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おっちょこちょいのかよちゃん

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228 棘付きの鎖鉄球

 
前書き
《前回》
 平和主義の世界の中央部の境界にて本部守備班を担う三人の男性、本山こういち、長岡ゆきひろ、吹山たつおは赤軍の西川純、そして戦争主義の世界の人間・アンドリューの襲撃を受ける。迎撃を試みるが、アンドリューの天然痘を媒介する毛布の攻撃を受けて窮地に陥る。だがそこにさり達が救援に到着する。さりとテレーズが治療すると共に長山達が西川が乗った飛行機から円形の光が全ての能力を無効化してしまう。だがそこに剣を本部に届け終わり、次の目的へと進む冬田、湘木、三河口の三人が現れた!!
 

 
「健ちゃん!」
 さりは従弟の出現に喜んだ。
「なんだ貴様は!?」
 アンドリューは三河口に問答する。
「通りすがりの者だよ」
「ふざけやがって!」
 アンドリューは毛布を投げようとする。だが三河口の威圧の能力(ちから)が働いた。
「なに、投げられない!・・・」
「二人はその人達の手当てを!」
「え、ええ!!」
 さりとテレーズは再び吹山の治療に当たる。
「また無効化させてやる!」
 西川は能力封じの光を再発動させようとした。
「湘木!」
「おうよ!」
 湘木が羽根から降りて斧を振るう。大波が現れ飛行機を襲う。
「捕まるかよ!」
 西川は飛行機を高く飛行させて回避を試みる。しかし、更に巨大な波が襲撃した。飛行機が波で落とされた。
「くう!」
 西川は墜落に巻き込まれまいとパラシュートで飛行機から飛び降りた。
「冬田さん、向こうへ羽根を飛ばせ!」
「は、はあい!」
 三河口と冬田は西川の元へ急ぐ。
「久しぶりだな、西川」
「お前!!」
 西川は嘗て清水市内の高校へ潜入した時、その男子高校生と会っていた。その時はやられてしまったが彼の能力を写し取り、異能の能力(ちから)を出す機械の生産に成功させた。
「さて、『あの時』のお返しといくか」
(覚えていたのか!!)
「ア、アンドリュー!早くしろ!」
「ああ!」
 西川が三河口の威圧の能力(ちから)を受ける。アンドリューは呪文を唱えようとした。
[我こそは開拓と発展に尽くすも・・・]
 だが、湘木の斧で出現させた大木の枝がアンドリューを殴り飛ばし、妨害された。
「こいつ!」
 アンドリューは仕込んでいた銃を出し、湘木を攻撃する。
「湘木!」
「なに余所見してやがる!」
 西川が三河口の隙を突く。だが、見えない何かが攻撃してきた。もと子の玉が影となって西川を弾き飛ばしたのだった。
「こいつは私達が相手しとくわ!」
「ああ、ありがとう!」
 三河口は湘木の元へ行く。湘木の方には武装の能力(ちから)の影響で銃弾は全く当たらなかった。そしてもう一度斧を振るい、アンドリューを攻撃する。しかし、何も起きなかった。
「な、何だ!?」
「この銃で貴様のその斧は使えなくさせた!もうその斧はガラクタ同然だ」
「な・・・!?」
「貴様のその能力(ちから)もすぐに無効化させてやるぞ!」
 だが横やりが入る。
「冬田さん!やれえ!」
「は、はあい!」
 冬田の炎の攻撃がアンドリューを襲う。
「貴様らにはこの毛布を喰らいな!」
 アンドリューが毛布を冬田と三河口が乗る羽根に向けて投げた。しかし、避けられる。
「これはどうだ!?」
 アンドリューが発砲する。冬田の羽根に当たる。羽根が縮んでしまい、二人は落下する。
「・・・な!?」
「キャアア!」
 二人は纏めて地面に落とされた。
「健ちゃああん!!」
 さりが絶叫する。
「羽柴さりさん、こちらの手当てが私がやりますので向こうへ!」
「うん!」
 さりは向かう。
(健ちゃんは他の皆と違って道具がない・・・!!あのアンドリューが異能の能力(ちから)を封じさせたら何もできなくなる!健ちゃんに、戦える道具があれば・・・!!」
 さりはそう願っていた。その時、護符が光り出す。

「これで天然痘にかかれ!」
 アンドリューが三河口と冬田、そして湘木に向かって天然痘を媒介する毛布を投げた。
(何もかも終わりか・・・!?)
 三河口は絶望した。しかし、三河口の腕に何かが落ちる。棘が付いた鉄球で鎖がついている。
「健ちゃん、それ使って!!」
 さりの声がした。
「は、はい!」
 三河口は兎に角その鎖鉄球を地面に投げつけた。地面が爆発し、毛布を吹き飛ばす。
「何!?」
 アンドリューは予想外の事態に驚いた。そして何があったのか考える暇もなく鎖が巻き付かれる。
(く、鎖だと!?)
 アンドリューが三河口の近くに引き寄せられる。そして威圧の能力(ちから)が混じった睨みがアンドリューを襲う。そして三河口はさらにアンドリューを強く締め付ける。アンドリューは気絶した。
「が、がああ・・・」
「よし、俺が決めてやる!」
 湘木が能力が使えなくなった斧でアンドリューを力任せに斬首した。アンドリューは光となって消えた。

