おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
144 冬田の我儘
前書き
《前回》
石松は子分仲間および親分の次郎長との再会を喜ぶが、「生前の世界」でも「死後の世界」でも問題事を抱えている事に頭を悩ませる。そして異世界での朝を迎えたかよ子は朝食を楽しみ、そして出発の時が訪れ、本部の外へと出るのだった!!
マリー・アントワネットについては「ベルサイユのばら」などを読んで憧れている人も多いとは思いますが、彼女は自分は贅沢な生活をしている割に苦しんでいる民衆の事を一切考えていなかったという点から、「戦争正義の世界」の住人として登場させています。彼女と言えば小麦粉がなくてパンが作れないと反乱を起こした民衆に対して「パンがなければケーキを食べればいいんじゃない」と不謹慎な発言をした事で有名ですよね。(なお、後の研究でこの発言はしていない事が明らかになっています)。
皆は本部の正面玄関を出ると、そこには庭が広がっていた。
「この先一帯は私達の世界がある安全地帯ですが、元々はこの地の殆どは私達の世界のものでしたのです。しかし、戦争を正義とします世界の侵略によって多くの領土を奪われてしまいました」
フローレンスは説明を続ける。
「その為、私達の世界でも多くの物が命を落としてしまい、元の住処を奪われ、この付近への移住を余儀なくされています状態です。しかも、この地域には結界を張って守っています者もいますが、敵もこの本部周囲を崩落しに狙っていますのも事実です。その為に領土攻撃班は奪われました土地を取り返します役目を、本部守備班は本部の地域を敵から守護します役名を担って貰います。また、皆様が情報を伝達できますようにこちらを支給しましょう」
フローレンスは指を鳴らすとそれぞれの皆の前にロウソクのような物が現れ、かよ子達はそれを手に取った。
「こちらは小型化されました電話機です。上の膨らんでいます部分から声を出し、下の尖っています部分から相手の声を聞く事ができます。また、皆様の意志と連動してお伝えしたい相手にだけ伝達します事も可能です。但し、あくまでも業務報告や事態の連絡に使用してください。私用ばかりに使いました場合は没収しますのでよく考えて使ってくださいね」
「まる子、もし儂がまる子と離れてしまってもいつでも連絡するぞ!」
「うん、ありがとう、おじいちゃん!」
まる子と友蔵はどこかの恋人同士かのように見つめ合った。まる子の姉は何しに来たのか疑いたくなるくらい呆れた。
(まるちゃんのおじいちゃん、大丈夫かな・・・?)
かよ子も不安になった。何しろ友蔵は異能の能力を持たず、この戦いに招集された身でもない。孫が心配でたまらず、勝手に来ただけである。それもここに来れたのはイマヌエルの情けである。フローレンスは戻れと伝えたものの、孫の命が心配を理由に渋々受け入れただけである。友蔵が瀕死の危機に陥ったら・・・、とかよ子は懸念していたが、今はそんな事を気にするのはやめた。
「剣奪還班の役目は少数勢力ですが非常に危険な役目になります。戦争主義の世界の本部に突入しなければなりませんのでそこの世界の長や赤軍と真っ向勝負になります事は避けられませんでしょう。しかし、私達が選抜しました10人の人達はかなり高い実力を誇ります者達です」
かよ子は剣奪還班の面子を確認した。三河口を始め、その従姉の祝津ゆり、すみ子の兄の濃藤徳崇、長山の家の近所に住む北勢田竜汰、笹山の近所に住む徳林奏子、そしてゆりの隣の家に住んでいるという鷺森光江、スケバン女子の鯉沢輝愛、三河口の旧友の湘木克也、そして他に見知らぬ女子高校生二名だった。一人は気の強そうなポニーテールの黒髪の女子で、マフラーを巻いている。もう一人はブレザーの制服(他の女子高生は皆セーラー服)で茶髪の三つ編みの女子だった。顔を見てみると少し日本人には見えず、西洋風の顔をしていた。
(あの人、外国の人、かな・・・?)
