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遊戯王EXA - elysion cross anothers -

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TRICLE STARGAZER
  TRSG-JP007《その日、少女は泣き崩れた》

 
前書き
 ……お父様、そこにいらっしゃるのですか?

「どうしたんだい、 () () () ()

 あ、お父様! ……ここはどこですか? 私達は死んだのではなかったのですか?

「ふむ、どうやらここは死者の最期に逝き着く場所のようだね」

 死者の……というわりには、私達の周りに変な映像の映った泡がいっぱい浮いてますよ?

「そう、私もそれが気になっていたんだ。……私達の周りには誰もいないし、誰かが来る気配もない。いや、まさかな……」

 ……お父様、何かわかったのですか?

「ああ。だが、あくまで仮定の話だけどね……」 

 
―――― Turn.2 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/3
◇《創造の代行者ヴィーナス》ATK/1800
◇《ガチガチガンテツ》DEF/2000
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/4000 HAND/1
◇《イビリチュア・リヴァイアニマ》ATK/2700
◇《ラヴァルバル・チェイン》ATK/1800
◇set card/mo-0,ma-1


 ……私の場、残りのセットカードは《強欲で謙虚な壺》、ブラフとして伏せただけの通常魔法だった。本命の《奈落の落とし穴》が割られちゃったから、ブラフとしての役目は果たせなかったんだけど。
 攻撃する度に手札を増やす青い龍"リヴァイアニマ"。まずはあれをどうにかしないと!

「私のターン、ドロー!」


Turn.3 Player/Aisia Elysion
 1st/Aisia Elysion
  LP/3000 HAND/3→4
 2nd/Yumina Orihime
  LP/4000 HAND/1


 ……引いちゃった。

「手札から《強欲で謙虚な壺》を発動するね」

 セットしてあるのにドローしちゃうなんて……1ターンに1度しか使えないから、仕方ないけどセットしてあるこっちにはもう1ターンブラフになってもらおう。


《朱光の宣告者》
《死者蘇生》
《神の宣告》


「もう、いやだよ………!」

 なんで!? よりにもよって、なんでこの3択なの!?
 確かに《朱光の宣告者》は欲しかったけど! 来るの1ターン遅かったよ! 見えてたら意味ないよ!
 《死者蘇生》は今持ってきても使えないし、そもそも蘇生したいモンスターがいない! 《神の宣告》は【リチュア】にあまり効かないみたいだし……!

「……《朱光の宣告者》を手札に加えるよ」

 仕方ないけど、他の2枚を加える意味がない以上これを選ぶしかなかった。というか、そもそもこれ使わなければよかった……。

「ターンエンド、かな………」

 出来ることが何ひとつ無くなっちゃった。次は何を引けば動けるようになるのかな……。


―――― Turn.3 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/4
◇《創造の代行者ヴィーナス》ATK/1800
◇《ガチガチガンテツ》DEF/2000
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/4000 HAND/1
◇《イビリチュア・リヴァイアニマ》ATK/2700
◇《ラヴァルバル・チェイン》ATK/1800
◇set card/mo-0,ma-1


「……え、ターンエンドなんですか?」
「うん……」

 やめてゆみなちゃん! そんな憐れむような目で私を見ないで!

「……わかりました。私のターン、ドロー!」


Turn.4 Player/Yumina Orihime
 1st/Aisia Elysion
  LP/3000 HAND/4
 2nd/Yumina Orihime
  LP/4000 HAND/1→2


「……なるほど。ここでこう来ますか」

 ドローしたカードを見て、ゆみなちゃんが溜め息をつきました。

「《トレード・イン》を発動! 手札のレベル8モンスター《イビリチュア・ソウルオーガ》を捨て、カードを2枚ドローします!」

 なるほど……ゆみなちゃんの【リチュア】はレベル8がメインになってるから、レベル6のそれと違って手札交換系のカードを入れられるんだ。

「こ、これですか……!?」

 ……あれ、もしかしてこのターンは攻撃してこなかったりする? いやいや、いくらなんでもそんなことは……

「バトルフェイズ……に、入りません!」

「ええっ!?」
「カードを1枚セットしてターンエンドです!」

 ……本当に攻撃してこなかった。


―――― Turn.4 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/4
◇《創造の代行者ヴィーナス》ATK/1800
◇《ガチガチガンテツ》DEF/2000
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/4000 HAND/1
◇《イビリチュア・リヴァイアニマ》ATK/2700
◇《ラヴァルバル・チェイン》ATK/1800
◇set card/mo-0,ma-2


