八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百二十八話 大晦日その十
「温かくしてね」
「行く」
「そうしようね」
こう話してだった、そのうえで。
留美さんは僕と別れて自分のお部屋に入った、けれど。
ロビーでくつろぎはじめた僕に今度はダオさんが話し掛けてきた。
「ねえ、あんた今日は予定ある?」
「あるよ」
僕は微笑んで答えた。
「お蕎麦食べたらね」
「その後でなのね」
「そうなんだ」
「私と同じね、私もなの」
「お蕎麦を食べたら」
「出てね」
それでというのだ。
「彼と一緒に」
「そうしてだね」
「遊んで来るわね、二人で」
「そうだね、今日はね」
「大晦日よね」
「大晦日に元旦だからね」
「ベトナムでもそうだけれど」
ダオさんの祖国のお話もした。
「日本でもよね」
「そう、大晦日と元旦はね」
「特別だからね」
「二人でだね」
「行って来るわ、しかし本当に寒いわね」
ダオさんもこう言った、けれど留美さんよりもずっと耐えられないというお顔になってそれで僕に言ってきた。
「日本の冬は」
「ベトナムと違って」
「もうね」
それこそというのだ。
「地獄よ」
「そこまでなんだ」
「ベトナムは夏だけでね」
「冬はない国だね」
「だからね」
「今の寒さは」
日本、神戸のそれはとだ。僕も応えた。
「我慢出来ないね」
「お話は聞いていて覚悟していても」
「実際は違うね」
「これで雪も降るのよね」
「うん、降るよ」
実際にとだ、僕は答えた。
「この寒さだと雨じゃなくてね」
「そうよね、雪もね」
「ベトナムではないよね」
「見たことないから」
これが返事だった。
「一度もね」
「日本に来るまでは」
「一度もね、けれど日本の四季はいいわね」
ダオさんはここでは微笑んでこう言った。
「とてもね」
「景色がいいよね」
「春夏秋冬全部ね」
「気に入ってくれたんだね」
「凄くね」
僕に微笑みのまま答えてくれた。
「そう思うわ」
「それは何よりだね」
「ええ、寒さは置いておいて」
それでもというのだ。
「四季はいいわね」
「これが日本でね」
「四季があってそれぞれの季節にお花があることが」
「いいんだ」
「ええ、冬もお花あるでしょ」
「椿とかね」
冬は植物も元気がなくなる、それでお花も少なくなる。けれどそれでもあるにはあるのが日本という国なのだ。
「あるよ」
「それもいいわ」
「冬にもお花がある」
「そのこともね」
「いいんだね」
「ええ、本当にね」
「それじゃあこれからも」
ダオさんに問うた。
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