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八条学園騒動記

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第六百七十一話 野上君の戻る先その十三

「大事を目指しても大事になるとは限らぬ」
「小さなことになりますね」
「そうなることがままにしてあるものじゃ」
「もっと大きくもなりますよね」
「その場合もあるが志は大きくなってこそじゃ」
 そうであってこそというのだ。
「ことは成るものである」
「だからですね」
「小さなことを考えてじゃ」 
 悪事を為すにしてもというのだ。
「動くとな」
「小悪党になりますね」
「そして浅ましくなるものじゃ」
 小悪党の悪事はというのだ。
「卑しく下劣なな」
「小さな悪事は」
「どうせ自分の下らん利益の為のものでしかないからな」
「そうしたものになりますね」
「だからな」
「小悪党は醜くて」
「餓鬼が為すものなのじゃ、餓鬼になって小悪党になるか」
 博士は野上君にさらに話した。
「小悪党だから餓鬼になるか」
「卵が先か鶏が先かですね」
「そうした話になるのう」
「そんな感じになってきましたね」
「まあそれは哲学な話じゃな」
「禅問答に近いかも知れないですね」
「だからそれは話すと延々としたものになるが」
 それでもというのだ。
「兎に角わしは小悪党そして餓鬼はじゃ」
「お嫌いですね」
「大きくあれじゃ」
 あくまでというのだ。
「人間もな」
「善行も悪行も」
「どちらにしてもな、そうであってこそじゃ」
「何かが出来ますか」
「進歩するのじゃ」
 そうもなるというのだ。
「そうなるのじゃ」
「そうですか」
「だからな」
「人間がいるからどうかもですね」
「言わぬしな」
「小悪党は嫌いなんですね」
「そうじゃ、ちなみに小さな善人はな」
 そうした者はというと。
「何もせん」
「そうなんですね」
「世の中そうした者がかなり多いが」
「小悪党は実は少数派ですか」
「うむ、それでな」
「小悪党はお嫌いで」
「小さな善人はじゃ」
 野上君にあらためて話した。
「慎ましやかでもそこに奇麗なものがあるしな」
「それで、ですか」
「そうした者達が大勢いてな」
 そうなっていてというのだ。
「世の中はよくなってな」
「進歩するからですか」
「何もせぬ」
 小さな善人、そう言っていい者達にはというのだ。
「一切な」
「そうなんですね」
「左様じゃ、では紫のものも飲んだしな」
 ここで紫のワインの二本目を飲み終えた、飲むと決めていたそこまで飲んでそれであらためて言うのだった。
「これからは白を飲むか」
「今度はそちらですか」
「あっさりとな、それで野上君は寝るか」
「歯を磨いてそうします」
「ではな」
「はい、お休みなさい」
 こう言ってだった。
 野上君は歯を磨いて研究所にある自分の部屋に入った、そしてそのベッドに入ってすぐに眠りに入ったのだった。


野上君の戻る先   完


                  2022・6・9 
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