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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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ハーケン会戦~決着~(第三部終了)

~ハーケン平原~



「あんた達には他の連中を任せるわ!あたしはあの女を速攻で沈めてくるわ!」

「ちょっ、サラ教官!?」

「教官の癖に真っ先に突出した行動をするとは、セシリア将軍に対する今まで溜まりに溜まった怒りのあまり、気でも狂ったか!?」

戦闘が始まるとサラはセシリア目掛けて向かい始め、サラの突出した行動にマキアスは驚き、ユーシスは呆れた表情で指摘した。

「心配しなくても、あたしは冷静に考えた上で行動しているわ!!あの女が黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の司令塔なのだから、真っ先に潰せば黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の連中に動揺を与えられる上、連携も崩しやすくなるわ!セイッ!」

「いけない……!サラ教官のフォローをするよ、みんな!」

「おおっ!!」

ユーシスの指摘に対してサラは走りながら答えた後セシリアに先制攻撃を仕掛け、サラの行動を見たトワはアリサ達に指示を出してアリサ達と共に行動を開始した。

「ハアッ!!」

「ハア……”想定通りの行動ですわね。”エニグマ駆動―――――」

対するセシリアは呆れた表情で溜息を吐きながら片手に持つ杖で瞬時に形成した簡易結界でサラの先制攻撃――――――電光石火の最初の一撃を受け止めると共にもう片方の手でオーブメントを駆動させ

「ヤアアアアァァァァァ……ッ!!」

「―――――エアロシックル。」

最初の一撃を防御されたサラは続けて後退しながらセシリア目掛けて怒涛の銃撃を放ち、対するセシリアは簡易結界で防御しながら駆動を終えたオーブメントによって風の刃を発生させるアーツをサラに放った。

「!!斬り刻め――――――」

襲い掛かる風の刃を見たサラは側面に跳躍して回避した後次のクラフトを放つ為に”溜め”の態勢に入り、サラがアーツを回避するとセシリアは続けて結界の展開を止めた杖に瞬時に魔力による炎を宿らせ

「炎の蛇よ―――――絡みつく炎蛇。」

「!?ハアアアァァァァッ!」

杖に宿らせた魔力の炎をサラ目掛けて鞭のように操って攻撃し、サラは襲い掛かる炎の鞭を見るとセシリアへの攻撃を中断して咆哮を上げると共に闘気を纏わせた強化ブレードで自身に襲い掛かった炎の鞭を切り裂いた。



「降り注げ、鋭き雨――――――紅時雨!!」

サラのセシリアの反撃への対処を好機と判断したアメリアはサラ目掛けて闘気を込めた矢を連射するクラフトを放ち

「く……ッ!」

「貫け――――――ミラージュアロー!!」

「切り裂いて――――――フルールエッジ!!」

「させないよ!――――――地竜撃!!」

自身に次々と襲い掛かる闘気の矢をサラは自身の得物である強化ブレードで斬るか、銃で撃ち落として対処し、アリサとトワはアメリア目掛けて幻影の矢と回転する導力の刃を放ち、アリサとトワの攻撃に気づいたフランツはアメリアの前に出てアリサが放った幻影の矢を防ぐ為に地面を隆起させて隆起した地面の壁を発生させるクラフトを放って防いだ。

「切り裂け――――――そこっ!!」

「ぐっ!?」

ステラが放ったクラフト―――――ウィンドバレットによって広範囲に発生した風の刃を受けたサラは怯み

「燃えろ――――――バーニングフォース!!」

「―――――させないわよ!」

それを見たマキアスは追撃をさせない為にステラ達目掛けて炸裂する炎の弾丸を放ったがエーデルガルトがステラ達の前に出て身の丈程ある大盾を構えてマキアスが放った炎の弾丸を防いだ。

「全てを滅せよ――――――アウエラの裁き!!」

「っ!!」

その時詠唱を終えたセシリアが杖に収束した魔力でできた高純粋の物質破壊球をサラ目掛けて放ち、自身に襲い掛かる魔力球を見たサラが大きく後ろに跳躍して回避した瞬間サラがいた場所に魔力球がぶつかると大爆発を起こした。



「白銀の剣よ―――――」

「喰らいなさい――――――」

「音よ、奔って――――――」

「奔れ、雷よ―――――雷牙轟閃!!」

「滅せよ――――――轟刃波!!」

一方エマ、セリーヌ、エリオットは反撃にセシリア達目掛けて魔法攻撃を放とうとするとそれぞれ馬に騎乗したディミトリとドゥドゥーが左右から同時に強襲し

「させるか――――――斬!!」

「大地の力よ――――――オオオォォォッ!!」

二人の強襲に対してユーシスとガイウスがそれぞれクラフトを放って相殺した。

「お願い!!」

「炎の牙!!」

「ソニックレイブ!!」

「爆ぜよ、銅輝陣――――――イオ=ルーン!!」

それぞれ魔法攻撃を発動したエマは複数の白銀に輝く霊力の剣、セリーヌは複数の火球、エリオットは貫通力のある導力波を放ったがリシテアが発動した高純粋の結晶である銅輝陣による爆発で相殺された。

「でやぁっ!!」

「行くよ――――――とうっ!!」

「おっと、空は俺達の領分だぜぇっ!!」

「貫く――――――雷光一閃!!」

「!?く……っ!?」

「!っとぉっ!!」

セシリア達への反撃の為にそれぞれクラフトを発動したラウラとアンゼリカはその場で跳躍するとそれぞれ飛行する騎獣に乗って飛行状態のクロードとイングリットがラウラとアンゼリカに奇襲し、クロードが放った正確無比な狙いの矢の攻撃をラウラは咄嗟に大剣を盾にして防ぎ、アンゼリカはイングリットが突撃と共に繰り出してきた鋭い突きを受け流し

「お返し!!」

「落ちろ~!!」

二人の攻撃がクロードとイングリットによって妨害されるとフィーは銃撃で、ミリアムは掃射攻撃でクロードとイングリットに反撃したが二人はそれぞれの騎獣を巧に操って回避した。



「大丈夫ですか、教官!?――――――ティアラ!!」

「戦闘開始早々単独で敵陣に突っ込むとか考えなさすぎ。そんなんだから、”脳筋”ってバカにされるんじゃないの?」

「ぐっ………幾ら連中のほとんどが佐官クラスの軍人とはいえ、リィンやあんた達と同年代なんだから速攻で仕掛ければ隙を突けると舐めていたあたしが悪かった事は認めるわよ……!」

サラに声をかけたアリサはサラに治癒アーツを放ってサラのダメージを回復し、ジト目のフィーの指摘に唸り声を上げたサラは苦々しい表情を浮かべてエーデルガルト達を睨んだ。

「何とか教官の突出をフォローできたけど………」

「向こうの連携も相当な上、厄介な存在がいるね。」

「うん……馬を駆っての奇襲も厄介だけど、”空”からの攻撃が一番厄介だね……」

「ブーブー!ボク達は白兵戦で戦っているのに、そっちは馬どころか、飛竜(ドラゴン)天馬(ペガサス)を使ってこっちの攻撃が届かない空から一方的に攻撃するなんて卑怯じゃないか~!」

エリオットは不安そうな表情で呟き、真剣な表情で呟いたアンゼリカの言葉に頷いたトワはそれぞれ騎獣に騎乗しているディミトリ、ドゥドゥー、クロード、イングリットを順番に見回し、ミリアムは不満げな表情を浮かべてエーデルガルト達に文句を言った。



「ハア?そういう貴女は”兵器”に乗って戦っているんですから、貴女にだけは卑怯呼ばわりされる筋合いはありませんよ。」

「そもそも、”実戦に卑怯なんて言葉は存在しませんよ。”」

「文句を言う暇があったら、そっちも馬に乗って戦える奴はさっさと馬に乗ったらどうだ?そのくらいの時間は待ってやるよ。」

「いいだろう!――――――シュトラール!!」

「――――――ヴィント!!」

ミリアムの文句に対してリシテアとイングリットが呆れた表情で反論し、クロードの指摘に対して答えたユーシスが口笛を吹くと待機していたユーシスの愛馬がユーシスの傍に走って近づき、ユーシスに続くようにガイウスも口笛を吹くとユーシスの愛馬のように待機していたガイウスの愛馬がガイウスの傍に走って近づき、ユーシスとガイウスはそれぞれの愛馬に乗り込んだ。

「フフ、突出した仲間への即座のフォローと合流は見事でした。――――――やはり、二手に分けるべきですね。エーデルガルト、フランツ。」

「はい!――――――逃がさないわよ……!」

「了解!――――――来いっ!!」

「くっ……この技は……”洸閃牙”……!」

「うわわわっ!?ひ、引き寄せられ……!」

一方セシリアはトワ達の行動に感心した後エーデルガルトとフランツに指示を出し、セシリアの指示に頷いた二人は二手に分かれた後エーデルガルトは闘気による光のうねりで、フランツは槍から引き寄せの効果がある闘気を放った。エーデルガルトが放った技の正体をすぐに悟ったラウラは厳しい表情を浮かべ、フランツが放った技にエリオットが慌てたその時するとエーデルガルトによる光のうねりにはラウラ、フィー、マキアス、エマ、セリーヌ、トワ、フランツによる引き寄せの闘気にはアリサ、エリオット、ミリアム、サラ、アンゼリカが引き寄せられ

「ハーフ!!」

「イエス・マム!!」

更に続けてセシリアが号令をかけるとクロード達はそれぞれ二手に分かれ、エーデルガルトにはリシテア、ステラ、クロードが向かい、フランツにはイングリット、アメリア、セシリアが向かってそれぞれの相手と対峙した。



