物語の交差点
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
幽霊の正体見たりお兄さん
-同時刻・居間-
台所で調理中の6人を除く8人は居間で話しをしていた。
れんげ「それにしてもあのタガメはエキセントリックだったんなー」
樹々「へえ、“エキセントリック”なんて言葉よく知ってるわね!」
蛍「れんちゃん(れんげ)は同世代の子と比べて大人びているというか、他の子にはない独特の感性を持っているんです。常に色んなことを考えているようですし」
渚「へえ、れんげ君はいつもどんなことを考えているのかな?」
れんげ「この間はしおりちゃんと“丸とは何か”っていう議論をしてたん」
なっつん「あー、駐在さんとこの。ひか姉覚えてる?」
ひかげ「おー、コスモスデカごっこやった子だろ?あの子いくつなん?」
れんげ「ウチの1つ下なん」
樹々「幼稚園児と小学生がそんな哲学的な議論を!?」
渚「ふ、深いな...」
ケイト「オーウ!ワタシも似たようなコトを考えたことがアリマース!」
ひかげ「どんなどんな?」
ケイトの発言にひかげが反応した。興味があるのだろう。
ケイト「ジャア…ひかげ、“洗濯物”とはドウイウ意味デスカー?」
ひかげ「洗濯物?そりゃあ洗濯したもののことでしょ」
一穂「あれ、でも洗濯しなきゃいけないものも洗濯物って言うよね」
ケイト「ナルホド。じゃー洗濯スル前も後も洗濯物ナノデスネー」
ひかげ「そう…なる…かな?」
ケイト「ツマリは洗濯スルノデ服は全て洗濯物なワケデース」
なっつん「う…うん?」
ケイト「ならば、モシ洗濯スル必要がナイ服がアッタとしたらそれは洗濯物とは呼べナイと」
蛍「ま、まあ理論上はそうなりますよね」
ケイト「ジャーナンダそれは!? 布か!! コジャレタ布か!?」
ケイト「ーーーというコトをこの前夏海タチと考えてイタノデース」
れんげ「なるほど、これは議論の余地がありますん!」フヌー
ケイト「オウ!ワカッテくれましたか、れんげー!」
れんげ「もちろんですとも!これはウチも常々疑問に思ってましたん!」ガシッ
ケイト「Wonderful!! 私はイマ、モーレツに感動シテマース!」ガシッ
れんげとケイトは握手を交わした。
朝霞「なんだかあの2人は話しが合いそうですねえ」
なっつん「れんちょんって本当に悟ってるというか達観してるんだよねー。そのまま生き仏か仙人になれそうな感じさえするよ」
そのとき、ドタドタと大きな足音がしてオーブントースターを抱えた木陰と小鞠が息を弾ませながら居間に入ってきた。
ひかげ「あれ、どうしたの?なんか顔青いけど」
小鞠「で…出た……のよ…」
ひかげ「え?」
小鞠「知らないうちにグラスが移動してたの!木陰さんは知らない男の人からパンを手渡されたって言うし!お化けよ、お化けの仕業よー!!」
蛍「知らない男の人?」
木陰「ええ…」
れんげ「どんな感じの人だったのん?」
木陰「長髪で眼鏡をかけていて…。影が薄い感じの人だったわ……」
なっつん「それって兄ちゃんじゃない?」
朝霞「夏海ちゃん、お兄さんがいるんですかー?」
なっつん「うん、影が薄くて“目の前にいるのに誰も気づかない”なんてことがよくあるんだ。いつだったかなあ…あまりに存在感が無さすぎるもんだから『もうちょっと自己主張しないと』ってアドバイスしたんだけどね」
なっつんの言葉に一同が静まり返った。
小鞠「じゃ、じゃあ私たちがお化けだって思っていたのはお兄ちゃんだったってこと?」
なっつん「じゃないの?知らんけど」
小鞠「・・・なぜ気づかんかったし。」
なっつん「……ぷっ!」
愕然とする小鞠に耐えきれず、ついになっつんが吹き出した。
なっつん「アハハハハハハ!! やっぱりお化けが怖いんだー!ウチが一緒に寝てあげたあのときからこまちゃんちっとも変わんないなー!!」
小鞠「怖いものは怖いの!ってかこまちゃん言うな!」
なっつん「ふーん、怖いものは怖いんでちゅねー」
小鞠「うるさい!」
なっつん「『お化けちゃんこわーい!』って夏海ちゃんに抱きちゅいてきてもいいんでちゅよー?」ナデナデ
小鞠「気安く頭を撫でるな!! 私はお前の姉だぞ!ちゃんとお姉さんって言え!! このバカッ!アホー!」キシャー!
なっつん「わかったから落ち着きなさいチョップー」ウリャー
小鞠「」キョアー
小鞠は怒っているものの、傍から見ればなっつんに弄ばされているようにしか見えなかった。
蛍「ま…まぁまぁ……2人とも落ち着いてください」
しばらく見ていた蛍が止めに入った。
小鞠「蛍、ありがとう…」ビエーン
蛍「夏海先輩もあんまりこまちゃん先輩をいじめないでくださいね?」
なっつん「こまちゃんをいじめてたつもりはないんだけどなぁ」
れんげ「こまちゃんファイっ!」
小鞠「だから“こまちゃん”言うな!!」キー!
