DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~
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紅白戦
前書き
もっと文才があってこういう趣味を仕事にできたらなぁと思ってしまう辺りが私の未熟なところだと思う|ョω・`)アクマデシュミナノニネ
莉愛side
天気は晴天……でも、グラウンドに出てきた私たちの心は曇り空。
「「「はぁ……」」」
大きなため息と共にグラウンドへと足を踏み入れる。まるで練習が嫌いな選手のように見えるが、私たちの落ち込んでいる理由はそこではない。
「まだ引きずってるの?」
「私たちが気にしても仕方ないことなんだよ?」
瑞姫と紗枝は相変わらずサバサバしている。でも、やっぱり一昨日の試合は堪えてしまう。
「だってあんなにいい試合だったのに……」
「まさかあんなになっちゃうなんて……」
5回まで投手戦の緊張感のある試合だった。しかも先に得点を奪ったのはこちら。それなのに、その裏の守備であろうことか6点も取られてしまうとは夢にも思わなかった。
「でも最終回に1点返したからね」
「それはホントにすごかった!!」
7回の表、最後の攻撃。陽香さんからの好打順だったんだけど、陽香さん、優愛ちゃん先輩、莉子さんの三連打であっという間に1点を返してなおもノーアウト一、三塁の大チャンス!!もしかしたらと思っていたところで、相手に動きがあった。
「でもさぁ……あんなピッチャーに抑えられるなんて……」
前半から飛ばしていた後藤さんに代えてマウンドに上がったのは背番号10の佐藤さん。身長も160cmはないくらい小柄でさらには右のサイドスロー。球も速くなかったことから目先を変えるための登場かと思っていたら、全然そんなことはなかった。
明里さんを外に逃げるスライダーで三振に取ると続く葉月さんには内角のストレートでピッチャーゴロ。その打球でダブルプレイを完成されてしまい、あえなく試合終了。2対6で東英学園に私たちは破れてしまった。
「後藤さんが抜きん出てるから軽視されてるけど、佐藤さんはその次点の投手として秋からフル回転してるからね」
「決勝も佐藤さんが5回まで投げて、最後の2回を後藤さんが締めて優勝したしね」
昨年の秋と同じカードになった春の大会決勝戦は両チームともエースの先発を回避。ただ、両チームともピッチャーが安定していたこともあり5回表まで0対0。しかし、5回の裏に2点を取った東英は最後をエースである後藤さんに任せシャットアウト。2対0で秋の大会のリベンジを果たしたということらしい。
「東英学園に勝ってたら関東大会だったのに……」
「見てみたかったなぁ」
そんなことを言っても意味がないことはわかっている。でも、来週からゴールデンウィークだということもあったため、せっかくなら各地区の代表チームを見たかったなぁと思っていた私たち。しかし、この日の練習前のミーティングで嬉しいニュースが飛び込んできました。
「次の土曜日、この前言っていた紅白戦をするぞ」
これを聞いた瞬間、私たち一年生は全員顔を見合わせました。先輩たちの人数は17人。さらに紅白戦となれば選手の交代もあるわけで……
「私たちも出れるってことですか?」
「もちろん。というか、全員試合には必ず出す」
それを聞いてますますテンションが上がる私たち。ただ、さすがに騒ぎすぎたかと思い先輩たちの方を見ると、陽香さんは淡々とした口調で監督に問いかけます。
「チーム分けはどうしますか?」
「そこは俺が決める。そのために今日から毎日ポジションに着いてのノックをするからな」
そう言いながらノートを取り出す監督。そこには私たちをどこに守らせるか書いてあるようで、ポジションと名前を言い始めます。
「ピッチャーは適当に回すから……莉子、莉愛にキャッチャーを教えてやってくれ」
「わかりました」
「!!」
いきなり名前を呼ばれてビックリしてしまう。でも、すぐに状況を理解するとすぐに笑みが溢れた。
「他には?」
「優愛か明里にもやってもらおうと思ってるが、今日はいいや」
明日以降キャッチャーをやることになった優愛ちゃん先輩は嫌そうな声を出していた。明里さんは全然気にしている様子はないけど、優愛ちゃん先輩そんなにやりたくないのかな?
「ファーストはーーー」
次々にポジションを発表していく監督。ただ、これは今日の練習用らしく明日以降はまた変更があるらしい。でも、これは私にとっては大チャンス!!
(初めての試合……楽しみ!!)