かよ子はそう思った。
「祝津ゆりさん」
「はい?」
ゆりがフローレンスに呼ばれた。
「貴女にこの班の指揮を任せます。ここから北西の方角にあります海域に私達の味方でありますクイーン・ベスといいます女性にこの手紙をお渡しください。そこで剣を取り返します為の鍵となります物が手に入ります」
フローレンスはゆりに手紙を渡した。
「ありがとう」
「そして藤木茂君救出班ですが・・・」
フローレンスはかよ子達の方を見た。
「藤木茂君をよく知る者が多いですが、殆どが子供です。その為、安全面も考えまして警察官の方も引き連れていただきます。神奈川県警の椎名歌巌さん、群馬県警の関根金雄さんにもご同行させていただきます事に致します」
「解りました。責任を取ってこの子達の命を守ります」
「了解です」
椎名と関根は返事をした。
「それから・・・」
フローレンスは友蔵の方を見た。
「さくらももこちゃんとさくらさきこちゃんのお爺様。自分勝手な行動は慎んでください。貴方達の我儘や勝手な行動で皆さんの迷惑に繋がりますので」
「大丈夫です!絶対にまる子は儂が守ります」
友蔵は自身満々に言ったが、フローレンスはそう言う事ではないという気に食わない顔だった。
「私が言いたいのはそう言います事ではありません。貴方は藤木茂君の救出に共に向かいますと決めましたんですよね?」
「ああ、そうじゃ!」
「貴方のすべき事の優先度は藤木茂君を救出します事です。お孫さんのお傍に居続けます事ではありません。繰り返しますが、私は貴方を認めました訳ではありません。私やイマヌエルからしましたら非常に迷惑です。正直、ここまで我儘すぎます人は初めて見ました」
フローレンスは珍しく罵倒した。
「す、すまんかった・・・」
かよ子はいつもは優しそうなフローレンスがこんなに怖く見えたのは初めてだった。
「救出班の皆様、心細くなりませんように付き添いとしまして更に石松や清水の次郎長などにもお願いしてきます。頑張ってくださいね」
フローレンスはすぐに穏やかな表情の戻った。
(さくらさんのおじいさんがあそこまで言って受け入れられるのならあ・・・)
冬田はある事を考えた。
アントワネットとテレジア、生前母と娘だった二人は敵同士として対面した。
「お母様・・・悪いですけどここを通してください」
「無理ね。汝、間違った方向になぜ進む?お前の娘、我が孫は国民の為に考えようとした。なのに汝は贅沢をする事に思考が支配されているからこそ民衆の批判を買った」
「昔の事などどうでもいい話・・・。娘を引き抜く為にはお母様でも容赦しませんわ!」
「何をぬかすか!」
テレジアは剣を抜いた。そしてその剣を地に刺す。
「この宝剣が生む結界で汝を撥ね返させてくれる!!」
テレジアは剣から結界を発動させた。この結界は悪しき者を撥ね出す力があり、アントワネットも弾き返せる・・・、筈だった。
「お母様、同じ手がもう通用すると思って?」
アントワネットはその場で動かなかった。
(なぬ!?聞かぬ?)
アントワネットはハープを出す。
「何時、新たな力でも手に入れたか?」
「お聞きになります?これですわ」
アントワネットは一つの物体を取り出した。
「これと私のハープを組み合わせればお母様も昇天、いや、地獄行きですわね」
アントワネットは薄汚い笑みを浮かべてハープを弾く。
(く・・・、もう私にこれ以上の事は無理か・・・!!ならば・・・!!)
テレジアは宝剣の力で瞬間移動を試みた。しかし、宝剣は移動させたが、自身はなぜか転移しなかった。
「粛清の音楽を!」
「ああ、己・・・!!」
テレジアは消滅した。
「愚かなお母様・・・。この赤軍とやらから貰った道具、本当に役立つわね・・・」
アントワネットは次に進む。
(そういえばあの皇帝もこっちに出向いてるとか・・・。私とは馬が合わないようだけど・・・)
フローレンスは告げる。
「それでは私の話はここまでとなります。それでは・・・」
「あ、ま、待って下さあい・・・!!」
冬田は挙手した。
「何ですか?」
「私、やっぱり藤木君の救出の班にさせてくださあい・・・」
「は?」
「私、そっちがいいんです!!」
「しかし、貴女は領土攻撃班です。変更は私からの指示がありません限り認めません」
「でも、私大野君とがいいのお~!」
冬田は訴えた。
「貴女まで何です!駄々をこねれば思い通りになりますとお思いなのですか?指示に従いなさい!」
「お願いします!大野君と一緒にさせてください!」
冬田は涙目で訴え続ける。その時、バチン!と平手打ちの音が響いた。
「あの孫好きジジイに便乗して自分まで我儘言えば許してくれると思ってるのか!?輪を乱す気か!?」
三河口が怒鳴った。
「健ちゃん!」
ゆりは止めようと声を掛けたが、三河口はそのまま続けた。
「お前は赤軍や戦争主義の世界の人間の計画を食い止める為に来たんじゃないのか!?デート気分で異世界に来たのか!?」
「だってえ、大野君転校しちゃうんだもおん・・・」
冬田は泣きながら言った。
「大野君が好きだから役割を変えてくれなんてそんな都合の良すぎる事が簡単にできるか!?そんなに命じられた事が気に入らねえなら元の世界に帰れ!!」
かよ子は三河口がこんなに感情的に叱責する様を見るは杉山と決闘して以来だった。三河口は優しそうで案外厳格な所があるんだと改めて知る事となった。三河口に怒鳴られて冬田はさらにすすり泣いた。
「健ちゃん、もうやめなさい」
「はい、すみませんでした」
ゆりの言葉で三河口は引き下がった。その際に大野に尋ねる。
「大野君、君からも冬田さんに一言言ってやれ」
「え?俺?」
大野は何を言おうか迷った。
「冬田、あんまり我儘言うんじゃねえよ。フローレンスだって困ってんじゃねえかよ。自分の命じられた事ちゃんとやれ」
「大野君、うん、そうよねえ」
冬田はすぐ様立ち直った。
「冬田さん、大野君が相手だと素直になるね・・・」
「ああ、他の相手だと泣いて我儘になるのにブー・・・」
かよ子とブー太郎は冬田についてそんな会話をしていた。
(そういえば杉山君も私と違う班だったな・・・)
かよ子は殆どの人と関わりを避けている杉山が気になった。
後書き
次回は・・・
「藤木の行方」
冬田はフローレンスによって自身の羽根を強化して貰う。本部守備班でありながら藤木救出班の補佐を行う役目を任された長山は藤木が今、何処で何をしているのか彼の持つ神通力の眼鏡で探知すると・・・。
ページ上へ戻る