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<ポケットモンスター トライアル・パレード>

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1章「新しい旅先」
  3話「サトシとヒョウリの考え」

 
前書き
ポケモンの二次小説です。主人公はサトシです。ご興味あれば、1話からお読み下さい。 

 
ハルタス地方<ミョウコシティ>
ここは、ハルタス地方で最も東の街で、真南に進めばフィオレ地方、真東に進めば、ジョウト地方となる。
サトシとピカチュウ、ヒョウリ、そして他の乗客達は、バスでの騒動の後、無線で駆けつけて来た救援隊により、保護を受けた。そのまま乗客と共に、迎えに来た別のバスに乗り、この街へ無事に到着した。到着した時刻は、既に夕暮れで、乗客達は急遽手配されたホテルやポケモンセンターで一泊することとなり、後日改めて事故について一人一人に事故の聞き取りをすることになった。勿論、野生ポケモン達とバトルしたサトシ達もだ。
翌日、サトシは昼前にポケモンセンターの個室で、警察のジュンサーから事故の時にあった出来事で、詳しく状況を聞かれ答えた。話は、30分程で終わり、その後昨日からジョーイに預けて怪我の回復を受けていたピカチュウを受け取り、ポケモンセンターの食堂で昼食を取っていた。
「昨日は、散々だったな。ピカチュウ」
「ピィ~カ」
飯を食べながら、サトシとピカチュウとそうボヤいていると。
「やぁ、隣いいかい」
横から話かけられ、サトシは振り返り、見上げた。
「・・・ヒョウリ」
そこに居たのは、昨日バスで一緒になり、共に野生ポケモンとバトルした上、少しだけ口論となったヒョウリだった。
「あぁ、いいよ」
サトシの了承を受けたヒョウリは、テーブルの反対側の席に付いた。
「ピカチュウ、元気そうで良かった」
「あぁ」
「ピカ」
「警察の話は、終わったのか?」
「あ、うん」
「そうか。俺もさっきだ」
そして、ヒョウリも食事を始めた。二人は、そこから暫く会話がないまま食事したが、サトシの方から、会話を切り出した。
「なぁ、ヒョウリ」
「ん?」
「その・・・」
「・・・」
「昨日、その・・・悪かった」
「・・・」
「俺、あの時、どうしても嫌になったんだ。あのまま、あのリングマやヘルガーをただ、撃退することが、良いことだと思わなかった」
「ピカピ」
サトシが、また悲しい顔をして話すのを見て、ピカチュウは、サトシを宥めようとする。
「・・・」
「勿論、あの時は、バスに乗った乗客の人を助けることは第一に考えたさぁ。それでも、もっと他に解決する方法があったんじゃないかなって。だって、あのリングマやヘルガー達だって、好きで争ってる訳じゃないみたいだったし、人間があいつらの生活の場を奪った話しが本当なら」
「俺たちにもその責任があるから、これじゃあ、我々人間が悪だと・・・言いたいのか?」
「あ、・・・うん」
「先に言っておく。サトシ」
「・・・」
「俺は、お前の気持ちを否定している訳じゃない。ただ、あんなやり方と考えでは、世の中、そう簡単に通用しないと言ってるんだ」
「確かに、そうだけど」
「まぁ、俺も少し酷い言い方をしたのも事実だ。そこは、謝罪する」
「いや、別に謝って欲しいわけじゃあ」
「だが、人間が悪くてもポケモンが悪くても、敵対した以上、自分や周りの者を守るのは大事なことだと俺は思っている。それで、結果が悪でも、守りたい自分や周りの人を守れるなら、時には手を汚す必要もあるんじゃないかと。それは、決して自分が無実だと言っている訳ではない」
「・・・」
「だから、俺が悪党に思えるなら、それでもいい。俺は、ああやるべきと、判断してやった」
「別に、俺はお前のことを」
「俺のあんなやり方を見て、一度も俺が嫌な奴に思わなかったのか?」
「・・・ごめん。少し思った」
「ふっ、別にいいさ。人には、それぞれ好みと考えがあって当然だ。ポケモンも同じ。好きな奴、嫌な奴、そんな奴らと出会ってこそ、人もポケモンもまた学んで、成長する」
そう言って、ヒョウリは、コップの水を一口飲んだ。
「さて、この話しは終わろう。お互い、気分が悪くなるだけだ」
「あ、あぁ、そうだな」
その後も互いに食事を続けたが、サトシは食事のペースが遅かった為、先にヒョウリが食事を終えて、黙って立ち上がる。そのまま、食器返却口へと持って行く彼は、立ち止まった。
「なぁ、サトシ」
「?」
「あとで、俺とバトルしないか?気晴らしに」
サトシに、ポケモンバトルを申し込んだ。
「・・・あぁ、やろうぜ」
「ピカピカ」
サトシとピカチュウは、少し元気を取り戻してバトルを受け入れた。


