DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~
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監督の悩み
前書き
女子野球の決勝戦、無事に終わりましたね。
雨で甲子園大会が流れまくってることもありできるか不安でしたが、女子野球の新たなスタートを見れて嬉しく思います。
来年から地元の高校にも女子野球の硬式チームができるので、それを盛り上げられるような作品にしたいです。
「ストライク!!バッターアウト!!」
試合は順調に進行し、5回の裏2アウト。得点は12対0で明宝学園が大きくリードしている。
「あぁ!!結局陽香投げなかったじゃん!!」
ツインテールの少女は足を前方に投げ出し、退屈そうな表情でそう言う。マウンドにいるのは先発していた背番号9ではなく、前の回からピッチャーをしている背番号6が入っているが、お目当ての人物はライトでなかなか飛んでこない打球を待っていた。
「何言ってるんだ。こんな試合で陽香が投げるわけないだろ」
「えぇ!?じゃあなんで今日来たの!?」
まさかの突っ込みに信じられないと言った表情の少女。その姿を見た三人は、それこそ信じられないといった表情を浮かべていた。
「お前……話を聞いてなかったのか?」
「え?なんか言ってたっけ?」
「今日は明宝の新戦力が出てるかどうかを確かめに来たんだぞ」
「試すならこの初戦が一番だからね」
あぁ!!と思い出したように手を叩く少女。それを見た三人は顔を見合わせた後、タメ息を付いていた。
「まぁ……どうやら去年と何も代わりのないみたいだけどね」
「能力の高い選手に投手をさせて、エースの陽香を極力温存。強豪校との対戦は、またあいつに任せる形なんだろうな」
ある程度の計算ができる投手たちはいるが、レベルが上がってくるベスト8からはエースである陽香しか安定して抑えられる投手がいない。絶対的なエースがいることはチームにとって大きなメリットではあるが、一人だけではどうしても戦い抜けない。
「冬の間に大きな成長はなかったんだろうな。残念だが」
「渡辺と東は?あいつらが伸びてる可能性は?」
「ないな」
金髪の少女の問いをあっさり否定する黒髪の少女。彼女はその理由をわかりやすく解説する。
「打撃を見た感じ、二人とも粗さが無くなってないからな。マウンドに上がる時だけ丁寧になるなんてことはないだろう」
「それもそっか」
簡潔かつわかりやすい回答に納得する少女。その間に、打者は凡退しており、5回コールドで試合は終了していた。
「帰るか」
「えぇ!?もう!?」
「収穫はなしってところかな」
「なしってことはないよ。何も去年と変わってないってことはわかっただろ?」
大きく背伸びをしながら立ち上がり、その場を後にする面々。球場を去る際、黒髪の少女は後ろを振り返り、整列しているある選手に視線を向ける。
(意地を張らずにうちに来ていれば、お前も全国に行けたのにな)
そんなことを思いながら、少女たちは球場を後にした。
莉愛side
「いやぁ!!すごかったね!!先輩たち!!」
試合が終わり、先に帰るように指示された私たち。先輩たちはミーティングしてから帰るとのことらしい。
そんな中、私たちは先ほどの試合の感想を話ながら球場から出てきた。
「栞さんも伊織さんも完璧に抑えてたし」
「バッティングもすごかったもんねぇ!!」
エースである陽香さんがマウンドに上がることもなく抑えきり、打撃ではコールドゲームにするほどの攻撃力がある。終始試合を支配していたこともあり、私たちは興奮していた。
「でも先輩たち、途中から力入ってたよね?」
「それ思った。初回はスムーズだったのに、二回からなんか難しいボールにも手を出してたし」
瑞姫と紗枝はずっと何か気になっている点があるみたいだけど、それは私たちの耳には届かない。大盛り上がりの私たちは、先輩たちのかっこよかったところを話し合っていた。
「先輩たちに色々聞きたかったなぁ……」
「今度の練習で色々聞こうね!!」
「うん!!」
第三者side
莉愛たちが帰路に着いた頃、ベンチ裏にあるロッカールームでは試合を終えた明宝の選手たちが監督を中心に円を作っていた。
