夢幻水滸伝
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第二百二十三話 武闘場からその一
第二百二十三話 武闘場から
残木林は吉林省の長春に出た、そこで声からこの世界と自分のことを聞いてそのうえで何をするか考えたが。
ふらりと立ち寄った酒場でゴーストの中年の女に声をかけられた。
「お兄さんいい身体してるね」
「女の人はええで」
残はラオチューを飲みつつ笑って返した。
「今は」
「そっちじゃないよ、あんた職業は闘士だね」
「ああ、戦いか」
「武闘場に出るつもりない?」
「それで勝負するんやな」
「そう、勝てばいい稼ぎになるよ」
「そやな、とりあえず何をしたらええか」
残は飲みながら応えた。
「まだわかってへんし」
「何もすることないなら働くことだよ」
「そういうもんやな」
「それで闘士だったらね」
この職業の者ならとだ、女はさらに話した。
「冒険者になったり軍隊に入ることもあるけれど」
「一番はな」
「やっぱり武道場に出てね」
「闘うことやな」
「そうだよ、だからね」
それでというのだ。
「あんたもどうだい?」
「それでどんな武道場や」
「安心しな、表のものだから」
「公のもんか」
「この街の市長さんがやってるね」
「そうしたものでか」
「怪我した時もちゃんと治療してもらえるね」
そうしたというのだ。
「健全なものだよ」
「裏やとそうはいかんな」
「やっぱりね」
そこはどうしてもというのだ。
「儲けにはなっても」
「それでもやな」
「やっぱり色々と危ないんだよ」
裏の武闘場はというのだ。
「あそこはね」
「そうなんやな」
「あたしは只のスカウトだけれどね」
「これはっていうモンおったら誘いかけてるんか」
「武闘場の職員なんだよ、そこで働きながら」
「スカウトもしてるか」
「そうなんだよ、それで」
そのうえでというのだ。
「あんたに声をかけたけれど」
「仕事をしている訳やな」
「そうだよ、それでどうするんだい?」
「今言うたけどまだ何をするか決めてへん」
残は女に答えた。
「そやからな」
「それじゃあだね」
「ちょっとやらせてもらうか」
「参加するんだね」
「そうするわ」
「よし、じゃあ契約書にサインして」
女は残の返事に笑顔になった、そして早速契約書を出してきた。そこには命の安全は保障するとも書いてあった。
そのうえで報償の約束もあったが。
「全うなもんやな」
「だからうちは表だから」
「裏と違ってか」
「健全なんだよ」
女はそこは断った。
「あたしだってこう見えてもお役人だからね」
「公務員やな」
「そうなんだよ、そう見えるだろ」
「あまり見えんけどな」
見れば女は赤い上着と黒い中華風のズボンだ、黒髪を長く伸ばし胸は平らだ。
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