 何とか生き延びられたけど……あの2枚の伏せが本当に怖い。ゆみなちゃんも表情に出てるし……。

「わ、私のターン……ドロー!」


Turn.5 Player/Aisia Elysion
 1st/Aisia Elysion
  LP/3000 HAND/4→5
 2nd/Yumina Orihime
  LP/4000 HAND/1


「……来た!」

 手札に加わったのは私の切り札、その内の1枚《マスター・ヒュペリオン》。手札、フィールド、墓地のどこからでもいいから"代行者"を除外すれば手札から特殊召喚できるから、まず手札の……


「来たところをすみませんが、ドローした瞬間に《マインドクラッシュ》を発動しますね」


 ………えっ?

「さっき《強欲で謙虚な壺》で《朱光の宣告者》を手札に加えてましたよね。宣言するカードは《朱光の宣告者》です、手札を見せてください!」
「……ええっ!?」

 ゆみなちゃんがカードを宣言するのと同時に、私の手札がソリッドビジョンで大きく表示された。


《大天使クリスティア》
《神秘の代行者アース》
《オネスト》
《朱光の宣告者》
《マスター・ヒュペリオン》


「……な、なんですかその手札は………!?」

 ……うん、私もそう思うよ。たった今《マスター・ヒュペリオン》をドローするまで、私もどう動けばいいかわからなかったんだもん。

「……とりあえず《朱光の宣告者》を墓地に送ってください」
「うん、わかった……」

 ソリッドビジョン上で、《朱光の宣告者》のカードが音を立てて砕け散った。壊れたカードと同じものを手札から墓地に送って……これで2枚。

「……とりあえず、《神秘の代行者アース》を召喚するね。効果でデッキから2枚目の《創造の代行者ヴィーナス》を手札に加えるよ」

 私の場に、銀色の髪をした天使が舞い降りた。沙耶ちゃんは男の()って言ってたけど……うん、確かにそうかも。男の子か女の子かわからないし。

 神秘の代行者アース
 ☆2T ATK/1000→1200

「行くよ! レベル3《創造の代行者ヴィーナス》にレベル2《神秘の代行者アース》をチューニング!」


 (ひと)歴史(れきし)科学(かがく)(とも)に、時空(じくう)(つな)奇跡(きせき)(つむ)ぐ!

 (つかさど)りしは人々(ひとびと)正義(せいぎ)異端(いたん)(こば)(こころ)()(かみ)

    ☆3+☆2=☆5

 シンクロ召喚(しょうかん)()(はな)て、断罪(だんざい)(とが)


「来て、《A・O・J カタストル》!」

 光の中から姿を表したのは、全身を白い金属で覆われた四足歩行の機械。頭の部分には丸い珠みたいなものが嵌め込まれていた。

 A・O・J カタストル
 ☆5 ATK/2200→2400

「これで、墓地に天使が4体……!」
「うん、ゆみなちゃんの《マインドクラッシュ》に助けられちゃった」

 《マインドクラッシュ》を撃ったことが、そのまま仇になるなんて初めて見た。普通に考えれば間違いなはずがないのに。

「……だけど、それはちょっとお預けかな。墓地の《創造の()()()ヴィーナス》を除外!」

 それに、この道は途絶えない。私の場で小さな炎が渦を巻きはじめる。

「私に力を貸して! 《マスター・ヒュペリオン》!」

 それはまるで、私の呼びかけに応えるかのように。炎の渦は猛々しく舞い、やがてそれを司る者を呼び覚ました。
 神々しい光を放つ、黄金色の太陽神―――《マスター・ヒュペリオン》。私のデッキのエースモンスター!

 マスター・ヒュペリオン
 ☆8 ATK/2700→2900

「《マスター・ヒュペリオン》の効果を発動! 1ターンに1度、墓地の天使族モンスターをゲームから除外することで、フィールド上のカードを1枚破壊する! セット……」

 セットカードを破壊……そう言いかけて、言い留まる。

「……ううん、セットカードじゃない」

 なんでだろう。いつもはたまにしか感じないのに、昨日のあの時から直感が冴えているような気がする。
 ―――いける。あのカードが攻撃反応型じゃなければ、私の勝ち!