「しまった……!」

「チィッ!二手に分けられてしまったわね……!」

二手に分けられてしまった事にアンゼリカとセリーヌはそれぞれ厳しい表情で声を上げ

「そこで待っていろ!」

「オレ達もすぐに加勢する!」

それを見たそれぞれ馬に乗っているユーシスとガイウスは馬を駆ってそれぞれのチームへと駆け付けようとしたが

「お前達の相手は俺達だ!」

「仲間の元へ向かいたいのならば、まずは俺達を倒す事だな。」

「チィッ!」

「くっ……!」

そこにそれぞれ馬に乗ったディミトリとドゥドゥーがそれぞれの武装をユーシスとガイウスに繰り出し、繰り出された攻撃をそれぞれの武装で受け流したユーシスとガイウスはそれぞれ一騎打ちによる騎馬戦を繰り広げ始めた。

「ユーシス!ガイウス!」

「くっ……ユーシスとガイウスに馬に乗るように挑発したのはこの為だったのね!?」

「連携力が高い私達を二手に分散させるかつユーシス君とガイウス君に一騎打ちをせざるを得ない状況に持ち込んで二手に分散させられた私達の戦力を減少させ、人数が減少した事で連携力が落ちた私達をそれぞれのチームに各個撃破させる戦術………――――――だけど、それは貴方達にも当てはまる事!」

それぞれ騎馬戦を開始したユーシスとガイウスの様子を見たマキアスは真剣な表情で声を上げ、セシリア達の意図――――――自分達を二手に分けかつユーシスとガイウスを孤立させてディミトリとドゥドゥーに各個撃破させる考えを悟ったサラは唇を噛み締めてセシリアを睨んで指摘し、トワは真剣な表情でエーデルガルト達を見つめて声を上げ

「ええ、そのリスクについては否定しません。ですが――――――」

「そのリスクはあんた達があたし達の実力と連携力を上回れる力があればの話です!」

「歪界重力波!!」

「ティルワンの闇界!!」

トワの指摘に対してセシリアが頷き、リシテアは答えた後セシリアは重力を発生させる魔術で、リシテアは闇魔力の打撃を与える魔術でそれぞれが対峙しているチームにダメージを与えた。



「みんな、頑張って!!」

リシテアによる魔術のダメージを受けたトワは回復弾を空に放って回復エネルギーを降り注がせて自分達のダメージを回復し

「貫け―――――メイルブレイカー!!」

「風よ、貫け――――――スパイラルショット!!」

マキアスがリシテア目掛けて貫通弾を放つとステラが風の魔力で回転させて装甲をも貫く弾丸を放って相殺させ

「頑張りなさい――――――フォルテ!!」

「エニグマ駆動―――――クロックアップ!!」

「サンクス。行くよ――――――」

「させねえよ――――――迅雷!!」

セリーヌとエマのアーツで身体能力を上昇させてもらったフィーが後衛のステラとリシテア目掛けてクラフトを放とうとしたその時クロードがフィー目掛けて落雷を発生させる矢を放ち

「!!」

上空からの攻撃に気づいたフィーは攻撃を中断して側面に跳躍してクロードの奇襲攻撃を回避した後クロード目掛けて双銃剣の銃の部分で連射して反撃したがクロードは飛竜を操ってすぐに攻撃範囲外に逃れた。

「コォォォォォォ……ハアッ!吼えろ――――――獅吼滅龍閃!!」

「漆黒の獅子よ、呑み込みなさい――――――獅子黒龍閃!!」

クラフトで身体能力を上昇させたラウラがエーデルガルトに蒼き獅子の闘気を放つと対するエーデルガルトは黒き獅子の闘気を放って相殺させ

「まだだっ!岩斬滅砕陣!!」

「その程度!」

更にラウラが続けて武器を地面を叩きつけ、数多の岩片を飛ばすクラフトを放つとエーデルガルトは自身が装備している大盾で防いだ。

「時の重力に囚われろ――――――ダークイレイザー!!」

「エニグマ駆動―――――ダークマター!!」

「く……ッ!?」

「あう……っ!?」

そこにマキアスが暗黒の重力エネルギーを放つクラフトで、エマは空属性の霊力で重力を発生させるアーツでそれぞれエーデルガルトとリシテアにダメージを与えると共に重力でエーデルガルトとリシテアの動きを制限させ

「好機!フィー!」

了解(ヤー)!」

エーデルガルトが怯む様子を見たラウラはフィーに呼びかけ、呼びかけられたフィーは凄まじいスピードでリシテアに向かい始め

「でやぁっ!!」

「炸裂せよ――――――プロミネンスショット!!」

「結界弾、発射!!」

ラウラは跳躍してエーデルガルト目掛けて大剣を振り下ろそうとし、それを見たステラは着弾すると大爆発を起こす強力な弾丸をラウラ目掛けて発射したがトワがラウラに結界弾を放った事でラウラに絶対防御の結界が展開された事でステラのクラフトがラウラに命中してもラウラはダメージを受けずそのままエーデルガルト目掛けて大剣を振り下ろし

「降り注げ、矢の雨!!」

「炎よ、撃ち落としなさい!」

「チ……ッ!」

クロードはリシテアに向かっているフィー目掛けて広範囲の攻撃――――――二蓮制圧射撃で足を止めようとしたが凄まじいスピードで向かうフィーには矢が降り注ぐ前に既にフィーは攻撃範囲から逃れており、セリーヌは尻尾に宿らせた炎を連続で上空にいるクロードに放ち、セリーヌが放ったクラフト――――――クリムゾンテイルに気づいたクロードは舌打ちをして回避に専念した。



「鉄砕刃!!」

「クロスラッシュ!!」

そしてラウラの攻撃がエーデルガルトに、フィーの攻撃がリシテアに届こうとしたその時

「炎よ、炸裂せよ――――――守護爆裂陣!!」

「無月――――――一刀!!」

エーデルガルトは炎の霊力を宿した大剣をその場で叩きつけて自身を中心に炎の爆発を炸裂させ、リシテアは自身の得物である魔道杖の仕込み刀を露わにすると同時に一閃技を放った。

「ぐ……っ!?」

「あぐ……っ!?」

二人の反撃を受けたラウラとフィーはそれぞれダメージを受けると共に呻き声を上げた後フィーは素早い動きでリシテアから距離を取ってラウラの元まで下がった。

「二人とも大丈夫ですか!?今回復します――――――」

「い、一体どういう事だ!?フィーは”魔術師であるはずのリシテアさんに得物である杖に斬られた”ように見えたが……」

「ん……間違いなく、”斬撃”を受けた。しかもさっきの斬撃はリィンの”八葉一刀流の技”だった。」

二人に駆け寄ったエマは二人が負った傷を回復する為に回復クラフトを発動し、困惑の表情で声を上げたマキアスの言葉に頷いたフィーはリシテアを睨み

「!あ、あれ……!?リシテアさんの”得物が杖から剣のような得物に変わっている”……!?」

「杖から剣……――――――!そういえば父上から聞いたことがある。東方の剣の中には杖等と言った長物に刃を隠す事で、自らの得物を敵から誤魔化す剣があると。」

リシテアの得物が杖から仕込み刀に変わった事に気づいたトワは戸惑いの表情で声を上げ、心当たりを思い出したラウラは真剣な表情でリシテアを見つめて呟いた。

「ええ、その通りです。――――――これは”仕込み刀”と言う名前の得物で、魔術師である私の弱点である接近戦を補う為の得物です。ちなみに私がリィンの剣技の一部を使えるのは別におかしな話じゃないですよ。――――――そもそも、さっきの剣技は”訓練兵時代にリィンに教えてもらったのですから。”」

「な――――――という事はまさか、其方も”八葉一刀流”の剣士なのか……!?」

リシテアの答えを聞いたラウラは絶句した後信じられない表情でリシテアに訊ねた。

「違いますよ。単にリィンが習得している剣技の一つがさっきのような状況に陥った時の対策として有用と判断した私がリィンから教えてもらっただけで、私の剣術はセシリア教官直々の教えによるものですよ。」

「リ、”リシテアさんの剣術がセシリア将軍直々の教え”という事は……!」

「あの魔道将軍は人にものを教える事ができるレベルの剣術まで修めているって事ね。」

リシテアの説明を聞いたエマは驚き、セリーヌは目を細めてアリサ達が戦っているセシリアを睨んだ。



「そして”これが魔術師である私に最も適した剣技です”――――――マナブラッシュ!!」

「!フィー達は私の後ろに下がれ!」

リシテアが放った斬撃波はラウラ達に襲い掛かり、自分達に襲い掛かる斬撃波を見たラウラは仲間達を護る為に前に出て大剣で防御の構えをした。

「!いけない、あの光は……!月よ――――――」

リシテアが放った斬撃波が纏う霊力の光に気づいたエマは魔法反射の結界のクラフトを発動しようとしたが

「っと、させねぇぜ!」

「あぁっ!?」

「エマ君!?くっ、ルーレでルシエル達と戦った時も感じたが空からの一方的な遠距離攻撃なんて卑怯じゃないか……!」

「”戦場に卑怯なんて言葉はない”よ……!」

クロードがエマの背後の上空からクラフト――――――精密射撃を放ってエマに命中させてエマのクラフトを妨害し、クロードに攻撃されたエマを見たマキアスは唇を噛み締めて文句を言いながらクロード目掛けてショットガンで攻撃し、フィーはマキアスの文句に指摘しながら双銃剣でクロード目掛けて掃射したがクロードは飛竜を操ってすぐに攻撃範囲外へと離脱した為命中しなかった。そしてリシテアが放った斬撃波をラウラが防御したその時凄まじい衝撃がラウラを襲った!

