鴨子
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第七章
「わかったわね」
「やってみるわ」
「好意は下心を承知で受け取る」
現実の話だった、まさに。
「そうしなさいよ」
「ええ」
あまり自信はないが彼女の言葉に頷いた。それから暫く彼とはお互い忙しくて会えなかった、そしてある日の夜に。
私は携帯から彼jの連絡を受けた、出るとすぐjにこう言ってきた。
「今から会えるかな」
「今から?」
「うん、凄くいいアクセサリーを見つけたんだ」
数日前にプレゼントを私に受け取られなかったのにもうこう言ってくるのはバイタリティがあるからだと思う、台湾人はタフだ。
「それでどうかな」
「どんなアクセサリーなの?」
「来てみればわかるよ」
行ってみて見てみてのお楽しみだというのだ。
「それでいいかな」
「ええ、いいわ」
彼女のアドバイスを受けていたので今回は受けることにした。素直になれた。
「それじゃあね」
「今からねこっちに来てくれるかな」
「場所は何処なの?」
「それはね」
彼に場所も教えてもらってそこに向かった、そこはアクセサリーショップだった、彼がよく通って私へのプレゼントを買う店だ。
フランス調の内装、多分ロココのそのお店の中に入ると色々な洒落ているか可愛いアクセサリーが一杯あった、そして。
その店の中に彼がいた、彼は笑顔で私に言ってきた。
「あのね、それでだけれど」
「どんなアクセサリーなの?」
「携帯のストラップだよ」
それだというのだ。
「ストラップと同じデザインのぬいぐるみもあるけれどね」
「ぬいぐるみもあるの」
「そう、両方ね」
そのどちらも私にプレゼントをしたいというのだ。
「そうしたいけれど」
「どんなストラップにぬいぐるみなの?」
受け取る前提はあえて言わないで彼に尋ねた。
「見せてくれる?」
「うん、これ」
彼が出してきたのは黄色くて丸いものだった、それは頭で。
家鴨の子のぬいぐるみとストラップだった、丸いつぶらな目に開いた嘴、小さな翼は横に開いている。その二つがだった。
「どうかな」
「鴨子ね」
「うん、それなんだ」
私にそれを見せながら言ってくる。
「可愛いって思って」
「そう。それでなのね」
彼が知らないことだがそれでもこれは嬉しかった、私は自分自身を見ている気分にもなってそのうえで彼にこう言った。
「面白いわね」
「可愛いじゃないの?」
「可愛いわ」
それもあった、実際に。
「けれどそれ以上jに面白いわ」
「そうなのね」
「そう、有り難う」
私は鴨子達を笑顔で見ながら彼にこう答えた。
「いいプレゼントを有り難う」
「受け取ってくれるんだ」
「ええ、これからもずっとね」
もう断らないとも言った、そしてだった。
私は彼からそのストラップとぬいぐるみを受け取った、そのうえでこれからは彼の気持ちを全て受け取ろうと決意した。
私はその日自分でもわかる位満面の笑顔で部屋で彼女にそのアクセサリーやぬいぐるみを見せて彼女に言った。
「こんな嬉しいプレゼントはじめてよ」
「そんなに嬉しいのね」
「ええ、それにね」
「鴨子だからよね」
「私みたいだから」
それでだった。
「これからはいつもこの子達を見て」
「自分への戒めにするのね」
「そうするつもりよ」
こう笑顔で彼女に言った。
「これからはね」
「そう。いいと思うわ」
「素直になるから」
実際に今も鴨子達を見ている。
「そうするわね。この子達と一緒にね」
「そうそう、何時までもプライドが高くて素直じゃない鴨子じゃなくてね」
「素直になれっていうjのね」
「そうよ。そうしたらあんたにとってもいいから」
「幸せは素直になることからはじまるのね」
「そう、折角いい彼氏がいるから」
それなら余計にだった、彼女が言うのはそういうことだった。
そして彼女もその鴨子達を見て私jに笑顔で告げた。
「じゃあ頑張ってね」
「ええ。そうするわ」
「いつもその子達を見てね」
彼女は私に優しい声で言ってくれた、そして私は彼女のその心も受けて自分でもわかる素直な笑顔を浮かべていた、とても幸せな気持ちの中で。
鴨子 完
2012・1・4
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