「《イビリチュア・リヴァイアニマ》を破壊!」
「―――っ!?」
「カーディナル・エクリクシス!」

 太陽神の手に、黄金色の光が槍となって生み出された。それを彼は大きく振りかざすことなく、しかし精密に投擲する。光はその速さを以て蒼き龍を貫き、その熱を以て焼き払った。

「最後に、一応《ガチガチガンテツ》を攻撃表示にしておくね」

 ゆみなちゃんの手札には、もしかしたら《トラゴエディア》が眠ってるかもしれない。攻撃力がたったの700でも、守備力0の壁は突破できるから。

 ガチガチガンテツ
 ★2/1 DEF→ATK/ 700

「バトルフェイズ! 《マスター・ヒュペリオン》で《ラヴァルバル・チェイン》を攻撃!」

 太陽の神が次に生み出したのは小さな炎の珠。それを何十、何百と、視界を奪うほど大量に呼び出していく。

「ダメージ計算時に手札の《オネスト》の効果を発動!」

 手札の《オネスト》を墓地に送ると同時に、周囲の炎が真紅から黄金へと変わる。彼の背中にはは、七色に輝く翼―――真理(オネスト)の力を得た証があった。

 マスター・ヒュペリオン
 ☆8 ATK/2900→4700

「ディバインズ・クラスター!」

 ―――爆発。金色の炎弾、その全てが一斉に牙を剥いた。
 爆風は禁忌の魔物を跡形もなく消し去っていく。あまりもの高熱は、亡骸はおろか灰さえも残さない。

「くぅ………!」

 Yumina LP/4000-2900=1100

「……ここで《ガチガチガンテツ》を攻撃表示ですか……」

 ゆみなちゃんが、小さくそう呟いた。残された最後の手札をその水晶盤に叩きつけ……


 トラゴエディア
 ☆10 DEF/?→ 0


 「………全く、なんて読みをしてるんですか」

 ―――悲劇、降臨。守備力0だけど。

「やっぱりいたんだ……。続けていくよ、《ガチガチガンテツ》で《トラゴエディア》を攻撃!」

 黒い怪人が動き慣れない体で無理に攻撃の体勢に入った。地面を蹴り、化け物へと殴りかかる。

「……ダメージステップに入りますね」

 金色の槍。
 ゆみなちゃんが直接放ったそれは男の足元に突き刺さり、彼の周囲を光の結界で閉じ込めた。

 ガチガチガンテツ
 ☆2/1 ATK/ 700→ 0

「速攻魔法《禁じられた聖槍》です。《ガチガチガンテツ》の攻撃力を800下げ0にしました。たとえ守備力が0だとしても、さすがに攻撃力0の相手に破壊されることはありませんからね」

 脱出を図り殴りつけるも、光の結界はひびの入る様子もない。諦めたのか、怪人は歩いて私のフィールドに戻ってきた。……結界を張り続けている槍を手にして。ねえ、それで攻撃すればよかったんじゃない? 結界も槍に追従してるみたいだし。

「……いや、なんで槍を使わないんですか」
「あ、ゆみなちゃんも思った?」
「はい。……アイシアさんもですか?」
「うん」

 メーカーに「ソリッドビジョンの不具合」として報告した方がいいのかな……って、そんな場合じゃなかった。

「仕方ないか。《A・O・J カタストル》で《トラゴエディア》を攻撃! 黒紫雷晶弾(ブラック・プラズムバレット)!」

 殺戮兵器が頭部のコアから漆黒の弾丸を放つ。怪物に直撃すると同時に弾丸は紫電を伴った大きな爆発を起こし、悪魔の姿をした幻影を跡形もなく消し飛ばした。

「私はこれでターンエンド!」

 私の墓地に天使族モンスターは3体。あと1枚で《大天使クリスティア》を場に出せる!


―――― Turn.5 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/2
◇《マスター・ヒュペリオン》ATK/4700
◇《A・O・J カタストル》ATK/2400
◇《ガチガチガンテツ》ATK/ 700
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/1100 HAND/0
◇set card/mo-0,ma-0


「アイシアさん、随分余裕そうな表情をしてますね」
「……あれ、顔に出ちゃってた?」
「それはもう」

 油断しちゃった。自分では無表情(ポーカーフェイス)のつもりだったのに、難しいな……。

「まあ、本当に私が劣勢なんで文句なんて言えないんですけどね」
「前のターンもゆみなちゃんにやけてたしね」
「え、そうだったんですか!?」

 あ、やっぱり気づいてなかった。こういうのって、自分ではやってたつもりなのに、他人に言われて初めて気がつくんだよね……。

「まったく、私も人のこと言えないじゃないですか……」

 そう言ってゆみなちゃんは溜め息をつき、デッキトップに手を掛けた。

「私のターン、ドロー!」


Turn.6 Player/Yumina Orihime
 1st/Aisia Elysion
  LP/3000 HAND/2
 2nd/Yumina Orihime
  LP/4000 HAND/0→1


「……引きました、か」

 ドローしたカードを見て、ゆみなちゃんが安心したように呟いた。

「私の思っていた通りのカードです。本当に……もう………」

 そして、その引いたカードを、ゆみなちゃんの前に浮遊している水晶盤に………


「ターンエンドです」


 思いっきり叩きつけ………ない?