あの人に出会ってからずっと目指してきたキャッチャー。それをやれる日がこんなに早く来ると思っていなかった私は、ウキウキ気分を止められないまま、その日の練習に入りました。
第三者side
「陽香、莉子」
ミーティングが終わりアップに移動しようとした選手たち。その中で、中心人物である二人を真田は呼び止める。
「栞里、伊織。先にアップ始めててくれ」
「「了解しましたぁ」」
三年生の中心人物である二人に声をかけ、先に練習を始めさせる。そこまで来て、呼び止められた二人は何用なのかすぐに理解した。
「紅白戦のチーム分けですか?」
「あぁ。一応決めてある」
他のメンバーたちの前では決めてないと伝えたがそれは建前。この一週間の練習に全員が真剣に取り組んでもらうための方便だった。
実際にはチーム分けはすでに決まっており、誰がどこから出るのかまで決まっているのだ。
「私たちがそれぞれのキャプテンということでいいんですね?」
「それなんだけどな……」
陽香と莉子はこのチームの中心人物の中でもトップ2と言っていい。順当に行けば二人を別々のチームにすることがセオリーなのだが、真田は頭をかくと予想外のことを言い出した。
「今回はお前ら二人は同じチームでやってもらうよ」
「「え?」」
二人は驚きの声をあげた後、顔を見合わせる。その反応は彼の中では予想できていたようで彼は理由を話し始める。
「最初は別々にしようと思ったんだけどな、さすがにあいつにお前のキャッチャーはいきなりはキツいだろうと思ってな」
「あいつって……」
誰のことを言っているのかすぐにわかった二人はその少女の方へと視線を向ける。元気いっぱいで後ろを走っている水髪のツインテールの少女。そしてそれは、紅白戦のあるポジションの確定を意味していた。
「大丈夫ですか?あの子初心者ですよね?」
「そこが問題点だからな。だから明里と優愛をそっちのチームに入れておく」
もしキャッチャーをこなせそうにない場合ももちろん考えている。しかし、いまだにプレイをまともに見たことがない選手に期待を寄せている真田を見るのは初めてだった二人は、そこが引っ掛かってしまった。
「ずいぶん期待してるんですね」
「何か持っているような気がするんだよな、あいつは」
「何かというと?」
「それはわからん」
監督のその発言にズッコケそうになる。何か確信があるわけではなく彼なりの勘なのだろうとは思えるが、もっと核心的な言葉を期待していた彼女たちは苦笑いを浮かべてしまう。
「お前たちの方には葉月を入れて、栞里と伊織、明里と優愛を同じチームにするから実力的には問題ないだろ」
「まぁ……大丈夫だと思います」
「それから、陽香は長いイニングは投げさせないからな。日曜日と月曜日にも試合が入ったから」
「え?試合組めたんですね」
ゴールデンウィークは関東大会も被っていたため試合を組むに組めずにいた。その結果が紅白戦かと思っていたが、その翌日から二日連続で……しかもダブルヘッダーを組むことができたらしい。
「あぁ、それもいいところと組めたぞ」
「どこですか?」
「日曜日は千葉商工と作聖学院だ」
「「!!」」
その学校名を聞いた瞬間に二人の顔がひきつった。それを見て真田はニヤリと笑みを浮かべると、さらに続ける。
「月曜日は高崎一高と西大横浜と組めたぞ」
彼女たちの普段のキリッとした表情が崩れていくのが面白かったのか、煽るように続ける真田。次々に出るその強豪校の名前に二人は開いた口が塞がらないといった状態だった。
「なんでそんないいところと……」
「全部関東行けなかったからな」
関東大会に進めなかった学校は必然的にゴールデンウィークが空く。それが準決勝まで進んだ学校であれば、日程を被せられる相手も限られてくるわけで……
「他にも数校からお願いされたけど、人数が少ないうちでは対応しきれないからな」
ゴールデンウィークが全て埋まるほどの日程が作れそうだったが、相手はどこも強豪校となると、ただでさえ試合で動ける選手が少ないこの学校では多い試合をこなすのは難しい。そのため、今回は4試合のみに止め、残りは練習か休みにしようと考えている様子。
「でも、ここまでの相手と組めるなら紅白戦はいらないのでは?」
「いや、その逆だ。これだけの相手と戦うためには、一人でも戦力になる選手を見つけ出しておかなきゃいけないんだ」
相手が強豪校では迂闊に選手を試すことは難しい。しかし、同じ選手だけを使うのはケガのリスクにも繋がる上にチームの成長にも繋がらない。そのため、選手の発掘の意味を込めての紅白戦を行うことにしたということだ。
「二人にはこの一週間特に負担がかかると思うけど……頼むぞ」
「「はい!!」」
「よし、じゃあアップ行ってこい」
一礼してから練習へと向かう陽香と莉子。その後ろ姿を見ながら、真田はノートに目を落とす。
(まぁ、二試合目はさすがに相手も力を落とした相手で来ると思うけどね)
相手側もいくらなんでも全試合を正レギュラーを使うことはないだろうと考えている真田。試合を組める今のうちにチームの底上げができるようにと、彼は様々なことに思考を費やすのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ようやく主人公に焦点が当たっていきそうなフェーズに入ってきました。
次からもっと進んでいけるといいなぁと思ってます。
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