二人は、ポケモンセンターの外に出た。
施設の隣には、トレーナーが利用するポケモンバトル用の練習場があった。丁度、練習場内には誰も居ない様子で、フィールドは使用出来るようだった。
「それじゃあ」
「やるか」
サトシとヒョウリは、互いに左右へ別れると、フィールドのトレーナーゾーンに移動し、ヒョウリがバトル前のルール確認を取った。
「使用ポケモンは、互いに1体ずつ。戦闘不能か降参した方が負けだ。いいな?」
「あぁ、勿論だ」
互いに確認が取れたことで、お互いに参加させるポケモンを出すことにした。
「行け、ピカチュウ!キミに決めた!」
「ピィカ!」
サトシに呼ばれたピカチュウは、彼の肩から飛び降り、バトルフィールド内に入る。
「行け、ラグラージ!」
ヒョウリは、腰のモンスターボールを1つ、上へ投げた。投げたボールが開き、光を放つとフィールドに中のポケモンを出て来た。
「ラージ」
ボールから出たラグラージは、フィールドの中でピカチュウと対峙する。
「いいか?」
「あぁ」
「それじゃあ。・・・開始だ」
ヒョウリがバトル開始の合図を出した。その合図の瞬間、サトシは、ピカチュウへ速攻で指示を出した。
「ピカチュウ、でんこうせっかだ!」
「ピカァ!」
ピカチュウは、(でんこうせっか)で一気に、ラグラージに正面から突っ込んでいた。それに対して、ヒョウリも指示を出す。
「ラグラージ、じしんだ」
「ラージ」
ラグラージは、両腕を思いっきり振り上げると、一気に地面に手を打つ。すると、フィールド内が一気に地震の如く激しく揺れた。
その激しい揺れにのせいで、(でんこうせっか)のスピードで向かって来ていたピカチュウのわざが途中で、キャンセルされた。
「ピ、ピカァ、ピカァー」
「ラグラージ、れいとうビーム!」
ラグラージは(じしん)を辞め、口を大きく開き、そこから青白い光を発生させる。そして、(じしん)で動きが止まったピカチュウへ目掛け、その光から(れいとうビーム)を放つ。
「ピカチュウ、10マンボルトだ!」
「ピカ。ピィカァ、チューーー!」
咄嗟に、サトシの指示でピカチュウは、(10マンボルト)を放ち、向かって来る(れいとうビーム)にぶつけ、空中で相殺し、爆発した。
(やっぱ、強いな。問題は、ラグラージは、みずとじめんタイプ。ピカチュウの電撃は殆ど通じない。なら)
サトシが、そう考えていると、ヒョウリが先に次の指示を出す。
「ラグラージ、上に目掛けてハイドロポンプだ」
「な?」
サトシは、突然のヒョウリによる妙な指示内容を聞いて驚いた。ラグラージは、その指示通り上空目掛けて(ハイドロポンプ)を放つ。上へ放たれた(ハイドロポンプ)は、空中で、分散し、その水が雨の如く、フィールド内へ降り注ぐ。
「何か分からないが、ピカチュウ!ラグラージに突っ込め!」
「ピカ!」
ピカチュウは、再度ラグラージに突っ込み一気に間を詰める。
「ピカチュウ、アイアンテールだ!」
「ピィカー」
ピカチュウの尻尾は、白く光リ出す。
「ラグラージ、かわらわりだ」
「ラージ」
すぐさま、(ハイドロポンプ)を中断し、ラグラージの右腕が光る。そして、ピカチュウは尻尾を大きく振るい、ラグラージは右腕を振るった。
ピカチュウの(アイアンテール)とラグラージの(かわらわり)は、ぶつかり合った。その衝撃波は、周囲へ風と振動を伝え、周りの木々やサトシとヒョウリの髪が揺れる。それから、その反動もピカチュウとラグラージに影響を与え、互いに後方へ吹き飛ぶが、上手く着地する。
「やるな。お前のピカチュウ」
「そっちこそ。ラグラージ、強いな」
「あぁ。ラグラージ、れいとうビームを相手のフィールドに撃て」
「ラージ」
ラグラージは、またピカチュウ目掛けて(れいとうビーム)を放つ。
「ピカチュウ、躱せ!」
ピカチュウは、難なく(れいとうビーム)を躱す。だが、問題はそこからだった。躱した(れいとうビーム)は、そのままピカチュウ側のフィールド周囲へと当たって行ったのだ。そこで、サトシとピカチュウは、気付いた。
「あっ!」
「ピカッ!」
「気付いたな」
ピカチュウ側のフィールド表面が、凍っていたのだ。先程のラグラージの(ハイドロポンプ)によるスプリンクラーの雨でフィールドが濡らされ、今躱した(れいとうビーム)がフィールドを凍らせて、氷のフィールドへと変えたのだ。
「ピカッ」
「くそ、これじゃあ。余り動けない」
凍らされたフィールドの表面は、摩擦抵抗が少ない為、機動力が高いピカチュウにとっては、体勢を維持することが難しくなる。
「さて、ここからだ。ラグラージ、ハイドロポンプだ」
「こうなったら、正面勝負だ。ピカチュウ、でんこうせっか!」
ラグラージへ突っ込んでいくピカチュウ。
「また、同じ手か。ラグラージ、かわらわり」
「躱せ!」
間一髪で、ラグラージの(かわらわり)を躱し、背後へ回った。
「よし。ピカチュウ、アイアンテールだ!」
「ピィカー」
「後方、ワイドガード!」
「ラージ!」
両腕を構えて、ピカチュウの攻撃を間一髪で防いだ。
「今だ、尻尾を掴め!」
「ピカッ!」
ラグラージは、(アイアンテール)を終了したピカチュウの尻尾を強く掴んだ。
「相手側に投げろ」
指示通り、ラグラージは、そのままピカチュウをサトシ側のフィールドに投げ飛ばした。
「ピカァァァ」
「あ、ピカチュウ」
投げ飛ばされたピカチュウは、凍ったフィールドにぶつかるとそのまま滑っていった。
「よし、れいとうビーム」
「くそ、10マンボルト」
互いのわざが、またぶつかり合い、空中で爆発して煙が舞い起こる。
「ふん、まだ無理か。だが、そのフィールドじゃあ。ピカチュウは、まともに動けない。煙が消えたら、ピカチュウへもう一度、れいとうビームだ」
ヒョウリは、勝つ確証した上、次の攻撃準備に入る。だが、サトシも打開策を考えていた。そして、ピカチュウにある指示を出した。
「ピカチュウ。あの手を使うぞ!」
「ピカ!」
(あの手?・・・何をする気だ?)
ピカチュウは、サトシの意図を理解したようで、返事をする。一方、ヒョウリは、サトシの言葉を聞いて警戒した。
「ピカチュウ、地面に向かって思いっきりアイアンテールだ!」
「ピカ。ピィカァー!」
ピカチュウは、自分のフィールドに目掛け、渾身の(アイアンテール)を食らわせた。それにより、攻撃を受けたところを中心に、氷のフィールド全体の地面ごとヒビが入り、氷が砕け散ったのだ。
「何!」
「よし、これで足場は大丈夫だ」
「ピカ」
その光景を見たヒョウリは、少しだけ驚いた顔をした。
「そうか、中々のパワーのようだ。だが、先程から受けたダメージは、ピカチュウの方が多いぞ」
「まだまだ、これからだぜ。ピカチュウ!もう一度、近づくぞ」
「ピカッ!」
「でんこうせっか」
「ピカァァァ」
「ラグラージ、じしんだ!」
「ラージィ!」
「飛べ!ピカチュウ」
ピカチュウは、(でんこうせっか)の勢いに乗って、高く飛び上がった。そのまま、ラグラージに目掛けてジャンプする形となり、突っ込んでいく。
「空中なら、躱せないぞ。ラグラージ、れいとう」
「ピカチュウ、エレキネットだ!」
「ピィカ!」
ピカチュウの尻尾に黄色の電気の球体が発生し、そのままラグラージに目掛けて投げた。そして、その球体は飛ぶ途中で開き、網状へと変化した。でんきタイプで、相手の動きを封じることが出来るわざだ。
「ッ、れいとうビームで落とせ!」
ラグラージは、(れいとうビーム)で(エレキネット)を相殺する。それで、僅かに起こった煙の中を、ピカチュウは勢いよく突き進んだ。
「そのまま、回転して渾身のアイアンテールだ!」
「ピィィィカァー!」
ピカチュウは、空中で身を翻しながら、尻尾を光らせ、ラグラージへ向かう。
「ラグラージ!かわらわりで打ち負かせ」
「ラァァァジィ!」
ピカチュウとラグラージ、互いの尻尾と手がぶつかり合い、先程よりも凄い衝撃波が起こった。互いのパワーは、このバトルの中で最大のパワーを出しているのだろう。トレーナーであるサトシとヒョウリは、ただ自分たちのポケモンを見守るだけだった。
「頑張れぇ!ピカチュウ!」
サトシは、ぶつかり合いをしているピカチュウへ応援する。
「・・・ラグラージ!」
だが、ヒョウリは、ラグラージへの応援でなく、ある指示を出した。
「もう1つを使え!」
突然の指示にラグラージは、答えた。今、ピカチュウの尻尾を受けている右手とは逆の左手で、今度は(かわらわり)を発動したのだ。
「なっ!」
サトシは、その事に気付いた。
「マズイ。ピカチュウ、気をつけろ!」
サトシは、すぐさまピカチュウに警告する。だが、ピカチュウには、それに答える事が出来なかった。今、最大パワーで(アイアンテール)を放ち、ラグラージを押そうとしているからだ。少しでも、力や集中を抜いたら、打ち負かされてしまう。それでも、ラグラージの左の(かわらわり)が発動し、ピカチュウに目掛けて突き出した。
「ピィカ!」
やっと、その事に気が付いたピカチュウ。すぐさま、(アイアンテール)を中断し、回避行動に移ろうとするのだが。
「遅い」
ピカチュウは、身を翻そうとしたが、尻尾に力を込め過ぎた上、中断したせいでバランスを崩し、そのまま左手の(かわらわり)を受けてしまった。
「ピィッカァァァ」
そのまま、サトシに向かって突き飛ばされた。
「ピカチュウ!」
サトシは、ピカチュウの落下地点まで走り出し、そのまま体で受け止めた。
「ピカチュウ、大丈夫か!」
「ピカ、ピ」
ピカチュウは、返事をするが、ダメージが受けたせいで、まともに会話は出来ない。サトシは、ピカチュウの顔から尻尾に目線を移す。尻尾は、怪我のように腫れていた。それに身体中、あちこち擦り傷が出来ていた。
一方、ヒョウリは、自分のラグラージの元へ駆けっていた。
「どうだ、ラグラージ」
「ラァー、ジ」
ヒョウリに返事をするラグラージは、少し苦痛な顔をしていた。ヒョウリは、ラグラージの右手を見ると、凄く腫れて怪我を負っているのが分かった。その怪我を見たヒョウリは、サトシに抱かれているピカチュウの方を見た。
「あのピカチュウのパワー、想定以上だな」
(もし、ラグラージにじめんタイプが無かったら、この勝負は負けてたかもな)
ピカチュウに対して、そう評価するヒョウリは、ボールを取り出して、ラグラージを戻した。
「ご苦労だ、ラグラージ。・・・サトシ」
サトシは、ヒョウリに呼ばれ、顔を向ける。
「この勝負、引き分けだ。このままだと、ポケモン達にダメージが重なって、明日もポケモンセンターで1泊する羽目になるぞ」
サトシは、ヒョウリの言っていることは、正しいと分かっていた。少し悔しさもあるが、ピカチュウの方が、大事だと理解もしていた。
「・・・あぁ、この勝負。引き分けだ」
サトシとヒョウリは、互いにその結果で納得し、バトルを終えた。
二人が、その様なやり取りをしている中、練習場の中にある林に潜んでいる者達がいた。先程からのバトルを、その何者か達が、ずっと見ていたのだ。
「あのラグラージ、結構強そうだな」
「えぇ、あのピカチュウを、あそこまで相手に出来るんだから、間違いなく強いポケモンよ」
「ピカチュウは、今のダメージでまともに動けないにゃ」
「となれば、あのラグラージと共に、確実にポケモンセンターに預けられる。そこで」
「私たちが、預かった他のトレーナー達のポケモンと一緒に盗めば」
「ニャー達のものにゃ」
「ソーナンス」
潜んでいる彼らが、その様な悪巧みをしていることに、誰も気付かなかった。


