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おっちょこちょいのかよちゃん

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220 愛しき妻、エカチェリーナ

 
前書き
《前回》
 赤軍・西川純の奇襲で杖を奪われたかよ子。だがイマヌエルの介入と護符の所有者やまる子の姉が遠隔攻撃できるように設定されたおかげですぐさま杖を取り返す事に成功した。そして赤軍とスターリンをあと一歩のところまで追い詰めたのだが、急にスターリンが離脱する。スターリンはゆり達と交戦するエカチェリーナが劣勢に立たされたと知り、離脱したのだった!! 

 
 かよ子はスターリン達との戦いで疲弊していた。
「またおっちょこちょいやっちゃったよ・・・」
 かよ子はスターリンのブザーの音でふと彼を包んでいた炎を消してしまったのだった。
「あの時びっくりして火を消していなかったらスターリンを倒せたのに・・・」
「山田かよ子、だが、とにかく奴は撤退した。次へ向かおう」
 次郎長は慰める。
「うん・・・!!」
「でもあいつ、どうして逃げたんだブー?そんな腰抜けなのかブー?」
「確かに逃げる時おかしかったよな」
 大野とブー太郎はスターリンの最後の行動が気になっていた。
「奴は『愛しき妻の所に行く』と言っておった。おそらく奴は彼の奥方の元へ赴いたのであろうな」
 石松が解説した。
「そんなに自分の奥が気に何なら一緒についてやったほうがいいのに、バカだね」
「拙者とお蝶はいつも一緒だからな」
「いよっ、仲良し!」
 友蔵とまる子はからかった。
「全く、こやつらは・・・」
 一方、かよ子は体が疲れて横になりたくなってしまっていた。
(ダメだ、さっきの戦いで眠くなっちゃった・・・)
「山田かよ子、少し休め」
「で、でも、先に進まないと・・・。今日はあんまり進んでないし・・・」
「無理をするな。焦ると余計に己を滅ぼすことになる」
「うん・・・」
 石松に言われてかよ子は休む事にした。

 スターリンは自分の屋敷に戻っていた。
「緊急で離脱させる術を掛ける事ができてよかった・・・」
 その場にエカチェリーナが横たわっていた。
「ああ、わが愛しきエカチェリーナよ、無事であったか?」
 しかしエカチェリーナは答えない。頭から出血の様子があった。
「な・・・!!すまなかった、一人にさせてしまって」
 スターリンは妻に泣きながら謝り、手当てを始めるのであった。

 ゆり達は先程戦った女について気になっていた。
「勝手に消えた・・・」
「もしかしてpinchiになったら自動で逃げられるような能力持ってたのかしら?」
「そうかもしれないわね・・・」
「あの、ゆりさん・・・、役に立てへんですみません・・・」
 光江がゆりに謝った。
「ああ、相手が悪かったから仕方ないわよ。先に行くわよ」
 ゆり達は列車へ戻り、杯を取り返しに向かう。

 長山は眼鏡の能力(ちから)を解除させ、元の場所へ景色を戻した。
「それにしてもあの人に赤軍・・・。かよちゃん達も危ないわね・・・」
 だが、さりも本部守備の仕事であっても自分の護符が取られる可能性がある事は意識していた。現に赤軍の丸岡修という人間やアンヌ王妃が攻めてきた時、テレーズの助力がなければ確実に護符を奪われ、自身も殺されていたであろう。そしてあの夢が思い出される。
(あの夢・・・、確かかよちゃんの友達・・・。あの男とどういう関係・・・?)
 さりは気になり続ける。
「羽柴さりさん、如何なされましたか?」
 テレーズが聞いた。
「あ、実は夜中に夢を見てね・・・」
「夢ですか?」
「ええ、夢の中に一人の男が出て来て、『安全地帯にいつまでもいられると思うな』って言って来たの。私は『顔を出せ』って言ってきたらその顔が・・・」
「顔?」
「はい、その顔が、杖の持ち主の子の友達にそっくりで・・・」
「もしかしてそれって杉山君かい?」
 長山が確認する。
「そう、そう・・・!!」
「まさか、杉山君は敵の方に寝返ったのか・・・?」
 長山は眼鏡を通して杉山の近況を探る。
(杉山君・・・)
 しかし、杉山の姿が見えない。何かが妨害しているのか。

