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妖精のサイヤ人

作者:貝殻
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第十一話:愛すべき家族に祝福を

 
前書き
この作品のキャラたちがもっと活き活きして読めれるような、そんな作品になれるようもっと努力したいです(1時間休憩を挟みながら) 

 

「!!」

雷撃を纏う拳は掠り傷を作ることができず、攻撃したラクサスの胴体にある肺にセイラが放つ強烈な掌底うちが当たる。
一瞬意識を飛びかけるラクサスであったが、片手でセイラの手を掴み、もう一つの手に収束されていた魔力を解放するように振り下ろした。

「へっ……!!落ちろォッ!!!!」

曇り空から魔法でセイラと諸共に使用者であるラクサスも巻き込み落雷を発動した。
ラクサスは雷の滅竜魔導士であり、本来ならば自然と魔法による雷を食すことで力を一時的なパワーアップや回復を可能とするが…自身の魔力で放たれる雷を食べることができない。
滅竜魔導士はその魔法属性に関する''食事''を、ラクサスやその周囲は知らない。
何せ、彼らの周りに滅竜魔法を扱う魔導士は居なかったのだから。

自身を巻き込む魔法を使ってセイラに確かなダメージを与えることができた、とラクサスは確信するも落雷の直撃により発生した煙の中から伸びてくる白い手に気づくには、一歩遅かった。

「分からないのですか、今の貴方様と(わたくし)の実力は天と地ほどの差があるのです――こんな雷でさえ、(わたくし)にとっては電気マッサージと変わらない」

その白い手はラクサスの首を掴み片手で持ち上げる。
自身の魔法は強力だと自負しているラクサスにとって、雷による魔法が通用しないことは初めてのことだった。
自身の魔法が通じないのならどうすればいいのか、と思考を巡らせようとしたラクサスにトドメをささんばかりにセイラの腕力を上げて絞め殺そうとする。
 
「ぐっあっ…!!!」

「そもそも、(わたくし)は貴方様に何も言っていませんでしたが…もしやネロさまとご友人として助太刀しようとしたのな浅はかです。 要は――邪魔です」

弟の友人と名乗ったこの少年に対して、彼女の赤い目はまるで闇のように深くして息の根を止めようとする。

「かめはめ波!!!」

しかし青い光を掌に収束したまま接近したネロによって制止される。
己が好む技でラクサスを巻き込まない位置まで接近して青く眩い閃光を撃ち込んだ。
かめはめ波を食らった際腕力が抜けたのか掴んでいた手はラクサスを離してしまう。
その瞬間を狙っていたネロはラクサスを抱き抱えてその場からすぐさま離れる。

「ラクサス!!すまねえ…大丈夫か!?」

「う…るせえ…平気だ…ゲホッ」

先ほどよりも気力がないラクサスを枯れ木に凭らせる。
未だにネロは混乱したままだったが、愛しき家族が友達に凶行を実行しようとする場面を目にすれば身体が勝手に動いてしまった。
まだ姉と戦うことを覚悟しないままの救出したが、そのゆっくり覚悟する時間を与える気はないらしい。

「いい不意打ちでしたよ。 それにあの位置からの接近スピード…もしや飛行魔法でしたか? と、いうことはネロさまはたった今二番目から覚えた魔法と最初に覚えた魔法…嗚呼、あの光は''技''というのですか。 とはいえ、流石(わたくし)の自慢の弟です」

日常的な話し方、今まで修行に付き合い助言してくれていたいつもの姉にネロは苦痛に顔を歪ませる。
今の姉と実力が離れすぎているのもそうだが、こんな場面でさえも普段通りに接する姉に今どうしてもネロは理解ができていなかった。
家族のことを何でも知っているとは言えなかったが、それでも確かに姉は自分を愛していたとネロは感じていた。
だというのに、これから命の奪い合い――いや、このままでは姉の蹂躙されるだけか。

「…姉さん、なんでオレと一緒に居たんだよ…」

「?」

「なんで…こんなことになるのならなんで一緒に居たんだよ!?普通の家族の様によ…!!あのわけわかんねえヤツの命令か!?あんなヤツの命令で…オレの姉を演じてたのかよ!!?」

