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夢幻水滸伝

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第二百三十話 西方にてその十一

 だが領主、烏の頭の鳥人の彼はその兵達に言った。
「案ずることはない、相手は私だ」
「一騎打ちですか」
「一騎打ちを挑んできたのですか」
「そうなのですね」
「だからだ」
 兵達を抑える手振りをしつつ話した。
「心配無用、今からだ」
「これよりですね」
「候自ら出られますか」
「そうされますか」
「そうする、この一騎打ちで戦を決める」
 領主は静かに言うと大斧を出した、それを両手に持ち曹に対しようとするが。
 曹は彼が身構えた瞬間にだった。
 恐ろしい速さで彼のすぐ前まで木て右手に持つ狼牙棍の一本で大斧を弾き飛ばした、大斧は空中で激しく回転し舞うが。 
 曹はその斧に目をくれず左手に持つ狼牙棍のもう一本を領主の前に突き付けた、そこに大斧が回転しつつ落ちてきたが。
 曹は左の狼牙棍を領主の喉元に突き付けたまま右手のそれを収め大斧を見ないまま空いた右手を掲げてだった。
 大斧を掴み取った、そうしてから領主に差し出して言った。
「返すわ、ほなそれからな」
「いえ、それには及びません」
 領主は喉元に武器を突き付けられながらも臆することなく応えた。
「一騎打ちには」
「負けを認めるか」
「はい、私の負けです。そして」
「延安もやな」
「負けました」
 そうなったというのだ。
「これで、では今から」
「降るか」
「全軍そして」
「勢力単位でやな」
「そうさせて頂きます」 
 こう曹に言ってだった。
 一騎打ちに敗れた領主は降った、こうして曹は延安を中心とした陝西省の北部も掌握しこの省を完全に掌握した。
 そうして降伏式の後で延安の領主に告げた。
「自分はこのまま延安の領主やが市長になってもらう」
「領主からですね」
「それでええな」
「私は敗れたのです」
 領主は曹にこう返した。
「ですから」
「言葉はないか」
「はい」
 そうだというのだ。
「ですから」
「そうか」
「むしろ敵であったのに」
「それだけで済んでか」
「驚いています」
「話を聞いてると自分はその勢力をよお治めてるしな」
 それにとだ、曹は領主に話した。
「戦でも勇敢や、それで見どころがあるからな」
「だからですか」
「こちらに来て欲しい」
「延安の市長として」
「そや、総大将が陣頭に立つのは問題があるが」
 これは真っ先に攻撃され倒されるとそれで戦が決するからだ、だから国家元首は戦争に出ても陣頭指揮を行うには問題がある。土木の変で明は出陣していた皇帝が捕まり国家存亡の危機に陥ったことを見てもそう言えるだろうか。
「臆することなく僕と一騎打ちをしようとして神具を突き付けられても」
「臆していなかった」
「そやからな」
 それだけの勇気があるからだというのだ。 
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