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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十四話 黄龍、娘を救うのことその七

「月が命を失う理由はありません」
「左様か。ではじゃな」
「月、御前は生きるのだ」
 娘に。己の後ろにいる彼女に顔を向けての言葉だった。
「いいな。今はな」
「では私は」
「命を粗末にするな」
 娘にだ。こうも言うのだった。
「全ては私に任せるのだ」
「では常世は」
「何度も言うが私が封じる」
 こう言ってだ。黄龍は娘を止める。そのうえでだ。
 刹那の頭上にもう出ていた暗黒の穴を見上げてだ。弓を取り出しだ。
 それで撃ちだ。闇を一瞬で消してしまった。それを見てだ。
 刹那は表情を変えないままだ。こうその黄龍に言うのだった。
「まさか貴様が出て来るとはな」
「貴様の思い通りにはさせぬ」
 黄龍も刹那に言葉を返す。今対峙しているのはこの二人だった。
「例え何があろうともな」
「ここで常世を出せば全てが終わっていた」
 刹那は黄龍に言った。
「この戦いもこの世界もだ」
「しかし今はそれは防がれた」
 確かにだった。それはだ。
 黄龍が告げるのはそのことだった。そうしてだ。
 彼は今度は剣を出してだ。そのうえで刹那に言うのだった。
「常世の門はとりあえずは封じた。次は貴様自身をだ」
「倒すというのだな」
「そうする。私の全てを賭けてな」
 構えを取った。そのうえでだ。
 己の子供達やかつての仲間達にだ。こう告げるのだった。
「御前達は下がれ」
「えっ、けれど父さんは」
「まさか刹那とお一人で」
「私のことは気にするな」
 黄龍はこう楓と守矢に継げた。
「構うことはない」
「じゃあ僕達は今は」
「他の敵をなのですか」
「そうだ。刹那は私に任せろ」
 これが黄龍の言葉だった。
「わかったな」
「うん、父さんがそう言うのなら」
「私達は」
 こう言ってだった。まずは二人が頷いた。そうしてだった。
 月もだ。静かに頷いて父に応えた。
「では。私も」
「そうだ。そうして生きろ」
 黄龍はまた娘に告げた。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
「では我等もだ」
「わかりましたです」
 虎徹が父の言葉に頷いた。
「では白装束の者達を」
「倒すとしよう」
 他の者達もだ。白装束の者達との戦いに向かう。そうして黄龍と刹那の戦いがはじまった。
 光と闇の刃が交わる。それにより銀の火花が飛び散る。
 黄龍が上から振り下ろせば刹那がそれを受け止める。そして刹那はすぐに反撃に転じ今度は黄龍が受け止める。そうした攻防が繰り返される。
 その中でだ。刹那が言った。
「一度は俺の傀儡となったが」
「それはもう昔のことだ」
「今は違うか」
「私は己を取り戻した」
 だからだというのだ。
「貴様を倒し、消し去る為にだ」
「ならそうしてみるのだな」 
 刹那の言葉には感情はなかった。しかしだ。
 意志はあった。その意志を見せてだ。黄龍に返すのだった。そして返したのは言葉だけではなかった。闇の刃もだった。
 その刃での突きをだ。黄龍は絡め取る様にして受けてだ。その闇の目を見て言うのだった。
「何故この世界に来ることができた」
「聞くのはそのことか」
「そうだ。それは何故だ」
「他の者達と同じだ。呼ばれたのだ」
「呼ばれた。あの者達にか」
「そうだ。この世界への干渉を欲している者達」
 それが于吉であり左慈だった。そして白装束の者達だ。
 その彼等に呼ばれてだ。この世界に来たというのだ。
 刹那はそのことを話してだった。さらにだ。
 他の者達についてもだ。彼は言った。
「オロチ、アンブロジアもだ」
「同じだというのだな」
「そうだ。全ては同じだ」
 こう言うのだった。
「この世界を我等の望む世界にする為にだ」
「破壊と混沌に満ち人のいない世にか」
「人なぞ不要だ」
 刹那にとっても他の者達にとっても同じだった。闇の者達にとっては。
 
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