「…?不思議なことを聞くのですね。 それに演じるなんてそんな…(わたくし)は貴方さまを抱き上げた時からずっと姉ですわ。これからも未来永劫にずっと」

ネロにとっては、姉は強い存在であるのもそうだがやはり長年一緒に過ごしてきたたった一人の家族だ。
その家族に今までの日常が偽りであったかのような行いに耐え切れずその姉本人にぶつけたのだが、それでもセイラは何も変わってないような…彼の知る愛の重い姉だった。
ただ今の姉の外見は頭に生えている牛の角と今までその肌になかったであろう模様があるのだが。

(わたくし)は貴方さま、ネロさまの姉であることに変わりありません。 だからこそ、(わたくし)がこうして貴方さまの第一関門として立っているのです」

「だ…第一関門って…だからそれは一体…」

「まずは今の(わたくし)を倒してからにしましょう。 でないと…殺めてしまわないといけません」

「っ…!!ちくしょぉぉぉっ!!」

白いオーラを身に纏い、全身の力を跳ね上げてセイラへ突進し肉弾戦に入る。
セイラはネロに片手だけを構え、そのまま自身に向けられるフック、アッパー、正面蹴りから回し蹴りから三日月蹴りなどの蹴り技をするが、弟の仕掛けてくる特攻にセイラは涼し気な顔で受け流し続けた。
手による打撃の方向線をずらすように受け流し、蹴り技は無駄の動きをせずにただ軌道を逸らすだけに留めて受け流しただけ。

確かにネロはこの1年間で強くなっただろう。
だが、それでも彼に武術などを教えたのはセイラである。
ネロに武術を手解きをしていたときにどのように狙い定めるか、どのような癖があるか教えてきた彼女自身がよく理解している。
例え、少し癖が変わってたとしても。
例え、以前より攻撃が鋭くなったとしても。
例え、放たれる速度が上がっていたとしても。

「もっと手の内を魅せてください。 まだあるのでしょう?」

茜色の頭に手刀を振り下ろそうとするセイラに野生の勘(ワイルドセンス)によって感知したネロはすぐさま残像を残すようにその場から退いた。
しかしセイラはその残像に動揺した素振りもなく、あるところに目線を映してそこへステップする要領に足は地面を蹴った。

「くっ…!!」

「魔力の放出が大雑把で、それも魔力を気等と…それでは”力”は引き出せません」

セイラが迫ったその場所に姿を露わにするネロであったが、軽いステップで向かってくる姉に思わず上げそうになった悲鳴を堪えて自身に向けられる鋭い手刀を間一髪避けてセイラの顔面へと右フックするが、その拳に躊躇いもなく淡々と手を添えるような仕草で受け流し、女性らしい握り拳で背後へと裏拳を放った。

「――!!」

「どんな力も、意識によって変わります。そう…人は”意識”と”感情”、”技術”や”才能”等で限界以上の力を引き出すことは可能です。 そしてそれは――」

”サイヤ人にとって尚更です”。

セイラの背後に誰もいないはずだった――が、その背後には茜色の髪が揺らす少年、ネロの顔がセイラの拳が食い込んでいた。
そしてセイラの前にあったネロの姿が、残像は消えていった。
 そう、ネロの拳が受け流された後すぐさま残像を残しセイラの背後で奇襲へと仕掛けようとしたが、それは失敗であった。
 
(最初の残像の速度が…フェイントだって気づいていたのかよ…!!)

「自分の扱う力を何と呼ぼうか結果があるのなら構いませんが…ないのなら意味がありません。ネロさま――貴方さまが強く思う力の根源、魔法の使い方をご理解を」
 
ネロがセイラの手刀を避けた時の残像は、セイラに油断を誘うための本気の速度より半分落として出した残像であった。
セイラが次の残像で油断を、隙を作るために行ったその残像すらもセイラにとっては無意味。
小細工に意味は成さないものであったことに気づくには遅かった。

「以前よりも速度が上がって結構。 しかし今の(わたくし)とネロさまのレベル差にとっては、悲しい結果にですの…それも、力の認識が正しければよかったのですが」

”まず一撃”

「ぐっ!?」

”もう一撃”

「ッッ!!?」

”もう一撃――いえ、もう30回程ヒットですわ”

