DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ウイークポイント
前書き
この土日はめっちゃ雪降ったせいでめっちゃ疲れました…
莉愛side
初回のこちらの攻撃はランナーを出したものの後続が打ち取られて無得点。ここからは翼星学園の攻撃になるわけだけど……
「お願いします!!」
左打席に入ったのはキャッチャーも務める岡田さん。左打ちで一番……しかもキャプテンも務めているらしい。
(まるであの人みたいだね)
私が野球を始めるきっかけになった名捕手。プロ注目でありながら大学への進学を表明した彼には驚きの声が止まらなかったことは記憶に新しい。
(でもこの人はあの人とは大きく違う点がある。それは岡田さんは高い走力を売りにする一番バッターだということだ)
あの人は走力も長打力も小技も使えるオールマイティーなスラッガー。攻撃的な野球を掲げる東日本学園だからこその如何なる攻めもできるバッターをそこに配置していたのだ。
(岡田さんの打球は三塁方向に多く飛ぶ。しかも低い打球で転がしてくるからよりその足が武器になるんだったよね)
それが分かっているから優愛ちゃん先輩は浅めの趣味。レフトの明里さんも浅めで莉子さんと紗枝は三塁側にポジショニングを移してる。
(おっと忘れてた。栞里さんも前に寄せておかないと)
紗枝が二塁ベース側に動いてるから一二塁間が大きく空いている。岡田さんはここまで長打を打っていないからライトの栞里さんが前に来ても問題ない。
(じゃあ打ち合わせ通りにいきましょう)
(オッケー)
初球は内角へのストレート。陽香さんの球速で流し打ちが得意な打者ならこのボールは相当打ちにくいはず。これは監督からも莉子さんからも言われていることだから間違いない!!
それに答えるように綺麗な回転のストレートがミット目掛けて放たれる。しかし、陽香さんが投球に入った瞬間に岡田さんは動きを見せた。
(セーフティ!!)
バントの構えに入る岡田さん。でもこれは頭に入っている。元々浅めに守ってる優愛ちゃん先輩は猛然とダッシュを開始。
コッ
それでも彼女はバントを敢行してきた。ただ、打球が転がったのは一塁側。
「はいはい!!」
一塁のライン際へのうまいバント。でも打球の勢いが弱い。これは私が処理できる範囲の打球。そう思いマスクを投げて走りボールを捕るとそのまま一塁へ送球しようとボールを握り直す。
ただ、ここでも予想していなかったことが起きた。
(おわっ!?これだと当たる!!)
バントが転がった位置と走路が重なっておりこれだとランナーの背中にボールが当たってしまう。それが分かっていた葉月さんはラインの内に入ってボールを待っていたけど、私の頭にそれがなかった。
初めての打球処理に慌ててしまっていたこともあり止まることができずにそのまま送球。指に引っ掛けてしまったそれはワンバウンドであわや大暴投になりかねなかったが、葉月さんが身体で止めてくれたため事なきを得た。
しかし、俊足ランナーである岡田さんの出塁を許してしまう格好になった。
佐々木side
「マリー!!ナイスバント!!」
「ユキ続けぇ!!」
予定通りのバントにみんな盛り上がってる。さすがに自分の武器を分かっているだけあって、真理子もキッチリ決めてくれた。
(それにしても予想通りね、あの子)
謝罪しながらマスクを被る少女を見てニヤけが止まらない。ただ、それがどうも横にいた愛里に気付かれていたらしく、すぐに平静を取り繕う。
(次はこれね。早めに走ってよ?)
(もちろんです)
ササッとブロックサインを送りプレイを進められるようにする。城田さんがこっちを見ていたけど、何が狙いかまだ分からないんじゃないかしら?
莉愛side
打ち合わせをしていたのではないかと言うほど手早く出されたサイン。この場面で考えられるのは基本的には二つだろう。
(一つは岡田さんに盗塁させること。もう一つは送りバントでランナーを二塁に進めることだけど……)
翼星学園は守備力が高いチーム。しかもここまで無失点で来ていることからわずかな得点で逃げ切ることができる。当然送りバントの確率は高いんだけど、岡田さんの足を生かすことも十分考えられる。
(一球外しましょう)
(了解)
まずはウエストで様子を見ることにした。左打者である海藤さんが届かないように大きく外す。一塁ランナーの岡田さんを確認するけど、全く動いている様子はない。
(でも海藤さんにも動きはなかった。つまり待てが出てたってこと?)
