おっちょこちょいのかよちゃん
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145 藤木の行方
前書き
《前回》
戦争を正義とする世界の住人・アントワネットは嘗ての母親であるテレジアと交戦する。娘の横暴を止めようとするテレジアだったが、赤軍の機械を借りたアントワネットを攻略しきれずに倒されてしまう。そしてかよ子達がそれぞれの目的の為に闘いへ動き出そうとする時、冬田が藤木救出班への移動にしてくれと駄々をこねだす。三河口の激しい叱責と大野からの呼びかけにより、冬田は立ち直ったのだった!!
冬田の我儘が収まった所でフローレンスは彼女に寄る。
「貴女にお渡ししました羽根を攻撃班に皆の移動手段として使用して欲しいのです。しかし、今の泣き虫で我儘な貴女では力不足ですわね。冬田美鈴ちゃん、羽根をお出しください」
「あ、は、はい・・・」
冬田は羽根を取り出した。フローレンスは羽根に手を向ける。フローレンスの指から五色の光線が放たれ、冬田の羽根に当たる。そして羽根は白の羽根から赤、青、緑、黄、茶の五色の羽根へと変色した。
「貴女の羽根に五つの能力を宿しました」
「五つの能力う?」
「はい。古代の中国で生まれました『五行思想』と言います自然哲学をご存知でしょうか?」
「ゴギョーシソー?何それえ?」
「火・水・木・金・土の五つの元素から成り立ちますといいます思想です。日本の曜日でも火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日と五つの曜日に漢字に使用されています。この羽根で操れます五つの能力は一つ目は炎、二つ目は水、三つ目は木や木の葉などの植物、四つ目金属、五つ目は土や砂、です」
「フローレンスさあん、ありがとうございます!」
冬田は礼をした。
「藤木茂君の場所は今の所私達の方でも掴めていません。そこで長山治君」
「はい?」
「貴方は本部守備班ですが、時には藤木茂君救出班の補佐をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「僕が・・・?」
「はい、その神通力の眼鏡を使用して藤木茂君を見ます事ができます筈です」
「解った、見てみよう」
長山は神通力の眼鏡で藤木がどの地にいるのかを見通した。そこは温泉だった。
(こ、これは・・・)
長山はあまり見てはいけない物を見てしまったような感じだった。そこに藤木が裸で女性達と一緒に温泉に入浴し、談笑している様子だった。
「ふ、藤木君は温泉に入ってる。それに女性と一緒に・・・、何か楽しそうだ」
「ええ!?温泉!?」
かよ子は藤木は監禁とかされているのかと予想していたのだが、苦しめられている様子が見られず、寧ろ楽しんでいると思うと驚きだった。もしかして今、自分がこの戦いや赤軍と政府の取引に気付いていないのかと・・・」
「いいねえ~、温泉、アタシも行きたい、ね、おじいちゃん?」
まる子は喜んでいた。
「ああ、温泉、楽しみじゃあ~!」
まる子と友蔵は呑気に言った。
「まるちゃん、私達は旅行に来たんじゃないんだよ。藤木君を連れ戻しに行かなきゃ。温泉でのんびり何てそんな暇なんかないよ」
かよ子は忠告した。
「あ・・・」
「ももこちゃん、気を抜かないでよ・・・。ももこちゃんがそんな子だったなんて・・・」
のり子も昔一緒に遊んだ女の子がこんなズボラとは少しがっかりしていたようだった。
「二人共、かよちゃんやのりちゃんの言う通りよ」
まる子の姉も窘めた。
「はい・・・」
二人は注意の的を受けて頭が真っ白になった。
「その温泉はどの方角になりますか?」
フローレンスは引き続き長山に問う。長山は神通力の眼鏡でまた確認する。
「ちょっと遠いけど、向こうの方角だ!」
長山が指を差す。
「その方角・・・、東北東の方角ですわね」
(東北東の方角・・・。そこに今藤木君が入っている温泉があるって事だね・・・!!)
かよ子は確信した。
一人の男が火炎放射で森林を燃やして突き進む。邪魔となる者を次々と焼き払い、戦場を焼け野原にして行った。
「へへ、俺様に逆らう奴は皆死んじまうんだよ、バーカ!!」
男は携帯用の酒瓶の蓋を開ける。
「ぶへ~」
酒瓶を捨てると、男はチッ、と舌打ちした。
「もう酒は終わりかよ。まあ、そろそろここまで出向けたんだ。あそこにある地の邪魔者を焼き払って酒を貰って行くとすっか」
男が向かう方向、それは敵対する世界の一番の根城とされる場所であった。
レーニンを行動不能にされた赤軍達は彼の代行と成りうる者を求めていた。
「誰もレーニン様の代わりとして動ける者はいない用ね。私達もこの戦いの前線に出ざるを得ないわ」
「そうですね」
「それに正生と和江の連絡も付かないし・・・」
足立正生と吉村和江に持たせたトランシーバーは別の世界にいたとしても通信が可能な道具だった。しかし、応答がないという事は二人がどこかで紛失したか、それとも二人が敵に囚われたかのどちらかである。
「私は兎に角本部に戻るわ。修、代理で皆への指示をお願い」
「了解しました」
房子は自分の住む世界の通り道である穴を通った。
フローレンスに代わってイマヌエルが喋る。
「それでは皆様の役割の簡単な詳細は概ね理解できたと思うが、他に質問はあるかな?」
三河口が挙手した。
「不謹慎な質問ですが・・・」
「ああ、いいよ」
「敵の世界の人間が死んだり殺されたりすると光となって消滅するようですが、もし我々がこの地で同じ目に遭った場合、光となって消えるのでしょうか?それとも遺体は残るのでしょうか?」
(お、お兄ちゃん、そんな質問を・・・!!)
