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貧しさがどうした

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第二章

「そう思いますが」
「いや、能力があるからだよ」
 それでとだ、教授は答えた。
「だからだよ」
「それで、ですか」
「来て欲しい、いいかな」
「そうですか」
 見れば提示されている給与も福利厚生もかなりのものだ、それで彼は考えた末にその大学に入った。
 そして准教授としても評判になったが。
「教授さんからなの」
「うん、娘さんと結婚して」
 そしてとだ、彼は実家に帰って母に話した。
「それでね」
「婿養子になのね」
「来て欲しいって言われたんだ」
「そうなの」
「スカウトされて次はね」
「お家をなので」
「継いで欲しいっていうんだ、どうかな」
 母を見て問うた。
「この申し出は」
「その娘さんにはもう会ったの?」
 実花は息子にこのことから問うた。
「どうなの?」
「凄く穏やかで優しい人だよ」
「そうなの」
「おっとりしていてそれでいてしっかりしたね」
「いい人なのね」
「家事は出来て教養もあって。少し天然だけれど」
 それでもというのだ。
「凄くね」
「いい人なのね」
「実は同じ大学にいてその人は英語の先生だけれど」
「職場で知り合って」
「それでなんだよ」
 母にこのことも話した。
「それでお父さんの」
「教授さんとも」
「親しくなって」
 これまで以上にというのだ。
「それでお家にも招待してもらったんだ」
「それはいいことね」
「凄い豪邸だったよ、それに実家も代々大きな病院を経営していて」
 それでというのだ。
「もうね」
「豪邸なのね」
「そうなんだ、それでこのままいったら」
「結婚も」
「そのお話前提になってるよ」
「そうなのね、じゃあお母さんは式とかには出ないわね」
 母はここでこう言った。
「そうするわね」
「えっ、何でだよ」
「大学の教授さんで代々大きな病院をやっているお家の人よね」
「病院の院長さんは教授さんのお兄さんでね」
「そんな人のお家に行ったり式に参加するなんて」
 母は申し訳なさそうに言った。
「お母さんみたいな人はね」
「貧乏でとか言わないでくれよ」
「実際にそうでしょ。お家だって安いアパートだし」
「あのさ、貧乏って悪いことじゃないだろ」
 息子は申し訳なさそうに言う母に怒って言った。
「それの何処が悪いんだよ」
「お金ないのは事実でしょ」
「お金なんてあるなしだろ」
 それに過ぎないとだ、保志は強い声で反論した。
「家柄だってな」
「関係ないの」
「そんなので人間決まったらな」 
 それこそというのだ。
「俺だって同じだろ」
「あんたも?」
「母さんに育てられたんだから」
 貧しいという彼女にというのだ。 
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