「ぐう……ッ!?」

リシテアが放った斬撃波は霊力が宿った斬撃波だった為、魔法防御力が低いラウラは自身にとって想定外のダメージを受けた事で怯み

「アルゼイド流奥義――――――」

ラウラが怯むとその隙を逃さないかのようにエーデルガルトは大技の構えをし

「させない――――――」

「エニグマ駆動―――――ダークマター!!」

「うわっ!?」

「キャッ……!?」

「……ッ!?」

「く……っ!?」

「あう……っ!?」

ラウラに追撃しようとしているエーデルガルトを見たトワはエーデルガルトに妨害技を放とうとしたがオーブメントの駆動を終えたステラが重力を発生させるアーツを発動させてトワやマキアス達にダメージを与えると共に動きを封じ込めた。



「獅子洸翔斬!!」

「くっ……吼えろ――――――獅子洸翔斬!!」

トワ達の動きが制限されている間に全身に獅子のオーラを纏って詰め寄ったエーデルガルトは凄まじい一撃をラウラ目掛けて放ち、対するラウラもエーデルガルトと同じ奥義を繰り出し、二人の奥義がぶつかると二人を中心に凄まじい衝撃波が発生して双方衝撃によってそれぞれ後ろへと後退させられた。

「大丈夫ですか、ラウラさん……!」

「ああ……!それにしても先程のリシテア殿が放った斬撃波の威力には驚いたな……」

自分に駆け寄って声をかけてきたエマに対して答えたラウラは真剣な表情でリシテアを見つめ

「威力があって当然よ。さっきの斬撃波には霊力(マナ)が込められていたんだから、あたしやエマのような魔術師タイプと違って物理攻撃を主体としている戦士タイプのあんたのような霊力に対する抵抗(レジスト)が低い場合だと下手な物理攻撃よりもダメージが大きいのよ。」

「なるほどね。近づけば剣術、離れれば魔術や霊力を込めた戦技(クラフト)が飛んでくるとか、まさに死角がない戦法だね。」

セリーヌの説明を聞いたフィーはリシテアを睨んだ。

「あら、死角がないのはリシテアだけじゃないわよ――――――炎よ、貫け――――――火炎噴射!!」

「左右に散って回避して!」

するとその時エーデルガルトがラウラ達目掛けて貫通する火炎放射を発生させる魔術を放ち、襲い掛かる火炎放射を見たトワはラウラ達に警告してラウラ達と共に左右に散って回避した。



「唸れ、大地よ!地響き!!」

「風よ、弾丸となりて敵を撃て!気体連弾!!」

左右に散って回避したトワ達だったがそれを待っていたかのようにそれぞれ既に魔術の詠唱を終えたクロードは地響きによって大地を隆起させる地表攻撃を発生させる魔術を、ステラは空気弾を連続で放つ魔術を発動させてラウラ達にそれぞれダメージを与えると共に怯ませ

「合わせて、リシテア!」

「了解しました、エーデルガルト!」

ラウラ達が怯む所を見たエーデルガルトはリシテアと視線を交わした後協力技(コンビクラフト)を発動した。

「解放します!闇の力!」

リシテアが発動した魔術によってラウラ達に闇の波動が襲い掛かってラウラ達を追撃し

「この一撃で決める!ハアアアァァァァ……ッ!!」

エーデルガルトはその場で力を溜め込んで全身に獅子の闘気を纏い

「いけない……!結界散弾、放出!!」

エーデルガルトの様子を見て大技が来ると判断したトワは魔導銃を空に向けて特殊な銃弾を撃った。すると銃弾は空で9つの弾丸に別れて弾け、弾けた弾丸はトワ達を囲むように地面に突き刺さった後それぞれ霊力を発生させ、地面に突き刺さった弾丸は霊力によってお互いを繋げた。

「煉獄を駆けろ!」

一方リシテアは自身の霊力をエーデルガルトの得物に宿らせてエーデルガルトの得物を暗黒の鎌と化させ

「漆黒の獅子よ!」

全身に獅子の闘気を纏ったエーデルガルトは利き手にはリシテアの霊力によって暗黒の鎌と化した得物を構えてトワ達に突撃した。

「霊力障壁解放!みんなを護って――――――九重陣!!」

「「獅子煉獄閃!!」」

そしてトワが地面に突き刺さり、お互いを霊力で繋がった弾丸をトワ達を覆う巨大な障壁を具現化させると同時にエーデルガルトは暗黒の鎌と化した得物で一閃した。すると一閃した場所に闘気による黒獅子の咆哮が発生すると共に暗黒の大爆発が起こった!爆発の煙が消えると結界弾の霊力を繋ぎ合わせて巨大な絶対障壁を展開するトワのSクラフト―――――九重陣によってエーデルガルトとリシテアのコンビクラフトが防がれた事で無事な様子のトワ達が姿を現した。

「おいおい、マジかよ……」

「まさかお二人の協力技を防ぐなんて……」

エーデルガルトとリシテアの協力技を防いだ様子のトワ達を目にしたクロードとステラはそれぞれ驚き

「何とか防ぎ切れたようですね……」

「ん……それにしても、まさか向こうも協力技(コンビクラフト)を習得していたなんてね。」

「ああ……まさかアルゼイド流の剣技を魔道の力と連携する事であのような強力な技へと昇華させるとは……」

エマは安堵の表情で呟き、フィーの言葉に頷いたラウラは真剣な表情でエーデルガルトとリシテアを見つめた。

「多分だけど、協力技(コンビクラフト)を使えるのは訓練兵時代に”相方”を組んでいる人達だから、現状だと連携されると一番怖いのはエーデルガルトさんとリシテアさん………みんな、まずはエーデルガルトさんとリシテアさんを連携させないようにしつつ、片方を先に集中攻撃をして制圧するよ!」

「おおっ!!」

トワは冷静に分析した後仲間達に号令をかけ、トワの号令に力強く答えた仲間達はエーデルガルト達との戦闘を再開した。



「癒しの音色よ――――――レゾナンスビート!!」

セシリアの魔術が終わるとエリオットは回復クラフトを発動して自分や仲間達の傷を回復し

「コォォォォォォ……ハアッ!!」

「雷――――――あたしに力を!!」

アンゼリカとサラはそれぞれ強化技で自身の身体能力を強化し

「逃がさないわよ――――――メルトレイン!!」

「燃えろ~!!」

アリサは炎の雨の矢を降り注がせ、ミリアムはオーバルギアに搭載されている火炎放射機から火炎放射を放ってそれぞれ空と陸による逃げ場のない攻撃を繰り出した。

「母なる大地よ、我らに守りの盾を――――――大地の大盾!!」

一方逃げ場のない攻撃に対してセシリアが絶対障壁の効果がある大地の結界を展開させる魔術を発動してアリサとミリアムの攻撃を防ぎ

「羽ばたけ――――――弦月!!」

「「!!」」

アメリアはサラとアンゼリカ目掛けて翼を模した闘気の矢を放ち、二人はアメリアが放ったクラフトを左右に散って回避した。

「巻き起これ――――――シルフィードキス!!」

「わわっ!?」

フランツはエリオット目掛けて突きによって巻き起こした烈風を放ち、エリオットは襲い掛かる烈風を慌てた様子で側面に跳躍して回避したが

「廻れ――――――スピニングエッジ!!」

「あぐっ!?」

天馬を駆るイングリットが空から突進と共に槍の穂先を回転させた突きをエリオットに叩き込んでエリオットにダメージを与え

「大丈夫!?」

エリオットがダメージを受けるとエリオットと戦術リンクを組んでいるアリサがリンクアビリティ――――――ライブリーエールを発動してエリオットが受けたダメージを回復し

「お返しだ~!!」

ミリアムはイングリット目掛けてオーバルギアによる掃射攻撃を行ったが凄まじいスピードで空へと戻って行くイングリットには命中しなかった。



「フフ、これはどうかな?ハアッ!!」

クラフトを発動したアンゼリカはフランツにゼロ距離で寸勁を放つクラフト―――――ゼロ・インパクトを放ち

「ッ!!く……っ……」

アンゼリカの寸勁を咄嗟に槍で防いだフランツだったが、ゼロ距離による寸勁の衝撃は凄まじかった為、後ろへと後退させられると共に衝撃による痺れで身体の動きが鈍くなった。

「まだだよっ!!とうっ!!ライトニングキ――――――ックッ!!」

動きが鈍くなったフランツの様子を見たアンゼリカは空高くへと跳躍しフランツ目掛けて闘気によって発生した雷を纏った蹴りを繰り出そうとし

「させません――――――雷光一閃!!」

アンゼリカの行動を見たイングリットは天馬を駆って凄まじいスピードで空へと跳躍したアンゼリカに凄まじい速さの突きを繰り出したが

「フフ、かかったね♪」

「えっ!?」

アンゼリカは蹴りを繰り出した状態で目標をフランツからアメリアへと軌道を変える事でイングリットの攻撃を回避し、攻撃を回避されたイングリットは驚き

「燃え尽きなさい――――――ファイアッ!!」

「く……っ!」

アリサが自分目掛けて放った灼熱の矢に気づくとアンゼリカへの妨害を諦めて回避に専念した。一方目標をフランツからアメリアへと変えたアンゼリカはアメリアに跳躍からの蹴りを繰り出し

「!!」

アンゼリカの奇襲に対してアメリアは咄嗟に側面に跳躍して回避した。

「まだ終わらないよっ!!」

「あうっ!?」

攻撃を回避されたアンゼリカは続けて追撃に回し蹴りによる衝撃波―――――レイザーバレットを放ってアメリアにダメージを与え

「もらった―――」

アメリアにダメージを与えたアンゼリカは攻撃の手を休まずにアメリアに接近して更なる追撃をしてアメリアを制圧しようとしたが

「乱桜!!」

「何……ッ!?」

アンゼリカがアメリアに接近するとアメリアは跳び蹴りで自らアンゼリカとの間合いを詰めた後連続蹴りを繰り出し、アンゼリカは弓使いであるアメリアが体術を繰り出した事に驚いた後すぐにアメリアへの追撃を断念して防御態勢に入ってアメリアの連続蹴りを防御し

「セイッ!!」

「く……っ!」

最後に繰り出したアメリアの強力な蹴り飛ばしによってアンゼリカは後ろへと後退させられた。



「抜砕牙!!」

「!!」

続けてアメリアは矢を構えてアンゼリカに放とうとし、それを見たアンゼリカはすぐに側面に跳躍して回避したが何とアメリアは弓矢の構えをすぐに解くと同時に瞬足でアリサへと接近して腰につけている騎士剣で切りつけた。

