越しに、マナオの声が聞こえた。それに、サトシが答えた。
「あぁ、いいぜ」
サトシの許可を得て、彼女は襖を開ける。
「どうした?」
「あの、サトシ、さん」
「俺か」
「少し、話しいいかな?」
「あぁ」
そう言って、サトシは彼女に呼ばれていった。そして、部屋に残されたヒョウリとピカチュウ。暫くして、ヒョウリの口からポロッと言葉が出た。
「・・・告白か?」
「ピッカァ!」
ヒョウリの唐突な言葉を聞いて、ピカチュウは驚く反応をした。


マナオに連れられて、サトシは家の外に出て、裏庭に行った。そこには、古い木製の長椅子が置かれていた。
「ここに、どうぞ」
「おう」
サトシとマナオは、共に椅子に座った。
「で、話って」
サトシが、早速話を聞いてきた。
「・・・昼間は、ありがとうございます」
「あぁ、良かったな。カラカラも宝箱も取り戻せて」
「えぇ」
「あのカラカラは、5歳の時に、死んだ両親から貰ったポケモンのたまごから生まれたの。私にとって、家族同然だったから、取り戻してくれて。本当にありがとう」
「そうだったのか。道理で、お前ら凄く気が合ってるもんな」
「うん、5年間も、毎日ずっと一緒だったから」
「そうか。俺もピカチュウと出会って1年だけど、ずっと一緒なんだ」
「サトシさんのピカチュウも、卵から?」
「いや、俺の場合は、貰ったんだよ。マサラタウンにあるオーキド研究所で、新人トレーナー用のポケモンを用意して貰ったんだ」
サトシは、そう説明しながら、1年前の旅立ちの日を思い出す。
「あの日、俺は旅立ちの日だからって寝坊して、欲しかったゼニガメやゼニガメ、フシギダネの全部が他のトレーナーに貰われていってた。けど、まだ一体だけ残って」
「それが、ピカチュウ?」
「あぁ、最初は、愛想が悪くて、俺の言う事聞かないし、ボールにも入りたがらない。それに、俺電撃を食らわせたんだ」
「あ、ス、スゴイ、デイデスネ」
「ほんと、当時は参ったよ。俺、このままじゃあ。トレーナーとして旅が出来るのかって不安になってさ。けど、その後、いろんな嫌なことや困難を、俺とピカチュウで何度経験した。それで、俺たちは、トレーナーとポケモンじゃなくて、相棒であり親友になったんだ」
「相棒・・・親友ですか」
「あぁ。それから、一緒にカントー地方やジョウト地方、ホウエン、シンオウ、遠くの地方まで行った。そこで、出会った仲間やゲットしたポケモンとジムを巡って、ジム戦で勝って、バッチを揃えて、リーグ大会に出場した。だから、ずっとピカチュウと一緒さ」
「・・・サトシさん」
「ん?」
「ごめんなさい」
突然、マナオはサトシへ頭を下げて謝罪する。
「貴方から、バッチを奪おうとして」
「・・・マナオ」
「本当に、ごめんなさい」
「なぁ、マナオは、・・・お前はポケモントレーナーになって何がしたいんだ?」
「え?」
「実は、俺、お前のこと、近くに住んでいる村の人に少し聞いてたんだ。お前が、トレーナーになって旅立って、1ヶ月前に戻ってきたことや家族との約束したことか」
「そ、そうだったんだ」
「ごめん、黙ってって」
「いいえ」
「マナオは、家族との約束、頑張って守りたかったんだな。・・・けど、やっぱり他人のバッチを奪ったり、借りて約束を果たすのは間違ってる。それじゃあ、亡くなった家族を騙してる」
「・・・はい」
「あ、ごめん。ちょっと、キツイこと言っちゃったかな」
「いえ、私が間違ってるのは、もう分かってます」
「そうか」
「今日、カラカラと宝箱を取られた時、・・・凄く嫌だった」
「マナオ・・・」
マナオは、泣きながらそう話した。
「私、馬鹿だ。大切なもの取られて嫌なはずなのは当たり前なのに、あんな事して」
「・・・」
「サトシさんの言う通りだ。頑張って手に入れたバッチを取って自分のものにするなんて」
「あぁ、そうだな。だから、もうバッチ狩りなんて、あんな馬鹿な真似はしちゃ駄目だ。自分とポケモンと一緒に取るから意味があるんだ」
「・・・はい」
「マナオ、・・・ジム戦ではじめて負けた時、悔しかったか?」
「・・・はい。凄く悔しかった」
「俺も、はじめてのジム戦、・・・ボロ負けだったよ」
「え?サトシさんも」
「あぁ、凄く悔しかった」
「はじめて、戦ったジム戦で、俺はピカチュウでバトルした。そこで、結局何も出来ないまま、俺はみっともなく降参した。ピカチュウは、頑張ってバトルしてくれたのに、自分は何も出来ない、役に立たない、それで、ピカチュウだけが傷付いた。・・・凄く自分に腹が立ったよ」
「・・・」
「けど、俺には、それは良い機会だった」
「え?」
「その後、俺はピカチュウと勝つために強くなる為に、頑張って特訓をした。それから、ジムを巡り、どんなジム戦でも必ずポケモンと一緒に、頑張って、努力して、特訓して、何度負けても必ず次は勝ってやるんだって、何度も、何度も」
「・・・」
「次へ進んでいく。だから、俺は、絶対に諦めない。どんだけ、負けても、次は必ず勝つ。そして、ポケモンマスターになるんだって」
「ポケモンマスター?」
「あぁ、世界中のポケモン達に出会って、いろんなのポケモンをゲットして、ポケモンバトルして勝ちまくって、いろんなポケモンの大会、ポケモンリーグで優勝するんだ。まぁ、まだ他にいろいろとやらないといけないことあるんだけどね。ハハ」
「サトシさんって、・・・強いですね」
「え?俺が、強い?」
「どんな事があっても、挫けない、諦めない、そんな強い心を持っている。凄く強い人だと思います」
「そう、そうかな」
サトシは、褒められたせいか少し照れる。
「私も、サトシさんみたいに、強くなれるかな」
「あぁ、きっとなれるさ」
「私、家族との約束を守る為に、ジム戦に挑みましたが、本当はただ自分が立派なトレーナーになった事を見せたいだけなんです。だから、ジムバッチが以外で何か、凄いのを1つ残したい、それが今やりたいことです。そして、将来立派なトレーナーになる。これが、私の今の目標です」
「そうか。それがマナオの目指したいものなのか」
「はい」
それから二人は、会話を続けた。
「明日、早速出発するよ。アハラ地方に行かないといけないんだ」
「アハラに、ですか?」
「あぁ、実は、俺。今度、開かれる合同リーグのソウテン大会に出るんだ」
「あの6年ぶりにやるリーグ大会に」
「その為に、これからアハラ地方とシントー地方にあるジムを巡って行くんだ」
「そうなんだ。じゃあ、急いで行かないといけないですね」
「あぁ」
それから、二人は上を向いて、夜空を眺めた。
「さて、そろそろ眠たくなったし、戻ろうぜ」
「・・・はい」


