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プリンセスは世間知らず

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第二章

 エレオノールは食事の時にこう言った。
「お水は飲みもしますか」
「はい、お茶やコーヒーやお酒だけが飲みものでなくて」
 マルゴはエレオノールに水を差しだしつつ答えた。
「水もまたです」
「飲めるのですか」
「既に沸かして消毒していますので」
「消毒?お水をですか」
「中に菌が多くいるので」
 マルゴは軍で行軍中にしていることを話した。
「ですから進軍中は常にです」
「お水を沸かすのですか」
「一旦そうしています、そしてこのお水もです」
「沸かしたのですか」
「そうしたので安心してお飲み下さい」
「わかりました」 
 エレオノールは頷いて水を飲んだ、そして水も美味しいと言った。また食事を買う時も。
 マルゴ達が金を出して支払うのを見て怪訝な顔になって言った。
「何を出したのですか」
「お金です」
「お金?」
「はい、ものを売り買いするには必要なもので」
 マルゴはエレオノールにここでも正直に話した。
「常に使うものです」
「そんなものがあるのですね」
「国には」
「ものはそこにあるのではないのですね」
「売り買いをして手に入れます」
「そうしたものですか」
「その為にお金が必要なのです」
 こうエレオノールに話した。
「ですから今支払いました」
「そうですか」
「はい、では食べましょう」 
 マルゴは食べものを買ってからエレオノールに話した、食べながら売り買いや金のことを彼女に話した。
 その話を聞き終えてだ、エレオノールははじめて知ったという顔で述べた。
「世の中にはそんなものがあってそうした仕組みになっていますか」
「そうです、それで私達もお金を貰って生きています」
「働いてですね」
「そうなのです」
 十七歳になったばかりの姫に話した。
「国家からお給料を貰って」
「働いている分のですね」
「そうしています」
「そうだったのですか」
「私も兵達も」
 まさに誰もがというのだ。
「そうして暮らしています」
「そうですか」
「それが世の中です、あと姫様お食事は如何でしょうか」 
 マルゴは自分達と同じパンや干し魚それにチーズや林檎を食べるエレオノールに尋ねた。
「美味しいでしょうか」
「はい、とても」
 エレオノールは素直に答えた。
「新選でいいですね」
「そうであればいいですが」
 マルゴはエレオノールが粗食に平気なのを内心喜んだ、このことは日頃質素である王家のしきたりに心から感謝した、だが。
 エレオノールは道中常にだった。
 何かを見てあれは何かと尋ね不思議な顔になったりした、それでだった。
 兵達はマルゴに言った。
「あの、牛に角が生えてることをご存知でなく」
「山羊と羊の違いもご承知でなく」
「川や湖に魚がいるとは思われず」
「畑仕事もご覧になられたことがないとは」
「実は王家の中でも特に世間知らずなのだ」
 マルゴはエレオノールのことを唖然としつつ言う兵達に答えた。 
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