夢幻水滸伝
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第二百八話 ハノイの女傑その十五
「今はお昼やからお酒は飲めんけどな」
「お酒を飲みながらお聞きしたい様な」
「そうしたな」
「お話ですか」
「そや、聞かせてくれるか」
「それでは、しかし」
カイはズーの要望に応えることにした、だが。
その前に一呼吸置いてこう言った。
「思えば僕も色々とです」
「あったんやな」
「はい、冒険はしなかったですが」
それでもというのだ。
「ズーさんのところを訪問するまで」
「何かとやな」
「ありました」
「それな、誰でもやろな」
「星の人はですね」
「何しろこの世界危機が迫っててな」
星の者達が解決しなければならないそれがというのだ。
「そしてな」
「群雄割拠で」
「賑やかやけど混沌としてるさかいな」
「どの国もそうですね」
「ついこの間まで石になってて海に沈んでたらしいし」
このことは星の者達も聞いている、海の魔神と呼ばれる存在がそうしていたとだ。
「そう考えるとな」
「ほんまにですね」
「何かとある世界でな」
「その世界に眠った時に来ている僕達もですね」
「何かとあることがな」
このことがというのだ。
「ほんまにな」
「当然のことですか」
「誰でもな、そしてな」
「僕のことをですね」
「聞かせてくれるか」
「それでは」
カイは応えた、そしてだった。
ズーにその話をはじめた、それは彼にとってはこの世界での掛け替えのない思い出でもあった。
ズーはその話を黙って聞いた、二人が飲む茶は今はとりわけ美味いものだった。
第二百八話 完
2021・5・1
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