ポケモンセンターに戻った二人。サトシは、受付で怪我をしたピカチュウを預け、ヒョウリはラグラージ以外のポケモンを含めて5つのモンスターボールを、ジョーイに預けた。預かったジョーイは、後にピカチュウとラグラージの怪我の具合を見て、サトシとヒョウリへ少しだけ注意をして、それを受けたサトシとヒョウリは、ポケモンを預けた後、センター内の休憩所で、お茶を飲んでいた。
「お前の、ピカチュウ。本当に凄いな」
「あぁ。俺のピカチュウは、世界で最強のピカチュウで、俺の一番の友だちだから」
「友達か。確かに、お前らの見ていると丸で親友って感じがするな」
「あぁ、ピカチュウは俺の大事な親友だ」
「他のポケモンはどうなんだ?」
「え?」
「あのピカチュウ以外にもゲットしたポケモンは勿論いるんだろ」
「あぁ、勿論。他の皆も大事な俺の仲間さぁ」
「お前、みたいなトレーナーにゲットされて、そいつらも凄く嬉しいだろうな」
「まぁな」
「・・・なぁ。・・・昨日の件をむしり返すようなことは言いたくないが」
「ん?」
「お前が、もし自分のポケモンでもないポケモンまで助けたいという気持ちがあるというなら、もっと賢く動いた方がいいぞ」
「・・・」
「じゃないと、いつか、もっと大切なものを失う羽目になる」
「・・・」
「さてと」
ヒョウリは立ち上がり、飲みきった紙コップをゴミ箱へ捨てた。
「俺は、ちょっと用事があるから、夜まで出掛ける。じゃあ、またな」
ヒョウリは、そのまま外へ外出し、サトシはセンターの中で時間を過ごした。


