八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百二十七話 お餅つきから帰ってその六
「今もです」
「学ばれてですか」
「成長しているとです」
その様にというのだ。
「思う時があります、逆にまだです」
「至らないとですね」
「思うこともあります。むしろ」
「至らないとですか」
「思う時の方がです」
僕に穏やかな声で話してくれた。
「多いです」
「そうですか」
「孔子は七十で自由に振舞っても間違わない様になったと言っていますが」
中国のこの思想家はというのだ。
「私なぞはです」
「九十を超えてもですか」
「とてもそこまでは」
「至らないですか」
「はい、流石に吉本隆明よりはと思いますが」
「むしろ吉本より下の人探す方が難しいですしね」
子供ですらわかる様なことをわからないで堂々と言える輩なんかそうだ、つくづく思うことだ。
「それこそ」
「幾ら何でもです」
「人を大勢平気で殺すカルト教団の教祖を絶賛する様だと」
「人間としてです」
「もうどうかしていますね」
「変わったことを言うことが頭がいいか」
「違いますね」
僕も畑中さんに答えた。
「そのことは」
「はい、正しいことを正しい」
「間違っていることを間違っている」
「そう言えることこそがです」
まさにというのだ。
「真の聡明さ、頭のよさで」
「それで、ですね」
「それがわかっていない様では」
「大抵の人より下ですね」
「それでも性根は傲慢です」
吉本隆明はというのだ。
「それではです」
「流石にですね」
「私も彼よりはです」
「ですよね、僕もそう思います」
畑中さんだけでなく僕自身についてもだ。
「吉本隆明よりは」
「上ですね」
「そう思いますから」
「はい、ですがあの様な輩はです」
「流石に特殊ですよね」
「特別低いです」
人としてそうだというのだ。
「流石に。ですから」
「参考にはならないですね」
「そう思います。あの様に低い輩を見ずに」
戦後最大の思想家なぞそんなものだ、それこそ幼稚園児よりもものごとがわかっていなかったのだから。
「普通の人を見ますと」
「まだ至らないとですか」
「思うばかりです」
「畑中さんは素晴らしい人だと思いますが」
「とてもです」
僕に実際にそうした口調と顔で答えてくれた。
「思いません」
「そうですが」
「ですが人はそう思うからこそ」
「至らないとですか」
「成長するのでしょう」
落ち着いた深い叡智を感じさせる言葉だった。
「やはり」
「若し自分を偉いとか思うと」
「それ以上はです」
「成長しないですね」
「はい、前にお話した様な自分を尊敬しろと言う人は」
「もうそれ以上はですね」
「成長しないですし」
そうなってというのだ。
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