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下馬評を覆し

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第四章

 ヒギンスの投げたボールをバッドで一閃した、ボールはオリックスファンの怨霊の断末魔の様な絶叫と共にセンターに飛び込んだ、村上は満面の笑顔でダイアモンドを回った。
 これで勝った、多くの者はそう思ったが。
 球界裏ヤクルトはマウンドに守護神であるS=マクガフを送った。だが彼が誤算で。
 ワンアウトも取れず三点を奪われてオリックスにサヨナラ負けを喫した、ヤクルトナインもヤクルトファンも悔しさを胸に球場を去ったが。
 高津はここでも冷静なまま言った。
「まだ一戦だ、これからだ」
「これからですか」
「大丈夫ですか」
「オリックスが勝ちましたけれど」
「そうだ、これから取り返せる」 
 彼はここでは言わなかったがマクガフが登板する間隔があると打たれることはわかっていた、そして打たれるとそこから暫くは打たれない、万全に抑えくれることを。だからこそ勝利にけたたましく喜ぶオリックスナインやファン達を見てもこれからだと思っていた。それで彼はこの日は静かにグラウンドを後にした。
「やっぱり最後に勝つのはオリックスだ」
「所詮ヤクルトはオリックスの引き立て役だ」
「精々あがけ」
「そしてオリックスの日本一に貢献しろ」
「正義はこちらにあるんだ」
「オリックスに勝てるチームがあるか」 
 舞い上がったオリックス側からヤクルトを嘲笑する声さえ起こっていた、だが高津はそんな声は聞かなかった。
 パリーグの日本シリーズでの連続勝利や本拠地での勝利が続いたと言われたが高津は気にしていなかった、そんなものは何時か必ず終わるもので絶対のものではないと分かっていたからだ、この世に無敵のものも絶対のものもないということを。
 勝利の美酒に既に酔い痴れ日本一は間違いないと思った中嶋は第二戦の先発を勝利を確信して宣言した。
 そのピッチャーは十三勝の左腕宮城とやらだった、しかしやはり高津は予告先発に応じず。
 シーズン中盤から先発ローテーションに入り四勝を挙げた高橋奎二をマウンドに送った、この先発のカードを見てオリックスファン達は鼻で笑って。
「おいおい、十三勝の宮城に四勝の高橋か」
「宮城も凄いんだぞ」
「これは二戦目も貰ったな」
「一戦目山本が勝利投手にならなかったが勝ったんだ」
「次は宮城が決めてくれるさ」
「これで二勝だ」
「もうこれでシリーズは貰ったな」
 彼等はこう言い評論家達もおおよそ同じだった、そしてここでオリックスの日本一がおおよそ決まると思っていた。それは三千本安打を放ちつつ何故かどのチームからの監督どころかコーチの声もかからず特定の番組にしか出ない巨人に在籍したのは僅か四年で巨人の依怙贔屓に必死な打つことは打つが守備等はからっきしであった評論家も同じであった。人はこの輩を老害と呼ぶらしい。
 宮城で勝てばシリーズはオリックスのものだと、そしてヤクルトに彼が打てるものかと。最早シリーズは決まると思っていたが。
 高橋は毎回ランナーを背負いながらも踏ん張った、その目は死んでおらず生きていた。彼はどれだけピンチになっても毅然として投げ続け。
 打たんとするオリックス打線を封じ何かと騒ぐオリックスファン達を黙らせた。そうしているうちにだった。
 六回ワンアウトまで完全試合であった宮城をだった。
 八回遂に捉えた、ワンアウトから西浦直亨がフォアボールで出塁した、ここでツーアウトとなりやはり宮城攻略は無理かと思われたが。 
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