恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百九話 張三姉妹、呼ばれるのことその一
第百九話 張三姉妹、呼ばれるのこと
出陣の準備が進められる。その中でだ。
孫策も孫権も木簡にだ。次々に決裁を書いていた。その中でだ。
孫策は大きく背伸びをしてだ。こう言ったのだった。
「もういい加減ね」
「御疲れですか?」
「元々私こうした仕事は好きじゃないのよ」
こう言うのだった。
「座ってする仕事はね」
「それは私も知っていますが」
「それでもだというのね」
「はい、今は我慢して下さい」
孫権はこう姉に話す。
「しないといけないことですから」
「わかってるわ。けれどね」
「それでもですか」
「やれやれよね」
苦笑いを浮かべながらだ。木簡に書いていく。
「本当にね」
「それでもこれが終わればです」
「あれよね。出陣よね」
「はい、そうです」
だからだとだ。妹は姉に話す。
「戦ですから」
「そうね。戦ね」
ここでだ。孫策の目が光る。
そしてだ。彼女はこう言ったのだった。
「あの忌々しい連中と思う存分戦えるのね」
「ですからそれを待ってです」
「今は我慢ね」
「その仕事をされて下さい」
机に座っての仕事をだというのだ。
「じっくりと」
「そうさせてもらうわ。仕方ないわね」
「そうです。それにしても」
「それにしても?」
「姉上は机のお仕事は嫌いだと仰いますが」
それでもだというのだ。
「中々。速いですね」
「仕事がだというのね」
「それに正確ですね」
ただ速いだけではないというのだ。
「御嫌いだと言っても」
「雪蓮様はやればできる方なのです」
「そうなのです」
ここで話したのは二張だった。丁度姉妹の補佐役なのだ。
その孫家の長老達、黄蓋と並ぶ彼女等が話すのだった。
「そうした政についてもです」
「戦と同じく」
「それでどうして」
「だから。せせこましい仕事は好きじゃないの」
孫策が言うのはこのことだった。
「だからなのよ」
「そう仰いますか」
「どうしても」
「子供の頃からね。小さなことより大きなことをがつんとやりたいのよ」
実に孫策らしい言葉をだ。孫策自身が言う。
「だからなのよね」
「全く。そのことは変わりませんね」
「御幼少の頃から」
「それは婆や達もじゃない」
孫策は少し苦笑いになって二張に返す。
「全く。私が赤ん坊の頃からお母様と一緒にいたのよね」
「はい、祭殿と共に」
「大殿様とも」
「私や蓮華が赤ん坊の頃からずっといてくれて」
そしてだ。その頃からだというのだ。
「口煩いんだから」
「諫めるのも臣下の務めです」
「ですから」
「はいはい、わかってるわよ」
二人にはだ。孫策も弱い。
それでだ。仕事を続ける。その中でまた言う彼女だった。
「ただ。それにしてもね」
「それにしても」
「休まれるのは少し後にして下さい」
「そうじゃなくて。何か気分転換が欲しいのよ」
孫策が今言うのはこのことだった。
「なにかしらのね」
「気分転換ですか」
「それをですか」
「ええ。何かないかしら」
孫策は書きながら首を少し捻って言う。
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