小鞠はまだ怒っているものの、ひとまず彼女を弄る一連の流れは終了したようだ。
一穂「……やれやれ。しかし空閑っちとこまちゃんは筋金入りの怖がり屋さんだねえ」
ケイト「OH! 小鞠と空閑センパイのカラダには金属が入っているのデスカー!?」
一穂「いや、そういうことじゃなくて...。あ、だけど“筋金入り”というのは物体の強度を高める筋金が入った金属が語源だからあながち間違いではないのかもね」
ひかげ「おお、珍しくかず姉が先生らしいこと言ってる」
なっつん「かず姉って先生だったんだなー」
一穂「君たちはウチを何だと思ってるのさ……」
そのとき、食材と調理道具を持った4人(このみ、空、なっちゃん、葉月)が戻ってきた。
このみ「みんなお待たせ!ある程度の準備はできたからあとはみんなで作ろっか!!」
小鞠「このみちゃんごめんね!途中で抜けちゃって」
このみ「いいって、こっちもいろいろお喋りできて楽しかったし。そういえばさっき皆で話してたんだけど、あれはたぶん眼鏡君(卓)だったんだと思うよ?」
れんげ「ウチも同感なん!」
葉月「やっぱりそうだったんですね。このみさんの推理が当たって安心しました」
なっちゃん「空閑先輩も小鞠ちゃんも筋金入りの怖がり屋さんやね」
空(筋金入り?)
ホワホワ…。
空は身体に金属が埋め込まれた木陰と小鞠を想像した。
ホワホワ…。
空:おお、とても強そうだ。
小鞠「強そう?」
木陰「たぶん梶原さんは金属が身体に埋め込まれた私たちを想像しているんじゃないかしら」
小鞠「ええ…」
小鞠は困ったような顔をした。
一穂「お?こまちゃんが困った顔をしてるのん。そうか、これが本当の小鞠顔(=困り顔)かー!なーんて、あっはっは!」
一同「」シラーッ
一穂のダジャレは一気に皆を白けさせた。
一穂「どうどう、面白い!? 最高に笑ったっしょ?ねえ、れんちょん?」クルッ
れんげ「ホント笑わせてくれる…」ボソッ
無表情のれんげが吐き捨てるように呟いた。
一穂「……うん!ピザトースト作ろっか!!」
一同「」シラーッ
一穂「はい、じゃあそういうわけでっ!楽しいお料理はーじまーるよー!!」
一同「」シラーッ
白けた空気のなか、一穂だけが元気だったという。
ー
ーー
ーーー
その後、どうにか気を取り直してピザトースト作りを再開した一同。
ケイト「このみ、バジルペーストはコンナ感じで塗っていけばイイノデスカ?」
このみ「ん?…ああ、そんな感じでいいよ。そしたられんげちゃんは机を拭いてもらっていい? 」
れんげ「了解なん!でもこのままだと置き場がなくなるんなー」
蛍「それならもうひとつ机を持ってきましょうか?」
朝霞「蛍ちゃん、私も手伝いますよー」
小鞠「蛍、朝霞さん、ありがとうございます!こっちです」
蛍「空さん、もうすぐピザトーストの第一陣が焼けるので焼けたらどんどん皿に載せてもらっていいですか?」
空:分かった。
蛍「ありがとうございます」
小鞠「空さん、トング使いますか?」
空「」ウン
空は小鞠からトングを受け取った。
小鞠「やけどにはくれぐれも気をつけて下さいね」
空:了解。 カチカチ
小鞠(人はなぜトングを持つとカチカチやるのか・・・?)
空は器用にトングを使って焼きあがったピザトーストを1枚ずつ皿に載せていった。
空(あっ・・・。)ピタッ
ひかげ「どうしたの?」
動きが止まった空を不思議に思ったひかげが空に尋ねた。
空:見て…。
ひかげ「焼きあがったピザトースト…がどうかした?」
空:皿…ブレッド……。 ゴゴゴゴゴ
ひかげ「んー?……ああはいはい、サラブレッドね!そういうことかー。色も茶色いし馬に見えなくもない…かな?」
空(分かってくれた…。)ホワーン
ひかげ「?」
空:弟にこのネタをやったら呆れたような目で見られただけだったから、ひかげちゃんに共感してもらえて嬉しい…。
ひかげ「なるほど、そりゃ辛いわな」
『空は本当に独特のセンスしてんなあ。』
ひかげはそう思ったそうだ。
ー
ーー
ーーー
一同「いただきます!」
無事にトーストを全部焼き上げることができ、いざ実食。
蛍「はむっ……んー!バジルの爽やかな味とトマトの酸味がマッチしてますね!」
このみ「でしょ!? 市販のピザソースなんかでも簡単にできるからおすすめだよ」
なっつん「チーズもくどくなくて美味しいね」
渚「具材はシンプルだけど味が単調じゃないのがいいね」
葉月「食材費もそんなにかからなかったし、おやつにピッタリね。私も今度作ってみようかしら」
なっちゃん「葉月、そんときはあたしも誘ってよ!」
葉月「ええ、喜んで」
れんげ「うちも鳥ちゃんたちの地元に行きたいん!」
ひかげ「一人で行くにはまだちょっと早いんじゃないかー?」
れんげ「沖縄に行ったときみたいにみんなで行けば問題ないのん!」
このみ「いつかみんなで行けるといいよねー。福岡かあ、どんなところなんだろう?」
一穂「……そうだね。遠いからなかなか行けないだろうけど、いつか行ってみたいよねー」
ーーーまだ見ぬ場所へ思いを馳せるのんのん組の面々だった。
ページ上へ戻る