「まずはお疲れさん」
「「「「「お疲れ様です!!」」」」」
「じゃあ今日の反省点……何かある?」
パッと手を上げる選手たち。監督である真田は一番最初に手を上げた少女を指名する。
「二回以降、難しいボールに手を出してしまっていたと思います」
「そうだな。そこは気になったな。他には?」
そこからも試合に出ていた選手も出ていなかった選手からも次々と意見が出てくる。それに対し真田は頷きながら、選手たちの意見を聞き入れている。
「他は?なら次はよかった点は?」
選手層が薄いからこそのミーティング。選手たちに様々な意見を出させ、しっかりと話し合いを行う。ミーティングの度に意見が飛び交うことがわかれば、試合に出ている選手はもちろん出ていない者も常に試合に注視できる。
それにより思わぬ発見が生まれ、劣勢を跳ね返すこともできると取り入れているミーティングスタイル。これが彼女たちの強さの証しとも言える。
「……よし、じゃあほぼ出たな。じゃあ俺からだ」
チームからの意見が出終わったことで監督からの総括を話し始める。その言葉に全員が集中し、聞いていることでより彼女たちの真剣さがわかる。
しかしそれが、彼の中での不安要素でもある。
(みんないい子過ぎるんだよな……ただ、それを言うと今度は煩くなりそうなのがいるから言わないんだけど……)
高校野球は礼儀作法が厳しい。そんなイメージがあるからか、子供の頃から厳しく指導するチームがどうしても多い。それはもちろん教育の一環である部活動においていいことなのではあるが、今まで勝敗に拘る野球に身を置いていた彼からすると、どうしても違和感がある。
(真面目なのはいいことだし、こっちからしても扱いやすいから楽ではある……ただ、不測の事態が起きた時、テンパってしまうのもまた事実……)
グランドコンディションや審判による判定……常に完璧な条件が揃うことは数少ないスポーツの世界……纏まりがあるチームほど、それが崩れた時の建て直しが難しい。
(まぁ、気にするだけ無駄か……もう夏まで時間もないし、ここから下手に弄るのは気が引ける)
今ここでそんなことを言っても、戸惑う選手が大半だろう。それがわかっていた彼は、無難な試合の総評を話し終えると、最後に一言付け加える。
「ここから夏までの三ヶ月、お前ら上級生が主役なんだからな。しっかりやれよ」
「「「「「はい!!」」」」」
「よし!!じゃあ荷物まとめて今日は帰宅!!」
新しく加入した一年生。彼女たちがいるときには言えないような言葉。これで少しでも選手たちの気持ちが高ぶってくれれば、チームにとって大きなメリットとなる。
「次の試合って来週?」
「そうだね。次は3回戦と準々決勝だから土日どっちも試合だよ」
「じゃあ東英の試合見れるじゃん!!楽しみ!!」
「よ……よかったな」
礼を終え、荷物の整理を行っている選手たちは真田の狙い通り気合いが入った様子。彼は先にロッカールームから出ると、大きなタメ息をついた。
(あんなこと言ったけど……本当は一年生も合わせて戦いたいよなぁ……)
即戦力……が理想ではあるが、一年生にそこまで求めるのは酷なものがある。そもそも推薦枠を学校側が用意してくれない時点で、得られる戦力が限られているのは言うまでもないのだ。
「あ~あ……なんかすげぇ奴入ってくれねぇかなぁ……」
さっきの言葉の後なので、彼女たちに聞かれたら間違いなく袋叩きにされてしまうだろう本音。しかし、それが言いたくなるくらいチーム力が弱いのは確かだ。
(東英には今年もいい一年が入ってるだろうし、やっぱり苦しい戦いになりそうだ。せめてうちの弱点だけでも補強できれば万が一があるかもしれないが……)
厳しい顔つきになりながら本部席へと向かう真田。彼の頭の中には今後のチームのたどり着くべき道筋が見えずにいるようだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
なんか思ってた話と違くなってしまいましたが、こんな時もあります。こんなことばっかりですが笑
次はどんな感じになるかまだ未定ですが、ゆっくりやっていこうと思います。
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