「……え、終わり!?」
「はい。ついでにサレンダーしてもいいですか?」
「え……い、一応最後までやらせてもらっても、いい?」
「わかりました」


―――― Turn.6 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/2
◇《マスター・ヒュペリオン》
◇《A・O・J カタストル》ATK/2400
◇《ガチガチガンテツ》ATK/ 700
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/1100 HAND/1
◇set card/mo-0,ma-0

 
Turn.7 Player/Aisia Elysion
 1st/Aisia Elysion
  LP/3000 HAND/2→3
 2nd/Yumina Orihime
  LP/4000 HAND/1


「えっと……じゃあ、ドロー。バトルフェイズに入って《マスター・ヒュペリオン》でダイレクトアタック!」

 太陽神が何やら申し訳なさそうに炎の珠を一つだけ作り、それをゆみなちゃんの足元に叩きつけた。

「プロミネンス・クラスター!」

 爆発。いつもはこんなに炎少なくないけど、これで一応1100のライフが全て削り取られた。
 ……最後があっけなかったけど、こういうデュエルもたまにあるよね。


―――― Turn.7 End Phase ――――

1st/Aisia Elysion
◇LP/3000 HAND/3
◇《マスター・ヒュペリオン》ATK/2900
◇《A・O・J カタストル》ATK/2400
◇《ガチガチガンテツ》ATK/ 700
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Yumina Orihime
◇LP/ 0 HAND/1
◇set card/mo-0,ma-0

 Aisia WIN


 ― ― ― ― ― ― ― ―


「……ふう」

 ゆみなとのデュエルに勝利し、自分が偽物ではないという証明に成功したアイシアは安堵の溜め息をついた。

「ゆみなちゃん、最後のドローはなんだったの?」
「ああ、これは……」

 アイシアがゆみなに最後の一手を尋ねる。ゆみなの公開したカードは緑色の枠、海の上で機械を釣り上げているようなイラスト。そのイラストを見て、アイシアの表情に驚愕が浮かんだ。

「《サルベージ》!?」
「はい。どう足掻いても詰みでしたから」
「大丈夫だったよね!? 墓地の"儀水鏡"で《イビリチュア・ソウルオーガ》を回収すれば……」

 アイシアは、そう考えた。そうすれば《サルベージ》で《シャドウ・リチュア》2体を回収し《イビリチュア・ソウルオーガ》儀式召喚に繋げられた。そうすればまだ巻き返すことは出来たはず……そう彼女は考えた。しかし。

「……流石は紗姫先輩、ですね」
「え、今何て言ったの?」
「アイシアさんは覚えるの早いですね、と」

 ゆみなの小さく呟いた言葉を聞き取れず、アイシアが問い直す。しかし、彼女の言い直した言葉は先ほどとは違うものであった。

「それでも、今回はそれを含めて詰みなんです」
「……え、なんで?」
「ちょっとさっきのフィールドを確認してみましょうか」

 そう言い、ゆみなが再び決闘展装(デュエル・トランサー)を起動。出現した水晶盤に先程のフィールドを映し出した。

「アイシアさんのフィールドには《マスター・ヒュペリオン》と《A・O・J カタストル》、そして素材を一つ残した《ガチガチガンテツ》がいます。また、手札には通常召喚可能な《創造の代行者ヴィーナス》と墓地天使3体の《大天使クリスティア》がいます」
「うん、そうだったね」
「《サルベージ》で回収するのが《シャドウ・リチュア》2体。墓地に儀水鏡が1枚あるので効果で《イビリチュア・ソウルオーガ》を回収します」
「そうそう。手札の"シャドウ"使って"儀水鏡"を持ってきて、これで"ソウルオーガ"が出せるようになるんだよね」