かよ子はぞっとした。
「う~ん、君達の世界の人をここに連れて来たのは今回が初めてだから我々にも判らないな」
「い、嫌じゃ、嫌じゃ!!儂は死にたくな~い」
友蔵は大泣きした。
(だったら素直に帰れよ・・・)
「了解しました。兎に角、犠牲者なしで任務を遂行する事に努めます」
三河口は泣き叫ぶ友蔵を鬱陶しく思いながらイマヌエルの返答に反応した。
「それでは本部守備班は周囲の境界で迎撃をお願い致します。それでは、先代の護符、杖、杯の所有者達はこちらに・・・」
まき子、奈美子、りえの母が本部のある建物へと戻った。そしてとある一室に入った。大広間とも異なるまた別の部屋だった。そこに一枚の地図のパネルがあった。
「ここにありますのが私達の世界の地図です。この中央から南部の辺りが私達の本部のある地域です」
フローレンスが差した本部周辺の場所は青く染まっていた。
「この青く塗られています場所が私達平和主義の世界の領土です。しかし、御覧の通り以前は全てが私達の世界とされていましたのですが、レーニンという男が戦争主義の世界を創り出した事で領土の争奪戦が始まりましたのです」
フローレンスは地図の多くが赤で塗られた場所を指す。
「ここが戦争主義の世界とされています場所です。急速に勢力が拡大しまして殆どの領土が彼らの物とされてしまいました。そしてここにある細かい点ですが、私達この世界の人々は白い点、貴女達『あちらの世界』からやってきました人々は黄色い点、そして戦争主義の世界の人々は黒い点とされています。細かく表示はされてはいますが、これは私達が皆様に持たせました通信機器がこの地図に反映させています」
「この赤い点はなんなの?」
かよ子の母は聞く。
「赤い点・・・?ああ、私達も初めて見ましたね。今は敵の本拠地に居座っているような状態ですが、戦争主義の世界の人間でないとなると、きっと赤軍や赤軍と同盟を組みました東アジア反日武装戦線の人間ではありませんかと思われます」
「赤軍達がここにいるって事はもう『向こう』にある護符、杖、杯が偽物だと解っているんじゃないの?」
奈美子は聞く。
「はい、恐らく。そして私やイマヌエルが予想・懸念されます事は二つです。一つは赤軍は本物の三つの道具を強引にも手に入れる為にそれらの所有者であります三人の住みます地を戦争主義の世界の人間を送り込みながら襲撃します事。もう一つはもし私達が皆様をこの世界に引き入れたか解っていますならば、この地で争奪戦を行います事でしょう」
「大変になってきたんね・・・」
「ただ、問題になっています事は、先程仰りました藤木茂君は異能の能力を持ちません身ですので、この地図では確認します事ができません事です」
「ああ、それでさっき長山君に行方の捜索を頼んだのね」
「はい」
「ん?今、この本部の近くに黒い点があるわ・・・!!それも二つ・・・!!」
りえの母が確認した。
「つまり・・・!!」
フローレンスは感づいた。敵が二人、この地に近づいているという事を。
領土攻撃班、剣奪還班、そして藤木茂救出班はそれぞれ出発することになった。
「それじゃ、皆の健闘を祈るよ」
その地にはイマヌエルも見送っていた。
「大野くうん・・・」
冬田は大野に告げる。
「が、頑張ってねえ、私がいないけど・・・」
「おう、お前も泣いて皆に迷惑掛けんじゃねえぞ」
大野は素っ気なく言って藤木救出班と共に向かう。
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は好きな男子を呼ぶ。
「頑張ってね・・・」
「ああ・・・」
杉山もまた素っ気なかった。
「はて、領土攻撃班は範囲が広いから、更に各々で攻撃する方角で別れた方がいい。では・・・」
その時、遠方が炎上し始めた。
「あれは!?」
いきなり皆に配布された通信機器からフローレンスの声が聞こえた。
『皆様、直ぐ本部付近に敵が二名来ております!本部守備班は迎撃をお願い致します!』
「もう来たのか・・・」
「ぐへへ、遂に来たぜ、ここにな・・・」
そして敵は目の前に現れた。
後書き
次回は・・・
「炎を操る暴君、ネロ」
いきなり本部に敵が現れた。かよ子の杖にりえの杯、さりの護符を纏めて奪おうとするその敵に対して本部守備班が対抗する。かよ子達を逃がし、護符を持つさりが敵の標的にされるも本部守備班も必死の迎撃を開始する・・・・!!
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