八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六百四十七話 無欲な野心家その五
「エウロパでもです」
「成功していたんだ」
「ただ。私が見たところですが」
セーラはここで一呼吸置いた、そうして語った。
「あの人は軍事に疎いので」
「それが問題なのね」
「人間は完璧であるかといいますと」
ビアンカに答えた。
「どれだけ優秀な人でもです」
「それはないのね」
「エジソンは発明では天才でしたが」
このことはこの時代でも言われている。
「経営の才能はどうだったか」
「結構成功したけれど」
そちらでもとだ、ビアンカは答えた。社会的に有名になっただけでなく資産を得ることにも成功している。
「けれどね」
「それでもですね」
「よくもっと凄くなれたって言われてるわね」
「あれだけの発明を残したのですから」
それ故にというのだ。
「経営の才能があれば」
「もっと会社を大きく出来たのね」
「あの規模より遥かに」
「つまり発明の天才でも」
「経営の天才ではなかったのです」
「そっちの才能はなくて」
「彼もです」
発明王と言われた彼もというのだ。
「完璧だったかというと」
「違ったのね」
「そうでした」
「それであの人もなの」
「政治家としては素晴らしいですが」
「そっちは天才でも」
「しかし軍事はです」
こちらはというのだ。
「全くです」
「才能がないのね」
「私はそう見ています」
セーラのその読みは事実であり彼はその後に軍事的に多くの致命的なミスを犯すがそれはまた別の話である。
「ですからサハラでは」
「あそこは戦争ばかりだしね」
「あちらでは成功はです」
「しにくいのね」
「少なくとも政治家では」
「サハラじゃ政治家も戦争を知らないとなのね」
「務まらないので」
だからだというのだ。
「ですから」
「そうしたお国柄だから」
「あの国では少なくとも政治家としては」
その立場ではというのだ。
「成功しません、どんな立場でも頭角を表わしても」
「サハラでは難しいのね」
「そう見ています」
セーラとしてはというのだ。
「どうやら」
「そういえばヒトラーもだったわね」
ナンシーはカレーを食べつつ微妙な表情になって言った。
「それでスターリンも」
「軍事的才能は疑問でしたね」
「そう言われてるわね、二人共」
「左様でしたね」
「それでドイツもソ連も大損害出したわね」
「ソ連は勝ちましたが」
それでもというのだ。
「恐ろしい損害を出しました」
「そうだったわね」
「その様にです」
まさにというのだ。
ページ上へ戻る