恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百三話 公孫賛、やはり忘れられるのことその三
「見たことないわよね」
「指揮は上手みたいだけれど」
「名のある人物かも知れないけれど」
「誰なのかしら」
「華琳様の家臣ではないな」
夏侯惇はこのことは断言できた。
「あの様な者は知らん」
「我が陣営でもないわね」
麴義が言う。
「見たことのない顔ね」
「じゃあ一体誰なのかしら」
「一体」
彼女達は誰も知らなかった。そしてだ。
訓練全体を見ている董白と軍師役の諸葛勤もだ。こう言う始末だった。
「あの白馬の隊を率いてるのは誰かしら」
「私も知らないです」
諸葛勤はその女を見ながら董白に答える。
「優れているのですが」
「かなり位の高い士官ね」
董白にもそれはわかった。
「けれど。あそこまでの隊を率いる士官ともなると」
「他の陣営の方でも」
「知らない筈がないけれど」
「誰なのでしょうか」
どうしてもわからずにだ。彼女達も首を捻るのだった。
そしてだ。それは。
後でその話を聞いた厳顔もだ。こう言ったのだった。
「あの訓練で白馬を率いていたのは誰じゃ」
「ああ、あの話じゃな」
「そう、あの話じゃ」
こうだ。すっかり親しくなった黄蓋にも話す。二人は今孫策の屋敷の中で酒を飲みながら話している。
「赤い髪に白い鎧の女というが」
「ううむ、知らんな」
「御主も知らんな」
「聞いたこともない」
黄蓋もだ。いぶかしむ顔で言う。
「そうした者はな」
「そうじゃな。全くのう」
「そうした者がいるのか?」
「隊を率いるまでの者に」
二人も全く気付いていないのだった。そしてこの話はだ。
何時しか都市伝説になってだ。あちらの世界から来た者達の間でも話題になっていた。
守矢はだ。こう主張した。
「悪霊だな、それは」
「悪霊が出てるってんだな」
「そうだ」
その通りだとだ。漂に話す。二人は今は札をして遊んでいる。そうしながらだ。彼は漂に対して自分の説を主張するのだった。
「おそらく前の戦で死んだ者がだ」
「化けて出てなんだな」
「軍を率いているのだ」
そうしているというのだ。
「おそらくはまだこの世に未練がある」
「兵を率いたいんだな」
「若しくは戦をしたいか」
真剣な顔でだ。守矢は最悪の事態を想定し述べていく。
「そう考えてのことだ」
「まずいな、そりゃ」
話を聞いてだ。漂も珍しく深刻な顔になる。
「悪霊だったらな」
「成敗するか」
「それが一番だろうな」
漂は真面目な顔で話す。
「何かしてからじゃ遅いからな」
「うむ、その通りだ」
「あの、ですが」
その二人にだった。響が話してきた。見ればあかりも一緒だ。
「本当に悪霊でしょうか」
「そんな感じはせんで」
あかりも言う。
「全然な」
「違うのか」
「悪霊じゃないのか」
「かといっても妖怪の気配も感じへん」
それもないというのだ。
「そやからどっちでもないで」
「では何だ」
「悪霊でも妖怪でもないってなるとな」
「普通の人ちゃうか?」
あかりはこう見立てた。
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