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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十七話 社、三姉妹と競うのことその九

 隣にいる黄蓋もだ。エプロン姿で言う。
「勝ったら勝ったでのう」
「忙しくなりますね」
「全くじゃ。歌で出番がないと思うていたらじゃ」
「まさか。料理での出番になるとは思いませんでしたね」
「うむ。しかしじゃ」
 だがここでだ。黄蓋は笑ってこんなことを言った。
「悪い気はせん」
「御祝いのお料理ですから」
「作る方も楽しい」
 それでだというのだ。
「望むところじゃ」
「そうですね。孔明ちゃん達も頑張ってますし」
「わし等も励むぞ」
「はい」
 典韋も笑顔で応える。リチャードとボブもだ。料理を作っている。それを見てだ。
 孔明がだ。驚きながら言う。鳳統も一緒だ。
「へえ、何か凄いですね」
「美味そうか?」
「お肉をそのままぶっすりとやってですか」
「ああ。それで焼くんだ」
 そうした料理だというのだ。
「シェラスコという」
「シェラスコですか」
「ブラジルの料理だ」
「リチャードさんのお国の」
「そうです。パオパオカフェの人気メニューの一つです」
 それがそのシェラスコだというのだ。今はボブが話した。
「とても美味しいですよ」
「とにかく肉をたらふく食べることだ」
 リチャードは陽気に笑って話す。
「祝いだからな」
「ではどんどん焼いていきますよ」
 ボブは笑顔で話す。
「鰐の肉もありますから」
「あっ、丈さん用ですね」
 鳳統は鰐と聞いてすぐに察した。
「鰐は」
「勿論唐揚げもあります」
 丈の好物のだ。それもだというのだ。
「とにかく色々なものをふんだんに作りますので」
「それで祝おうな」
「そうですね。そしてです」
「そろそろ決着の時ですし」
 孔明と鳳統はここでこんなことも言った。
「この赤壁で決めましょう」
「是非共」
「というかですね」
 ここでボブは肉を焼きながら二人に言った。
「何か連中もしつこいですね」
「そうだな。それもかなりな」
 リチャードも弟子のその言葉に応えて述べる。
「あの手この手で来るしな」
「しかも陰湿なやり方ばかりです」
「暗殺や扇動、そうしたことばかりだ」
「それは彼等が陰の世界の存在だからかと」
「そのせいだと思います」
 軍師二人はこうボブ達に話した。
「例えばボブさんは陰謀とかお嫌いですね」
「はい、嫌いです」
 そのことははっきりと答えるボブだった。
「私の性分ではありません」
「そういうことです。人にはそれぞれ属性があります」
「陰陽、それに五行で」
 この国独特の陰陽五行の思想に基くというのだ。
「ボブさんは陽でそして火です」
「それなら極端に明るくなります」
「そうなるんですね」
「はい、そしてそれに対してあの人達はです」
「陰です」
 彼等はそれだというのだ。
「白装束の者達もオロチも常世もです」
「まず陰があります」
 そしてだ。その陰もだというのだ。
「それもかなり深い」
「闇の深遠にある様な」
「深遠か」
 リチャードはそれを聞いてだ。目を曇らせた。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「だからか」
「はい、ああした策ばかり仕掛けてくるのです」
「闇ですから」
「大体わかりました」
 それでわかったとだ。ボブは答えた。
 そうしてだ。肉を突き刺した長い鉄の串を出しながら孔明と鳳統に答えた。
「それなら僕達はその彼等とですね」
「はい、ボブさんのやり方で向かうべきです」
「私達のやり方で」
「同じことをしては駄目なのですね」
「それをすれば私達も闇に堕ちます」
「そうなってしまってはどうしようもありません」
 それでだというのだ。
「私達のやり方で向かいましょう」
「そして勝ちましょう」
「では今はだ」
 リチャードもその肉を刺した串を出して言う。
「祝いをしよう」
「はい、それでは」
「皆で楽しみましょう」
 孔明と鳳統はその肉の塊を見て笑顔になる。それは澱みのない少女の笑みだった。


第百十七話   完


                          2011・10・14
 
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