正拳、正拳、正拳…からの拳の入ったたった片手によるラッシュがネロに炸裂する。
セイラより小柄な少年は空中のままひらすら理不尽な拳の数々をその身で体験をした。
本来なら空中で殴られる威力で後ろへ下がる筈が、セイラが狙う一つ一つの箇所がネロのその場へ固定になるように打撃を与えていた。
例えば右で殴って移動するのならばすぐさま左へと殴ってその移動を阻止。
そのまま地面へ落下していく身体には下から殴り込んで地面へのキスを阻止。
打撃の衝撃で吹き飛ばされないように、ひたすらその打撃力を調整するような器用さ。
ボールを足でリフティングを、人間を拳でリフティング――されど威力と鳴り響く音はもはや重々しい程の打撃音。
まるで物理法則が通じない、されどそれはネロが求めるような超技術を今、姉のセイラが体現した。

(ああ――これ、負け――)

「さぁ、力を引き出してみせて―――!!」


「―――''雷竜の咆哮ォォ''!!!」


が、その行為を阻止するのは先刻セイラに殺されかけたラクサスである。
口から膨大な魔力を込めてネロに敗北を叩きつけた雷の奔流はセイラを飲み込み、木々へと吹き飛ばしていく。


(セイラのやつ…マジもんのバケモノじゃねえか…くそっ…)

「おい、ネロ!!大丈夫か!?」

セイラのまるで拷問すらも可愛く思えるような拳の数々をその身を浴びたネロに駆け寄ろうとうするラクサス。
だがその行為は正しくなかった。

「本当に…邪魔な子ですわね。 一度は命を見逃しましたが…らしくない行動をするものではないですね」

服にかかった誇りを叩き落とすような仕草をしながら歩み戻るセイラの姿にラクサスはゾッと背筋を震わせた。
今の魔法はラクサスが持つ魔法の中で一番の威力を誇る魔法――それを受けてもまるで効いた様子のない異形の女にラクサスは理解できないものを目のあたりにしていた。

「て…てめえ…効いてねえのか…!!」

「少し効きましたわ。ええ…まるで魔導四輪に強く轢かれたような痛みでした」

「どこがだよ…ピンピンしやがってヨ…自身無くすぜ…」

涼し気な顔で近づいてくるセイラに冷や汗を流すラクサス。
今始まっているこの戦いは、始めから勝ち目などなかったのだろう。
目の前の女に持っていた最初の第一印象はその強さの秘訣と好奇心。
そして現在のセイラに対するラクサスの感情は――恐怖。
もはや目の前の女は自分たちとは実力の離れすぎた強者だ。
油断する隙もなければ慈悲を持つ持ち主ではないことを先ほどのネロとの攻防で明らかになっている。
なら、目の前の女から逃げるか?と脳裏にすぎるがラクサスは確信に近い程それが無理だと直感した。
ネロを抱えて逃げるにしても魔力によるブーストを重ねたとしてもこの女は常識外れな速度に追いかけてくるような、そんな幻覚さえ見えてしまう。
なら…このままネロを見捨てて逃亡するか?

(できるわけねえよな)

ラクサスは知っている。
弱者たちを背にして守り抜く祖父を。
その祖父から優しさをもらった。
ラクサスは知っている。
魔法によって起こる無限の可能性を。
綺麗事を口にする者もいる――が、強者であればその綺麗事を貫くことさえできる。
いつかの未来、そのことさえ一度は忘却の彼方に置き去る可能性を持つラクサスだが…同じように仲間に対して情が熱い人物である。
なれば――これから仲間に、競い合えるであろう友をこの少年は見捨てやしない。

「オレはまだ負けてねえぞ…セイラ」

恐怖はある。震えも止まらない。
 
「例えテメエがバケモンでも…''仲間''を見捨てるようなクズみてーな真似(マネ)はしねえ」

それでも、言葉は力になる。
今の力を、思う増分に引き出してやる。限界を超えてさらに先へと

「死んでも倒れねェ…来やがれ!!」

「…その年で肝が太いとは。いいでしょう…ならば死になさい」

手を頭上の上に掲げるセイラ、その周囲に一瞬光が爆ぜてその場から大量の分厚い本が宙に浮いていた。
まるで意思が宿っているかのように飛行している本を前に目を点とするラクサスだが、笑みを浮かべて身体に魔力を底上げして雷を纏った。

