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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百二十一話 戻って話してその六

「今マスコミが信用をなくしインターネットに負けているのは」
「当然のことですね」
「平気で嘘を吹聴し質の悪い番組や記事ばかりでは」
「誰も相手にしなくなりますね」
「はい」
 まさにというのだ。
「それで今の状況です」
「見向きしない人が増えていますね」
「はい」
 まさにというのだ。
「私もかつては信じていましたが」
「マスコミを」
「次第に信じなくなりました」
「畑中さんもですか」
「マスコミは嘘を言わない」
「その言葉自体が嘘ですね」
「そのことがわかりました」
 こう僕に話してくれた。
「私も」
「それは何時からですか?」
「ソ連についての報道からです」
「ソ連ですか」
「戦争が終わり」
 そしてというのだ。
「私は日本に帰ったのですが」
「復員ですね」
「新聞を見てスターリンを偉大な指導者と言っているのを見て」
「今じゃ笑われますね」
 そんなことを主張するとだ。
「何千万もの人を殺した独裁者ですね」
「そしてソ連軍は平和主義の軍隊と言っていました」
「平和主義ですか」
「共産主義は平和勢力とされていたので」
「だからですか」
「はい、ですが私は復員する中で満州のことを聞いていました」
 中国東北部のことだ、現在の。
「ソ連軍が中立条約を一方的に破棄して攻め込んできて」
「沢山の人が犠牲になりましたね」
「民間人でも容赦なく攻撃しました」
「酷かったんですよね」
「それは筆舌に尽くし難いものでした」
 当時の日本軍はもうまともな戦力はなかった、精強なること火の如しと言われた関東軍もそんな状況になっていたのだ。それで多くの戦車と数を誇るソ連軍に勝てるかというと最早言うまでもないことだった。
「まことに。ですが」
「マスコミは、ですか」
「そう言っていました」
「平和勢力ですか」
「その軍隊だと」
「満州でそんなことをしていたのに」
「嘘は大声で言うと真実になるものです」
 畑中さんは嫌な声で話してくれた。
「そうなります」
「大声でいつも言ってですね」
「人を信じさせればです」
 それでというのだ。
「真実になります」
「事実を隠してですね」
「そうなります」
「それが日本のマスコミですね」
「はい、ナチスやソ連もそうしましたが」
「日本のマスコミもですね」
「九州にいた時に満州から引き揚げた人達のお話を聞いたのですが」
 畑中さんは過去を思い出していた、その苦い過去を。僕だけでなく小野さんもこのことがわかった。
「新聞ではです」
「そう言っていてですか」
「事実はどちらかわかりました」
「引き揚げてきた人達のお話ですね」
「それは本当の意味での真実を語っておられました」
 ソ連軍の暴虐、それをというのだ。 
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