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頭の柿

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第二章

 暫くしてだった、その頭に。
「おい、芽が生えてきたぞ」
「うむ、そうだな」
 友人に言われ川に映る自分を見るとそうだった。
「頭からな」
「まさかと思うが」
「あれか。前に柿を食った時にな」
「頭から落ちてな」
「そこで頭にか」
「柿の種が刺さってな」
 そうしてというのだ。
「それでだ」
「それが芽を出してきたか」
「こんなことがあるんだな」
 友人は言った。
「そうなんだな」
「わしの頭があんまりにも大きいからか」
「ああ、だからだな」
「そうだな、しかしこうなったのも縁でだ」
 与太郎は笑って話した。
「面白い、水や肥しもやってだ」
「それでか」
「育ててみるか、ひょっとしたら実が実るかもな」
 笑顔で言ってだった。
 与太郎は芽に水をやってだった。
 肥しもやっていった、するとだった。
 芽は木になりそこに実が実った、すると友人は彼に言った。
「街に出て売るか?」
「仙台のか」
「最近あそこは城も出来て街も賑やかになってきているしな」
「それであそこに行ってか」
「その柿を売ったらどうだ」
 頭にある木に実っている柿達を見て話した。
「そうしたら儲けられるだろう」
「そうか、これは確かに売れるな」
 与太郎も言われて頷いた。
「言われてみればな」
「柿はただでさえ売れるが」
「人の頭に実るなんてな」
「珍しいなんてものじゃないからな」
「売れるか」
「どうだ?行って売ってみるか?」
「それじゃあな」
 与太郎も頷いてだった。
 そのうえでだ、仙台の街に出てだった。
 柿を売ってみるとだ、これがだった。
「いや、凄いな」
「頭に柿の木が生えてな」
「そこに実が実るなんてな」
「こんなことがあるんだな」
「これは珍しい」
「ちょっと食ってみるか」
「そうするか」
 仙台の者達は口々に言ってだった。
 そのうえで柿を買っていった、しかも。
 柿は次から次に実り減ることもなくだ、もの珍しさでどんどん買っていって与太郎は忽ちのうちに大金持ちになった。 
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