「オレも…まだやれる…!!!」

そして臨戦態勢する二つの影に、もう一つの影が重なった。
所々も殴られた痣がありながら、ラクサスと同じくボロボロになったネロが立ち上がってラクサスの隣へと並んだ。
隣に並んだネロにラクサスは問う。同じく負傷者でありながらも目の前の女に対し覚悟を持った友に。

「…本当にやるのか?ネロ…おめえの姉貴だが…」

「家族が粗相したら注意する…当たり前のことだろ。それに」

震える手を拳で無理矢理抑え込み、目の前にいる家族にネロは迷いはない。
家族、それも兄弟姉妹であれば喧嘩の一つや二つもあるのが当然だろう。
しかしネロの思い出の中にはそれは一度もなかった。
いつまでも優しく、自身に想いを尊重してくれていた姉。
転生者として不気味な子供であったはずの自分にいつまでも愛場を注いだ姉。
その思い出は先ほどの謎の声の持ち主の発言で黒く染めかけるも、確かに姉は本物の家族だったとネロは再認識した。

『困りました…野菜って結構切りにくいのですね』

『あら、ボロボロになって…元気なのはいいことですけれど、あまり服を汚さないでくださいね…え?修行?お可愛いこと』

『ネロさまの好きな肉料理は…まずしっかりと串を差して…燃やす…燃やしすぎました…』

『いいですか、魔力操作にも流れというものがありましてね…ああそんな乱暴まに魔法を放出したら御体痛みが…!』

『瀕死にすればいい?解りましたわ…なるべく手加減します』

『ネロさま、強くなりましたわね』

『ネロさま』 『ネロさま』 『ネロさま』

『たとえ貴方さまが弱くあろうとも、(わたくし)にとっては愛しい弟です』 

初めての料理で不器用ながらも奮闘してくれて、修行の時でさえ、見てくれていた姉の姿。
今までの思い出は、家族の絆に偽りなどありやしない。
例え、その思い出を誰かに否定されても自分だけはもう疑うなんて真似は、もうしてたまるか。
 

「オレは姉さんの家族だ。誰かに任せるんじゃなくて、弟のオレもやらなきゃ意味がねぇ…!!!」


己の内に駆け巡るエネルギーを放出して、眼前に映る姉に熱い意志を持って見つめる。
何回倒れたとしても、何度も吹き飛ばされても、気が尽けたとしても…何度だって立ち向かってやる。

「…良いですわ、ネロさま。その目…!!」

自身に向けられる視線にセイラは鳥肌が立つ。
別に目の前の少年二人が脅威になってわけでも怯んでしまったわけでもない。
ただ、自身に向けて覚悟を決めた弟に喜びしか感情が湧かないのだ。

「特別に二人で来ることを止めませんわ。 己のすべてをかけて…ぶつけなさい」

何度だって受けてあげましょう。
その全力を
その想いを
その決意を


「楽しみましょう…悪魔と人による…宴を!!」

腰低くして構える二人の少年、そしてその少年たちを迎え撃つように両腕を広げる女。
少年たちは纏う力を限界までに引き上げ、女は感情を露わにしたままただ微笑んだ。

「…手はあるか」

「あるかよ、んなもん」

ネロはラクサスにこの場を逆転する手段を問いかけるが、そんなものない。
むしろさっき放った”雷竜の咆哮”が最後の手段だったといってもいい。
フルパワーの咆哮が効かないのならば、これ以上対抗する手段はない。

「お前こそ…あの時の力はどうした」

「…今、あの時と同等なんだよ」

「そうじゃねえ…目だよ、なんで赤くねえんだ」

ギクリ、そしてラクサス戦で見せたネロの10倍強くなる戦闘力の上昇変化。
ラクサスはそれを引き出せば勝機があると踏んでいる。

「…今、本能を解き放ってんだ」

「…ア?」

「目の色が変わってねーってことは、そういうことなんだよ…もう、これ以上はねえ」

ネロが今まで解放していた。大猿の力の解放。
それを出すときに目の色を変化していたネロだったが、どうやら今それを出している…ということだろう。
目に変化なく、それの力を出している。
それはまさしく、もうこれ以上の力の上昇は見込めないということだろう。

