八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百二十九話 冬のお庭でその九
「本を読んでいるの」
「そうですか」
「とはいってもあまり大した本じゃないわ」
「っていいますと」
「八条町の歴史をね」
「その本ですか」
「それを読んでいるだけよ」
「そうだったんですね」
「ええ、それで八条寺や八条神宮のことも載ってるけれど」
その本にはというのだ。
「詳しいわね」
「ああ、そちらのことも」
「よく書いてあるわ、今夜行くしね」
「チェチーリアさんも行かれますか」
「ええ、彼氏とね」
「それで読まれて」
「ためになるわ」
こう僕に話してくれた。
「面白いしね」
「八条町の歴史ですか」
「中々ね、長田区の歴史の本も読んだけれど」
八条町のある神戸市の区だ、神戸市の中では下町になる。大阪で言うと西成区や東成区になるだろうか。
「八条町のことが書いてあっても」
「専門的じゃないですね」
「八条町って神戸市の中でも独特の場所で」
「八条グループの本拠地ですからね」
世界的な企業グループで八条学園も運営している、僕自身がその八条グループを経営している八条家の一人だからよく知っている。
「それだけに」
「そうよね、だからね」
「長田区の本でもですか」
「ここまで詳しくなくて」
それでというのだ。
「今この本を読んでるけれど」
「ためになってですね」
「面白いわ、それでね」
僕にさわにお話してくれた。
「この本を読み終わったら」
「それからは」
「その頃は夜になろでしょうし」
「お蕎麦を食べてね」
年越し蕎麦、それをというのだ。
「行って来るわ」
「じゃあその為にも」
「今はこの本を読むわ」
「そうですか、じゃあ僕はこれで」
「ええ、またね」
坂口安吾の本を持って書斎を後にした、そうして書斎に残ったチェチーリアさんと別れてそのうえでだった。
自分の部屋に向かっていると途中の廊下でマルヤムさんに会った、マルヤムさんは僕に対して自分から言ってきた。
「いいでござるか」
「どうしたのかな」
「はい、今日拙者は彼氏殿と一緒にお寺と神社に行くでござるが」
それでもというのだ。
「忍者はどっちに縁があるでござるか」
「どっちもかな」
僕は少し考えてから答えた。
「それは」
「そうでござるか」
「武士になるけれどね」
それでもだ。
「けれどね」
「それでもでござるか」
「時代劇とか見たらどっちにも参拝してるから」
「それで、でござるか」
「どっちにも縁があって」
それでというのだ。
「どっちにもね」
「言えるでござるか」
「そうなるね、お坊さんの忍者もいたし」
「十勇士の三好清海殿と伊佐殿でござるな」
「うん、あの二人はお坊さんだからね」
三好というから戦国大名の三好家と縁がある、確か清海入道の方が三好三人衆の一人だったとかいう話があった。
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