 レーニンは通信を受ける。
『こちら丸岡修。杖の奪取は失敗した!態勢を立て直す!』
「失敗だと?スターリンも一緒ではなかったか?」
「それがスターリンは途中で妻の所に行くと言ってその場を去りました」
『全く、妻の事となるとどうしようもない輩だな・・・』
 レーニンは呆れた。そして杯の所有者を捕えているある屋敷へと向かう。

 エカチェリーナは起き上がれるようになった。
「私は・・・」
「ああ、エカチェリーナよ。お前は頭に怪我をしていたのだ」
「そうだったのね・・・。それにしても恐ろしい女性達だったわ」
「女どもと戦ったのか?」
「ええ、剣を奪い去ったって者達とね。とても強かったわ・・・」
「そうか、今度はそいつらを倒しに行かないとな・・・」
 スターリンはエカチェリーナの為に何でもしなければと思う気持ちが強まった。

 本部にイマヌエルが戻って来た。
「只今帰って来た」
「お帰りなさいませ」
「何とか杖は守り抜けた。だが、山田かよ子君は戦いで疲れ切ってしまったよ」
「そうですか・・・。現れた敵は確かスターリンといいます人物でしたわね?」
「ああ、そうだよ」
「かなり厄介な敵に会いましたわね。切り抜けられましたのが本当に奇跡ですわね」
「ああ、彼は途中で妻が気になったらしく、引き上げて行ったよ」
「『妻が気になった』ってどういう事?」
 まき子が質問した。
「あのスターリンと言います男は、生前、最初に妻でありますエカチェリーナ・スワニーゼを溺愛していましたのです。ですが、エカチェリーナは早死にしまして、2番目に結婚しましたナジェーダ・アリルーエワとの仲は険悪でした。それだけスターリンとエカチェリーナは馬が合いましたのでしょう」
「そうだったのね・・・」
「エカチェリーナは戦争主義の世界の人間となりました反面、ナジェーダの方は私達の世界の人間として受け入れています」
「そうなのね・・・」

 こちら雷の山。すみ子の元に自分達と同い年の小学生の四人組に一人の平安時代の貴族のような人物と合流していた。羽井玲衣子(はねいれいこ)鶴井(つるい)ひろみ、星川辰夫(ほしかわたつお)山元(やまもと)たかし。その四人組は本部守備を担う者達で福岡の小学校に通う同級生同士だった。そして同行している貴族のような人物は道真といい、嘗て清涼殿の落雷の事件など、怨霊として有名な人物であった。
「おうい、来たたい!」
「お前らが本部守備班か?」
「うん、そうなんよ」
「よし、ここが『雷の山』だ。雷の力が周囲にあってこの世界の電気の源にもなっているんだ」
 川村が説明した。
「そうか。よし、死守するたい!」
「うん!」
 だが、すみ子など見物の能力(ちから)を持つ者は胸騒ぎが収まらなかった。
「気をつけて・・・!別の敵が来てるわ・・・!!」
「何!?」
 その通り、敵は現れた。
「ふ、雷の山を返して貰おうか!」
「何だ、テメエは!?」
「我が名はトロツキー。ボリシェヴィキのサイキョーの男の一人だ!」
「皆の者、戦闘態勢だ!」
 ジャンヌが一声呼びかけた。
「この私を倒せるものならやってみるが良い!」
 雷の山で二度目の激戦が始まる。 
 

 
後書き
次回は・・・
「ボリシェヴィキの使徒、トロツキー」
 雷の山を襲撃しに来たトロツキーと交戦するすみ子達。トロツキーの攻撃を何とか銃で防御したすみ子だったが、トロツキーが変な術を福岡の小学生達やすみ子に掛ける。それですみ子達が急にトロツキーにしたがってしまい・・・!? 
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