横浜が急に

「しかもヤクルトもこのままで終わるか」
「ないわよね」
「絶対にここから勝つわね」
「そうなるわね」
「だからね」
　それでというのだ。
「横浜優勝はね」
「流石にないっていうのね」
「幾ら強くても」
「ヤクルトの方が強いから」
「今シーズンのヤクルトは手がつけられないわ」
　千佳はクールな目で述べた。
「仕方ないわよ」
「ううん、冷静ね」
「他チームのことなのに」
「カープじゃないのにちゃんと観てるよね」
「相手も観ないとね」
　敵チームのこともというのだ。
「それに巨人以外が強くてもね」
「冷静でいられるのね」
「巨人以外が強くても」
「それでもなのね」
「いいわ、冷静でいられるわ」
「随分言うわね」
　カウンターにいる女子高生位と思われる黒髪をショートにした店員が言って来た。制服の上に店のエプロンを着けている小柄で明るい感じの外見である。
「事実だけれどね」
「すいません、気を悪くしました？」
「いいわよ、今言ったけれど事実だから」
　店員は千佳に笑って答えた。
「全部ね」
「だからですか」
「事実は否定出来ないから」
　それでというのだ。
「流石に今年はね」
「横浜も優勝は無理ですか」
「クライマックスに賭けるわ」
　この時にというのだ。
「そうするわ」
「そうですか」
「今度その本拠地でヤクルトと三連戦だけれど」
「天王山ですね」
「ここで勝ち越せたらわからないけれど」
　横浜も優勝の芽が出るというのだ。
「けれどね」
「それでもですか」
「難しいからね」
　現実としてというのだ。
「ヤクルトも調子戻ってきたし」
「だからですか」
「まあクライマックスをね」
　これへの進出をというのだ。
「今はね」
「目指されますか」
「それはそっちと同じよ」
「カープとですか」
「見たらわかるわ」
　千佳のファッションを見ての言葉だ、シャツも膝までの半ズボンも赤で頭にはカープの帽子がある。
「カープファンでしょ」
「命賭けてます」
　これが千佳の返答だった。