「キャアッ!?」

「アリサ君!?」

「すぐに回復するよ!」

アメリアの奇襲でダメージを受けて思わず悲鳴を上げたアリサを見たアンゼリカは声を上げ、アリサと戦術リンクを結んでいるエリオットはリンクアビリティ――――――クイックティアを発動してアリサが受けたダメージを回復した。

「ありがとう、エリオット……へ……け、”剣”……!?貴女、弓使いじゃなかったの……!?」

エリオットに回復の礼を言ったアリサはアメリアの武装が弓矢から剣に代わっている事に困惑して指摘した。

「二種類の武装を扱えるなんて、そんなに珍しい話じゃないよ。現に今サンドロット卿達と戦っている貴女達の仲間も二種類の武装を扱っているじゃない。」

「た、確かにクロウの得物は双刃剣(ダブルセイバー)と双銃だけど……」

「黒の工房の本拠地での戦いの時に弓しか使っていなかったのは、もしかしていずれ相対する事がわかっていた私達を欺く為だったの……!?」

アメリアの指摘にエリオットが戸惑いの表情で肯定している中、ある事に気づいたアリサは厳しい表情でアメリアを睨んで指摘した。

「ううん、あの時は”剣を使う必要が無かったから使わなかった”だけだよ。――――――それよりも前衛と離された状態なのに、よくそんなに呑気にしていられるね―――――空を断つ!!」

「キャアッ!?」

「うわっ!?」

アリサの指摘に対して答えたアメリアは竜巻を起こしながら敵を斬り上げる剣技―――――断空剣を放ってアリサとエリオットにダメージを与え

「不味い……!」

アメリアの攻撃を受けている様子の二人を見たアンゼリカは二人の元へと向かおうとしたが

「行かせないよ!」

「くっ……!この技は先程私達を分断させた……!」

「セイッ!!」

「!!」

フランツが引き寄せの効果がある闘気で敵を自身の間合いに引き寄せ、薙ぎ払いを放つクラフト―――――ラグナバインドでアリサ達の元へと向かおうとするアンゼリカを自分の元へと引き寄せて薙ぎ払いを放ち、フランツの薙ぎ払いをアンゼリカは防御して自身へのダメージを最小限に収めた。

「君にこの拳が見切れるかな?ハァァァァァァ…………ッ!!」

「!!」

防御を終えたアンゼリカは反撃に怒涛の拳を繰り出すクラフト―――――ソニックシュートをフランツに放ち、フランツは次々と襲い掛かる怒涛の拳を槍で防御しながら自身へのダメージを抑えた。

「手加減抜きで行かせてもらう!とうっ!!」

「来るか……!」

続けてSクラフトを発動したアンゼリカは空高く跳躍し、それを見たフランツは迎撃の構えをしたが

「止めだ!ドラグナー――――――ハザードッ!!」

「!しまった!狙いは僕じゃなく、アメリアか……!だったら……!来い―――――」

「え――――――」

跳躍したアンゼリカは空で向きを変えてアメリア目掛けて龍気を纏わせた必殺の蹴りで襲い掛かり、それを見たフランツは再びクラフト――――――ラグナバインドを発動してアリサとエリオットに追撃を行おうとしたアメリアを自分の元へと引き寄せ、引き寄せられたアメリアは思わず呆けた声を出した。そしてアンゼリカのSクラフトはアメリアがフランツの元へと引き寄せられた事で空振りに終わった。

「やれやれ、まさか攻撃技の応用で味方を助けるとはね。―――――二人とも、大丈夫かい?」

Sクラフトが空振りに終わったアンゼリカは溜息を吐いた後アリサとエリオットに声をかけ

「は、はい……癒しの音色よ―――――エコーズビート!!」

「教官達とまで分断されてしまったから、何とか戦いつつ合流しましょう……!光よ―――――受け取って、みんな!!」

声をかけられたエリオットは頷いた後回復クラフトで自分達のダメージを回復し、アリサは支援クラフト―――――ヘブンズギフトを発動して自分達に様々な支援効果を付与した後アンゼリカとエリオットと共にフランツとアメリアとの戦闘を再開した。



「ヤァァァァァァ……ッ!!」

サラはセシリアの周囲を駆けまわりながらクラフト―――――鳴神でセシリアを攻撃したが

「大地の護りを――――――地精陣。」

セシリアはあらゆる攻撃を防ぐ大地の力による結界で様々な包囲から襲い掛かってくるサラの弾丸を防いだ。

「銃弾が効かないんだったら……!セイッ!!」

攻撃が効いていない様子のセシリアを見たサラは跳躍してセシリアに強化ブレードを叩き込もうとしたが

「甘い!!」

「チッ……!天使といい、アンタ達みたいに空を駆ける生き物に乗って戦う騎士といい、ホント厄介ね……!」

「ハァァァァァァ…………ッ!!」

イングリットが天馬を駆ってセシリアへの攻撃を自身の槍で防ぎ、攻撃を防がれたサラは舌打ちをした後地上へと落下しながらイングリット目掛けて銃撃したがイングリットは槍を自身の目の前で回転させて回転の盾と化して自分に向けられた銃弾を全て弾いた。

「いい加減落ちろ~!!」

「!!」

そこにミリアムがオーバルギアに搭載されているグレネードをイングリット目掛けて放ったがイングリットは天馬を駆ってすぐにその場から離脱した事でミリアムが放ったグレネードはイングリットに命中しなかった。

「降り注げ、凍てつく刃よ―――――氷針雨!!」

「チィッ!」

「いたっ!?」

その時魔術の詠唱を終えたセシリアがサラとミリアムの頭上から針状の氷を広範囲に降り注がせる魔術を放ち、頭上から降り注ぐ攻撃に気づいたサラは舌打ちをした後すぐに回避行動に移ったが、サラのように身軽でもなく反射神経にも優れていないミリアムは回避できず、ダメージを受けた。



「廻れ――――――スピニングエッジ!!」

そこにイングリットが再び空から突進と共に槍の穂先を回転させた突きをミリアムに放ち

「させない!!」

イングリットの強襲に気づいていたサラはミリアムに繰り出された槍を自身の得物で受け止めた。

「今よ、ミリアム!ペガサスから叩き落しなさい!」

「オッケー!ぶっ飛べ~!!」

「!!」

イングリットの攻撃を受け止めているサラがミリアムに呼びかけるとミリアムはオーバルギアに搭載されている斧のような形をした鈍器を振り上げてイングリットを攻撃しようとし、それに気づいたイングリットが目を見開いたその時

「虚空の迅風!!」

「わあっ!?」

セシリアが魔術による強力な魔力風を鈍器を振り上げたオーバルギアの腕の部分目掛けて放ち、強力な魔力風が腕を振り上げた状態で命中したオーバルギアは態勢を崩した。

「エニグマ駆動―――――スパークル!!」

「くっ!?」

「ありがとうございます、教官!」

「待ちなさい!!」

続けてセシリアは僅かな駆動時間で発動する下位アーツをサラに叩き込んでアーツによって発生した小さな雷がサラにダメージを与えると共に怯ませ、サラが怯むとイングリットは武器を引いて空へと退避し、それに気づいたサラはイングリットに銃で追撃したが変則的な縦横無尽に動きながら空へと退避するイングリットには命中しなかった。

「も~!これじゃあキリがないよ~!」

「戦況が膠着している一番の原因は遠距離攻撃でこっちの妨害とかをしてくるセシリア将軍よ。あの女将軍を制圧すれば、戦況は一気に傾くはずよ。あたしに考えがあるわ。ちょっと耳を貸しなさい。」

疲れた表情で声を上げたミリアムにサラはセシリアを睨みながら指摘した後ミリアムに小声である指示をした。



「行くわよ……!」

「オッケー!ぶっ放せ~!!」

そして指示を終えたサラがセシリア目掛けて走り出すと同時にミリアムはセシリアの周囲にグレネードを放った。するとグレネードの爆発の煙はセシリアの周囲を覆ってセシリアの姿を隠すと共にセシリアの視界をも煙で隠した。

「―――――なるほど、”そう来ましたか。”」

「”そういう事ですか”……!だったら……!」

二人の行動を見て二人の狙いを悟ったセシリアが静かな表情で呟いている中セシリアのようにミリアムとサラの作戦を悟ったイングリットは煙に覆われているセシリアに突撃しているサラ目掛けて奇襲をしかけようとしたが

「エニグマ駆動―――――ダークマター!!」

「く……っ!?」

グレネードを放った後オーブメントを駆動させたミリアムが重力を発生させるアーツをイングリットに放ってイングリットにダメージを与えると共にイングリットと天馬の動きを制限した。

「風よ、吹き飛ばしなさい――――――大竜巻!!」

一方セシリアは竜巻を発生させる魔術を発生して自分を覆っている煙を吹き飛ばした。

「―――――かかったわね!」

「!!」

するとその時背後からサラの声が聞こえ、声を聞いたセシリアが目を見開いて背後へと振り向くと既にサラが攻撃態勢に入っていた。

「魔術を発動した後結界を含めた次の魔術をすぐには発動できないでしょう!?雷牙一閃!!」

そして強化ブレードに闘気によって発生した紫電を纏わせたサラはセシリア目掛けて一閃した!

