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八条学園騒動記

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第六百四十二話 修羅道その八

「真の平和となるとな」
「そうじゃないかも知れないか」
「そう思う」
「戦争がなくて健康なら確かにな」
 フランツも頷いた。
「それだけで全く違うな」
「そうだな」
「少なくとも野球が出来る」
 フランツにとっては好きどころか生きがいである、もう人生そのものと言っていい位の存在である。
「それならな」
「お前ならそうだな」
「ああ、野球が出来るならな」
 フランツは笑って話した。
「俺は最高に幸せだ」
「つまり平和で健康ならだな」
「幸せだ、しかし真の平和はか」
「戦争がないだけでな」
「そう言えるか」
「そして幸せもな」
 これもというのだ。
「戦争がないだけでだ」
「言えるか」
「戦争がない世界以上に幸せな世界はない」
 タムタムはこの言葉も出した。
「言われるな」
「そうした言葉もあるか」
「サハラでは特にな」
 戦乱の絶えなかったこの地域ではというのだ。
「そう言われているらしい」
「戦争はそれだけ災厄ということだな」
「サハラを見ればわかる」 
 このことはというのだ。
「実際にあそこは沢山の人が犠牲になっている」
「だからだな」
「連合にも難民が来ているんだ」
 自分達の国にもというのだ。
「そうして暮らしているからな」
「そこから連合に入る人もいるな」
「亡命した政府が集まって出来た国もあるしな」 
 連合の中にはだ。
「そうした人達にとってはな」
「戦争がなかったらか」
「祖国で幸せに暮らせたんだ」
「だからそう思ってか」
「言うんだ」
 その様にというのだ。
「戦争がない世界こそな」
「一番幸せな世界か」
「そうな」
「そうか、しかしお前はか」
「戦争がないことは最高だ」
 今度は鶏肉を焼いたものを食べつつ言った。
「それはな、しかしだ」
「いざかいが絶えないとか」
「それなら真の平和じゃない」 
 戦争がなくともというのだ。
「俺はそうも思う」
「そういうことか」
「だから連合はな」
 今度はワインを飲んで言った。
「まだだ」
「真の平和じゃないか」
「それはない国だ、そしてだ」
「そして?」
「真の平和を達成した国はあったかというと」
「難しいか」
「徳川幕府でもな」
 先程話に出したこの国もというのだ。
「果たしてどうだったか」
「いざかいが少なくてもか」
「わからない」 
 真の平和かどうかというのだ。
「どうもな」
「俺にも難しい話なのはわかった」
「そうか、お前もか」
「どうもな」
「俺は難しい話はわからない」
 フランツはワインを一口飲んでから言った。 
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