時刻は過ぎて行き深夜0時過ぎ。
街のあちこちでは、次第に明かりが落とされていき、ポケモンセンターも一部を除いて電気が切られていた。サトシをはじめ、ポケモンセンターに泊まる多くのトレーナー達は、各自の部屋で眠りに付いていた。一方で、預けられてたポケモン達は、モンスターボールの中や回復用の機器やベッドの上で眠っていた。昼間に怪我を負ったピカチュウも共に。
センター内の一室では、明かりが点いていた。
「はぁ~~~」
中では、明日の準備と、本日治療したポケモンのデータをパソコンでまとめているジョーイが、まだ起きていた。明日も仕事があるのに、仕事熱心な彼女は、あくびをしながらも仕事をしている。
「ハピハピ」
そこへ、一体のナースの格好をしたハピナスが、ジョーイにコーヒーを持ってきた。
「あら、ありがとう。ハピナス」
「ハピハピ」
コーヒーを受け取り、眠気を和らげ仕事を早く済ませようとしていたその時。
ウィーン、ウィーン、ウィーンと施設内で、警報音が鳴り響いた。
「な!」
「ハピ!」
突然の警報に、ジョーイとハピナスは驚いた。そして、ポケモンセンター内にある宿泊者のいるフロアでは。
「ン、ンンン。ハッ・・・なんだ?」
個室で寝ていたサトシが、突然鳴り響いた警報音に気付き、目覚めた。急いで、部屋を出ると。廊下では、他の部屋から顔を出して、たくさんのトレーナー達も起きていた。
「なんだよ、この夜中に」
「火事か?」
「ちょっと、何よぉ」
突然の警報音に、パニックになる宿泊者達。
すると、ドガァァァン、ガシャャャンと今度は何かが壊れたり、崩れたりする音が響いた。
「なんだ?爆発か?」
「逃げた方がいいじゃないか?」
よりパニックになる彼らに対して、サトシは。
「ピカチュウ!」
すぐに動き出し、音がした方へと走って行った。


