八条学園騒動記
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第六百二十五話 信長とお茶その十
「そう言われても」
「どうということはないな」
「何も感じないよ」
「本当にそうね」
「何ていうか」
こうもだ、スターリングは言った。
「あれ以上下品な連中いないね」
「エウロパ程ね」
「特に貴族は」
今の話の彼等はというのだ。
「そうだね」
「そうよね」
「織田信長さんなんてね」
菅はさっきまで話に出ていた彼の名前をあらためて出した。
「派手な格好していたけれど」
「ああ、若い頃だね」
「尾張の大うつけって言われた時」
「吉法師って言われていた」
「あの頃ね」
「その頃でも下品じゃなかったよ」
大うつけと言われた時はというのだ。
「別にね」
「信長さんは傾いていたんだったね」
スターリングはその時の信長のことを話した。
「そうだったね」
「そうだよ」
その通りだとだ、菅も答えた。
「あの人はね」
「言うならつっぱっていて」
「それだけでね」
「下品じゃなかったね」
「確かに当時では考えられなかったけれど」
一城の主の跡継ぎの振る舞いとしてはだ。
「それでもね」
「下品かっていうと」
「そう言ってる人もいたけれど」
「それでもだね」
「よく見たら」
若き日の吉法師と呼ばれていた信長はというのだ。
「傾いていてね」
「下品でもなかったね」
「だから斎藤道三との会見ではね」
「ああ、あれね」
蝉玉が応えた。
「お寺で会った」
「あの時礼装で出て来たね」
「そう、そしてね」
菅もその時の信長を話した。
「斎藤道三さんを唸らせたから」
「凄いわね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「あの人はね」
「下品じゃなかったわね」
「全くね」
そうだったというのだ。
「あの人は」
「実はね」
「下品と傾きは違うね」
スターリングもまた言った。
「また」
「そうなんだよね、これが」
「奇矯な服と振る舞いでも」
これが若き日の信長だった。
「傾奇者は下品じゃないから」
「それは間違いないね」
「今で言うと突っ張っていて」
「そっちだね」
「不良も筋が通ってるとね」
そうした不良はというのだ。
「下品じゃないね」
「そうだね」
「まあ屑な不良は下品よ」
蝉玉はそうした者はと答えた。
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