「フフ、なるほど。先程煙で私の視界を隠した理由は”煙によって視界を遮られた私への奇襲を成功させる為ではなく、煙を無効化させる為に私に魔術を使わせる為”だったのですわね。」

しかしセシリアは咄嗟に自身の得物である魔導杖でサラの一閃を防いでいた為ダメージを受けず、感心した様子でサラとミリアムの作戦を答えた。

「チッ、さすが皇帝直属の将軍の一人だけあって随分と材質のいい杖を使っているみたいね。――――――だけど、ここまで接近すればアンタの十八番である魔術は使わせないわよ!」

一方攻撃を受け止められたサラは舌打ちをした後セシリアと鍔迫り合いの状態で不敵な笑みを浮かべた。

「あら、私が”魔道将軍”だからと言って、魔術しか戦闘技能がないと侮ってもらっては困りますわね。」

対するセシリアは片手に持つ杖でサラと鍔迫り合いの状態をしながら残ったもう片方の手で素早く懐から魔導銃を取り出して鍔迫り合いの状態のサラに銃口を向け

「なっ!?」

セシリアに銃口を向けられたサラは驚いた後すぐに強化ブレードを引くと共にセシリアから距離を取り

「――――――逃がしませんわ。」

「く……っ!?」

セシリアは自分から距離を取ったサラに広範囲に射撃を行うクラフト―――――殲滅撃ちをサラの周囲に放ってサラを牽制し

「瞬迅剣!!」

「ハアッ!?」

続けて魔導杖に装着していた鞘を外して仕込み刀を露わにすると同時にサラ目掛けて踏み込みによる強烈な突きを繰り出し、セシリアの仕込み刀にサラは驚いた後咄嗟に強化ブレードで防御し

「爪竜連牙斬!!」

「………ッ!」

突きを防御されたセシリアは突きから連携して流れるような動きでサラに斬撃を繰り出し、サラは次々と繰り出される斬撃を強化ブレードで受け流した。

「炎よ、薙ぎ払え――――――集炎!!」

「セイッ!!」

そしてセシリアが止めに炎の霊力を宿した仕込み刀の一閃を放つとサラは後ろへと跳躍して回避した。



「まさかその杖は”仕込み刀”だったなんてね………銃もそうだけどその仕込み刀による剣技も実戦レベルであるにも関わらず、今までそれらを使わなかったのは大方あたし達のあんた達に対する戦力分析を誤魔化す為と言った所かしら!?」

「フフ、別に意図して誤魔化していた訳ではありません。銃にしても仕込み刀にしても、”使うべき時が来るまで温存していた”だけの話です。」

サラの指摘に対してセシリアは微笑みながら答え

「そういうのを”誤魔化す”っていうのよ!――――――紫電一閃!!」

「大地よ、全てを断て――――――闘土!!」

セシリアの答えに反論したサラはセシリア目掛けて紫電を纏う闘気の刃を放ち、対するセシリアは大地の霊力を宿した仕込み刀で襲い掛かる闘気の刃を一刀両断した。

「ヤァァァァァァッ!!」

「逃さなくてよ!?」

続けてサラとセシリアは対峙した状態で側面へと走りながらお互いに広範囲に銃弾を放つクラフトでお互いの動きを牽制しようとし

「セイッ!!」

「聖なる光よ、薙ぎ払え――――――昇閃!!」

サラがクラフト―――――電光石火でセシリアの頭上から襲い掛かるとセシリアは光の霊力を宿し、飛行する敵を捉えるために編み出された煌く剣技で対抗してサラの強襲攻撃を相殺した。そして攻撃を相殺されたサラはセシリアとの激闘を繰り広げ始めた。

「あわわわ……ッ!”魔道将軍”なのに、あのサラと接近戦をまともにやり合えるなんて、詐欺じゃないか~!?とにかく援護をしないと――――――」

一方セシリアとサラの接近戦を見ていたミリアムは慌てた様子で声を上げた後オーバルギアに搭載されている武装でサラを支援しようとしたが

「貴女の相手は私です!」

「わあっ!?も~、その空からの攻撃、ズルすぎだよ~!!」

イングリットが空からミリアムに強襲し、イングリットの強襲攻撃を咄嗟に防御したミリアムは不満を口にしながら天馬で空を自由自在に駆けるイングリットに遠距離攻撃を仕掛け始めた。



それぞれが戦っている中パトリック達とシズナ達の戦局は変わろうとしていた。

「アークス駆動―――――ユグドラシエル!!」

「うおっ!?」

「ぬっ!?」

「そこっ!!」

「ハアアアァァァァッ!!」

「ぐっ!?不覚……!」

「ガッ!?加減をしていたとはいえ、学生がこれ程の力を秘めているとは……!」

エーデルの上位アーツによってダメージを受けて怯んでいる斑鳩の忍び達にフリーデルとランベルトが追撃を叩き込むと忍び達は戦闘不能になり、地面に膝をつき

「貫きなさい!!」

「甘い!!」

「甘いのはそちらだ!」

「これで……!」

「止めだっ!!」

「何……ッ!?」

フェリスが放った矢を忍びが太刀で切り捨てるとパトリック、アラン、ロギンスが同時に三方向から忍びに襲い掛かり、フェリスの攻撃への対処によってパトリック達による同時攻撃に気づく事が僅かに遅れた忍びは驚くと同時にパトリック達の同時攻撃をその身に受けた。

「ぐっ……!?見事……!」

パトリック達の同時攻撃を受けた忍びは呻き声を上げた後戦闘不能になり、地面に膝をついた。

「よし……!3人は制圧できたか……!」

「お兄様や教官達の方は大丈夫そうですから、サリファ達に加勢しますわよ!」

「ええ!二手に分かれてセレスタンさんとサリファさんに加勢しましょう!」

忍び達の戦闘不能を見届けたパトリックは安堵の溜息を吐き、フェリスは戦況を確認した後それぞれ一対一で黒月の凶手達の相手をしているセレスタンとサリファの加勢をする提案をし、フェリスの提案にフリーデルは頷いた後仲間達と共に次の行動を開始した。



「へえ?3人やられたか。加減しているとはいえ忍び達を3人も制圧するなんて、中々やるじゃないか。君達も彼らを見習って、私の想定を上回る力を見せて欲しかったんだけど、さすがにそれは高望みし過ぎだったかな?」

一方”神氣合一”状態のシズナはパトリック達が忍び達の一部を戦闘不能に追いやった事に気づくと感心した様子でパトリック達に視線を向けた後”自分との戦闘によって既に戦闘不能状態に陥り、それぞれ地面に膝をついているアガット、シャロン、アネラス”に視線を向けた。

「こん畜生が……ッ!」

「リィン様の”神気合一”の紛い物の技を抜きにしても、凄まじい使い手ですわ……結社で彼女と対抗できるとすれば、最低でも”黄金蝶”や”痩せ狼”クラスでしょうね……」

「つ、強すぎる……リシャールさん……ううん、ひょっとしたらカシウスさんをも上回っているんじゃ……」

シズナとの戦闘で戦闘不能状態に陥っているアガットは悔しそうな表情でシズナを睨み、シャロンは疲弊した様子でシズナを見つめながら呟き、アネラスは不安そうな表情でシズナを見つめながら呟いた。

「フフ、噂の喰えない兄弟子にその兄弟子の後継者か。機会があれば彼らとも手合わせをしてみたいが、まずは君達との決着をつけないとね――――――零の型・双影!!」

「!!」

「わっと!?」

アネラスの言葉を聞いて興味ありげな表情で呟いたシズナは残ったメンバー――――――アルゼイド子爵とエウシュリーちゃんとの戦闘を再開し、シズナが放ったクラフトに対してアルゼイド子爵とエウシュリーちゃんはそれぞれ左右に散開して回避し

「逃しはせぬ!斬!!」

「おっと!」

シズナの攻撃を回避したアルゼイド子爵はクラフト―――――洸閃牙で反撃し、アルゼイド子爵の元へと引き寄せられた後に放たれた強烈な薙ぎ払いに対してシズナは自身の得物である漆黒の大太刀で防御した。すると防御した際の衝撃によってシズナは後ろへと後退させられ

「頭上にご注意を――――――リュストル・レア!!」

「!ハッ!」

そこにエウシュリーちゃんが発動した魔術によってシズナの頭上から巨大なシャンデリアが落下してくるとシズナはすぐにその場から退避して回避し

「洸凰剣!!」

「零月一閃!!」

エウシュリーちゃんが発動した魔術をシズナが回避するとシズナの行動を先読みしていたかのようにアルゼイド子爵がSクラフトでシズナに襲い掛かり、対するシズナもSクラフトを放って対抗した。すると二人のSクラフトがぶつかり合った瞬間二人を中心に凄まじい衝撃波が発生した後衝撃によって二人をそれぞれ後ろへと後退させた。

「それっ!!」

するとその時を待っていたかのようにエウシュリーちゃんがシズナ目掛けて魔導砲撃を行ったが

「荒れ狂え――――――嵐雪!!」

シズナはすぐに対処し、シズナに襲い掛かった魔導砲弾は全てシズナの吹雪を巻き起こす剣技によって凍結か吹き飛ばされるのどちらかだった。

「フフ…………フフフフフフ………いいね……光の剣匠は当然としてそちらの死線が呼んだ予定外のゲストもとても良い感じだ………――――――”二人とも私同様準備運動”はこの辺りでいいだろう?」

「何ぃ……っ!?」

「じゅ、”準備運動”って事はまさか……!」

「どうやら”あの状態ですらも、まだ本気を出していなかった”ようですわね……!」

突如笑った後呟いたシズナの言葉を聞いたアガットは驚き、アネラスは信じられない表情をし、シャロンは真剣な表情で声を上げた。するとシズナは全身に目にも見える程の莫大な闘気を身に纏った。

「そろそろ、本気で死合おうか?」

「はわわわ~。”黎の軌跡ですらもまだ判明していなかった本気”を出されたようですね~。」

「どうやら彼女に眠る闘争心を完全に目覚めさせてしまったようだな。」

意味あり気な笑みを浮かべたシズナに見つめられたエウシュリーちゃんは冷や汗をかいて呟き、アルゼイド子爵は静かな表情で呟いた後シズナのように全身に目にも見える程の莫大な闘気を身に纏った後シズナとの戦闘を再開した。



同日、PM4:30――――――



~同時刻・リィン側~



同じ頃、リィン達とヴァンダイク元帥の決戦は決着を迎えようとしていた。

「そろそろケリをつけてやるぜぇっ!!」

「ヴァンダイク元帥、覚悟!!」

既にヴァンダイク元帥の周りにいたエレボニア帝国軍の機甲兵達はリィン達ヴァリマール達との戦闘によって全て討ち取られるか無力化されていた事で機甲兵達の制圧に専念していたベルフェゴールとエヴリーヌもヴァリマール達に加勢しており、また白兵戦もプリネ達が優勢だった為援護に向かえる軍人達は誰もおらず、孤軍奮闘しているヴァンダイク元帥にギュランドロスが駆るヘクトルとオーレリア将軍が駆るシュピーゲルが左右から同時にヴァンダイク元帥が駆るゴライアスに襲い掛かったが