先程の崩れる音を聞いたジョーイとハピナスは、音がした方へ向かっていた。そこは、トレーナーから預かったポケモン達のモンスターボールや治療中のポケモンがいる保管と治療のフロアだった。フロアの中に入ると、煙が充満していた。
「くっ、煙。火災?けど、火災警報は鳴ってない。一体、何が。・・・あれ、モンスターボールがない」
「ハピハピ」
「それに、ここで寝ていたはずのピカチュウも」
部屋に入ると、預かっていたポケモン達のボールや治療用のカプセルに入ったポケモン達の姿が消えていたのだ。何が起こったのか理解出来ないまま、次々起こるアクシデントに驚くジョーイもハピナス。そこへ、サトシが走ってきた。
「ジョーイさん」
「ん?あ、君は、昼間のピカチュウのトレーナー君」
「一体、何があったんですか?」
「大変なの。預かっていた皆のモンスターボールや貴方のピカチュウが消えたの?」
「えぇ!」
ジョーイの言葉を聞いて、サトシは驚き、すぐに部屋の周り見渡した。そこには、たしかにモンスターボールやポケモン達の姿が消えていた。
「ピ、ピカチュウ!」
サトシは、不安な顔となり、すぐさま大声でピカチュウの名前を叫んだ。
「・・・」
「ピカピ」
「!」
すると、煙の奥から微かにピカチュウの返事が聞こえたのだ。
「ピカチュウ!一体、どこなんだ」
「気をつけてね」
「くそ、煙で何も見えない」
サトシとジョーイは、煙の中に入っていく。前は、全く見えない為、サトシはゆっくり近づいていく。
「「フフフ」」
「!」
サトシは足を止めた。進む先の立ち込める煙の中から、笑い声が聞こえてきたのだ。
「誰かいる?」
「一体、誰なの?」
ジョーイが、笑い声の相手に向かって、そう問いた。
「一体誰なのっと、聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
ジョーイに対して答えた声は、大人の男と女のものだと分かった。そして、その声とセリフを聞いたサトシの顔つきが、一気に変わった。
「まさか、その声とセリフは」
サトシには、その声とセリフに聞き覚えがあった。
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな(かたき)役」
「「とぉ!」」
煙の中を2つの影が飛び上がり、その正体が現れた。
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆ける、ロケット団の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「ニャーんてな!」
「ソーーーナンス!」
その正体は、胸にRと書かれた白い服を身につけた、大人の赤髪のロングヘアーの女性とセンター分けにした青髪の男。そして、ポケモンのニャースとソーナンスだった。
サトシは、その一団を見て、やっぱりと思って叫んだ。
「ロケット団!」
サトシがそう怒鳴ると、女が返事をする。
「やぁ、久しぶりねぇ。ジャリボーイ」
男も続けて話しかける。
「元気にしてたか?」
そして、ポケモンなのになぜか人の言葉が話せるニャースも話した。
「久しぶりなのにゃ」
彼らを見たサトシは、拳をぎゅっと握り睨んだ。
「お前らの仕業か」
彼らの会話を聞いていたジョーイは、彼らを見て何かを思い出した。
「ロケット団って、確か、ポケモンを使って悪事を働くとかいう」
「はい、あいつらは、その悪い奴らの仲間です」
サトシが、そう言って彼らに向けて指を指した。
「はじめまして、ミョウコシティのジョーイさん。俺の名はコジロウ」
「私は、ムサシって言うの、よく覚えておきなさい。まぁ、もう二度と合うことはないけど」
「にゃーは、ニャースだけどにゃ」
「ソーナンス」
そう自己紹介をしていると、ロケット団の後ろから緑色の何かの大きな籠が上がって来た。
「あ」
サトシは、上を見上げた。そこには、ニャース柄の気球があり、その気球から下へ張られているワイヤーは、緑色の大きな籠に繋がっていた。その正体は、気球のバスケットだった。
「それじゃあ、バイナラ」
ロケット団は、後ろへ振り返り、バスケットへ飛び乗っていく。
「待てぇ!」
サトシ達は、彼らを追おうとすると、乗る気球はドンドン上がっていき、バスケットの下からワイヤーで釣らされている大きな袋が目に入る。
(まさか、あの袋の中は)
「よしっ」
サトシは、吊り下げられた袋に何かを気付いて、すぐに袋へ飛び掛かろうとした。
「そうはいくか」
コジロウは、バスケットの中から何かを取り出した。それは、先に球体が付いた長い円錐上の機械で、それをサトシへ向けた。
「ポチッとな」
コジロウが、機械のスイッチを入れる。すると、その機械の先から電撃が飛び出して、サトシに直撃した。
「ぐぁぁぁ」
サトシは、電撃を浴びて、叫び声を上げて倒れる。
「君、大丈夫?!」
「ハピィハピィ」
それを見て、慌てて駆け寄るジョーイとハピナス。
「くそぉ」
サトシは、痛みに耐えながら、起き上がろうとする。
「ハハハ。お前に今浴びせた電撃は、この機械から撃ったのさ。そして、その動力源はこちらだ」
コジロウがそう言うと、隣にいたニャースが何かを持ち上げて、それをサトシに見せた。
「ピカピ!」
それは、ピカチュウが閉じ込めているガラス上のカプセルだった。それを見たサトシは、叫んだ。
「ピカチュウ!」
「これは、対ピカチュウ用の捕獲カプセル。ピカチュウの電撃やアイアンテールにも丈夫な構造をしている。そして、もしカプセルがピカチュウの電撃をうけるとカプセルが吸収して、この機械を繋いだケーブルを通し、その電撃をこの機械が貯めて撃てるのさ」
「つまり、あんたが食らったのはピカチュウの攻撃なのよ」
「どうだにゃ。ニャー達が今まで受けてきた痛みが、分かるかにゃ」
「さぁ、ピカチュウ。もっと電撃を出すのよ。そしたら」
「あのジャリボーイに向かって撃つことが出来るからな」
「ピィカァ~」
「嫌なら、大人しくしてるのにゃ」
その脅しを聞いたピカチュウは、抵抗する気が失せてしまった。
「くそ!ピカチュウや皆のポケモンを返せ!」
「返しなさい!」
「ハピィ!」
サトシ達は、気球で上がっていくロケット団に向かって大声を上げる。それを上空から見下げるコジロウとムサシ、ニャースは、彼らを煽った。
「ふん!返せと言われて、返す泥棒が、この世界が居るもんか。べぇー」
「悔しいなら、ここまでおいでぇ。べぇー」
「今、おみゃーのポケモンは、このピカチュウだけだと知ってるにゃ」
「そして、歴代のお仲間のジャリボーイやジャリガールも居ないこともなぁ」
「今回は、残念だったわねぇ。ジャリボーイ」
コジロウやムサシも、勝った気で、サトシを煽っていく。
「くっ」
サトシは、ただ悔しがり見上げるしか無かった。一方、気球では、歓喜が上がっていた。
「「「ヤッター!ヤッター!」」」
「ジャリボーイに、初勝利の瞬間だぁ」
「感動だにゃー」
「私達に、遂に運が回ってきたのね」
「ソーナンス」
既に、盛り上がっているロケット団の乗る気球は、見る見る上昇し、ポケモンセンターの屋根のより高く登っていき、次第にポケモンセンターから離れようと移動して行く。
「くそ、どうしたら」
サトシは、考えた。
(ポケモンは、他に持っていない。ピカチュウは、あの状況。気球は、ドンドン上がっていって、届かない。仮に、飛び乗ろうとしたら、あれで撃たれて、落ちてしまう。)
彼は、途中で考えるのを辞めて、ただ追いかけて奪い返すしか無いと、すぐさま判断し、動こうとしたその時だ。
「サトシ!」
後ろから、自分の名前を呼ばれて、サトシは振り返った。そこには、駆け寄って来たヒョウリだった。
「一体、何があった。それに、あの気球は」
何があったのか理解していないヒョウリに、サトシは教える。
「ヒョウリ、大変だ。ポケモン達が奪われた!」
走ってきたヒョウリにそう教える。
「何!まさか、あのニャース柄の気球で飛んでいる連中にか」
「あぁ」
サトシに続けて、ジョーイも彼に告げた。
「相手は、ロケット団よ」
「何?」
ジョーイから相手の名前を聞いたヒョウリは、目つきが変わった。そして、上空の気球とポケモンが入ったモンスターボールの袋を睨む。
「・・・ジョーイさん。俺が預けたポケモン達5匹は?」
「貴方のポケモンも、他の人達のと一緒に」
「俺のピカチュウもだぁ。あのバスケットの中で、捕まってる」
ほんの少しだけ、黙ってから彼は発言した。
「よし、・・・俺に任せろ」
「え?けど、君のポケモンもロケット団に」
「ある」
端的に答えヒョウリは、自分の右腕を少し動かした。すると、右腕の裾の中から1つのモンスターボールが出てきて右手で掴んだ。それを見たサトシとジョーイは、目を丸くした。
「モンスターボール?」
「なぜ、そこに?」
「こいつは、非常時用で常に持ち歩いている奴だ」
そう言って、ヒョウリはモンスターボールのボタンを押し、大きくなったボールを投げた。
「いけ」
投げたモンスターボールから出てきたのは。
「ハッサム!」
(むしとはがねタイプ)であるはさみポケモンのハッサムだった。
「あれは、ハッサム」
「ハッサム、あの気球から吊り下げているワイヤーを切れ。無理なら、牽制しろ。俺がやる」
「ハッサム」
ヒョウリの指示に、羽で空を飛んでいるハッサムは聞いて、空を飛んでいくロケット団の気球目掛けて飛んでいった。
「ハッサムは、そんなに長く飛べないし、相手の抵抗があるだろう。俺が、直接気球に取り付く」
ヒョウリは、そう言うと、外へと走っていた。
「え?どうやって、おい」
サトシは、彼の後を追いかけた。
空を飛んで逃げて行くロケット団は、勝利気分を味わっていた。すると、ニャースが下の方をふっと見て、あるものに気付いた。
「ニャー大変だにゃ。下からポケモンが向かって来るにゃ」
その言葉を聞いて、ムサシとコジロウも共に見る。
「「何?」」
目線の先には、飛行しているポケモンのハッサムが居た。
「ハッサムだにゃ」
「誰かのポケモンか?くそ、預けていない奴のか」
「ちょっと、どうするのよ」
三人が焦っていると、コジロウが足元の機械を見た。
「仕方ない。まだ、撃てるこいつで」
コジロウは、先程サトシに撃った機械を取り出した。それを、飛んできたハッサムに向けて、狙いを定めるとスイッチを押した。そして、溜めていたピカチュウの電撃を、機械の先から再び放つ。
「!」
ハッサムは、飛んできた電撃を間一髪で、避ける。
「くそ、ちょこまかと」
続けて、コジロウが電撃を立て続けに2発、3発と撃つが、全て躱される。
「ちゃんと狙いなさいよ」
「分かってるよ」
ロケット団は、気球に向かってくるハッサムを相手に、完全に気を取られている。一方で、気球の真下では、ヒョウリが走っていた。ポケモンセンターを飛び出して、ロケット団の気球を追う彼。その後ろには、同じくサトシも追いかけて走る。
暫くして、気球はポケモンセンターを離れて、街を出ようと街中を漂う中、ヒョウリは気球が通る先を見て、歩道橋があるのに気付いた。彼は、すぐに階段を登る。登りながら、彼は、腰に着けていたウエストポーチから何かを取り出した。それは、グリップにトリガーの付いたL字状の道具で、先に何か鋭いモリのようなものが付いていた。登りきった彼は、すぐさまそれを気球のバスケットの底へ狙いを定めた。そして、トリガーを引いた。先に付いたモリの部分が発射され、それが見事にバスケットの底に刺さった。モリの根本には、細いワイヤーがついていて、ヒョウリの手に持つ発射器と繋がっていた。
「ヒョウリ!」
階段を登ってきたサトシは、ヒョウリに近づく。そして、彼の手に持つものを見た。
「それは?まさか、それで」
「あぁ。悪いが、俺だけが行く。俺とお前ではワイヤーが切れる。だから、下から追いかけろ」
そう言って、歩道橋の手すりへ足をかけて一気に飛び降りた。
「あ」
サトシは、飛んだ彼を見て驚くが、ヒョウリは飛んだ瞬間に握っていた発射器のトリガーを再度引いた。すると、内蔵されたモーターが回転し、ワイヤーをドンドン巻き上げたのだ。
それで、地面に落ちること無く、気球へと引かれていった。
「・・・よし」
それを見守っていたサトシは、歩道橋から急いで降りて追跡を続けた。


