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頭の柿

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第三章

 だが仙台には他にもだった、柿売り達がいて彼等は与太郎の柿だけが売られているので商売あがったりであった。
「頭に柿が実るなんてあるか」
「そんなことはあるか」
「有り得るか」
「お陰であいつの柿ばかり売れてだ」
「わし等は商売あがったりだ」
「あいつを何とかしないとな」
「頭の柿を何とかしないとな」
 こう言ってだった。
 与太郎が寝ている隙に彼の頭の木を切ってしまった、そしてだった。
 彼等は商売仇の商売道具をなくしたが。
 与太郎は彼等は金までは取らなかったのでそれで意気揚々と村に帰って友人に話した。
「切られてもう商売は出来なかったのは残念だけれどな」
「それでもか」
「充分儲けたからな」
 それでというのだ。
「満足してるさ」
「そうなんだな」
「ああ、もうこれでな」
 笑って言った、その頭には切られた跡の切り株があったが。
 その切り株にだった。
「茸が生えているぞ」
「そうなのか」
「ああ、見れば上等の椎茸だな」
「椎茸!?それはいいな」
「そうそう生えるものじゃないからな」
 当時はそうであった、普通に生えて売れる様になったのはずっと後でこの頃は非常に高価なものであった。
「今度はそれをな」
「売ればいいか」
「そうするか?」
「そうだな」
 友人も頷いてだった。
 やってみろと答えた、こうしてだった。
 与太郎はまた仙台の街に出て今度は椎茸を売る様になった、貴重な椎茸が買えてしかもそれが人の頭から生えているという尚更珍しいものであったうえに。
 この椎茸も柿の時と同じ様に次から次と出て来た、それでまたしてもだった。
 与太郎は大儲けした、だがこのこともまたしてであり。
 街の茸売り達はそんな彼に怒った。
「あれだけ椎茸を売られるとたまったものではない」
「椎茸の様な貴重な茸をあれだけ売られるとな」
「わし等の椎茸が売れぬではないか」
「これは一大事だ」
 こう言って柿売り達と同じ様にだ。
 彼の猫実みを襲い切り株を引っこ抜いてしまった、椎茸の元をそうして彼等の脅威をなくしてしまった。
 これで与太郎の頭には木は根っこからなくなってだった。
 そこに大きな穴が開いた、それで与太郎は村に帰って友人に話した。 
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