「まだまだぁっ!!」

ゴライアスは得物である大剣を振るって二体の同時攻撃を弾き返し

「お熱いのはいかが?――――――ファイアッ!!」

「ぬるいっ!!」

「キャ……ッ!?」

ミュゼが駆るケストレルが銃で無数の炎の霊力の剣を解き放つクラフトを叩き込まれても怯まず反撃に肩に装着されているバルカン砲で反撃してケストレルにダメージを与え

「「ゲイルレイド!!」」

「「ロードフレア!!」

「ぐっ……オオオオォォォォッ!!」

「「キャアッ!?」」

エリゼが駆るヴァイスリッター、エリスが駆るエル=プラドーとそれぞれリンクを結んだクルトとアルフィンによるEXアーツでダメージを受けてもなお、怯む事はなく、EXアーツをその身に受けながら得物である大剣を地面に叩きつけて衝撃波を発生させてヴァイスリッターとエル=プラドーにそれぞれダメージを与えた。

「老害はご主人様と私達の為にもいい加減、くたばりなさい!――――――ルン=アウエラ!!」

「エヴリーヌ達に殺されるつもりで戦っているなら、さっさと死ね!――――――リーフ=ファセト!!」

「うおおおおおおお……っ!?」

しかしベルフェゴールとエヴリーヌが放った最高位の魔術は耐えられず、大ダメージを受けると共に呻き声を上げながら怯んだ。

「―――――今だ!アルティナ、結界をヴァリマールに!」

「はい!行きます――――――ノワールバリア!!」

ベルフェゴールとエヴリーヌの最高位魔術によって怯んだゴライアスの様子を見たリィンはアルティナに声をかけ、声をかけられたアルティナは物理反射結界を付与するEXアーツをヴァリマールに付与した。

「この剣で道を切り開く!無想――――――」

物理反射結界の付与が終わるとヴァリマールはゴライアス目掛けて真正面から突撃し

「一人で正面から来るとは、君らしいな、リィン君……ッ!ならば儂も受けて立とう!うおおおおおおおおおお……っ!」

対するゴライアスは怯みから立ち直った後正面から突撃してくるヴァリマールに残る力全てを注ぎ込んだ一撃を放ったがゴライアスの決死の一撃はリィンが予めアルティナに指示してヴァリマールに付与させたEXアーツによる物理反射結界で阻まれると同時にゴライアスの決死の一撃は自らに跳ね返った。

「何……ッ!?」

「覇斬っ!!」

自身の攻撃が跳ね返った事にヴァンダイク元帥が驚いたその瞬間ヴァリマールのSクラフトがゴライアスに叩き込まれた。すると無数の刃がゴライアスを斬り刻み

「ぐは……っ!?見事……じゃ……後の事は………頼んだぞ……リィン……君………先に……逝って……待っているぞ……ギリ……アス………若者達よ………世の礎……たれ………」

「はい………ヴァンダイク学院長……ッ!」

ヴァリマールが放ったSクラフトによる無数の刃は操縦席にいるヴァンダイク元帥をも斬り刻み、その身に騎神であるヴァリマールが放ったSクラフトによる無数の刃を受けたヴァンダイク元帥は全身を斬り刻まれると共に口から大量の血を吐いた後絶命し、Sクラフトを放ち終えたリィンは辛そうな表情を浮かべて宣言した。



「そ、そんな……げ、元帥閣下が……!」

「うああああああ……ッ!」

「成し遂げたか、シュバルツァー……!」

「フフ、”大戦を終結に導いたゼムリアの新たな英雄の誕生”ね。」

「そして同時にエレボニアにとってはかつてない”冬の時代の到来”になるだろうな。」

「ええ……リウイ陛下達――――――いえ、メンフィル・クロスベル連合はエレボニアを救うつもりで今まで戦ってきたリィンさんの想いにどれくらい応えてくれるのでしょうね……?」

ヴァンダイク元帥が討ち取られた事に気づいたプリネ達と戦っていた特攻隊の面々が戦いの手を止めて絶望したり、泣き始めている中同じように戦いの手を止めたアイネスとエンネアは感心した様子でヴァリマールを見つめ、静かな表情で呟いたレーヴェの言葉に頷いたツーヤは複雑そうな表情を浮かべて呟いた。

「リィンさん………――――――エレボニアの将兵達に告ぎます!貴方達の総大将たるヴァンダイク元帥は戦死した事でこの大戦の勝敗はつきました!もはやこれ以上の戦いは無意味です!降伏してください!!」

「そしてメンフィルの将兵達よ!決着がついた以上、これ以上の殺戮はただの虐殺ですわ!直ちに戦いの手を止めなさい!!」

「オオオオォォォォ――――――ッ!!」

「やれやれ、今までの雑事で一番面倒な雑事だったよ……だけど、悪くない気分だね。」

「あぁ……ッ!”大戦”を終結させたことで、世界にその名を轟かせる”英雄”へと到られましたね、我が主……!」

「うふふ、例え”大戦”だろうと”魔神”である私を味方にしているご主人様の勝利は揺らがない事は最初からわかっていたけど、それでも嬉しいものね♪」

「微力ではありますが、わたしもあなた様のお役に立てて本当によかったです……!」

「フフ、主の役に立てた嬉しさ……貴女のその気持ち、私もわかるよ、アンリエット。」

「リィン様………」

「学院……長……ううっ……!」

「セレーネ様………」

プリネは辛そうな表情でヴァリマールに視線を向けた後双方の犠牲を一人でも少なくする為にも可能な限り早く大戦を終結させる思いでヴァンダイク元帥を討ったリィンの気持ちも理解していた為すぐに気を取り直して特攻隊の面々に降伏を促し、プリネのようにリィンの気持ちを理解していたデュバリィもプリネに続くように自分達と共に戦っていたメンフィル兵達に戦闘を止める事を促すとメンフィル兵達は戦いの手を止めて勝利の雄叫びを上げた。味方が喜んでいる中レジーニアは疲れた表情で溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべ、ユリーシャは感激し、ベルフェゴールは髪をかきあげてウインクし、嬉しそうな表情を浮かべているアンリエットをリタは微笑ましそうに見守り、メサイアは心配そうな表情を浮かべてヴァリマールを見つめ、セレーネはヴァンダイク元帥の死に涙を流して泣き、セレーネの様子をアルティナは辛そうな表情で見守っていた。一方オーレリア将軍が駆るシュピーゲルは絶命したヴァンダイク元帥が搭乗しているゴライアスのヘッドの部分を地面へと切り落とした。

「後はヴァンダイク元帥の首を切り落として、切り落としたヴァンダイク元帥の首をこの戦場の連中全てに見せつけてヴァンダイク元帥の死を宣言すれば、この”大戦”は終結だ、シュバルツァー。」

「そ、そんな……!?ヴァンダイク元帥は既に戦死されたのに、死体を弄ぶような事までする必要があるのですか……!?」

「残念ではありますが、それがこの戦場で戦っている双方の将兵達に決着を証明する唯一の方法であるのですわ、姫様………」

リィンに指摘したギュランドロスの指摘を聞いたアルフィンは悲痛そうな表情で声を上げ、ミュゼは重々しい様子を纏ってアルフィンに指摘した。

「……恩師の首を自らの手で切り落とした上、さらし首にするのが辛いのならば、我らが代わっても構わないが?」

「……いえ、俺にやらせて下さい。学院長をこの手で討った俺が……そして学院長から後の事を託された俺がするべき”義務”です。」

「「兄様………」」

「…………」

オーレリア将軍の気遣いに対して静かな表情で答えたリィンの様子をエリゼとエリスは心配そうな表情で見つめ、アイドスは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んだ。そしてヴァリマールから降りたリィンは地面に切り落とされたゴライアスのヘッドの中にある操縦席を露わにした後太刀をヴァンダイク元帥目掛けて振るった。

「すみません、学院長……ッ!!」

ヴァンダイク元帥に太刀を振るう際リィンは辛そうな表情を浮かべて歯を食いしばりながら太刀を振るってヴァンダイク元帥の首を切り落とし、切り落としたヴァンダイク元帥の首を拾った。

「―――――妾の方は既に準備は整っているぞ、リィン。後はヌシが首を掲げて宣言するだけじゃ。」

「ありがとうございます、ロゼさん。」

魔導杖を構えて魔術の発動の準備を終えたローゼリアに声をかけられたリィンはロゼの傍に近づいた後勝利宣言をし始めた。



「この戦場で戦っている全ての将兵達に告ぐ!――――――エレボニア帝国軍総大将ヴァンダイク元帥はメンフィル帝国軍所属”灰獅子隊”軍団長リィン・シュバルツァーが討ち取ったっ!!」



ローゼリアの魔術によってハーケン平原の様々な場所の上空にリィンの映像が写るとリィンはヴァンダイク元帥の首を掲げた。すると戦場でそれぞれ戦っていた全ての兵達は戦いの手を止め、それぞれ呆けた様子で映像を見つめた。



「エレボニア帝国軍の総大将が討たれた事で勝敗がついた以上、これ以上の戦いは無意味だ!双方、直ちに戦闘を中止せよ!!」

「メンフィル・クロスベル連合、ヴァイスラント、そして王国の将兵達よ!決着がついた以上、これ以上の殺戮は虐殺となる!それぞれの”誇り”の為にも直ちに戦いの手を止めよ!!」

「そしてエレボニアの将兵達よ!テメェらエレボニア自身の為にもこれ以上の犠牲を出さない為にもすぐに降伏しろ!降伏すれば命の保証は当然として、戦争が終われば必ず生きて故郷に返してやることを連合、ヴァイスラント、王国が保証する!だから武器を捨て、降伏しろ!!」