…いや。

(変身…覚醒…畜生…こんな土壇場で成れるもんならなりてえ…けど)

ネロにとってこの場を逆転する方法がある”姿”が頭に思い浮かぶが…それは現実的ではない。
この場で、覚醒できるのなら勝てるかもしれない。
しかし、そう都合よく簡単になれるものじゃないとネロは身をもって知っている。

トリガーは”怒り”、しかし今の怒りだけでは辿り着けなかった。
今までの修行でさえ表れなかった力ならば…まだ未熟な自分には無理だろう。

(…どうする、それでも諦めずにキレるか?…いや、この後の攻防でキレるのか…?)

「…おいネロ」

「…なんだよ」

「悩む前にやれよ」

「は?」

「悩む時間が惜しいだろ、つーか…あのセイラがそう待ってくれると思うか?」

目の雨にセイラ、隣にラクサス。そして状況は戦闘時。
ゲームみたいにpauseで止めれなければ、ターン制も選択肢も時間もない。

「とりあえず…後悔しねえ様に、出せれるモンを出そうぜ」

「…ふぅー…そうだな」

悩む時間があるのならば、まずは行動しろ、ということか。
脳筋のような物言いだが、今の状況からすればそれが一番かもしれない。
待ってくれる敵なんて、特に姉はそんな質ではない。

ネロは感情を怒りに埋め尽くすように、そして頭の中にできるだけ苛立たしい思い出を浮かばせようとするが…すぐに思い浮かばない…が。

「じゃあよ…今身体に巡る流れ…怒り…違うそれだけじゃあダメだ…!!」

原始的で野性的な行動、されどそれを生物としては当たり前の感情を今曝け出せ。
さっき姉の殴られっぱなしの時の言葉も思い出して、ネロはその姉の教えを――最後の教えをその身で体現してみせようとする。

「気を…いや魔力を引き出してやる…それでいいかよ…!!」

内なる気を、魔力をぶっ放せ…!!

「へっ…いいじゃねえか!オレ好みだぜ!!ネロォッ!!」

ラクサスも己の持つ雷竜の力を持つ魔力をできるだけあふれ出す。限界など知ったことじゃないといわんばかりに。

「「――ここからが本番だ!!」」

少年たちは吠える。目の前の女に、強者に向けて。
そして白いオーラと黄色の雷は互いに音を置き去りにするように速度を上げる。
セイラは手を少年たちに向け、浮かんでいた本の数々が少年たちへ次々と放たれる。

「ふっ…!!」

「邪魔ァッ!!」

白いオーラは野生の勘(ワイルドセンス)で向かってくる数々を感知して跳ねるように避け、雷はその逆、ただでかい落雷によりその本たちを焼き尽くす。

「面白いですわね、それぞれ違う回避を…」

白いオーラの少年はセイラの横顔へ回し蹴りをするも、片手で塞がれる。
黄色の雷は上へと上がっておりセイラに向けて両手で握りしめられた拳を頭上で振り下ろすも掌でそれすらも受け止められた。
現在ネロの体内の”力”は、ある動きを始めていた。
ただ力の放出をするのではなく、流れのような線に従い、己の認識を”気”としてより”魔力”、そしてその魔力の最大限の流れを加速させて己の内の力を今まで出していた力”以上”を超していた。
先ほどの黒幕であろう人物と姉との会話。
自分が引き出している無理矢理ともいえる気の操作…否、魔力操作!!
ただ引き出すのではなく、きちんとした”流”に適切した放出が存在するのならば!

「だああああああ!!!!」

「!!土壇場で!!それでこそネロさま!!!」

片手で塞がれていた拳に”流”に適切した魔力の動きに赤い魔力が溢れ、己の最大とも言える力の放出を限界以上に引き出していた。
本能を引き出すことにより一時期ともいえる時間で使っていた大猿の力は通常の10倍程だ。
そして、今ネロは大猿の力を”放棄”し、己の身体に巡る流れの操作を更に加速させて大猿とは別の力――力・スピード・破壊力・防御力の何倍にもさせる技をモノにした。
かつて行っていた修行を、自身が諦めていた強化技を大猿のパワー以上の上乗せを行う。

