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軽蔑

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第四章

「それがあるの」
「高一の時の」
「そうなのよ、それで美佳も出る?」 
 その同窓会にというのだ。
「そうする?」
「皆に会えるわね、それに」
 ここでだ、美佳は。
 浩紀のことを思い出した、だが彼のことは言わずクラスメイトだった相手に答えた。
「皆に会えるし」
「それじゃあね」
「ええ、行かせてもらうわ」
 声は明るい笑顔だった、しかし。
 スマートフォンを切った後で決意した顔になった、険しい顔で自分自身に言い聞かせ頷きもした。そうしてだった。
 同窓会に出た、同窓会には彼もいた、見れば。
「あれ瀬能?」
「随分変わったね」
「高校の時はコロコロ太ってたのに」
「今じゃすっきりしてるわね」
「外見も髪型も」
「別人みたいよ」 
 多くの者はすっかり痩せた彼を見て驚いた、そして。
 クラスで彼と付き合いのあったたった一人の者洲脇和彦小柄で釣り目で黒髪を短くしている青年が彼に問うた。
「随分変わったな」
「大学入ってから毎日ランニングと筋トレやる様にしたんだ」
 浩紀は彼には笑顔で応えた、高校時代から彼にだけはそうしていたが今の笑顔は随分と明るいものだった。
「それで甘いものも控えて」
「それでか」
「毎日お風呂でお湯にじっくり浸かりもして」
「そういうこともしてか」
「こうなったんだ」
「成程な、それでお前これまでどうしてたんだ?」
 彼は浩紀にこれからのことも尋ねた。
「一体」
「仏教系の大学に行って」
 浩紀は彼に素直に話した。
「そこで僧侶の資格取って」
「お坊さんのか」
「それで今はあるお寺に養子に入って」
 それでというのだ。
「結婚もしたよ」
「そうなんだな」
「奥さんと子供もいるよ」
 彼の写真を見せた、美佳もその写真を離れた場所で見たが。
 穏やかな顔立ちの若い女性と小さな男の子と一緒に今の彼が明るい笑顔でそこにいた、それは高校時代の彼とは別人だった。
 同窓会は居酒屋の大勢の人間が入られる部屋で行われた、浩紀はその彼と仲良くそれも高校時代からは想像も出来ない位陽気に話していた。それで彼は浩紀に言った。
「お前滅茶苦茶変わったな」
「そうかな」
「痩せただけじゃなくてな」
 それだけでなくというのだ。
「大学にも行ってか」
「受験も頑張ったしね」
「そうなんだな」
「高校の時はビリッカスだったけれど」
 浩紀はビールを飲みつつ明るい笑顔で話した。
「浪人した時に頑張って」
「大学に合格して」
「それでそこでも頑張って」
「お坊さんになったんだな」
「そうだよ」
「頑張ったな」
「いや、そんなに」
 彼は謙遜して言った、その謙遜もだった。
 かつての浩紀にはなかった、美佳はかつての友人達と笑顔で話しながら彼を見て本当に変わったと思った。
 そしてだ、和彦は彼にこうも言った。 
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