一方、ロケット団達は、飛んでいるハッサムに狙い撃ち続けていた。
「くそ、もうエネルギーがない」
「何?」
「ピカチュウ、もっと電撃を出すにゃ」
ニュースがカプセルに閉じ込めているピカチュウに、そう催促する。
「ピィーカ」
ピカチュウは、当然の様に、そっぽを向いて無視をする。
「く、駄目だにゃ」
「こうなったら。念のために用意したポケモン捕獲用ネットランチャーで」
コジロウが、何か新しい道具を出そうとしたその時だ。
グラッと気球が突然揺れた。
「おわぁ」
「なによ」
「なんだにゃ」
突然の揺れに驚くロケット団。暫くして、ドスンと下から何かの音がした。3人は、互いに目線を合わせて、嫌な顔をした。そして、すぐさま真下を見た。
「「「あぁぁぁ!」」」
目線の先には、先程ポケモンセンターから盗んできたモンスターボールの入った大きな袋が、道に落ちていた。
「ちょっと落ちてるじゃない」
「なんで?」
「どうしてだにゃ」
「ソーナンス」
4人が、突然のことで理解が出来ていない中、誰かが話しかけて来た。
「そりゃ、俺が切ったからだよ」
「「「・・・」」」
突然の声、驚く4人。声がする方を見ると、一人の男が、バスケットの中に乗り込んでいた。ヒョウリだ。
「うわぁ、なんだ」
「なんなのよ」
「何者にゃー」
「ソーナンス」
いきなり、現れた男にビビっている4人。
「なぁ、お前ら」
そんな4人にヒョウリは話しかけ、質問した。
「お前ら、本当にロケット団か?」
その質問に、4人は。
「あぁ、そうだ」
「そうよ。ロケット団よ」
「有名な悪い組織だにゃ」
「ソーナンス」
そう答えた4人。そして、ヒョウリは、4人のうち、人間であるコジロウとムサシの顔、そして、服装のRの字を見た。
「そうか。どうやら、本物らしいな」
ヒョウリは、彼らがロケット団だという何かの確証を持ったようだ。
「そうよ。あんた、人の仕事を邪魔するんじゃないよ」
「あぁ、それは悪いな」
「さぁ、痛い目に合いたく無かったら」
「この気球から出て」
「だが、邪魔させて貰うよ」
彼らの言葉を遮り、そう答えた。
「返して貰うぞ。・・・俺のポケモン、それとそのピカチュウ」
そう言って、男は、構えた。
「そうは、いかないにゃ!」
ニャースは、手の爪を伸ばし、ヒョウリは飛び掛かり、右手で(ひっかき)で攻撃しようとした。ヒョウリは、一瞬で上体を後ろへ引き、(ひっかき)を躱す。
「フッ」
次に、自分の右手でニャースの右手を掴むと、自分の右側へ引き込む。そして、右膝を一気に上げて、ニャースの腹に一撃を加えた。
「にゃあ」
そして、掴んだまま、ヒョウリは体を時計回りで回転させて、その勢いでニャースをムサシに目掛けて投げた。
「え?ぎゃあ」
「ニャース!ムサシ!」
コジロウは、二人を見て心配すると、次は自分から飛び掛かった。
「くそ」
だが、ヒョウリは、コジロウの拳を躱して、左手でボディブローを放つ。
「ガハァ」
そして、彼もが倒れ込む。
「くそぉぉぉ。お、お前、何者なんだ?」
「俺か?」
コジロウの質問に、ヒョウリは、少しだけ黙り、最後に答えた。
「・・・ただの、休暇中の旅行者だ」
ヒョウリは、ピカチュウのカプセルを彼らから奪い取り、抱えたまま、飛び降りた。
「ハッサム」
彼のそう叫ぶと、周囲を飛んでいたハッサムが彼の元へ飛んできて、両腕で彼を掴んだ。そして、そのままゆっくりと効果して行き、地面に着した。
「ふぅー、ご苦労だ。休んでくれ」
ヒョウリは、息が僅かに上がったハッサムに礼を言い、モンスターボールにしまった。
「ピカチュウ!」
すると、彼らの元へ、サトシが走ってきた。
「ピカピ!」
「ピカチュウ!」
駆け寄ってきたサトシを見て、ヒョウリはピカチュウのカプセルを見て、ロックを外した。すると、蓋が相手、ピカチュウが飛び出し、サトシに向かい飛んだ。
「ピカチュウ!」
「ピカピ」
サトシは、ピカチュウを抱きしめ、互いに無事を確認し合った。
「さぁて、感動の再会中に悪いが、お二人さん」
二人にヒョウリが、割って入った。
ヒョウリに、呼ばれた二人は、彼を見ると。彼から頼まれた。
「上の奴らをやってくれ。俺のハッサムは休憩中だ」
それを聞いたサトシとピカチュウは、互いに目を見た。
「行けるか?ピカチュウ」
「ピカァ!」
サトシは、ピカチュウに確認を取り、ピカチュウはやる気の返事をした。
「よぉし。行け、ピカチュウ!」
「ピィカ!」
サトシから降りて、ピカチュウは、上空を睨んだ。その頃、上空を飛ぶバスケットから下を見たロケット団はというと。
「痛たわねぇ。あれ、奴はどこよ」
「痛いにゃ」
「く、いてぇ。奴ならピカチュウを持って、逃げた」
「何?」
「・・・てことは」
「まさか」
「この展開は」
「いつものにゃ」
「ソーナンス」
嫌な予感をして、ロケット団は全員青ざめていた。そんなロケット団の乗る気球を睨むピカチュウは、赤い両頬の電気袋から電気をビリビリと放ち、力を溜め込んでいく。
「ピィーカァー」
わざの準備に入るピカチュウ。そして、真下を見て、そのことに気付いたロケット団は慌てて大声を上げた。
「「あわわわぁ、やっぱり」」
「辞めてくれにゃ!」
「ソーナンス!」
最後に、サトシは合図を出した。
「ピカチュウ、10マンボルトだぁ!」
「ヂューーーウ!」
最大チャージをした放たれたピカチュウの10マンボルト。それは、逆さまの稲妻な如く、天空へ立ち登り、気球に直撃した。そして、気球で大爆発が起きた。激しい爆発と煙の中を4つの影が遠くへ飛んでいくのが見えた。
「久しぶりのピカチュウの10マンボルト」
「流石、1年間も俺たちに使い続けたわざ」
「ニャー達、いつも最後はこうだにゃあ」
「ソーナンス!」
「「「やな感じ〜~~!!!」」」
ロケット団は、今まで最後に捨て台詞を言って、遠くの彼方にまで飛ばされた。そして、姿が見えなくなった最後は1つ星の如く煌めきが見えた。
その光景を見たサトシとピカチュウ。
「やったぜ!」
「ピッカ!」
大声で喜ぶ二人を見て、ヒョウリは笑って告げた。
「流石だな。お前のピカチュウ」
「ありがとう。ヒョウリのお陰だよ」
「ピカピカ!」
ヒョウリに対して、お礼を言うサトシとピカチュウ。
「どう致しまして。けど、サトシとピカチュウが最後に終わらせたから、手柄はお互い様だ」
そして、3人は奪い返したモンスターボールの元へと向かった。