翌朝。マナオの誘いで、家に1泊させて貰ったサトシとヒョウリは、翌日の朝食もご馳走して貰った。そして、(ノウトミタウン)を発つため、サトシ達は出発の仕度をして、玄関前でマナオと祖母へ別れの挨拶をしていた。
「「お世話になりました」」「ピカピカピ」
サトシ達は、お礼とお辞儀をした。そんな彼らに、マナオの祖母は明るく、返事をする
「いいえ、いいえ。道中、お気をつけて下さいね」
「じゃあな、マナオ」
「う、うん」
サトシから、別れての挨拶をされて、何か浮かない顔をしているマナオ。それに気付いたサトシは。
「なぁ、マナオ」
「ん?」
「お前なら、きっと良いトレーナーになれるさ」
「え」
そのまま、サトシは、マナオの足元にいるカラカラを見た。
「大丈夫だ。お前と、カラカラと一緒なら。なぁ」
「カァラ」
サトシに、言われて、カラカラは返事を返し、マナオも答えた。
「・・・うん」
「それでは、お世話になりました」
「じゃあな、マナオ、カラカラ」
「ピカピィ」
ヒョウリとサトシ、ピカチュウは挨拶をして、西へと歩いて行った。マナオ達は、彼らの姿が小さくなるまで、見送っていった。
「さぁ、マナオ。家に入ろうか」
マナオの祖母は、そう言って部屋に入ろうとすると。
「ねぇ、おばあちゃん」
「ん?なんだい」
「話があるの」


