夢幻水滸伝
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第二百二十八話 寧夏の戦いその十
羅は蘭州への進軍を再開した、すると。
蘭州までは敵軍はいなかった、そして街や村は。
「無血開城してますね」
「抵抗しませんね」
「降るだけですね」
「兵もいませんし」
「敵の考えか」
西の星の者達のとだ、羅は紗枝達四人に述べた。
「これは」
「そうみたいじゃのう」
碧が羅の今の考えに答えた。
「事実兵はおらんけえ」
「それで物資もないわ」
「もう全部持ち去ってるのがわかるのう」
「蘭州に集めてるか」
「それで焦土戦術みたいにしとるのう」
「しかし民のもんは手をつけてへん」
民の蓄えは一切だった、彼等の暮らしは変わっていない。
「あくまで軍のものだけじゃ」
「持ち去ったのはのう」
「それは見事じゃ」
碧は感心した様に述べた。
「民を巻き込まんのは」
「もっとも我等も民のものには手をつけんがな」
「それは絶対じゃな」
「戦に民を巻き込むことはせんし」
「狙うことはもっての他じゃな」
「そうした戦い方もあるけどな」
敵国と戦う場合に敵国の一般市民を攻撃しその国力自体を奪うやり方だ、例えば女を殺せば子供が出来なくなるし子供を殺せば将来の人材を奪うことになる。
「しかしな」
「それでもじゃのう」
「我はそうした戦はせんしな」
「この勢力の他のモンもじゃな」
「自分もやろ、それは」
「わらわは戦は好きじゃ」
碧はこう答えた。
「しかしじゃ」
「それでもやな」
「武器を持たんモンとやり合う趣味はない」
一切という返事だった。
「それこそのう」
「そやな」
「星のモンやとそうじゃろ」
「民を巻き込む様やとな」
「もうな」
それこそというのだ。
「この世界を救えるか」
「出来る筈がないのう」
「民を戦に無駄に巻き込んでのう」
「犠牲にするなんてな」
「世界を救うモンのやることじゃないわ」
「その通りや」
「それで西の星のモンもそうしたな」
「曹と莫と金もな」
羅は西の者の三人の名も出した。
「三人共な」
「そうじゃな、見どころがあるのう」
碧は確かな顔で述べた。
「三人共」
「星のモンだけあるな」
「そう思うけえ、なら三人にもな」
「婿になれってか」
「誘いかけるか、婿殿は一人で愛人も持たんが」
相手は生涯一人だというのだ、これが碧の考えだ。
「誘いはかける」
「そうするんやな」
「そうするけえ、その時が楽しみじゃ」
「あの、先輩は僕達にも声をかけられましたが」
屈は楽しそうに話している碧に問うた。
「同級生でも年下でも生まれも育ちも職業も」
「年上でもじゃ」
碧は屈の問いにあっさりとした口調で答えた。
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