事件の後、警察が来て奪い返したモンスターボールは全て回収出来た。
その後、ポケモンセンターでは、緊急対応として他のポケモン医療の関連スタッフが応援に来て、一匹ずつ診断してチェックして行った。事件の収集や調査もジュンサー達、警察が引き続き、対処してくれることになった。ピカチュウも無事だと分かり、すぐさまサトシの元へ返された。
結局、もう一泊することになった。サトシとピカチュウは、無事だったポケモンセンターの宿泊フロアの個室で一緒に泊まることになった。夕方には、治療が終えたピカチュウは、ベッドの上ですやすや眠っていた。それを見て、頭を優しく撫でるサトシ。そこへ、ドアにノックがした。
「はい」
サトシが、返事をする。ドアが開き、相手が顔を出した。ヒョウリだった。
「少し、いいか」
「あぁ」
サトシから許可を貰い、部屋に入る彼は、入り口の側にあった椅子に座った。
「ピカチュウは?」
「あぁ、大丈夫だ。完全に回復した」
「そうか。何よりだ」
それから、暫く互いに沈黙が続いた。そして、ヒョウリが口を開く。
「サトシ。・・・俺の、昔の話をしていいか」
「?」
「・・・」
「あぁ」
サトシは、ヒョウリの顔を見て、何かを察したのか了承し、ヒョウリは語り始めた。
「俺が、まだ幼い頃。お前みたいに野生のポケモンを助けようとしたことがあるんだ」
語り始めたヒョウリの話を、サトシは黙って聞いていく。
「詳細は、省くが。その野生ポケモンは、ある街で人間やポケモンを傷つけた危険なポケモンだった」
「!」
ヒョウリは、脳内で昔の記憶を思い出しながら話をした。
「俺が、まだ7歳の頃だった。ある用事で、自分の町から離れて別の町へ行った時だ。その町では、丁度野生のポケモンが街に現れて、人やポケモンを襲った事件で話題になっていた。その話しを最初に聞いた時は、俺も怖くなった。街中、子供は家に、大人たちやトレーナーは警察と共に警備に当たり、殺気立っていた。俺も、子供だからと安全な所へ行くように言われたが、どうしても用事で、その町の外れになる森の中へ入る必要があった。それで、隙を見て、森へ行った」
「・・・」
「俺が、森に入ってから暫くして、傷付いたポケモンを見つけた。見たことのない、今でも名前を知らないポケモン。姿は、もうほとんどおぼろげで調べようもない。そのポケモンが、件の町騒がせのポケモンだった。街で聞いた話で、何人かのトレーナーがポケモンを使い、撃退し、相当のダメージを与えたと聞いたから、こいつのことだとすぐに分かった。本当なら、すぐ街に戻って警察や大人達に伝えるべきだっただろうが、俺は助けたくなった」
「・・・」
「街へ戻り、大人たちに黙ったまま、どうにかキズぐすりやオレンのみを入手し、そのポケモンに使った。暫くして、そのポケモンも動けるようになった。それで、俺は喜んだ。そして、俺はそのポケモンに襲われた」
「!」
サトシは、何とも言えない顔になった。
「大した怪我じゃないが、それで打撲と切り傷を負った」
そういって、ヒョウリは、左手で袖越しに右の二の腕部分を少し擦る。
「そのまま、怪我で動けなくなった俺は、ここで死ぬのかなと思った。けど、運がいいのか、ポケモンの捜索を行っていた大人達が森に来ていて、偶然にね。それで、俺を見つけた。そのポケモンと一緒も共に。そして、すぐに俺は、大人たちに保護されて、トレーナーだった者達は、そのポケモンとバトルした。だが、その場にいたトレーナーのポケモン達は次々とやられた。相当強かったよ。そんなポケモンを、俺は手当して回復させてしまった。きっと、あのダメージは、多くのトレーナーやポケモンが犠牲を払った中で、ようやく付けたものなのだったんだろうな」
「・・・」
「結局、既に地元民が応援で呼んでいた優秀なポケモントレーナーが駆けつけていて、そいつのポケモンと共にそいつは倒された。最後は、ポケモン自然保護法とかもあるし、その場でゲットして捕獲。無事に事件は終わった。そのポケモンが、その後どうなっただが、聞いた話じゃあ。ゲットした後も、トレーナーの言う事聞かない上、襲おうとして暴れ、結局危険と判断され、そういう危険なポケモンを収容する専門施設に渡されたみたいだ」
ヒョウリは、話終えると立ち上がった。
「さて、話は以上だ。すまんな、時間とって」
「いや、・・・別にいいよ」
「それじゃあ、俺は部屋に戻って寝るわ」
「なぁ、ヒョウリ」
「ん?」
「お前は、そのポケモンを助けた事、・・・後悔してるのか?」
「・・・いいや」
ヒョウリは、部屋出ようとドアノブを握って開くが、ふッと動きを止めた。
「そうだ。街を出る前に、一応家族に連絡はしておけよ。家でお袋さんがいるんだろ」
最後に、そう言って部屋から出ていった。サトシの母親の件は、一緒に乗ったバスの中で話した時、マサラタウンの家に母親が一人いると話したからだ。その後、サトシは、ポケモンセンターの電話で、家に連絡を入れて、無事に街へ着いたことを連絡した。