「界ィ王ォ拳ンンンンン―――!!」

塞いでいた今のセイラが使っている力を上回るように、力の加速をする。
身体中に流れる力の上乗せに尋常ではない痛みを感じながらもそれを構わず更にネロは限界を超えようとした。

「20倍だあああああああああ!!!!!!!」

「がふッ…!!」

そして上がり続けたのネロの力はついに、セイラをも超えてその拳は彼女に届いた。
拳が彼女の胴体に入った瞬間に、互いの力比べてを負けたセイラに畳みかけるようにネロは次の拳でセイラを殴り飛ばした。
それを目にしたラクサスは目を見開くものの、笑みを深めて己の魔力を纏って雷速でセイラの元へ向かい、吹き飛ぶセイラの後ろに回り込んで雷撃の拳は後ろに吹き飛んでいたセイラを反対方面へと吹き飛ばした。
その方向の先に居るのは、身体中を赤いオーラに包み込んで拳を構えるネロ。


「だりぁッ!!」

すぐさまネロは別の足で蹴りを放ち、蹴りの連弾で息する間もなくセイラへとお見舞いする。
対してセイラは最初の一撃目を食らうもののその蹴りのすべてを巧く捌くように受け流しながらネロに反撃をするが、それを雷の主は黙秘せず次の一手で動いた。

「おおおおおおおおおお!!!!!」

まるで天災の如く巨大な落雷を拳に惑わせてそれをセイラの顔面へ突く。
そして蹴りを放っていたサイヤ人は片足に魔力を集中させ、それをセイラの胴体へとフルパワーの力を引き出して放出する。

「っっ…!!」

「”か…め…”!!」

「まだまだぁッ!!」

ラクサスは力の最大限を維持したままその両拳は雷によって上がっている速度をそのままレイラにラッシュをぶっ放す。
そしてレイラはそれらを受け流し、自身も数々の拳を相殺させ、押し勝とうとする。

「”は…め…”!!」

「!二人まとめてですか…!!」

「へ、どうかな!?」

青くきらめく魔力を目にしたレイラは少年たちの魂胆を目にするが、ラクサスは不敵な笑みである魔法を…自身の中に眠る”最強生物()”の力を引き出していく。
疲れ知らずと言わんばかりに放たれるその魔法は、鉄より堅く、されど(ドラゴン)が理性を持つのならば脅威になるであろう拳骨。

成長の鍵を見つけたのはネロだけじゃない、ラクサスも己の内にある魔力を体内に巡らせていた。
”雷”という自然の力、生物最強とされる”竜”、そして滅ぼすためだけの属性。
体内にある魔水晶(ラクリマ)を埋め込まれたときに父から言われた言葉がふと浮かんだ。

『その力は(ドラゴン)を滅ぼす力。ただそれだけに特化の滅竜魔法』

初めて聞いた時にとにかく戦闘に強いだけの魔法だと思っていた。
しかし前にネロとの試合で始めて使用可能になった己の魔法を発動したとき、ラクサスは身体でそれを理解した。
戦闘に特化しただけではない、あらゆる生物の頂点とされた竜をも滅ぼす力。
それならば、この力は目の前の”敵”を倒すのにも必ず”可能”だ、ということを。
あらゆる生物の頂点、その下であるはずの、目の前の敵を倒せると!!

「”雷竜の――鉄拳”!!!!!」

「っ――!?」

雷の魔力を拳一点に溜めるラクサスに透かさず畳みかけるようにセイラの拳が当たるが…ラクサスは笑みを浮かべながら耐え、そしてついに”竜の拳”をセイラに放ち殴り飛ばした。
その光景を茜色の少年は嬉しそうに笑い、そして両手に収束させていた力をセイラへ解放させた。

「”波ああああああ”!!!!!」


小さな少年から、青白い閃光が放たれ、電気が未だに流れている女は目を見開いていた。
愛しき家族が長年練習し、何度も失敗した技。
何度やっても無駄とも思える数々の失敗をし――しかし習得したときに浮かべた達成感と感動に満ち溢れて涙すら浮かんだ弟の笑顔を、セイラは青い光に飲まれながら思い出す。
さっき弟との攻防の中、自分ですら話していたではないか。
”意識”と”感情”、そして”技術”と”才能”を限界以上に引き出すことが可能、と。

