恐るべき大食い女
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
寿司を次から次に注文して食べていく、その食欲に湯川も仰天した。
「な、何ですかあのお客様は」
「もう三十貫食べてるんですよ」
「三十貫!?あの体格で」
見れば一六〇ない位の背で身体は細い。
「そうなのですか」
「はい、これが」
「このままじゃネタが足りなくなります」
田中も言ってきた。
「凄い人ですよ」
「あの、フードファイターではないですね」
湯川はこのことを確認した。
「そうですね」
「はい、普通の大学生とのことです」
「それであれですか」
「そうです」
「どうします?」
真顔でだ、若い板前が湯川に聞いてきた。
「あの人は」
「食べるのを止めてもらうか」
「そうします?」
「いえ、食べ放題で来てもらったのですから」
湯川は若い板前に真面目な顔で答えた。
「最後まで、です」
「食べてもらいますか」
「お客様が満足されるまで」
「そうですか、では」
「このままです、ネタが足りなくなったらそれは仕方ありません」
そうなることを受け入れるというのだ。
「それでやっていきましょう」
「それでは」
若い板前も田中や他の板前達も頷くしかなかった。
かくしてその客は食べ続け何と五十貫食べた、そうして悠然と帰り店はこの日ネタ不足になってしまった。
後日湯川はインターネットで脅威の女性フードファイターデビューという動画を観てそのうえで田中に話した。
「この前うちに来た女子大生ですが」
「あの五十貫食べた」
「はい、その人ですが」
インターネットのユーチューブの動画を見せて話した。
「この通りです」
「ラーメン十人前ぺろりですね」
「フードファイターとしてデビューしてるんですが」
「そうした人だったんですね」
「ですからあれだけ食べたことも」
店のネタが不足するまでだ。
「当然ですね」
「そうですね、そうなることも道理ですね」
「そしてそんな人が来ることもありますね」
「そうですね」
彼女、ルソン山崎というフードファイターネームの彼女の食べっぷりを見て話した。そうしてその日のことを覚えたままだ。
湯川は彼女のことをよく知り合いに話す様になった、フードファイターはデビュー前からフードファイターであると。
恐るべき大食い女 完
2022・6・23
ページ上へ戻る