リィンに続くようにオーレリア将軍とギュランドロスもリィンの傍に来てそれぞれ宣言した。



「うああああああぁぁぁぁぁぁ………ッ!?」

「オオオオォォォォ――――――ッ!!」

リィン達の宣言が終わるとエレボニアの兵達は一斉に武器を地面に落として絶望したり泣き崩れたりし始め、対する連合、ヴァイスラント、王国の兵達は武器を掲げて勝利の雄叫びを上げた。



~ガルガンチェア1号機・ブリッジ~



「そ、そんな…………元帥閣下が………」

「うああああああぁぁぁぁ……ッ!」

「元帥閣下……ッ!」

一方その頃、ブリッジでヴァイス達と最後の戦いを繰り広げていたエレボニア帝国兵達はローゼリアの魔術によって戦場の様々な場所に映るヴァンダイク元帥の首を掲げたリィンの勝利宣言を目にすると戦いの手を止めて一斉に武器を地面へと落として絶望したり、泣き崩れ始めている中エレボニア帝国兵達の指揮をしていたレリウス中佐は悲痛そうな表情で映像に映るヴァンダイク元帥の首を見つめ

「―――――エレボニアの将兵達に告ぐ!お前達の総大将たるヴァンダイク元帥が戦死した事でこの大戦の勝敗はついた!今すぐ武器を捨て、降伏せよ!降伏すればお前達の命の保証もそうだが、戦後故郷に帰還できる事はこの俺、クロスベル双皇帝が一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーも保証する!!そしてクロスベルの戦友達よ!これ以上の戦闘はただの虐殺だ!直ちに戦闘を中止せよ!!」

「うおおおぉぉぉぉぉ――――――ッ!!」

「勝った……俺達がエレボニアに勝ったんだ――――――ッ!!」

「クロスベル万歳――――――ッ!!」

ヴァイスは全身に覇気を纏ってその場にいる全員に対して宣言し、ヴァイスの宣言を聞いたクロスベル帝国の兵達はそれぞれ武器を掲げて勝利の雄叫びを上げている中、ヴァイスはリセルとアルと共に地面に崩れ落ちて呆然とした様子で映像に映るヴァンダイク元帥の生首を見つめているレリウス中佐に近づいて声をかけた。

「貴殿がヴァンダイク元帥の代わりにこの艦の指揮を取っている者で間違いないな?」

「……そうだ………」

「決着がついた以上、貴殿の戦友たちの為にも……そして貴殿にこの艦の指揮を任したヴァンダイク元帥の為にも貴殿がすべき義務を果たすべきだと思われるのだが?」

「……わかっている………――――――総員……武器を捨て、クロスベル帝国軍に降伏せよ……ッ!通信士達はまだ生き残っている部隊全てに降伏の指示を出せ……!決着がつけば、双方無意味な犠牲者を出さない……これは元帥閣下の御遺志でもある……ッ!!」

「レリウス中佐……」

「ううっ……!」

ヴァイスに促されたレリウス中佐は涙を流しながら指示を出し、レリウス中佐の指示に対して通信士を務めている軍人達は涙を流しながら残存部隊への通信を始めた。一方指示を終えたレリウス中佐は懐から自害用の拳銃を取り出して自身のこめかみに銃口を向けた。

「元帥閣下、私もすぐに貴方の下に参ります……!」

「いけません――――――」

「アル!!」

「はいっ!!」

レリウス中佐が最後の言葉を口にして拳銃自殺しようとするとリセルは真剣な表情で声を上げ、ヴァイスがアルの名を呼ぶとアルは自身の得物であるサブマシンガンでレリウス中佐が自殺しょうとした拳銃目掛けて撃ち、アルの銃撃によってレリウス中佐の手から拳銃は弾き飛ばされた。

「何故……死なせてくれない……ッ!」

「―――――貴殿自身も言ったはずだ。俺達もそうだがヴァンダイク元帥も決着がつけば、無駄な犠牲者を出す事は許さないと。それに貴殿はヴァンダイク元帥直属の副官。元帥直属の副官ならば、元帥が出撃前に自身に”万が一”の事があった時のオリビエ達――――――アルノール皇家もそうだが彼の教え子であったトールズ士官学院の学生や教官達への”遺言”も預かっていると推測している。――――――違うか?」

顔を俯かせて呟いたレリウス中佐の言葉に対してヴァイスは静かな表情で指摘した。



レリウス中佐、君はまだ若い。このような”負け戦”で命を落としてはならん。



―――――それではの。もし生きて皇太子殿下達にお会いする事があれば、皇太子殿下達もそうじゃがアルフィン皇女殿下にも儂の代わりに謝罪しておいてくれ。――――――皇太子殿下達の”勅命”に従わなかった事や”本物だと理解していたアルフィン皇女殿下を兵達の迷いを断つために偽物という偽りの情報を与え、エレボニア帝国軍にリベール侵攻を強要した儂が愚かであった事を。”



「元帥……閣下…………ッ!うあああぁぁぁぁぁぁ………ッ!!」

ヴァイスの指摘を聞いて出撃前のヴァンダイク元帥の”遺言”を思い出したレリウス中佐はその場で泣き崩れた。



~同時刻・ハーケン平原・ルシエル側~



同じ頃、ルシエル達も戦いの手を止めて上空の映像に映るリィン達の勝利宣言を見ていた。

「成し遂げたか、リィン……!」

「フッ、君なら必ず成し遂げると信じていたよ、リィン……!」

「お見事です、リィン様……!」

「皆、勝鬨を上げなさい!リィン少将とわたくし達の勝利を!そして称えなさい、この大戦を終結に導いた事で”英雄”となったわたくし達の指揮官の名を!」

リィン達の勝利宣言を見ていたカイルとローレンツはそれぞれ口元に笑みを浮かべ、ベアトリクスはリィンを賞賛し、ルシエルは明るい表情を浮かべて双剣の片割れを手に持つ右腕を掲げて周囲にいる灰獅子隊の面々に宣言し

「オオオオオォォォォォ――――――ッ!!」

「リィン!リィン!リィン!」

「私達の”正義”を成し遂げて下さり、ありがとうございます、リィン少将……!」

「メンフィル万歳――――――ッ!!」

ルシエルの宣言に続くように周囲にいた灰獅子隊の面々は種族関係なく自分達の勝利を喜んでいた。

「…………」

「ドロテア、勝利したのにそんな暗い顔をしてどうしたんだい?」

周囲の者達が自分達の勝利に喜んでいる中辛そうな表情を浮かべているドロテアが気になったフェルディナントはドロテアに近づいて声をかけた。

「フェル君……リィン君が討ったエレボニア帝国軍の総大将って確かリィン君が留学していた学院の学院長だった人でしょう?今までの戦いと違って、トールズ士官学院の直接的な関係者を自らの手で討った事にリィン君が気を病んでいないか心配になって……」

「…………リィンもそれについては出撃前から覚悟はしていたとは思うが………」

「ま、だからこそそんな心配な後輩をフォローする為にも俺達”先輩”がいるんじゃねぇのか?」

辛そうな表情を浮かべて語るドロテアの推測に対してフェルディナントが複雑そうな表情で答えるとフォルデが苦笑しながら近づいて声をかけた。

「フォルデ君……フフ、そうね。」

「君もたまには後輩の為になる事を言うものだな。」

「”たまには”余計だっつーの。まあリィンの場合、俺達がフォローしなくてもエリゼちゃん達リィンのハーレムメンバーがこの戦いで傷ついているリィンを癒してくれると思うけどな。――――――主にベッドの上でな♪」

フォルデの指摘に対してドロテアは目を丸くした後微笑み、フェルディナントは口元に笑みを浮かべてフォルデに指摘し、フェルディナントの指摘に対して答えたフォルデはからかいの表情で答え、フォルデの発言に二人はそれぞれ冷や汗をかいて脱力し

「君の方が余計な事を言っているだろうが………」

「クスクス……でも、それも今のリィン君にとっては必要な事だろうからリィン君の為にもエリゼちゃん達を焚き付けておきましょうか♪」

我に返ったフェルディナントは呆れた表情で溜息を吐き、ドロテアはおかしそうに笑った後からかいの表情を浮かべた後仲間達と共にリィン達の元へと向かい始めた。



~少し前・Ⅶ組側~



リィン達による勝利宣言がされる少し前、リアンヌが駆るアルグレオンとオリエが駆るシュピーゲルと激闘を繰り広げていたオルディーネ達はシュピーゲルを戦闘不能に追いやろうとしていた所だった。

「もらったぁっ!!」

「そらぁっ!!」

「く……っ!?」

「彼方より来たれ――――――其は強豪なる千の武器――――――オブリビオンアームズ!!」

アッシュが駆るヘクトルとクロウが駆るオルディーネがそれぞれ強烈な一撃をシュピーゲルに叩き込むとシュピーゲルは怯み、その間に上空へと跳躍したセドリックが駆るテスタ=ロッサは異空間から無数の武器をシュピーゲル目掛けて解き放ち、更に無数の武器はシュピーゲルだけでなくアルグレオンにも襲い掛かった。

「ハァァァァァァ…………ッ!!」

アルグレオンは襲い掛かる無数の武器を常人では決して見えない高速の突きを放って次々と叩き落したが

「うあ……っ!?フフ……お見事です、皇太子殿下………」

ヘクトルとオルディーネによる集中攻撃の影響で怯んだシュピーゲルには回避や防御できず、まともに食らった事で戦闘不能になり、シュピーゲルは地面に膝をついた。



「よし――――――クロウ達の方は後は”銀の騎神”だけだな……!」

「問題は私達”準起動者”達の援護抜きでクロウ達が銀の騎神――――――あの”槍の聖女”を超えられるかどうかという事もあるが……」

「分断させられたアタシ達は何とか合流できたけど、まだ誰も倒せていない上、アタシ達の”協力者”の方は既に何人か制圧されているから、状況は良くなっている所か、むしろ悪化しているじゃない……!」

