恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百五話 ガルフォード、駆けるのことその八
だがそれでもだ。そのことに油断はしていなかった。
そのまま全速力で進み続ける。その中でもだ。
夏侯惇はだ。とりわけだった。
「進め!一刻も早く山に辿り着くぞ!」
「は、はい!」
「了解です!」
兵達は彼女の言葉に応えてだ。そして突き進んでいた。
だが夏侯惇はだ。その彼等にまだ言うのだった。
「いいか、若し遅れればだ」
「その時はですか」
「援軍が遅れれば」
「秋蘭達を救う!」
妹をだ。そうするというのだ。
「だからだ。急げ!」
「りょ、了解です!」
「では!」
「遅れた者は置いていく!」
夏侯惇はこうも叫ぶ。
「置いていかれたくなけばだ!」
「わかっています、ついていきます!」
「御安心下さい!」
「安心はしない!」
しかしだった。夏侯惇はだ。
今度もこんなことを言ってだ。さらに駆けてだ。
そうしながらだ。兵達に言うのである。
「秋蘭達を助け出すまでは!」
「おい、春蘭ちゃんちょっとな」
「落ち着けよ」
張遼と馬超がだ。その彼女の左右に来てだ。
そうしてだ。宥めにかかったのだった。
「確かに急がなあかんし」
「気持ちもわかるけどな」
「そやけどあんまり焦ったらあかん」
「周りも見て進めよ」
「わかっている」
それはだ。夏侯惇も承知しているというのだ。一行は駆けながら進む。
「しかしだ」
「それでもやな」
「前にか」
「そうだ。進む」
そうすることはだ。変えようとしない夏侯惇だった。
「一直線にだ」
「ほな周りはな」
「あたし達が見てやるよ」
実際にだ。二人はだ。
それぞれ夏侯惇の左右についてだ。周囲を見回す。
そうしながらだ。彼女のフォローをするのだった。
「周りは任せとき」
「だからあんたはな」
「済まない」
夏侯惇はその彼等に礼を述べた。だがその目は。
あくまで前を見据える。そうしながらだ。
軍を山に向かわせるのだった。
都から軍が慌しく出陣していた。それを見送るのだ。
蔡文姫達だった。彼女はこう同じく留守居役である韓浩に話した。
「問題はやはり」
「ええ、司馬尉達ね」
韓浩は警戒する顔で蔡文姫の言葉に応えた。
「あの娘達よね」
「果たして何をしてくるか」
「いえ、ここはね」
「ここは?」
「何もさせないことよ」
韓浩が言うのはこうだった。
「それが大事よ」
「何もさせないことね」
「そうよ。絶対に企んでいるから」
このことはもう確実だというのだ。
「だから何もさせないことよ」
「そうね。じゃあ」
「何か策があるのかしら」
「策はないわ」
こう答える蔡文姫だった。しかしだ。
彼女はだ。策はないと答えたうえでだ。こう韓浩に話した。
「ただ。備えをね」
「固めるのね」
「今都には十万の兵があるわ」
大軍である。それだけの数があるのだ。
「だからその彼等をね」
「要所要所に置いて」
「特に宮廷にね」
置くというのだ。
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