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展覧会の絵

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第一話 キュクロプスその十一

「前の社長と秘書達の惨殺といいな」
「この連中も麻薬の密売で相当汚く儲けてましたけれどね」
「市民団体とは名ばかりで過激派と結託してましたし」
「例のならず者国家との関係で拉致にも関わっていた様ですし」
「そんな外道でしたからね」
「何時かはって思ってましたが」
「ああ、しかしな」
 だがそれでもだとだ。刑事は言った。
「こうして惨殺するってのはな」
「何処のどいつですかね、一体」
「ここまでした奴は」
「それが問題ですけれど」
「わからないな。だがな」
 刑事は言った。その蒼白の顔で。
「こんなことする奴はいかれてるな」
「ええ、それは間違いありませんね」
「絶対に」
 制服の警官達もだ。刑事の言葉に頷く。
 彼等も検死官達もだ。死体の処理をしながら話していく。部屋の至る場所に鮮血に体液、それに汚物や肉泥がある。どうやら殺される際に排泄されたものらしい。
 そのあまりもの無残な部屋の中でむせかえる様な死体の、その臓物の匂いを嗅ぎながらだ。刑事は実に忌々しげに言ったのだった。
「いかれてるだけじゃないな」
「相当殺すのに手慣れた奴ですかね」
「切り裂きジャックみたいな」
 十九世紀ロンドンの連続殺人鬼だ。中年の娼婦ばかりを狙って切り刻んで殺していった。現代型の猟奇殺人のはじまりだと言われている。尚その正体は今も謎だ。
 だが刑事はだ。こう言うのだった。
「ただ。殺す奴は全部な」
「ええ、悪党ですね」
「それも屑みたいな奴ばかりです」
「何なんだ、それじゃあ」
 刑事は一連の惨殺事件の容疑者が同一人物だと考えだしていた。それは周りの警官達も同じだ。別人とするにはあまりにも異様だからだ。
 それでだ。刑事はこう言うのだった。
「倫理観、かなり偏ってるにしろそれがあるな」
「倫理はありますか」
「それは」
「こうしたサイコ殺人ってのは大抵そういうのがない奴がするものだ」
 中にはそうした輩もいるのだ。まさに人格障害者がだ。
 だがこの殺人を行った者はどうかとだ。刑事は言うのだった。
「こいつはある。一連の事件の実行犯が同一人物ならな」
「というかこれはですよ」
「どう考えてもやっぱり」
「同じ奴がやったでしょ」
 これはだ。警官も検死官達も言うことだった。
「こんなえげつない殺し方をする奴ってそれこそ」
「二人といませんよ」
「それも同じ町で、ですから」
「そこまで考えたら」
「そうだな。確かに殺し方は様々だ」 
 残虐にしてもだ。そうだというのだ。
 そしてだ。刑事はそのことも踏まえて指摘したのだった。
「だが。相手をじっくりと惨たらしく殺すやり方はな」
「それは同じですね」
「その観点から見れば」
「俺はな。こうした殺し方を知ってるんだよ」
 刑事はその逆さ吊りの骸を見ながら言った。
「実はな」
「といいますと」
「やっぱりサイコ殺人ですか?」
「いや、死刑だ」
 それだとだ。警官達に話すのだった。 
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