「シャロン……!」

シュピーゲルの戦闘不能に気づいたマキアスは明るい表情をしたがアンゼリカは真剣な表情で自分達と対峙している黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の面々を睨み、セリーヌは疲れた表情で声を上げ、アリサは既に戦闘不能状態に陥っているシャロンを心配そうな表情で見つめた。

「フフフフフフ……!いいよ!とてもいい感じだ!今なら見える気がするよ、零の境地、そのさらに先が……!可愛い弟弟子との出会いに加えて、こんな心躍る死合いを体験できるなんて最高かな!ひょっとしたらこの死合いが起こる事すらも想定して弟弟子を手伝えと私に指示したかもしれないかな、ユン老師(せんせい)は……!!」

「その若さで既に”自ら新たな境地に到る”所まで来ているとは……!リィンやカシウス卿といい、其方といい、ユン殿は本当に才能ある弟子に恵まれてユン殿と同じ”師”の立場としては羨ましいものだ……!」

「アハハ~。こんな状況でも感心しているなんて、さすがは子爵閣下ですね~。」

まさに”人外”同士の戦いとしか思えない凄まじい戦いを繰り広げているシズナは不敵な笑みを浮かべながら戦い、シズナの実力に感心しつつシズナと激闘を繰り広げているアルゼイド子爵の様子にエウシュリーちゃんは苦笑した後アルゼイド子爵と連携してシズナと戦っていた。

「な、何この凄まじい戦い………!これが”達人同士による本気の戦い”なの……!?」

「つーか、何気に子爵と連携して”白銀の剣聖”とあんな”人外な戦い”を繰り広げているとか冗談抜きで何なんだよ、あの天使のメイドは!?」

「フフ、惜しむらくはブラックエウシュリーちゃん達がいない事ですわね、メイド天使が全員揃って……いえ、ブラックエウシュリーちゃん達の内誰か一人加勢すれば、戦況は子爵閣下達に傾いたかもしれませんわね。――――――それよりも皆さん、もはやわたくし達が子爵閣下達の戦いに加わった所で”足手纏い”になるのは明白ですから、回復が終わればお嬢様達の加勢に――――――」

アネラスは目の前に繰り広げてられている人外同士の戦いに信じられない表情で声を上げ、疲れた表情で声を上げたアガットに苦笑しながら答えたシャロンが二人にある提案を口にしようとしたその時上空にリィン達の映像が映った。

「あれは……”幻想の小窓”……!?」

「しかもアイツが映っているって事はまさか……!」

上空に現れたリィン達の映像が何であるのかをすぐに察しがエマは真剣な表情で声を上げ、ある事に気づいたセリーヌは厳しい表情で声を上げた。



「この戦場で戦っている全ての将兵達に告ぐ!――――――エレボニア帝国軍総大将ヴァンダイク元帥はメンフィル帝国軍所属”灰獅子隊”軍団長リィン・シュバルツァーが討ち取ったっ!!」



「ぁ――――――]

「学……院……長………」

「そ、そんな……間に合わ……なかった………!」

映像に映るリィンが掲げたヴァンダイク元帥の首を目にしたアリサとラウラは呆然とし、トワは悲痛そうな表情を浮かべてその場で崩れ落ちている中他のⅦ組やトールズの面々もそれぞれ戦いの手を止めて呆然とした様子や悲痛そうな表情を浮かべて映像に映るリィンが掲げたヴァンダイク元帥の首を見つめ

「成し遂げたか、リィン……!」

「対して私達は結局Ⅶ組を時間内に制圧し切れなかったわね……」

「ま、試合は引き分けで、肝心の勝負は勝ったんだから、あんまり細かい事は気にしなくていいんじゃないか?」

対して黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の面々もそれぞれ戦いの手を止めて自分達の勝利に喜んだり明るい表情を浮かべている中、ディミトリは口元に笑みを浮かべて声を上げ、疲れた表情で溜息を吐いたエーデルガルトにクロードは苦笑しながら肩をすくめて指摘し

「―――――作戦は成功!直ちに戦闘を中止しなさい、黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)!裏の協力者の方々も直ちに戦闘を中止してください!」

「イエス・マム!!」

「やれやれ……ようやく終わったか。」

「フフ、そしてメンフィル帝国の狙い通り”激動の時代を終結させた英雄”が生まれましたね。」

「…………ハッ………」

「……………ふう。駄目だ――――――興が削がれたみたいだ。はぁ、どうでもいい連中の嘆きと歓声に心乱されるなんて、まだまだかな。ま、”本命”は成功したから、今回の死合いは私の戦意喪失で君達の勝ちでいいよ。」

セシリアはエーデルガルト達やヴァン達に指示を出し、セシリアの指示に対してエーデルガルト達がそれぞれ答えてそれぞれの武装を収めている中エレインと対峙していたヴァンは溜息を吐いて戦闘の構えを解き、ジンと対峙していたチョウは戦闘の構えを解いた後口元に笑みを浮かべて上空の映像に映るリィンを見つめ、セリスは鼻を鳴らした後自身の武装を収め、シズナはその場で少しの間黙り込んだ後ため溜息を吐いた後全身に纏っていた闘気を霧散させた後武器を収めて苦笑しながらアルゼイド子爵とエウシュリーちゃんに声をかけた。

「いや――――――其方との斬り合いによってヴァンダイク元帥の元へと駆け付ける事ができず、討たれてしまった以上、其方の勝ちだ。」

「私は戦闘が終わりましたから、これで失礼させてもらいますね~。」

シズナの指摘に対してアルゼイド子爵は全身に纏っていた闘気を霧散させて武器を収めた後重々しい様子を纏って呟き、エウシュリーちゃんは異空間へと戻って異空間を閉じた。

「作戦が成功した以上、もはや私達が貴女達を阻む意味はありませんわ。――――――貴女達の手で恩師の遺体を回収し、埋葬したいのであれば止めはしませんわ。」

「………ッ!!――――――すぐにリィン達の所へ行くわよ、あんた達!!」

「学院……長……うぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!」

「く……っ!」

魔導銃を懐に収め、仕込み刀を鞘に収めたセシリアはサラを見つめて静かな表情で指摘し、セシリアの指摘に対して怒りの表情でセシリアを睨みながら唇を噛み締めてその場で耐えていたサラはアリサ達に号令をかけ、サラの号令によってアリサ達がリィン達元へと急行している中エリオットは泣きながら、ユーシスは無念そうな表情を浮かべて唇を噛みしめて急行し

「エレイン、俺達も行くぞ!」

「……はい、ジンさん。――――――ヴァン、貴方が請けた”依頼”はどんな内容なのかは知らないけどこの戦争の最後まで灰獅子隊に協力し続けるつもりなの?」

サラ達に続くように協力者の面々もリィン達の元へと急行している中ジンに声をかけられたエレインは答えた後ヴァンを見つめて問いかけ

「さあな。それについては”お前次第”とだけ言っておくよ。」

「……なんですって?――――――!!まさか……貴方の”依頼人”はお父様かお母様なの!?」

「………ルネから聞いたが両親の反対を押し切って遊撃士に就いたらしいな。ま、お前にとっては余計なお世話かもしれないがお前を今まで大切に育ててくれた両親をあんまり心配させるなよ。」

自身の問いかけに対して肩をすくめて答えたヴァンの答えを聞いて一瞬眉を顰めた後すぐに察しがついたエレインは血相を変えてヴァンに訊ねたが、ヴァンは答えを誤魔化して苦笑しながら指摘し

「………ッ!」

ヴァンの指摘を聞いてヴァンが請けた”依頼内容”を悟ったエレインは両手を握って唇を噛み締めたが、すぐに気を取り直してアリサ達の後を追った。



こうして……ハーケン会戦はヴァンダイク元帥の戦死によって終結した。”大戦”でありながらカシウスの献策によって開戦当初からエレボニア帝国軍が大混乱の状況に陥っていた事でメンフィル・クロスベル連合、ヴァイスラント、王国軍の戦死者は総勢約2万人と戦争の規模の割には比較的軽微な数で済んだ事に対して、エレボニア帝国軍の戦死者の数は総勢約30万人とエレボニア帝国にとっては歴史的大敗北となった。



また……メンフィル・クロスベル連合、ヴァイスラント、王国軍は数は違えどそれぞれ戦死者を出している事に対して灰獅子隊と白隼隊だけは戦死者は一人も出なかった事で、”灰獅子隊”と”白隼隊”は後に”奇跡の部隊”と称されることになったという――――――







 
 

 
後書き


更新がかなり遅れて申し訳ございません(冷や汗)それぞれの戦闘を書くのが難しいというのもありますが、ファイアーエムブレム無双風花雪月のプレイもあって、いつも以上に遅れてしまいました……これで長く続いたハーケン会戦篇にして第三部は終了しました!後は最終幕、そして後日譚です!なお、今回の話終了後に第三OPとして創の軌跡のOPであるNO END NO WORLDが流れて、シーンとしては序盤は灰獅子隊の面々(なお、その中にはシズナやクロガネも含まれてます)やリィンの使い魔メンバーであるメサイア達が契約した順番に写り、歌が盛り上がるサビのシーンでは特務支援課&ジェダル達VSルトガー、レオニダス、シャーリィ、セリカ達VSアルベリヒ&ゲオルグ、リィン達VSギリアスの戦闘シーンがそれぞれ映った後、創のラストダンジョンの周囲で飛び回って戦闘する黒以外の6機の騎神達&ヴァイスリッターと騎神達を支援するレボリューション、ルーファスが駆る黄金の魔煌機兵と共に創のラスボスと戦うヴァリマール、オルディーネに続くようにコンビクラフトで創のラスボスに攻撃を仕掛けるリィンとシズナ、Sクラフトで創のラスボスに攻撃を仕掛けるレーヴェとリアンヌ、それぞれ竜へと変化して創のラスボス目掛けてドラゴンブレスを放つミント、ツーヤ、セレーネ、創のラスボス目掛けてニーベルン・ヴァレスティを放つエステルが順番に映った後、最後は紅き翼の面々、シェラザード達協力者勢、特務支援課、エステル達、エイドス達が順番に映ると思って下さい♪ 
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