(嗚呼、成程。今回ここまで手傷を負ったのは…)

身体が光の中に飲まれながら次々と増える火傷による熱が激しくなる一方、セイラは温かな記憶から屈辱の記憶が蓋を開ける。

『私の接取(テイクオーバー )も貴女に効かないみたいね』
 
過去の忌々しい敗北。あの敗北のせいで一度全てを失うことになってしまった。
銀髪を長く伸ばした空のような目を宿す女が諦めず抵抗したのは、”意識”や””感情”が強かったからなのか、それとも――

『もう少し…!!』

不可能と口にしていた筈なのに最後まで諦めずに限界(リミッター)解除した自分に食い下がっいてた。

『■■■■■…家族の傍に来て』

最後まで食い下がっていた結果、自分の能力であった呪法を使って、家族の力で自分を倒したあの光景が。
どこまでも家族を”想う”力があった故にできた芸当だったのか――

今、目の前のいる少年たちが…自分が育ててきたサイヤ人の弟が強い想いで立ち向かってきたから、今この結果へと繋がったとでもいうのか?

(わたくし)を想って―――限界を超えてくださったのですね、ネロさま)

青い光を通して、その発生源である愛しき弟を見つめて気づいたのは、赤いオーラを荒々しく吹かせながらこちらに悲痛な表情で眺める愛しき弟。
主の希望を叶えられなかったが、それでも確かに成長を成し遂げた弟を誇りに想う。

(わたくし)も――想っていたのですけれども…)

どこか遠い記憶を引っ張り出しながら、セイラはネロから放たれたフルパワーのかめはめ波に飲まれながらその姿は影へと移り変わり見えなくなっていく。

過ぎ去っていた青い光の痕にはあるのは、見る影もない森に生えていた草原すらも吹き飛ばし、倒れ伏す木々と――着物の女。
その光景を目にしたネロとラクサスは、確かな手ごたえをを感じて片手を天へと突き出すのであった。











 
 

 
後書き
※ラクサス20レベル。
※セイラ(命令(マクロ)と呪法なしの魔力21レベル。
※ネロ(大猿パワー)19レベル→(20倍界王拳)21レベル。

※レベル修正 9/4

 ★独自解釈編
※セイラが出した本は?
自作した本たち。
ついでに蛇足ですが、セイラが出した本たちはカナ・アルベローナの魔法である【魔法のページ】版みたいな感じです。
本から火とか水が出たりするんじゃないですかね…違う?…そう…。

9/4 ※修正
少しこの後の展開でハバネロに界王拳が必要になったので無理矢理にですが、修正させていただくことになりました。
実は最初からハバネロという転生者は魔法ではなく今まで気功波を使っていた気になっていましたが、Fateの最初の衛宮士郎みたいな”間違った魔術使用”をしていた感じにしたかった。

★界王拳の使用方法
気のコントロールによって可能となる技。界王様が編み出した強化技であり、ゼノバースでもプレイヤーでも使用可能な技。
繊細なコントロールによって可能となる技だが無理矢理な強化であるためその分反動が凄い。
ただ”気の放出”するだけじゃ使用は無理。

修正前→最後、ネロの進化の逆鱗。
修正後→最後、20倍界王拳のゴリ押し。

修正前も色々ゴリ押しだったけど、そこらへんは一応修正したはず。


次回予告

少年たちの快進撃により、セイラを地に伏せることができた。
これにより一旦落ち着くかとも思われたが、顔色を変えずに悪魔は立ち上がる。

ネロ「なん…だと…」

ラクサス「はっ…魔力はすっからかんだってのに…くそっ…!」

そして本来の実力の一部を見せる彼女に少年たちも終わりかと思ったその時、ある救世主が現る!

???「これいじょうは見過ごせん…未来のために、止めさせてもらうぞ」

外套を纏う謎の戦士、しかしネロは見てしまった。
その、男の手と形が、色に…既視感が…!

「次回、妖精のサイヤ人!助っ人登場!?意外過ぎる救世主!!」

???「あの同胞のように…わたしも誇りある戦いを見せてやる…」

???「〇〇〇〇を…なめるなよ…!!」

 
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