恐るべき大食い女
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第一章
恐るべき大食い女
銀座の高級寿司屋八徹は世界的な企業グループである八条グループの経営者一族のある者がオーナーを務めている店である、その店長である湯川時頼はオーナーの腹心の一人でこの店を任されているが。
今この店は食べ放題を行っている、湯川は板前長の田中秀充角刈り頭に四角い顔に小さな目がある初老の彼に言った。湯川はすらりとした長身で黒髪を左で分けた眼鏡の三十代の男でスーツ姿がよく似合っている。
「うちは高級店ですが」
「こうしたサービスもですね」
「時として必要と思いまして」
こう田中に話すのだった。
「やってみました」
「そうですよね、時々でもです」
田中も考える顔で応えた。
「こうしたことをして」
「新たなお客さんに沢山来てもらうこともです」
「商売ですね」
「常連やお仕事の接待だけでなく」
「普通に来てくれるお客さんもですね」
「こうしたことから増やしていきましょう」
湯川はこう言ってだった。
店で食べ放題をしたがレスラーや力士はお断りとした。
「ああした人達は食べる量が違いますから」
「それも仕事のうちですからね」
田中は湯川に応えた。
「あとフードファイターの人も」
「食べる量が違う人達はです」
「食べ放題はお断りですね」
「そうしていきます」
流石にこうした人達に食べられると採算が取れないからだ。
それでそうした、だがある日。
普通の大学生か専門学校生に見える茶髪で派手なメイクとファッションの女性が店に来て食べ放題を注文してだった。
食べはじめたが店の奥で今月の売り上げのチェックを行っていた湯川のところに若い見習いの板前が飛んで来て言ってきた。
「あの、凄いお客さんがいるんですが」
「凄いですか」
「ちょっと来て下さい」
見れば彼の顔は真っ青になっている、湯川はその顔と声に尋常でないものを察して今の仕事を中断してだった。
店に出た、するとその派手な女がだ。
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