あれからサトシ達、次の街へ繋がる道を歩き、間もなく村から出て、森へ入ろうとしていた。
「ってぇ!」
その時、後ろから声が聞こえた気がした。
「!」
先に気付いたのは、ヒョウリだった。彼は足を止め背後を見る
「サトシ」
すると、ヒョウリはサトシを呼び止めた。
「ん?」
「ピカ?」
サトシとピカチュウは、立ち止まったヒョウリへ振り向くと、後ろから誰かが、走って来ているのが見えた。
「待ってぇ!」
「ピカ!」
「マナオ!」
走ってきたのは、マナオだった。サトシ達は、走って来るマナオの方へ、走って行き、近づいた。
「ハァー、ハァー、ハァー」
マナオは、急いで走ってきのか、両手を両膝に付いて、息を切らした。
「おい、おい、大丈夫かよ」
「どうしたんだよ。マナオ」
「ピピカ」
皆、突然のマナオが来たことに驚き、心配をする。
「ねぇ、いや、あの」
まだ、呼吸を整えることが出来ず、言葉が上手く喋れない。暫くして、呼吸が整えた彼女は、話した。
「お、お願いがあるの」
「お願い?」
マナオから突然のお願い、傾げるサトシ。
「その」
その言葉を出してから、また黙り始めたマナオは、何かを決心したのか続きを言った。
「私も一緒に・・・旅をしていいかな?」
「「・・・」」
彼女のお願いを聞いて、彼らは黙った。
「だ、駄目?」
彼らの反応を見たマナオは、少し不安になり、問いて見ると。
「サトシが決めろ」
ヒョウリは、サトシにそう言って、託した。サトシは、一度マナオの目を見て、答えた。
「あぁ、いいぜ。一緒に行こう」
「ピカチュ」
サトシとピカチュウは、共に笑顔で答えた。
「あ、ありがとう」
そう答えてくれて、マナオは少しだけ涙を出して、喜んだ。
「おいおい、泣くなよ」
「ご、ごめんなさい。嬉しくて」
二人がそうやり取りをしているとヒョウリも入ってきた。
「けど、いいのか?お婆さんだけ、家に残すことになるぞ」
「それなら、大丈夫。実はお婆ちゃん、そろそろ老人ホームに入ろうかって考えてたの。ただ、私が家にいる間は、先延ばしにしてたから、迷惑かけちゃってって」
「そうか。ならいい」
「それじゃあ。一緒に、行こうか」
サトシは、マナオに早速出発しようと言うのだが、まだ彼女から話があった。
「うん。あと、それと、・・・もう1ついい、かな」
「ん?」
「もう1つ?」
これ以上、まだ話があるのかと思った二人。マナオは、二人にまた何かをお願いしようとした。
「わ、・・・を」
急にマナオの声の音量が落ちて、何を言っているのか聞こえたなかった。
「ん?ごめん、聞こえない」
サトシは、もう一度話すように言った為、マナオは、声を大きくしてもう一度話す。
「私を」
「「?」」
「私を、サトシ師匠の弟子にして下さい!」
マナオは、そう大声で叫んだ。
「「・・・は?」」「ピィカ?」
その言葉を聞いたサトシ、ヒョウリ、ピカチュウは、すぐに理解する事が出来なかった。 
 

 
後書き
今回は、サトシと旅仲間に加わったヒョウリが共に、旅をはじめてマナオという少女に出会った話です。

偶々、通りかかった村で出会った新人トレーナーの少女:マナオとポケモンのカラカラ。
彼女がした約束。そして、目標。
今後、サトシ達とどう展開していくか。

話としては、この先最終話まで続ける予定ですので、ご興味がある方は、最後までお読み下さい。

追記:
現在、登場人物・ポケモン一覧を掲載しました。
登場する人物やポケモンが増えたら、更新します。また、修正も入ります。
今後、オリジナル設定関連についても、別途設定まとめを掲載を考えています。

(注意)
掲載された作品で、文章の変更や文章ミス・誤字脱字などに気付きましたら、過去のも含めて後日改めて修正する可能性もあります。 
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