翌日、サトシはミョウコシティを出ることにした。
サトシと全回復出来たピカチュウは、朝食を終えた後、すぐに出発の準備をしてポケモンセンターを出た。そのまま、アハラ地方へ向かう為、通過することになる地方、ハルタス地方のミョウコシティへ向かうことにした。
「さて、行くぞ。ピカチュウ」
「ピカ」
街を出て、西を目指して歩いていくサトシ、次第に建物が無くなっていき、草木が生えた一本道へ入っていくと、看板の側で一人の男が佇んでいた。
「あれ」
「よぉ」
ヒョウリだった。
「サトシは、このまま予定通り、ハルタス地方を抜けてアハラ地方へ行くのか?」
「あぁ、そうだけど」
「そうか。なら、一緒に行かないか?」
「え?」
「丁度、俺もアハラ地方へ行くんだし、折角だ。これも何かの縁だ」
「・・・」
「それに、シントー地方にも行くんだろ。俺はあそこの出身地で、昔居たからな。ある程度、土地勘もある」
「もしかすると、旅の途中までになるかもしれないが、・・・どうだ?嫌ならいいさ」
ヒョウリは、サトシの前に移動した。サトシは、ヒョウリの誘いに、少しだけ迷った。サトシには、ヒョウリは嫌な奴に思えていた上、やり方が酷いと考えていた。正直、一緒に旅をしたくないと1度は考えていた。けど、昨日の出来事や話しを聞いて、その考えが少しだけ変わった。彼は、決して悪党だからでなく、ただ自分のやり方で、その危険や困難を打開して、最善だと思ったことを必死にやっている人なのだと、見た。
「あぁ、一緒に旅しようぜ」
サトシは、笑顔で右手を差し伸べた。その手を見て、彼も少し笑い、握手をした。
「では、宜しくだ。サトシ」
「あぁ、宜しく。ヒョウリ」
互いに握手したサトシとヒョウリは、共に旅をすることになった。
 
 

 
後書き
今回は、サトシが出会ったヒョウリとの話です。

同じアハラ地方へ向かう二人が、偶然に出会い、嫌な事件で互いに認めれない点がありましたが、共に旅をすることになりました。
違う考えを持つ彼らが、今後どのような旅をして、どのように展開が動くのか。

そのうち、登場する人物やポケモンが増えたら、キャラまとめ一覧も掲載予定です。
また、オリジナル関連については、別途設定まとめも掲載を考えています。
話としては、この先最終話まで続ける予定ですので、ご興味がある方は、最後までお読み下さい。

掲載された作品で、文章の変更や文章ミス・誤字脱字などに気付きましたら、過去のも含めて後日改めて修正する可能性もあります。 
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