 一方、もと子やさきこ、長山に尾藤、清正と交戦している西川はアンドリューが倒される様を確認した。
「アンドリュー!」
 西川は銃や手榴弾などで長山達と応戦していたが、そこに先程戦闘不能にされた本山がトランペットの音波とさきこのサファイアの力が強まって西川を気絶させた。
「やったか・・・」
「君達、助けてくれてありがとう」
 本山は礼をした。
「いや、それほどでも・・・」
 長山は謙遜した。
「あの時助けてくれたお返しをする事になったわね」
「はい、確かに」
「私の方もこちらの方の怪我を完全に治す事ができました」
 テレーズによる吹山への応急処置は完了していた。
「ありがとう!動けるようになったよ」
「良かったな!お前が死んだら俺達も生きていけなくなるとこだったよ!」
 長岡が喜んだ。
「おいおい、こんなところで・・・」
「そうだ、本部に連絡した方が良いのでは?」
 清正が促す。
「そうだったわね」
 さりは通信機を出した。
「こちら羽柴さり。護符を狙う者達を返り討ちにしたわ。それから赤軍が一人のびてるけどどうする?」
『こちらフローレンス。了解しました。私が回収致します。少々お待ちください』
 フローレンスからの返答が出た。
「こやつが起きんようにしとく必要があるな」
 清正は時の槍を西川の近くに突き刺した。
「こやつが感じる時は止まったままだ。暫くは起きん」
「ありがとな、清正」
 尾藤は礼をした。さりは従弟の方を向く。
「健ちゃん、剣を本部に持ってったの?」
「はい、今本部の一室に保管してあります。これから杖か杯を取り返しに行こうかと思い、まずかよちゃんの杖を取りに行くつもりです」
「そっか、大変よね。杖も杯も取られて。ゆり姉もあり姉も行ってんでしょ?」
「はい、ゆりちゃんは杯を取りに、ありちゃんは俺の友達と一緒に杯の持ち主の子を探しに行っております。はて、この鎖鉄球、ありがとうございました」
 三河口はさりに鎖鉄球を返そうとした。
「ううん、健ちゃんが持ってて」
「え?」
「健ちゃんは武器持ってないし、私は健ちゃんの武器をあげたいって気持ちがあってそれを出したんだから、それ使って」
「はい・・・」
(仮の武器には丁度いいか・・・)
「それでは俺達は先へ向かいます」
「頑張ってね」
「その杖を必ず取って来いよ〜!」
「吹山、プレッシャーかけんなよ」
「ワリイ、ワリイ」
 本部守備班達に見送られて三河口、湘木、冬田は羽根でその場を飛び去った。
(自分の道具を手にするのはまたずっと後になっちまったか・・・)
 そして三河口は自分の武器となった鎖鉄球を見る。
(さりちゃん、それまでこれを自分の得物として振るいます。それから・・・)
 三河口は敵の世界の本部で相対した戦争主義の世界の長と一体化したあの少年を思い出す。
(レーニン、いや、杉山君か・・・。俺のもう一つの目的は杉山君を連れ返し、レーニンを倒して彼が大将になれたか改めて判断する事だな・・・。ありちゃんやりえちゃんが果たせなかった杉山君を連れ返すという役割を引き継ごう・・・!!)
 三河口は己の目的を顧みながら湘木に冬田と共に先に進む。

 レーニンはトランシーバーで報告を受ける。
『こちら東アジア反日武装戦線、佐々木規夫。奥平純三と合流しました。そしてロベスピエール、ダントン、マラーといったジャコバン派の主力達と同行します』
「解った。奴等は杖を取り返す為に奥平純三を追うつもりだ。足止めしておけ」
『はい』
 通信が終了した。そして一軒の屋敷が見える。レーニンは杉山の姿に変わった。
「着いたか。ここに『アイツ』がいるんだな?」
『ああ、早めに済ませ』
 杉山はその屋敷の門を通った。そしてレーニンの姿に戻る。
「私だ。レーニンだ」
「はっ、お通し致します!」
 守衛に通されてレーニンは中に入る。一人の男が出迎えた。
「これはレーニン様」
「紂王。例の小童と杯の持ち主の小娘に会いに来たいと私の身体の核が言うので来たのだ」
「はい、ご案内致します」
 レーニンは目的の少年少女の所へ向かう。 
 

 
後書き
次回は・・・
「立ちはだかる妨害者」
 りえの救出に向かうあり達は馬車に乗る者達を発見する。乗っていたのは戦争主義の世界の人間でさらには東アジア反日武装戦線の人間も乗っていた。そしてその手は杖を取り返そうとするかよ子達の元にも及ぶ・・・!! 
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