ランナーにもバッターにも動きがないのはウエストすることを読まれていたからかもしれない。そう考えるとカウントを一つ悪くしてしまっただけになってしまい、すごく悔しい。
(次はストライクを取る!!その前に牽制入れておこう)
変化球を投げる前は一度牽制でランナーの動きを封じておくのが理想的。それに習って牽制をしてから、ストライクになるスライダーを要求する。
「走った!!」
それを見計らっていたかのように二塁へ向かって走り出す岡田さん。
「くっ……」
低めのスライダーを要求していたこともあり送球の姿勢が悪い。それでもすぐさま握り変え二塁へと送球する。
「セーフ!!」
ただ、スタートもうまく切られていたため悠々セーフを許してしまった。これでノーアウト二塁。
(初回の攻撃の感じだと、先に点を取られたくない。外野を前進させて……)
佐々木side
外野を前へ寄せるキャッチャー。内野はセカンドとショートがランナーのリードを抑えるために二塁へ寄っている。
(トントン拍子でここまで来れたわね。じゃあ次はどうしようかしら?)
今日の攻撃のテーマはキャッチャーを徹底して狙っていくこと。大きい背番号、一年生、下位の打順……これから推察するに城田さんは恐らく中学時代レギュラーじゃなかった。ただ、入学からの三ヶ月間である程度成長したこと、そして明宝のウイークポイントであるキャッチャーであることからスタメンに入ったんだと思う。今までの相手なら彼女で十分だったんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かったわね。
(またキャッチャーを狙ってノーアウト一、三塁を作ってもいいけど、処理が速くなる分三塁で刺される可能性も出てくるからね。まだ初回だし、いつも通り三塁に捕らせるバントでいいよ)
(わかりました)
マウンドの坂本相手にこれから何回チャンスが作れるかわからない。ならここはこのチャンスを確実に生かすためにランナーを三塁まで進める。1アウト三塁なら打者がやるべきことは多くなり、バッテリーの選択肢は狭まるのだから。
莉愛side
コッ
三塁線へのバント。盗塁警戒のために三塁ベース付近にいた優愛ちゃん先輩に捕らせるうまいバントにより、1アウト三塁のピンチを招いてしまう。
(ここは前進守備を敷いてーーー)
「莉愛!!」
指示を出そうとしたところ、監督に呼ばれてそちらを見る。監督の出しているあのサインは……
(え?定位置でいいんですか?)
内野も外野も定位置の指示。これには驚いてしまったけど、監督が言うなら仕方ない。
(1点は仕方ないからアウトカウントを優先しろってことだよね?)
打席に入るのは指名打者の大澤さん。彼女は翼星の中で唯一打撃だけでベンチに入っている選手だ。他の選手たちには守備力を優先して求めているにも関わらず長距離砲である彼女が入っているのは、その力が目を見張るものがあるからだろう。
(点はやってもいいなら攻め方は変わってくる。まずはこれ!!)
中腰になりミットを高めに構える。1点はいいなら外野フライで十分。相手もそれを狙ってきているだろうし、それなら素直に打たせてアウトをもらおう。
(ただし、力入れてお願いします!!)
振り切られても長打にならないように高めのストレートは力があるボールが求められる。陽香さんもそれは分かっているからか限りなくMAXに近いストレートが投じられた。
キンッ
高めのボール球を振っていった大澤さん。打球は高々と打ち上げられた打球はセンターの伊織さんが捕球。ほぼ定位置だったこともあり三塁ランナーの岡田さんは楽々生還してしまう。
(これは許容範囲でいいんですよね?)
(あぁ、バッチリだ)
手で丸を作る監督。点は失ったけど、これでランナーはいなくなった。続くバッターの鈴木さんはこの都内でも有数のスラッガー。このチームでもっとも警戒するべき打者のため、攻め方は慎重にとのことだった。
(まずはボール球から行きましょう)
外のストレートのボール球。ボール一つ分外に外しているため間違って振ってくれば凡打は間違いない。そのはずなのに……
カキーンッ
彼女はそれを果敢に振っていき、快音を残した打球は逆らわずに右方向へと飛んでいく。
「おっと」
火の出るような打球。しかもライン際に飛んでいったそれは抜ければ長打になること間違いなしだったが、葉月さんが飛び込んでそれを捕球。大ファインプレーにスタンドは湧き、私たちも安堵の表情を浮かべていた。
(まさか今のボールであんないい打球を打てるなんて……これは次からはもっと注意していかないといけないかも……)
1点ビハインドになった上にこんなにすごいバッターがいる。さすがに四強と言われているだけあって隙がない野球を展開する対戦校に恐怖を覚えるのだった。
後書き
いかがだったでしょうか?
明宝学園初の先取点を奪われる展開。この試合は莉愛の成長と二年生組が活躍する予定なので頑張っていこうと思います。
ページ上へ戻る