 アイシアとプレイングを確認しながら、ゆみなは水晶盤に映されたカードを動かしていく。

「そこから……」

 そして、ゆみなが詰みの理由を発言しようとし……

「そこから《イビリチュア・ソウルオーガ》を儀式召喚したところで、《リチュアの儀水鏡》の効果で手札コストを持ってきたとしても処理できるのは3体中2体」

 ……しかしそれは、彼女たちにとって聞き覚えのある第三者の声で遮られた。突然の割り込みに二人は振りかえる。

「"カタストル"と"ガンテツ"を処理すれば"ヒュペリオン"に、"ヒュペリオン"と"ガンテツ"を処理すれば"カタストル"と通常召喚された"ヴィーナス"に。"カタストル"と"ヒュペリオン"を両方同時に処理することが出来ないため、もう片方に突破されて死ぬ」

 ……そしてそのまま、その第三者―――天河紗姫(アイシア)の弟、風見蓮が解答を言い終えた。

「………そうだよね、ゆみな」
「風見君! 無事だったんですね!」
「うん。デュエルは負けたけど、闇のゲームでちゃんと勝ったからね」

 ……アイシアは、目の前の光景をすぐに認識することは出来なかった。蓮は屋上で、アイシアに永遠の別れを告げたばかりだ。その彼が、何事もなかったかのように帰還してくるなど、誰が予想出来ようか。

「え、それって……まさか」
「あー……うん、多分Exactry.」
「……殺害(DANZAI)お疲れさまでした。」
「殺害って言うなっ!」
「いや、どこをどう取っても殺害じゃないですか」
「いやまあそうだけど!」
「それに、こんなことしてたら評価下がりますよ?」
「何の!? それ誰の評価!?」
「いや、にじファンとか」
「閉鎖済み! てか何!? この体験を小説にでもするつもりなの!?」
「え、ダメなんですか……?」
「いちいちこの世界のオリカなんて覚えてないし思い出したくもないっての!」

 蓮とゆみなが、メタ発言の応酬を続けている。彼ら自身―――アイシアに憑依した天河紗姫を含めて―――メタ側の出身であるが故、致し方ないことではあるのだが。

「本当に……れーくん、なの………?」

 しかし、アイシアにその声は届いていない。恐る恐る彼女が蓮に問う。

「え? ……あ、ごめん紗姫姉。結局帰ってこれちゃった」

 彼の応答は、確かに彼女を恐怖から解き放った。二度目の死別、その恐怖から彼女を救い出した。

「……ばか」
「え?」

 無意識のうちに、紗姫(アイシア)は抱きついていた。彼の温かさに、ひとりでに涙が零れていく。

「れーくんのばか! 本当に怖かったんだよ!? 今から死ぬなんて言って……! もう二度と、れーくんに会えなくなっちゃうんじゃないかって………!」

 そこには既に、仮面(アイシア)はない。生前に義弟を"れーくん"と呼んでいた……天河紗姫が、そこにいた。

「もう二度と、絶対にそんなこと言わないで! 私の前から消えようとなんてしないで……! もう……私……!」

 台本なんてない。それは、すべて少女の心からの声。愛する者の腕の中、涙を流しながら紗姫は蓮の顔を見上げて言った。


「れーくんと一緒に……いられなくなるなんて………いやだよ………!」


 紗姫が泣き疲れて眠ってしまうまで、彼は少女を抱き続けていた。
 彼のその温もりが、(すべて)を失った彼女にとってはとても嬉しく……同じくらい、とても苦しいものであった。


 ……今の言葉がプロポーズだと蓮が気づいたのは、彼らがアイシア宅で合流してからのことである。


    to be continued... 
 

 
後書き
 新年明けましたね。おめでとうございました。

 さて、新年早々名前変えました。月詠クレスです。……名前、ちゃんと反映されてますか?ちょっとそこら辺がよくわからないんです。
 というのも……先日"月詠カグヤ"と検索してみたところ、なんと出てきたのは私の小説ではなくゲームのキャラクター。名前の変更はもはや必然だったと思います。

 さて、先ほどのゆみなが何もしなかったあのフィールド……実はこれ、勝利こそ絶望的ですが、相手のドロー次第で次のターンを生き残ることだけは出来ます。決してミスではありません。わざとです。
 発見しても、絶対に感想欄に書き込まないようお願い致します。メッセージボックスで直接送ってくださるのは構いませんが、感想欄は他の方々も見ることの出来る場所です。ですので、そういったネタバレの類いは決して行わないようにお願い致します。 
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